ある日仕事場に電話がかかってきた。
「子猫が橋の下で鳴いているの。あなたなら何とかしてくれるって聞いたから」
オイオイ!誰だい?そんなことを言ったのは。
「捕まえられたら保護しておいて」と言っておいた。
それから一週間近くして、別の人から電話が来ました。
「捕まったの~。取りに来て」
一月半は立っているかな?去年のジョリ子よりはちょっと大きいくらいだ。
驚いたのはトイレとベッド用箱を部屋に置いて、一晩を過ごさせたら
朝には、ちゃんとトイレを使っていた。
この月齢の子は大抵トイレを覚えるまでに4~7日はかかるのに。
なんて子だ!
それに只の茶トラでは無かった。
トラ模様はほとんど無く、背中に十字架を背負っている。
おでこにはVサイン。
これはキリスト様の祝福を受けてこの世に来たに違いない。
子猫を欲しいと言っていた人を思い出し、早速連絡を取ってみた。
「是非」とのこと。
日曜日にはご家族全員で東京から取りに来てくれると言う。
しかし、子猫と言うのは一晩でも置いてしまうと、情が移る。
まして背負った十字架と言い、トイレの苦労が何にも無かった事と言い、
既にこちらがメロメロになっているのだ。
どうもノラの子らしい。人間を見ると逃げる。隠れる。
それでもその可愛さ、愛おしさは、ノラなら格別の事。
逃げながらも、抱き上げると頭をこすりつけてくる。
ゴロゴロと人間の顎にかみついて親愛の情を示す。
本質は甘えん坊で、寂しがりやなのだ。
後三日。この子と過ごせるのも後三日のみとなった。
望まれて里子に出せるなんて滅多に無いことなのだから
有り難うと言って、可愛がってもらおう。
幸せにね、と言って送りだそう。
「あんたは冷たい。雌だからって里子に出すんだから」
息子はそう言って私を攻める。
そうですそうです。ミシェルを失った私はどうしても男の子が欲しかった。
認めます。
しかしここまで可愛いと雌でも雄でもそんなことはどうでも良い。
でもね、あんなにネコが欲しくて待っていた人に、
今さら「あげません」なんて言えないよね。
きっとどこへも行く当ての無い子が来るから、
その子のために空を作っておいてやろうよ。
もらってくれる人が居るときは喜んで差し上げようよ。
別れは辛いけれど、絶対にこの子は幸せになるから。
とは言いながら
「飼えなくなったり、手に負えなくなったら何時でも返して下さい」
なんてメールに書いちゃった!
ところで何で酒屋のオッちゃんや回りのお母さん達が
あの子を必死で保護したかと言うと、
最初は二匹で居たそうです。
ところが酒屋の奥さんが
もう一匹が車に轢かれるところを見てしまったのだそうだ。
それで放って置けなくなったのね。
このチビは本当に幸せ者です。
みなさ~ん有り難う。
チビに変わってお礼を申し上げます。
きっと皆さんにいいことが起こりますよ。
ネコは恩返しが上手だからね。