純粋に音楽を楽しめることは非常に大切なことです。音楽アーティストの中にも偏愛的に複雑な構成を好むミュージシャンがいます。楽器の演奏に対する正確性を追求すると、とたんに楽器の演奏が苦痛になります。ざっくばらんに楽しみながらやることに関して、ミスや失敗を恐れずに自由にできる解放された状態は必要です。技術を要する音楽は本来のリズムや音階を意識しながら複雑な構成を覚えなくてはならないという、戯曲的な難しさがあります。
複雑な構成の音楽にはオペラのように決して変えることは許されないという暗黙の了解があり、バンドの運営上これに乗り遅れるようなメンバーは必要ないという対応をされることがほとんどです。これらの音楽は総合的に見ると非常に中途半端な存在でもあります。様々なジャンルのエッセンスを取り入れていながら、どのジャンルから見ても完成したものとして見られrないからです。ロックにしてはジャズより過ぎて、クラシックのような正確さもないといったような評価が一般的になります。
プログレッシブロックの魅力は融合ではなく実験で、楽器演奏の限界への挑戦でもあります。ギター演奏でも最も複雑なスタイルはフラメンコですが、フラメンコのギタリストが流暢にロックンロールをプレイできるかというとそうではありません。すごいテクニックを持っていても経験のない演奏することは難しいものです。
音楽アーティストは音楽をプレイできる環境に自らを置きますが、プレイできる音楽は限られています。確立されたスタイルがあるにもかかわらず新たにスタイルを変更する必要はないからです。プログレッシブロックにはそのような概念はなく、曲がそれを必要としていればそのスタイルを習得する必要があります。一流から見ると中途半端でも表現方法としては必ず必要なのです。プログレッシブロックの名盤が今も聴かれているのは、限られたテクニックを駆使した捨て身の演奏が常に新鮮さを保っているからです。