日本語の問題?
以前、著者の集まりで、国語だけの学習塾を経営している先生と話をしました。
「国語だけ」の指導塾が成立する背景には、たとえ算数や理科の問題であっても、問題文の意味をきちんと理解しなければ正解できない、という現実があります。
販売促進であっても同様です。
マーケティングで成功するためには「文章を書く力」がもっとも大切であると、多くの人が指摘していますからね。
ということで、さっきテレビで見た算数の問題。
ちょっと解いてみてください。
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3こで1パックのプリンが240円で売られています。
このプリン20こを買うとき、いくらになりますか。
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とってもシンプルな小3くらいの問題です。
暗算でもすぐに答えが出そうなのですが、、、。
(20こ、とは、プリン単体のことか、それとも3こパックを20こ買うのか?)と、迷いますよね。
・解き方<1>プリン単体を20こ買うので、240円を3で割って、80円×20こ 1,600円になる
・解き方<2>3こパックを20こ買うので、240円×20こで4,800円になる
・解き方<3>3こパックで売っているので小分けはできず、1こ多くなるけれど21こ分の7パックを買わなければ20こ手に入らないので、240円×7こで1,680円になる
…算数が苦手な私などは「どれだけあいまいなんだ…!」といらいらします。
こういう問題が出された場合、ストレートな生徒は不正解になり、忖度できる生徒は正解できます。
忖度というのは、教科書や授業の流れ、教師のクセを理解していて空気の読める生徒ということです。
こう考えると、上記の問いは算数の問題などではまったくない、ということがわかりますね。
巷間、いちばんいらない省庁は文科省、などといわれていますが、こうした虫の目からの適正化から進めてもらいたいものですね。
キャッチコピーの7類型⑤
キャッチコピーを梃子(テコ)に、物語をつむぎだしたり、フックの効いた舞台設定を用いてお客様を引き込む手法です。
キャッチコピーの役割のひとつに、本文(続き)を読みたくさせる、というものがあります。
なかなか長文を読んでもらえない時代に、「これは面白いかも」と感じさせることができれば強いチカラとなりえます。
⑤【演出系】 → 印象的な演出手法で伝える(5パターン)
(1)質問する
人は、質問をされると、つい反応したり、答を考えてしまう生き物です。
そこを見込んでの、「?」で終わる文章表現パターンです。
「彼が就活に成功した理由を知りたくありませんか?」
「最近、感動しましたか?」
単純にクイズを出し、「答はこちら!」と表示してクリックをしてもらうやり方も、リスティング広告などでは威力を発揮します。
(2)続きを読みたくさせる
ウェブなどでは文章を「読む」のではなく、「見る」のだ、などと言われます。
そこへ、自分の気になる情報や、面白そうな話を振られると、その先が気になってしまい、説明ボディを読み進めてくれる、というわけです。
「投資家によくある3つの間違い教えます」
「大学に合格した僕に母が送ってきたメールとは…」
上の(1)と同様に、リスティング広告などでクリックをしてもらいたいときに有効な表現です。
(3)ドラマ仕立てにする
小説の一節のようなドラマチックな語りで、しっとりと読み手を引き込んでいくやり方です。
「マティーニを3杯飲むうちに街は雪になった」
「私がピアノの前に座るとみんなは笑いました。でも、私が弾きはじめると…」
とくに2本目は、米国で伝説となったキャッチコピーで、同巧の広告が多くつくられています。
(4)商品に語らせる
商品そのものに人格を与え、語らせるものです。
商品の体温が伝わり、セールス感が薄れる効果もあります。
「3週間も寝かせて熟成してもらいました!」
「僕、ケガしてるけど誰か連れて帰ってね」
2本目のキャッチコピーは、リサイクルショップなどでキズがある商品のPOPにぴったりでしょう。
商品ではない登場人物に語らせたキャッチコピーとしては、
「おしりだって洗って欲しい」
が有名ですね。
(5)小出しにする(ティーザー)
「ティーザー」とは「じらす」こと。
大企業の広告で使われることの多い手法ですが、情報を小出しにすることで期待を盛り上げ、注目度を高めていこうとするやり方です。
「あなたはまだ、何も見ていない!」
「4月1日、○○のすべてが変わります」
より詳しい情報を届けるために、「続きはネットで!」「○○で検索してね!」というメッセージも、よく使われます。
→キャッチコピーの7類型④はこちら
→キャッチコピーの7類型③はこちら
→キャッチコピーの7類型②はこちら
→キャッチコピーの7類型①はこちら
景品表示法の目安が
景品表示法違反があったとして、スマホゲームのパズドラなどへ消費者庁から措置命令が出されました(2017.7.19)。
有料キャラクターの「すべてが究極進化する」と謳っていながら、実際は13体のうち2体のみだった、そうです。
また、東京ガスは、他社製品の存在しない希望小売価格を比較対象としてチラシに掲載し、安く見せようとしたことに対して措置命令(2017.7.11)。
これらは単純な「看板に偽りあり」ですが、微妙なのは、
「個人の感想であり、効果には個人差があります」
「場合によっては優待の対象外になります」
「5000円以上の商品に限ります」
「2年以上の加入契約が必要です」
などのお断り書き(打消し表示)。
これらは、次のような3つのパターンに分類されます。
<1> 例外型
・あてはまらないケースがあることを告げるもの
例「医療行為によっては給付対象とならないことがあります」生保
<2> 別条件型
・なんらかの別条件を満たす必要があると告げるもの
例「○○オプションへの加入が必要です」ネットプロバイダー
<3> 非保証型
・効果を全員に保証するものではないと告げるもの
例「効き目は連続10時間」鎮痛剤
今回、これらの打消し表示について、景品表示法に抵触する恐れがあると具体的に示された目安は、次のようなものでした。
・文字が小さい(印刷物/ネット広告など)
・文字と背景の区別がつきにくい(同上)
・表示時間が短い(動画/CMなど)
・同一画面にない(ネット広告など)
文字の小ささでは8ポイント以下が57%あった、表示時間では2秒以下が42%あった、同一画面にないものは25%あった、と指摘しています。
ということは逆にいえば、文字サイズは9ポイント以上、表示時間は3秒以上あればいい、ネット広告では表示を同一画面に入れておけばいい──ということにもなります。
もちろん、杓子定規に受け止めることはできず、「この表記でお客様は勘違いしないか」とつねに問いかける姿勢が必要です。
弓削がコピーを書く場合は、「○○までにお申込みになると!」や「○○○と一緒のご購入で」などのように、メインのキャッチコピー並みのボリュームではっきりお断りするようにしています。
しょせん、小手先でごまかそうなどと考える企業はお客様の信頼を得ることはできず、永続もできない。
そんなことに時間を割くのではなく、自社商品の特長・便利さをいかにスピード感を持って伝えるかのコトバ選びに心を砕くべきなのです。
キャッチコピーの7類型④
キャッチコピー7類系の4回目です。
今回は、お客様のニーズを顕在化してみせる、お悩みを解決できる商品・サービスがあることを気づかせてあげるパターンです。
(こんな商品、私には関係ないわ)と思い込んでいる見込み客に、「買ってみたら便利」「試したら美味しい」と気づいてもらうことができれば、市場性は一回り大きくなります。
④【必要系】 → 最も必要とするお客様へ訴える(5パターン)
(1)ターゲットを名指しする
「自分ごと」として受けとめてもらえれば人は動く、といわれます。
「みなさん!」と呼びかけても雑踏を急ぐ人びとは誰も反応しませんが、「山田さん!」と呼びかけると、確実に二人、三人は振り返ってくれる、というものです。
「仕事ではクルマを使わないあなたへ」
「最近、よく眠れないあなたに」
近年、不眠を訴える人は6割を超えているといいますから、多くの人が投網に引っかかる絞り込み方ではあります。
「肌トラブルのない方にはお売りできません」
などは、機能性を訴求しながら、ターゲットを絞り込んでいるようで絞り込んでいない、という好例です。
(2)ソンをしたくないと思わせる
一般的に、人は「おトクな話がありますよ」といわれるより、「あなた、いまソンをしているのではないですか?」と囁かれるほうが強く反応してしまう、という心理ですね。
「高い買い物をしていませんか?」
「敷金が還ってくる人、来ない人」
「損してまっせ、あなたのゴルフ」
いずれも、心当たりのある人はドキッとしますよね。
(3)危機感をあおる
ウェブの、長〜いランディングページなどであおり系のキャッチコピーをよく見ます。
しかし、あおりすぎれば不信感を生み、ビジネスは長続きしないでしょう。
ほどよく危機感を感じてもらうのが、この表現法です。
「髪は、毎日のシャンプーで傷んでいる」
「英語教育は3歳までに決まる」
私はシャンプーなどヘアケアメーカーの支援先が複数あり、どうして髪が傷むのかについてはちょっとうるさいのですが、いずれにしましても、ふつうのシャンプーで毎日、洗髪していたら傷みます。
基本的には(ウチの商品を選ばないと)ひどいことになります、と主張することが骨子です。
(4)必要性に気づかせる
隠れていた商品ニーズを顕在化させるメッセージは、キャッチコピーの大きな役割の一つです。
「あなたの耳ウラ、迷惑をかけていませんか」
「その胸ヤケ、逆流性食道炎ではありませんか」
ニオイ系の商品は、本人が気づきづらいということもあり、気づかせる系のキャッチコピーになりがちです。
また逆流性食道炎は、昨年、私自身も病院でそう診断されて驚きましたが、ただの胸ヤケ、二日酔いと思っていたところへ病名をつけられてしまいますと、「あれ、薬が必要かな?」と考えるようになったりするものですね。
(5)解決策があることを教える
まったく新しい商品の場合、それで自身の課題を解決できると気づいていない見込み客も多いわけです。
そこで、ニーズの掘り起こしから着手しなければならないわけです。
「最近、電動自転車のバッテリーがすぐ切れる…という方へ」
「インソールで姿勢がよくなるって、マジすか?」
課題やお悩みが解決できるなら高額でもかまわない、という切実なニーズに結びつくことも多いので、新商品の導入期には効果を持つ表現です。
和紙の新商品を開発するなら
先週は徳島県でキャッチコピーのセミナーでした。
先月にも徳島法人会様にお呼びいただいたので、ほぼ1ヵ月の間に2度、ご指名をいただいた格好です。
さて直近のセミナーは、徳島県中小企業団体中央会様を通じて阿波手漉和紙商工業協同組合様の会員企業様にご参加いただくという機会でした。
もともとは、商品開発などについても触れて欲しいというご要望をお聞きしていたものがキャッチコピー講座へ変更になったので、「和紙の技術を使った商品開発」についても実は少し考えていました。
今回はそれについて書きます。
弓削の商品開発講座では「切実な商品をつくれば成功の確率が高まる」と話す部分がありますが、それが和紙ではなかなかむずかしい。
ただ、和紙の世界でも事例はあります。
阿波地方で長い歴史を持つ阿波製紙では、紙すきの技術を生かし、自動車エンジンや水処理装置向けのフィルターを開発・製造しています。
和紙ならではの機能性が役立つのであれば、自動車づくりにとって切実な製品となりえるでしょう。
また岡山県の事例ですが、和紙を樹脂で挟んだブラインドがヒットしています。
和紙ブラインドの、どこが切実なのか。
夏にはブラインドを下げれば断熱効果によってエアコンの効率が高まり、省エネになります。
しかし、ブラインドで事務所内は暗くなるので昼間でも蛍光灯はつけなければならず、その分の電力はかかってしまう。
ところが、和紙を使ったブラインドを下げると、太陽光がブラインドの羽を通して拡散し、事務室の奥まで光が届くというのです。
省エネ、環境対応、電力コスト削減は、切実なニーズ。
原理は“行灯(あんどん)”と同じですね。
ろうそく1本をそのまま置くよりも、和紙で囲って行灯にしたほうが部屋は明るくなるのです。
以前にも書きましたが、和紙を使ったアート作品や工芸品、趣味品は、一時的には売れるかもしれません。
少しは売れて注目もされるけれど、安定して売れ続け、会社の収益源となることはむずかしいでしょう。
人によって差のある“感性”に、どれだけおカネが払われるか。。
おしゃれな一筆箋、センスのいいレターセットも、100円ショップで売られているわけですから…。
では、その他の事例を見てみましょう。
シチズンの時計[The Citizen](33万円)の文字盤には土佐和紙が採用され、独特の質感を醸しだしています。
また、越前和紙のハンガーは9,000円。その特長は、湿気を吸い、虫もつきにくいことです。
和紙を織り込んだ衣類を開発したのは、繊維産業の盛んな福井です。
和紙タオルは、泡立ちがよく、皮脂が落ちやすいと評価されています。
越前和紙を使った電報パッケージもありますし、越中和紙を自宅で漉いて作れるキットも売られています。
それでは、自社が得意な素材を使って、どんな新商品の企画を考えたらよいか。
次のような方向性で考えてみることをお勧めします。
(1)別素材でつくられている商品を得意な素材に置きかえる
段ボールでつくられた家具もありましたが、建材や洋服、食器を和紙でつくったらどうか。あるいは、布や木材、樹脂だったものを和紙に変えてみる。
和紙の機能性や素材感によって、デザインやテクスチャーが変わることでおもしろい効果が出るかもしれません。
台東区には、デザインがよくて価格も安い紙製食器でブレイクした会社があります。
別分野では、フィルム技術を液晶パネルや化粧品に転用した企業もありましたね。
(2)特定市場に向けて素材を生かすことを考える
たとえばインバウンド市場に向けて考えてみる。
私の地元浅草では、なんでもない日本の工芸品を外国人観光客がよろこんで買っていくシーンをよく目にします。
あるいは受験合格や、知育市場に向け、縁起モノなどの用途も含めて考えてみる。
市場性や切実なニーズ、世の中の困りごとがどこにあるかを考え、それを解決することはできないだろうか、というように。
文房具市場では、机上のめんどうを解決する便利グッズが、毎年のように発売されますよね。
(3)ヒット商品・キャラクターの人気に便乗する
スマホのような大ヒット商品と一緒に使われる商品を開発する。いわゆるコバンザメ商法ですね。
いまのトレンドは何か、ネコが人気なら関連商品をつくれないか…。
ヒットしているキャラクターをつけたらどうか、著名デザイナーにプロダクトデザインを依頼したらどうか。
大河ドラマや歴史で、鉄道ファン向けの商品で…というように、利用できる権威や人気者がいないかと探すのです。
(4)自社の既存取引先に買ってもらえる別商材を開発する
中小企業にとって、いちばんの問題は販路開拓です。
とくに新商品となれば、もっとも超えがたいハードルであるといえるでしょう。
自社の取引先・顧客層が特定の業種に偏っている、または固有の傾向がある、という場合、そこに存在するニーズに向けて商品を企画するのです。
すでに深いお付き合いがある相手先へ販売するのなら、これほど安心できる顧客開拓もないでしょう。
(5)コラボレーションする
これは阿波地域だけに限ったことですが、阿波には阿波藍という染織工芸があります。
そこで、和紙業界と藍業界がコラボして、特徴的な商品を開発する──。
藍染めには抗菌効果や防腐効果、アトピー緩和などの効果もありますので、ここでも切実なニーズを満たす新商品をつくることができるかもしれません。
そうなれば、二つの業界を巻き込んだより大きなムーブメントとしてPRしていくことが可能になるのではないでしょうか。。
以上、和紙をケースとしたらどう考えられるか ── 思いつくまま書いてみました。