「亀山、援護しろ!」

アンク=仮面ライダーリバースデイは、
コアメダルに強制対応させた、
本来はセルメダル用のバースの強化武装による一斉攻撃を
唯一無二の絶対神にしかけた。

それは、一度しか使うことができず、
使用したら必ず大破すると
鴻上ファウンデーションの社長から言われていた代物だった。

成果はあった。

唯一無二の絶対神が憑依した小久保晴美と、
加藤梨沙=仮面ライドレスカミムスヒ転生を
引き離すことに成功したのだ。


「え、援護!? 何を? どうやって?」

亀山薫=仮面ライダーガイストはとまどうだけだった。

パーフェクターと共に失った右腕は、
国連が、ウィンターソルジャーの義手に
似たものをつけてくれてはいたが、
彼は仮面ライダーとしての戦闘経験があまりに少なかった。

仮面ライダーとしての戦闘経験自体はアンクも浅いが、
火野映司のサポートをしてきた経験が大きかった。


かくいうアンクの強化武装は、
鴻上社長の言う通りすべて大破し、
爆発する直前に彼はそれを小久保晴美に向けて、


「キャストオフだ!」

正確にはキャストオフではなく、
ただのパージであるので訂正しておこう、

パージした。


小久保晴美は爆発に巻き込まれ、
首や手足が吹き飛んだが、光の触手のようなものが、
それらをつかみ彼女の体を元通りにした。


ーー見事な攻撃だったが、
  そう簡単にこの器を壊させるわけにはいかない


「ちっ、無駄撃ちか
 バースの追加武装なんか別にいらないが、
 コアメダルまでなくなったのは痛いな」

舌打ちをするアンクに火野映司=仮面ライダーオーズは言う。

「おいおい、アンク。
 援護しろって言ったってさぁ・・・
 一緒に戦ったこともない亀山さんに、
 お前が何をするかもわからないのに援護できるわけないだろ。

 ま、俺はなんとなくアンクがやりそうなことわかってたけど」


「じゃあ、お前が援護役だな、映司」


「いやいや、どう考えても、アンクが俺の援護役だって。
 絶対今のがアンクの奥の手だし。
 昔からそうだったろ」


「ふん、帰ったら鴻上のオッサンに
 俺専用の追加武装を用意させるからな。
 それが完成するまでは、
 しかたないからお前の援護役にまわってやる」


「ああ、よろしくな」


「ライダーは助けあい、だったか?
 こういうときに言う言葉は」


「あ、それ、俺の台詞!
 一回しか使ったことないけど」


人類の存亡をかけた戦いの最中だというのに、
このふたりの掛け合いは相変わらずだった。


アンクから援護を任された亀山薫は、
火野映司の言う通り、
何をどうしたらいいのかわからなかったが、
とりあえず自分に何ができるかを考え、行動を起こした。

加藤梨沙をだきかかえると、
離せ離せともがかれたが、構わず全速力で走った。

生身の自分では、
出すことが到底不可能なスピードにただただ驚きながら。


この加藤梨沙という少女が、
自分か他の仮面ライダーたちの誰かのそばにいれば、
小久保晴美との融合は防げるはずだった。

正直、状況をすべて理解しているとは言いがたい。

内戦の続く土地で
戦災孤児たちの面倒を見るようになって十数年たつが、
人がなぜ争い続けるのかについては、
ある程度理解はしてきたつもりだ。

宗教の違いであったり、
歴史的な遺恨が存在するだけでなく、
石油等の利権や軍隊が持つ武器には
使用期限があることなど、理由は様々だ。

死の商人と呼ばれていたスタークインダストリーの
CEOであるトニースタークが、拉致監禁されたのは、
孤児院からそんなに離れた場所ではなかった。

彼がその後、自らの経験を踏まえ、
軍事産業からの撤退を表明し、
その後アイアンマンとして活動しはじめたのは、
亀山薫にとって一条の光だった。

だが、死の商人というのは、どこにでもいた。

スタークインダストリーが軍事産業から撤退すると、
すぐにまた別の企業が人を殺すための道具を提供した。

その裏には財団Xやヒドラという組織が
存在するというところまでは、亡き妻・美和子が突き止めていた。

世界からすべての武器がなくならない限り、
人は争うことをやめないだろう。

宗教や歴史は、たたただ自分たちの行いを
正当化するための大義名分に過ぎない。

仮にあらゆる宗教や歴史、人種、
そういったものを、すべてとっぱらった環境を作り、
そこに生まれたばかりの赤ん坊を数十人集めたとして、
そのこどもたちを育て、教育する存在が、
偏見や差別を知らないロボットだとしても、
こどもたちが十歳になるまでには、
その数十人の中で派閥に等しいグループが生まれるだろうし、
立派なスクールカーストができあがるだろう。

人は力を持つ者が持たざる者を必ず支配したがり、
持たざる者は武器を手にとらざるをえない。

人は、他者を支配したがり、他者を妬む。

だから、人同士の争いが終わることは、未来永劫ない。

人とはそういう悲しい生き物だ。

だが、なぜ人は、神とまで争おうとするのか。

ああ、そうか、神に等しい力か、
神の座を奪うことができれば、すべてを支配できるからか。

それを素直に受け入れ、明け渡すほど神は愚かではない・・・

いや、神もまた愚かな存在なのか?

神が力を持つ者であり、人が持たざる者なのは間違いない。

その関係性は必ず争いを生む。


世界を創造し、人を自らに似せて作ったほどの存在が、
なぜそんなこともわからずに、人を作ったのか・・・

自らに似せて・・・?

やはり、神もまた人と変わらない存在ということなのか・・・?

頭がこんがらがってきた。

亀山薫は、考えても答えの出ないことを考えるのはやめた。

だが、それでもわかることがあり、できることがあった。

だから、それをするだけだ。


亀山は、強化外骨格を身にまといながらも
先ほどから紳士的な立ち振舞いが見てとれた
仮面ライダーのそばで足を止めた。

その立ち振舞いに見覚えがあったからだ。


「まさかとは思いますけど、右京さんじゃないですよね?」

杉下右京=仮面ライダータカミムスヒ輪舞曲は、
その声に驚きを隠せなかった。

「先ほど、亀山と呼ばれていましたから、
 まさかとは思ってはいましたが・・・
 やはり亀山くんでしたか・・・」


「なんで右京さんがこんなところにいるんです?
 ていうか、右京さん、もしかして、
 史上最高齢の仮面ライダーじゃないですか?
 たぶん、本郷猛より年上ですよね?」


「相変わらずですねぇ、亀山くんは。

 ぼくにも何がどうなっているのか、
 全くもってわからないんですが、
 どうやら特命係に在籍した人間は、皆、
 仮面ライダーの適格者が選出されていたようですねぇ。

 小野田官房長からは何も聞かされていませんでしたが、
 そういえば、警視庁にG3マイルド部隊を組織したのも、
 小野田官房長だったような・・・

 私や私自ら選んだ彼でさえ、
 仮面ライダーになってしまったようですから」


杉下右京は、甲斐享=仮面ライダー神威を見た。


「右京さん自ら選んだ?
 あの甲斐享ってやつは、そんなにすごいやつなんですか?」

亀山は、わざわざ日本から自分を訪ねてきてくれた
甲斐享とまだ会話らしい会話をしていなかった。

だから、彼について何も知らないのだ。


「子宝に恵まれないまま離婚してしまったぼくにとっては、
 息子のようなものですかねぇ。

 はじめて会ったときから、
 あぶなっかしくて、ほってはおけませんでした」


「そうですか・・・」


「十数年ぶりですね、亀山くんとこうして会うのは」


「会うのもですが、手紙も電話もなかったですよ」


「君からもなかったですし、
 いつかまた会えると思っていましたから。
 まさか、こんなところで、というのが正直な感想ですが」


「右京さん」


「なんです?」


「美和子と伊丹が死にました」


「・・・そうですか」


「米沢さんは無事です」


「・・・そうですか」


亀山は、杉下右京が口調こそ変わらないが、マスクの中では、
苦悶と安堵の入り交じった顔をしているのがわかった。


「俺は、美和子や伊丹を殺した奴を許せない・・・
 そんな思いから仮面ライダーになりました。
 でも、今は、その思いよりも、
 世界を守るために戦っている
 あいつらの力になりたいと思っています」


「君にはいつも、危険な目にばかり
 あわせていましたねぇ、ぼくは」


「そうでしたっけ?」


「そうですよ。
 でも、今回はカイトくんが命をかけて戦っている」


「カイト?」


「甲斐享で、カイトです。ニックネームですよ」


「なるほど・・・」


「ぼくは、父親役をうまくやれませんでした。
 だから、今回だけは、どうしてもカイトくんと共に戦いたい」


「つまり、今回は俺が右京さんの援護役ってことですね」


「君はぼくが信頼する数少ない友人のひとりです」


「右京さんの背中は俺が必ず守りますよ」


「どうもありがとう」


杉下右京は亀山薫とともに、甲斐享の隣に並んだ。


「杉下さん・・・」


「カイトくん、ぼくもいっしょに戦いますよ」


「杉下さん、俺はあなたといっしょに戦う資格がない・・・」


「それは、君が勝手にそう決めつけているだけです。
 カイト君、ぼくはこれでも、君とこうして
 肩を並べて戦えるのを嬉しく思っているんですよ」


「だけど、俺は、あなたを裏切った・・・」


「確かにそうです。
 ですが、今の君はあの頃とは違うでしょう?」


「ぼくは自分が、君を許す許さないを決める、
 そんな偉い人間だとは思っていません。

 君はちゃんと罪を償おうとし、
 しかし横槍を入れられたために罪を償いきれず、
 贖罪の中で今も生きている・・・」


「そうです・・・」


「カイトくん、君がこうして見違えるほどに成長し、
 ぼくと肩を並べていることを、
 ぼくがどれほど嬉しく思っているか、わかりませんか?」


「杉下さん・・・」


「おそらく、君とぼくがこうして肩を並べることは、
 これが最初で最後になるでしょう。
 だから、見せてください。成長した君を、ぼくに」


「・・・はい」


甲斐享はずっと許されたかった。

悦子に。
千尋に。
こどもたちに。
伊丹刑事に。
米沢守に。
そして、杉下右京に。


「君はもう十分に償った。
 君を許さないという者がいるなら、
 ぼくはその者を許しません」


「許してくれるんですか? 俺を、杉下さんは」


「とうの昔に」


「・・・ありがとうございます」


甲斐享は泣いていた。

仮面の下で。


そして



to be continued....

ーー甲斐享、神威システムのリミッターを解除します。

E2C-0が告げた。


「リミッター? 悦子、神威システムには、
 まだ、これ以上の力があるのか?」


「あなたの贖罪の旅路は、今、終わりを告げました。
 おめでとう、亨。良かったわね」


「その口調、まるで本当に悦子みたいだ」


神威の、甲斐享の体内で何かが起きていた。


「くっ、ぐ・・・」

立っていられないほどに。


「体が、熱い・・・
 ま、待ってくれ、悦子。
 俺は今、戦わなきゃいけないんだ。

 やっと杉下さんが俺を許してくれたんだ。
 いや、俺が許してもらえないと思っていただけで、
 とっくに許してくれてたことがわかったんだ。

 杉下さんが、また俺と並んで立つことを、
 今日という日を、ずっと待っててくれたんだ。

 だから、俺は今、ここで倒れるわけには・・・」


ーー大丈夫よ、亨。
  ここはさっき、亨がダークナイトだった頃の自分と
  戦っていた空間のようなものだから。


「精神世界みたいなものか?」


ーーそう、だから今、
  あなたの隣に杉下さんはいないでしょう?


「ほんとだ・・・
 でも、ゆっくりはしてられないんだ、悦子。
 お前ともっと話していたいけど、
 ぐっ、ぐああっ、す、杉下さんが待ってるんだ・・・」


ーーすぐに終わるわ、だから大丈夫
  それに、ここでの時間は、静止した時の中での出来事だから


「静止した時の中・・・?」


ーーあなたの肉体は、今もN市八十三町の
  絶対神との戦いの場にあり、隣には杉下さんがいる。

  正確には、外の世界の時間は止まっているわけではないわ
  ただ、この亨の精神世界のような場所での出来事は、
  外の世界の時間の流れとは関係がないの。

  あなたが、ここから出たとき、
  外の世界ではコンマ一秒の時間も経過してない。
  それだけのことよ。

  甲斐享の千年細胞の活性化を確認。
  血液中のヒヒイロカネの純度が200%を越えました。
  225%、250%、300%、400%、600%、、、

  ダークナイトシステムの変換可能域に到達、
  甲斐享の業(カルマ)を変換します。


「カルマ・・・?」


ーーダークナイトシステムは、
  あなたの罪そのもの、すなわち、業。

  カムイドライバーが、
  一時的に保管、能力の一部を使用していた
  ダークナイトシステムを完全に取り込んだことで、
  神威システムは、今、神威之弐式(カムイノニシキ)へと進化しました。


甲斐享は、自分が今、神威ではなく、
生身(ただし精神体だが)であることにそのときはじめて気づき、
突然傍らに現れた神威に驚いた。

ダークナイトやダークナイトジョーカーと変わらぬ
漆黒の強化外骨格だった神威は、
神威之弐式となることで、パールホワイトホワイトへと変色した。


「桁外れの力だ・・・」

そばにいるだけで、
神威之弐式から発せられているオーラのようなものに、
甲斐享の精神は吹き飛ばされてしまいそうだった。


「これが神威システムの本当の力なのか?」

ーーいいえ、甲斐享、
  神威システムには、複数のリミッターが存在します。
  今のあなたは、さらにもう一段階、リミッターの解除が可能です。
  解除しますか?


「複数のリミッターって、一体いくつあるんだ?」


ーー詳しい数は判明しておりませんが、
  ミスター鳴滝が遺したメモのようなものには、
  ファティマの預言の数と同じだけ存在するとあります。


「つまり・・・少なくとも、あと4つか」


ーーそのあと4つのうちのひとつが解除可能です。
  もう一度お聞きします。
  リミッターを解除しますか?


「解除してくれ」


ーー甲斐享の承認を確認。
  千年細胞のさらなる活性化と、
  血液中のヒヒイロカネの純度、1200%到達を確認。

  ヒドラギアシステム・ヤマタノオロチの
  変換可能域に到達、甲斐享の混沌(カオス)を変換します。


そして、甲斐享の傍らに立つパールホワイトの神威之弐式は、
ケンタウロスのような四本足となり、神威之参式へと進化した。


ーーまた会いましょう、亨。




甲斐享の精神世界での出来事など、
知るよしもない杉下右京と亀山薫は、

甲斐享=仮面ライダー神威の姿が、
突然、漆黒の甲冑のような強化外骨格から、
神々しく美しいパールホワイトの鎧をまとった
ケンタウロスのような姿に変化したことに驚きを隠せなかった。


「カイトくん、その姿は・・・?」


「・・・神威之参式、ケイローンだそうです」


「ケイローン・・・
 確かギリシア神話に登場する、
 半人半馬の怪物、ケンタウロス族の賢者の名前ですね。

 それにしても、ぼくの目の前で
 突然姿が変わったから驚きました。
 神威之参式ということは、
 先ほどまでの姿は神威之弐式だったというわけですね」


「いえ、さっきまでのは、無印というか、
 壱式というか、第一形態というか・・・
 俺は階段を一段飛ばしたんです」

仮面をしているのに、杉下右京が
意味がわからないという顔をしているのが、よくわかった。

甲斐享ですら、意味がわかっていないのだから、仕方のない話だった。


「賢者か・・・
 魔法使いと僧侶の魔法を使いこなす上級職、
 ゲームの中ではそうだったな・・・
 悟りの書を手にいれて悟りを開いて・・・」

これは、
職業の名を冠する仮面ライダーに変身できた
ダークナイトのジョブチェンジシステムが
神威システムの中で生かされている、
そういうことなのだろうか?

四本足になったのは、ヤマタノオロチの力?

いや、ヤマタノオロチの力は
神威システムの第一段階で
すでに六つの補助アームを展開可能なようにしていた。

だが、それは神威システムが
ダークナイトやヤマタノオロチと完全融合する前の話だ。


「ヤマタノオロチ・・・
 8つの首と尾を持つ大蛇・・・」

何もわからない今は、尻尾が生える程度ですんでほしいと思った。
尻尾なら8つでも9つでも生えてくれてかまわない。

だが、首が増えるのだけはごめんだった。

甲斐享は、まだ気づいていなかった。

神威之参式には、すでに尾があった。


「一般に野蛮で粗暴なケンタウロス族の中で、
 ケイローンは例外的な存在であったとされていますねぇ。
 アポローンから音楽、医学、予言の技を、
 アルテミスから狩猟を学んだといいます」

アポロンやアルテミスの名は聞いたことがあった。
学生時代に散々やりこんだゲームの知識程度しかなかったが。
竪琴や弓矢にその名前がついていた。

だが、ケイローンという名を甲斐享ははじめて知ったし、
ケンタウロスが、神の名前ではなく、
一族の名前だということははじめて知った。


粗野で野蛮・・・まるで昔の自分のようだと思った。

だが、今は賢者だという。

自分は賢者になれたのだろうか?
いや、そんなわけがない。

賢者は、すぐそばにいた。


「杉下さん、乗ってください」


「はい?」


「翼こそありませんが、
 神威にはスラスターがいくつかついています」


「スラスター、・・・つまり、
 ジェット噴射のようなもので、空を飛べると?

 しかし、ファンタジーの世界では
 竜やペガサスに乗って戦う戦士がいますが、
 ケンタウロスに乗って戦うというのは、
 いかがなものでしょうねぇ・・・」


「ケイローンは賢者かもしれません。
 ですが、俺は賢者じゃない。
 賢者はあなただ」


「ぼくも賢者などではありませんよ。
 ぼくの知識なんて、広く浅い、ただの一般教養です」


「嫌味にしか聞こえませんよ、右京さん。

 右京さんと、ぼくらみたいな体育会系は
 一般教養のラインが違うんです。

 警察官採用試験の一般教養だって、
 問題のレベルが違うんですから

 絵画や短歌の作者の名前を
 選択肢から選ぶだけの問題に頭を悩ませるのが、
 ぼくらなんですよ」

亀山薫が我慢できなくなり横から口をはさんだ。


「そうですか・・・それは困りましたねぇ」


「亀山さん、杉下さんは今何を困ってるんです?」


「ケンタウロスの君に乗るか、
 俺たちの頭の悪さか・・・
 あ、悪いね、勝手に仲間にしちゃって」


「いえ、別に大丈夫です」


「いや、あれだな・・・」


「あれ?」


杉下右京は真正面を見据えていた。

その視線を、亀山薫に続き、甲斐享も追う。

なるほどと思った。


唯一無二の絶対神は、

小久保晴美の体を完全に乗っ取り、
姿を大きく変えていた。

その姿を形容する言葉を人は持たない。

もしあるとすれば、

神そのもの。


もはや小久保晴美でも天照輪廻でもない。

神は、身体中から無数の触手のようなエネルギー体を放射した。

その数は、数十、いや、百を越えていた。


「くそっ、いきなり無差別攻撃かよ!」

甲斐享も亀山薫も、杉下右京も、
他の仮面ライダーたちも、
九頭竜の化身であった男も、
彼と同じパワードスーツの星条旗の盾の男も、
全員が音速を超えるスピードで迫るその触手を
かわすだけで精一杯だった。


「亀山くん、カイトくん、みなさん、
 ただの無差別攻撃ではありませんよ!
 追跡してきます!」

杉下右京の言葉にすぐに反応したのはフィリップだった。


「照井竜!」


「わかっている!」


仮面ライダーW サイクロンアクセルエクストリームは、
プリズムビッカーのシールドから、ビームを発射した。


「石ノ森さんもやってくれ!」


「左くん、君も剣で同時攻撃を」

クリエイタージョーカーアメノミナカもそれに続く。


追跡してくるエネルギー触手は、
スピードはともかく、それ自体は大した強さではなかった。

プリズムビッカーやスターダスターで
消滅させることが可能だった。

しかし、それは、二人のWのように対抗手段を持っていたらの話だ。


アンク=仮面ライダーリバースには、その対抗手段がなかった。

いや、先ほどまではあったのだが、すでに使ってしまい、
使い物にならなくなって、棄ててしまっていた。


「アンクーッ!」

リバースは、触手エネルギーに串刺しにされると、
さらに何本もの触手エネルギーがその体を貫かれ、

変身が解除された。


あとには、無数のメダルが散らばっているだけで、
アンクの姿はどこにもなかった。


「アンク!アーンク!」

かつてアンクを失ったことのある火野映司は取り乱し、

そして、彼もまた、触手エネルギーに貫かれた。






to be continued....

もはや小久保晴美でも天照輪廻でもない、

神そのものの体から放射された無数の触手エネルギーは、

加藤梨沙=仮面ライドレスカミムスヒ転生にも襲いかかった。

 

 

「ゴールデンバタフライエフェクト!」

 

梨沙は、カミムスヒ転生の手のひらから

無数に生み出すことのできる黄金の蝶で、

無数の触手エネルギーを乱反射させた。

 

しかし、反射するたびに黄金の蝶は燃え尽きる一方で、

彼女が本来この技を放つときのように、

反射する度に触手エネルギーの数が増えていく。

 

 

「もっと出てこい。もっと、もっと!」

 

数を増し、さらにスピードを増していく

触手エネルギーの群れに対して、

彼女の手のひらから生まれる黄金の蝶の数が追い付かない。

 

ゴールデンバタフライエフェクトは本来、

彼女の指先から放つ光線=セクシービーム(笑)が、

黄金の蝶による反射を繰り返すことで、

その数と速度を増し、目標に対して向かっていき、

逃げ場のないほどの数の光線=セクシービームスで目標を貫く技だ。

 

しかし、今、黄金の蝶が反射を繰り返しているのは、

彼女を目標とし追跡し続ける触手エネルギーだ。

 

ゴールデンバタフライエフェクトは、

神そのものの放った触手エネルギーに対して、

絶対に使ってはいけない技だった。

 

彼女はそのことに気づくのが遅すぎた。

 

 

「パパ、晴美、ごめん・・・梨沙、もうだめだ・・・」

 

梨沙はもう手のひらから

黄金の蝶を出すことさえできなくなっていた。

 

 

「もうだめだ・・・やられる・・・

 せっかくパパが帰ってきてくれたのに。

 あいつを追い出したら、

 晴美がもとにもどってくれるかもしれないのに」

 

 

アンクや火野映司は、変身が解除されただけでなく、

アンクはもう人型の形状を保てないほどに、

火野映司は倒れたまま指先ひとつ動かないほどに、

生命エネルギーを吸収されていた。

 

ふたりの仮面ライダーは、

仮面ライダーとしてのエネルギーだけでなく、

その装着者のエネルギーまで、すべて搾り取られ、

神そのものにさらなる力を与えてしまっていた。

 

 

神そのものが器とした小久保晴美のスペアである梨沙が、

同じように触手エネルギーに貫かれれば、

器は完全体となり、神そのものが得るエネルギーは、

二人の仮面ライダーから得た力とは比べ物にならないだろう。

 

梨沙に無数の触手エネルギーが迫る。

 

彼女は恐怖から目をつぶり、耳を塞ぎ、

 

そして、すべてを諦めた。

 

しかし、彼女が触手エネルギーに貫かれることはなかった。

 

 

三つの盾が、彼女を守っていた。

 

 

ひとつは、プリズムビッカーの盾であり、

もうひとつはスターダスターの盾だった。

 

そして、三つ目の盾は、

星条旗をモチーフにした盾だった。

 

 

「照井竜、三本の矢という言葉があるだろう?」

 

フィリップが言う。

 

「兄弟三人が力をあわせれば敵国に負けることはないという、

 どこかの殿様が子どもたちに遺した言葉だったか」

 

先ほどの杉下右京や甲斐享、亀山薫たちの

一般教養の話ではないが、一応はキャリア組に入る照井竜には、

すぐに思い当たった。

 

 

「矢が一本だろうが三本だろうが、

 実際にはその強度に大した違いはない。

 事実、簡単に折れてしまう。

 

 だが、もしそれがビブラニウムのような

 硬度をもったものだったら・・・」

 

 

「盾も三つあれば、神の触手もしのげちまうってわけか」

 

 

左翔太郎が、現状を説明した。

 

 

「左くん、それだけではないよ。

 どうやら触手エネルギーはあの少女を見失ったようだ」

 

 

「さすがは石ノ森章太郎」

 

 

「どういうことだ?」

 

翔太郎と照井竜が同時に疑問を口にする。

 

 

「おそらく、あの触手に

 視覚や聴覚などの感覚、あるいは呼吸や熱を

 感知するといったことで

 ぼくたちを目標と定めていたわけではないようだ。

 

 無差別に放射された触手エネルギーの追跡対象となるのは、

 ぼくたちのある行動がきっかけとなる」

 

 

ある行動・・・?

 

翔太郎はそれが何かすぐに思い当たった。

 

 

「そうか、触手を避けることか」

 

 

「そう、逃げる相手を追いかける、

 ぼくにはあまり理解できない感覚だが、

 人の本能のひとつだ。

 

 ただそれだけを行動理念としているのが、

 あの触手エネルギーだ。

 実に人間くさい」

 

 

「確かに加藤梨沙は、触手を一度も避けてはいないな。

 黄金の蝶で反射を繰り返していただけだ。

 

 触手エネルギーは、

 彼女を目標とし追跡などしていなかった、というわけか」

 

 

フィリップに加え、石ノ森章太郎という天才に、

左翔太郎と照井竜は正直ついていくのがやっとだった。

 

 

「こいつはますます、あの神そのものって奴の

 化けの皮を剥がしたくなってきたぜ」

 

 

だが、翔太郎には

そんな状況に置かれていても、

何か隠された真実があるに違いない、

そんな探求心を持つ余裕がまだあった。

 

 

「彼女のことは、あとは彼に任せておこう。

 かわいい娘を守るために帰還した父親に」

 

 

ふたりの仮面ライダーWは、

無数の斬撃とその衝撃波により、

触手エネルギーをすべて消滅させた。

 

 

「・・・パパ?」

 

 

「梨沙、ごめんな」

 

 

「いいよ。パパ、帰ってきてくれたから」

 

 

「サム、しばらく盾を借りるぞ」

 

 

「壊したら承知しないぞ」

 

 

「わかってる」

 

 

「あのひとはだれ?」

 

 

「サム・ウィルソン。

 パパの友達で、アベンジャーズのリーダー、

 キャプテン・アイアンファルコン」

 

 

「かっこいい・・・名前だけだけど、かっこいいのは。

 あれ? パパもおんなじ服着てる」

 

 

「パパは、千年細胞も、

 九頭竜の力ももう失ってしまったからね。

 もう、仮面ライダーにはなれないんだ」

 

 

「戦えるの?」

 

 

「ああ。

 トニースタークが遺した、アイアンマンスーツ・・・

 その設計図を元に、バナー博士・・・

 あ、梨沙は知らないか、博士のことは」

 

 

「・・・うん」

 

 

「ハルクになる人だ」

 

 

「緑色のでっかい人?」

 

 

「そう、今は緑色のでっかい博士なんだけど、その人が、

 サムの依頼で、背中のフライトユニットを、

 いらないんだけどね、本当は、あれ。

 

 アイアンマンはそんなのなくても飛べるから。

 

 まあ、とにかく、その本当はいらない

 フライトユニットをアイアンマンスーツに取り付けるときに、

 スーツからフライトユニットまでをすべて、

 この盾と同じビブラニウムという世界一硬い金属で、

 作り直したものが、このパワードスーツなんだ。

 

 だから、戦えるよ」

 

 

「世界一硬いのは、千年細胞を持ってる人の

 血の中のヒヒイロカネじゃないの?」

 

 

「硬さはほとんど同じかな。

 ヒヒイロカネは液体金属だから、少し便利・・・

 

 いや、形状を記憶させることができるし、

 頭の中に設計図さえインプットしていれば、

 ヒヒイロカネに脳からの微弱な電気信号で

 アウトプットすることが可能だから・・・

 

 ヒヒイロカネのほうがすごいな・・・うん」

 

 

「晴美が発見した細胞だもんな?」

 

 

「そうだな」

 

 

「梨沙のことは必ずパパが守る。晴美は取り返す」

 

 

「梨沙もまだ戦えるよ」

 

 

「いや、梨沙は今は逃げてくれ」

 

 

「いやだ」

 

 

「梨沙もわかってるだろ?

 あいつは、梨沙を狙ってるんだ」

 

 

「梨沙のことはパパが守ってくれるって言った」

 

 

「・・・そうだったな。

 梨沙、パパは今、アイアンアウトレイジと名乗っている。

 九頭竜天禍天詠はもういない・・・

 新しいパパの姿、忘れないでくれな」

 

「うん」

 

 

アイアンアウトレイジは、

この戦いで自分は死ぬだろう、と感じていた。

 

たとえ、梨沙を守りきり

晴美を取り戻して生き延びたとしても、

余命は数日だった。

 

一度死に、全身が灰となり崩れた彼の蘇生は、

アベンジャーズや国連の有する科学力では無理だった。

 

インフィニティストーンはもはや存在せず、

ソーの弟ロキが生きていれば、

あるいはなんとかできたかもしれないが、所詮はたらればの話だ。

 

アベンジャーズの面々は、

魔法使いであるドクターストレンジに頼る他なかった。

 

魔法も科学と同じだ。

万能ではない。

 

ドクターストレンジは、

さらなる歴史改変をしかねない仲間たちを見て、

禁断の人体錬成を行うことにした。

 

灰となった体を元に戻すことには成功した。

 

 

ドクターストレンジは、カトーにふたつの選択肢を提示した。

 

パワードスーツを装着すれば

戦える体にするのであれば、余命は数日となる。

 

平穏な暮らしを送るのであれば、

ガンになるか、ガンになる前に死ぬか、

という普通の人として天寿を全うできる。

 

 

そんな究極の選択を迫られたカトーは、しかし即答した。

 

戦う力をくれ、と。

 

 

「おーい、俺のスペア! どこだ?」

 

カトー=アイアンアウトレイジは声を張り上げる。

 

 

「スペアって呼ぶな。甲斐享だ」

 

 

「なんだお前、その格好。ケイローンか?」

 

 

「わっ、ここにも賢者がいた!」

 

 

「そっちは、俺から九頭竜の力を奪った奴か・・・

 確か・・・『元特命係の亀山ァッ!』」

 

 

カトーと亀山は、お互いに、ばつが悪そうに向き合った。

 

だが、それももう過去の話だ。

 

 

「今の言い方、伊丹さんにそっくりですねぇ」

 

 

「亀山、これはお前に返す」

 

 

「ん?」

 

アイアンアウトレイジが

投げて寄越してきたのは、パーフェクターだった。

 

 

「それを作った奴は、俺の友人なんだが、

 とんでもない科学者でな、

 どこまで未来を予見していたかはわからないが、

 もしかしたら何かの役に立つかもしれないから持ってろ」

 

 

「あと、俺のスペア!」

 

 

「甲斐享だ!」

 

 

「お前が神威になってから、はじめて会ったとき、

 九頭竜を倒してみせた人型の機動兵器を今すぐ出してくれ」

 

 

「カミシロを?」

 

 

「カミシロっていうのか? あれ。

 お前は、俺の子といっしょにそれに乗って戦え。

 あれは強い。

 俺の子を守ってくれ」

 

 

「ぱぱ? どういうこと・・・?」

 

 

「お別れだ、梨沙。

 パパはな、生き返ったけど、すぐに死んじゃうんだ。

 ごめんな」

 

 

 

to be continued....

「お別れだ、梨沙」

 

と、パパは言った。

やっと会えたのに。

やっと帰ってきてくれたのに。

 

「パパはな、生き返りはしたけど、もうすぐ死んじゃうんだ」

 

梨沙には、パパの言ってることが1ミリもわからなかった。

 

なんでこういうとき、1ミリって言うんだろ?

それも1ミリもわからないし。

 

「ごめんな」

 

パパが、ごめんな、って言うと、

梨沙は必ず、いいよ、って答えてきた。

 

悪いと思ってるから謝る。

だから、それ以上責めたりしても、喧嘩になるだけ。

 

大声で罵りあったり、

理論武装して相手を論破したところで何にもいいことない。

 

パパも梨沙も、ただ傷つくだけ。

 

だから、許してあげる。

 

それが、パパと梨沙がずっと、ずっとずっと、

千年以上も仲良くしてこれた理由。

 

梨沙は悪いことをしても謝らないけど。

 

パパは梨沙が何をしても許してくれるから。

 

でも、梨沙は、このときだけはパパを許すことができなかった。

 

 

「・・・いや」

 

 

「梨沙?」

 

 

「パパと離れたくない。そばにいたい。

 ふたりで晴美を元にもどして、かえろ?」

 

 

「ごめんな」

 

 

「やだ。絶対やだ」

 

 

そんなことを言っても、

どうしようもないことはわかってたよ。

 

何このフレーズ。えなりかずきみたい。

 

でも、いやなものは、いやだった。

 

だから、梨沙はパパと離れずにすむ方法を必死で考えた。

 

でも、梨沙には何にも思い付かなかった。

 

だから、亜美たちに助けてもらうことにした。

 

 

梨沙には、お姉ちゃんがふたりいて、妹がひとりいた。

 

お姉ちゃんとか妹って言っても、四つ子の姉妹だけど。

 

梨沙のせいで、この世界でいうと3年前に、

珠璃と亜美と紫帆は死んじゃって、

でも、なぜだかわからないけど、ずっと梨沙の頭の中に三人はいた。

 

体はもう梨沙の体ひとつしかないけど。

 

亜美にちょっと出てきてもらうだけのつもりだった。

 

亜美は頭がいいから、梨沙ひとりじゃ解決できないことを、

一緒に考えて、答えを出してくれる。

 

でも、このときは、気づいたら梨沙の隣に亜美がいた。

 

比喩とかじゃなくて。

 

精神世界とかの話じゃなくて。

 

現実の話。

 

梨沙の体がいきなりふたつに分かれて、

それが生きてた頃の亜美の体になった。

 

 

「おい、梨沙、なんだそれ」

 

 

「わかんない」

 

 

「亜美になんとかしてもらおうと思ったら、

 亜美が出てきた・・・

 亜美・・・だよね?」

 

 

「亜美ですわ。

 お父様、お久しぶりです」

 

 

「あ、ああ、こどものとき、以来か?」

 

 

「鳴滝様の作られたヒドラ製仮面ライダー5号、

 五頭龍 子死越(こしえつ)の中にいたのが亜美でしたから、

 こどものとき以来ではありませんわ」

 

この世界では三年前だけど、

梨沙たちやパパにとっては千年以上前、

 

パパとママが離婚して、ママはそのあとすぐに死んじゃって、

梨沙たちは、ワイミーズハウスという孤児院で育った。

 

正確には優れた才能を持つこどもを英才教育する施設なんだけど。

 

そこは、財団Xという組織から資金提供を受けて、

成り立っていたから資金提供の打ちきりとともに

ワイミーズハウスはなくなることになった。

 

あの頃、財団Xに所属していた鳴滝は、

梨沙や亜美、珠璃や紫帆だけをスカウトした。

 

鳴滝に拾われた梨沙たちは、

仮面ライダーシステムの実験台にされた。

 

あ、梨沙は鳴滝や亜美たちをだまして、そのとき梨沙だけ生き残ったんだけど。

 

仮面ライダーになった亜美や珠璃、

紫帆を騙したのは梨沙だけど、殺したのはパパだった。

 

だから、パパは、亜美の言葉を聞いて、苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

でも、苦虫ってどんな虫? バッタかな?

 

 

「そうか、あのときの・・・あのときは、すまなかった」

 

 

「お父様は悪くないですわ。

 亜美たちをだました梨沙ちゃんが悪いだけですわ」

 

 

「そんな話はいい。亜美、何がどうなってる?」

 

 

「あ、そうでしたわ、

 お父様も梨沙ちゃんもご存知なかったんでした。

 

 お父様と梨沙ちゃんは、

 九頭龍国でたくさんたくさんこどもを

 お作りになられましたでしょ?」

 

改めて言われると、恥ずかしかった。

 

梨沙がパパに抱かれてるのを、亜美は梨沙の中で見ていたんだ。

 

梨沙は、パパに抱かれるとき、

心も体もパパでいっぱいになってたから、全然気づかなかった。

 

 

「実は亜美も、たまに梨沙ちゃんの体を借りて、

 お父様に抱かれてましたけど」

 

 

「なんだと・・・」

 

 

「知らなかった・・・」

 

 

「だから、実は、こどものとき以来でも、

 鳴滝様の作った仮面ライダーになって

 戦ったとき以来ではないんですの」

 

 

「そんな話はもういい」

 


「もう、梨沙ちゃんは、本当にやきもちやきですわ。
 では、ご説明させて頂きますね。

 お父様の千年細胞は、体液がまじりあうことによって、
 梨沙ちゃんの体の細胞の遺伝子を、
 身体を重ねるたびに少しずつ少しずつ、
 徐々に千年細胞に変化させていっていたんですの。

 ちょうど、このあたりの遺伝子からですわ」

亜美はそう言って、お腹の下あたりに手をあてた。


「梨沙ちゃんが赤ちゃんを妊娠すると、
 今度はその赤ちゃんが十月十日の間ずっと
 梨沙ちゃんの遺伝子を・・・

 そして、梨沙ちゃんが赤ちゃんを生むと、
 今度はまたお父様が・・・

 その繰り返しが梨沙ちゃんの体の中で、
 遺伝子レベルで起きていましたの」


「そうなのか・・・
 梨沙、何にも知らなかった」


「晴美さんのスマホアプリを使った遺伝子操作は、
 身体中の遺伝子をすべて一度に書き換えてしまう
 少々乱暴なものでしたが、
 お父様の千年細胞はとても優しくて、
 千年の時をかけて、ゆっくりゆっくり、
 梨沙ちゃんの身体中の細胞のすべてを
 千年細胞に変えていったんです」

梨沙は恥ずかしくて、顔が真っ赤になった。

頭が沸騰しちゃいそうになって、このまま死んじゃいそうだった。


「つまり、梨沙の体も千年細胞と
 ヒヒイロカネでできているのか?」


「そうですわ、お父様。
 だから、梨沙ちゃんの頭の中にいた亜美は、
 梨沙ちゃんの体の中のヒヒイロカネを使って、
 こうして自分の体を複製することが
 できるようになったんですの」


「そうか、昔、晴美が自分が死んだときのために、
 生前の身体の複製体を用意していたときのようにしたんだな」


「さすがはお父様ですわ。その通りですの。
 珠璃ちゃん、紫帆ちゃん、いい加減出てきてくださいな」

梨沙はまったく気づいていなかったけど、
亜美の後ろには珠璃と紫帆が隠れていた。


「これでやっと、4人揃いましたわ。
 あとは・・・」

梨沙には、亜美が何をしようとしているのか、
なんとなくだけどわかった。

梨沙の体の千年細胞とヒヒイロカネを元にして
生まれ変わった亜美たちは、
少し前までのパパや、晴美や梨沙と同じ、
千年細胞とヒヒイロカネを持ってる。

梨沙たちなら、
九頭竜の化身だった頃のパパの身体の
複製体を作ることが、たぶんできる。

千年細胞やヒヒイロカネを持つだけじゃなくて、
九頭竜の力を持っていた仮面ライダーのパパを。

だけど、梨沙には、なぜだかパパがそれをいやがるような気がした。


「亜美・・・
 亜美のやろうとしてること、
 パパはなんとなくだけどわかるよ。
 でも、パパはこのままでいいんだ」


「どうしてですの?」


「パパはこの戦いで死ぬかもしれないんだろ?
 あの神そのものってやつを倒して、
 晴美を取り戻すことができたとしても、
 生きていられるのはあと数日なんだろ?」


「でしたら、なおのこと、元の体が必要なはずです」


「パパはね、長く生きすぎたんだよ」


「そんなことを言い出したら、
 梨沙も亜美も珠璃も紫帆も、晴美だってそうだぞ。

 鳴滝は、あ、死んだんだった。ごめん、鳴滝。

 パパは、どうして死ぬんだ?

 存在してはいけない仮面ライダーだからか?

 あそこにいる石ノ森章太郎や杉下右京は、
 千年前にパパたちが戦ったふたりとは
 違う可能性の世界のふたりだけど、
 あのとき石ノ森章太郎は言ってたぞ。

 仮面ライダーと名乗ってはいけないなら、
 マスカレイドアバターって名前をあげるって。

 パパが始まりのマスカレイドアバターになりなさいって」


「違う、違うんだ、梨沙」


「何が違うんだ?」


「パパたちが今戦っている相手は、
 本来ならここにいるはずがない相手
 だということはわかるか?」


「どういう意味だ?」


「あれはこの世界を作り、人を作った神様、
 だということは、わかる? 梨沙ちゃん」


「それは、なんとなくだけど、わかる」


「人は昔、神様と同じ国に住んでいたの」


「高天原のことか?」


「ううん、そことはまた別の神様の国。
 人はそこでずっと生きていくはずだったの。
 でも、悪い蛇にだまされて、そそのかされて、
 神様から絶対に食べてはいけないと
 言われていた果実を食べてしまった」


「果実? くだものか?
 梨沙は梨が好き。あ、梨が食べたくなってきた。
 あ、梨汁が・・・ちがう、よだれが出そう」


「林檎だったとも言われていますが、
 それがなんだったかはわからないの」

「りんごはあんまりすきじゃない。
 梨の方がジューシーだし、
 梨は妖精がいて、妖精の国もあってかわいい」

 

「梨沙ちゃんは、梨から一度離れてくださいな。

 りんごだったかどうかまではわからないけれど、

 そのとき人が食べたのは、知恵の実だったと言われてるの」

 

 

「知恵の実?

 食べたらあたまがよくなるのか? 暗記パンみたいに」

 

 

「頭が良くなったのかな・・・

 それまで人は、裸で生活していたの。

 でも、その知恵の実を食べたら、

 はだかで生活をしていることが途端に恥ずかしくなったの。

 羞恥心というものを、知ったの」

 

 

「そうか、

 知恵の実はようするにヘキサゴンで、

 新選組でリアンなんだな」

 

 

「梨沙ちゃんは、ばかなの?」

 

 

「あ、亜美、今、梨沙のことバカって言った!

 パパ、梨沙、今、亜美にバカって言われた!」

 

 

「パパも梨沙はバカだと思う」

 

 

「裏切るのか、パパ・・・」

 

 

「話を戻しますわ。

 人は楽園から追放され、そして、

 追放された先がこの世界・・・

 

 やがて、この世界では、最初の殺人事件が起きましたの」

 

 

「カインとアベルだな」

 

 

「さすがはお父様。

 神様に愛される、才能ある弟に嫉妬した兄が、

 弟を殺しましたの」

 

 

「羞恥心に続いて、嫉妬に殺意か・・・」

 

 

「弟を殺した兄は、

 神さまに弟はどこかと聞かれると、

 知らないと言った・・・」

 

 

「嘘をつくことも覚えたわけだ」

 

 

「人は知恵の実を食べたことで、

 だんだんとそうやって、今の人になっていきましたの」

 

 

「そして、自らに似せて作ったはずの人が、

 次第に自分の思い通りにならなくなってきたことに

 神様は腹を立て、大洪水を起こし、

 ひとつの家族だけを助けた・・・」

 

 

「確かその大洪水を境に、

 人の寿命は千年から百年にまで短くなったんだったな。

 おそらく、そのとき千年細胞を奪われた・・・」

 

 

「なぜ、神は自らに似せて人を作ったのか・・・

 想像の域を出ませんが、

 おそらくは、この体や晴美さんの体と同じ理由・・・」

 

 

「神も、永遠の存在ではなかった」

 

 

「えぇ、おそらくは、ですが。

 自分に万が一のことがあったときに、

 肉体のスペアが必要だったのだと思います。

 

 ですが、神様は、人を楽園から追放しただけでなく、

 千年細胞までを奪った」

 

 

「肉体のスペアが不要となったか、

 あるいは人は神の器としてはふさわしくないと

 判断されたのかもしれないな」

 

 

「ですが、神様は今、ここにいます。

 晴美さんの身体を器として」

 

 

「つまり、千年細胞を人から奪っておきながら、

 肉体のスペアは必要だった・・・

 晴美が千年細胞を発見したことで、

 神の器となる存在が数名だが現れ始め、今に至る・・・」

 

 

「つまり、パパは、千年細胞を晴美が見つけなかったら、

 こんなことは起きなかったといいたいのか?」

 

 

「そうだな。そう言いたいのかもしれない。

 人は千年細胞を再び得てはいけなかったんだ」

 

 

「それは、晴美だけじゃなくて

 梨沙たちのことも否定してるのか?」

 

 

「違う、そうじゃない」

 

 

「もういい、わかった」

 

 

「何がだ? 梨沙」

 

 

「お前はパパじゃない。

 梨沙の好きなパパと晴美は、梨沙が作る」

 

 

梨沙は、手からたくさん蝶をだした。

たくさんたくさん。

世界中を埋め尽くすくらいたくさん。

 

 

 

to be continued....

「梨沙ちゃんを止めます。
 珠璃ちゃん、紫帆ちゃん、手伝ってください
 来てください、亜美のライドドレス!」


「珠璃のライドドレスも来て!」


「紫帆のライドドレスも・・・来てよ」


三人の少女たちは、
梨沙を止めるためにそれぞれライドドレスを装着した。


「亜美たちもライドドレスを持ってるのか・・・
 千年細胞とヒヒイロカネがあれば可能か・・・
 あの子たちは梨沙とずっといっしょにいたわけだしな・・・」


カトー=アイアンアウトレイジは、
大きくなった四人の娘たちがそろうのをはじめて見た。

それはとても感慨深い光景だった。

だが・・・


「お父様は下がってくださいな」


「いや、しかし・・・」


「ごめんなさい。
 今のお父様を、亜美は戦力として数えることができません。
 はっきり言えば足手まといです」


「・・・そうか。そうだな」


娘たちが、せっかく身体を取り戻し
4人姉妹に戻れたばかりだというのに、

父親である自分の選んだ生き方のせいで、
命をかけた姉妹喧嘩をはじめたというのに、

何もできないどころか、
娘たちから戦力外通告を受けてしまった。

自分はなんて情けない父親だろう・・・


カトーは、思った。




「仮面ライドレス・キサガ」

「ウムギ」

「スクナ」


三人は、自らの変身した
仮面ライドレスとしての名を名乗ると、

亜美=キサガは、
三つの弓が複雑に絡み合う武器を手にし、
無数の矢を構えた。


「ユナイテッドアローズ!」


珠璃=ウムギもまた、
刀身のない柄だけの刀のようなものを構えると、


「フォーエバーセンチュリー21」


見えないだけで存在し、
その刀身の長さが一体どれだけあるのかすら
わからない刀を振りかざした。


そして、紫帆=スクナは、
梨沙の黄金の蝶のように、
無数の紫の眼球を手のひらから産み出した。


「パープルサウザンドアイズ!」



「ゴールデンバタフライエフェクト!」

キサカの放った無数の矢と、
ウムギの見えない刀身は、黄金の蝶に弾かれた。

梨沙=カミムスヒ転生は、
両手の親指と人差し指を立て銃のような形を作ると、
二丁拳銃のように構えた。


「セクシービームス!!」


そして、指先から光線を放った。


「蝶はいつもよりたくさんいる。光線はふたつ出した。
 亜美たちが相手でも梨沙は負けない」


しかし、パープルサウザンドアイズが、
紫帆の産み出した眼球たちが、突然口を開き、
次々と蝶を喰らっていく。


「なんで目玉に口がある!? 反則だぞ!」


「知らない。でも、この子たちには餌に見えたみたいだね
 紫帆の力なら、梨沙ちゃんの力を無効化できるみたい。
 よかった。これで珠璃ちゃんや亜美ちゃんが
 梨沙ちゃんを殺せるね」



「おいおい、お父さん?
 知らないうちに娘が増えてる上に、
 なんか物騒なこと言い出してるぞ。

 なんでこの状況下で姉妹喧嘩なんかしてる?
 隠し子か?」


サムから通信が入った。


「俺のかわいい娘たちは、
 皆、我が強くてね・・・よく姉妹喧嘩をするんだ
 忘れてたなあ・・・」

カトーはサムに、昔を懐かしみながらそう返事をする。


「なんで止めない?」


「仮面ライダーじゃない俺は戦力外だってさ・・・
 娘にそんなこと言われたら、返す言葉もなかった・・・
 俺は本当に、父親失格だ・・・」


「バカか、お前。
 何のためにその盾を貸したと思ってる?
 そのスーツを作ったのは誰だ?」


「トニー・スターク・・・
 それから、バナー博士・・・」


「俺がどうしてバナー博士に、
 そのスーツをビブラニウムで作り直してくれるよう頼んだか、
 それくらいわかるだろ?

 フライトユニットをつけてほしかったついでじゃないぞ。
 ビブラニウムのスーツだったら、ローディは死なずにすんだからだ。

 トニー・スタークだって
 インフィニティストーンを使う前に
 あんなに肉体にダメージを受けずにすんだからだ。

 もしかしたらインフィニティストーンの力にも
 耐えられたかもしれないからだ」


「そうだな・・・」


「貸してるだけとはいえ、
 お前は今その盾を持ち、アイアンマンのスーツを着て、
 背中には俺のフライトユニットがついてる。

 仮面ライダーじゃないからなんだ?

 お前は仮面ライダーじゃなくなっても、
 アベンジャーズの一員だろ。

 アベンジャーズをなめるな。
 俺をがっかりさせないでくれ」


「そうだ・・・そうだよな・・・」


「お前は今、間違いなくアベンジャーズ最強の戦士だ」


この世界で三年前に起きた戦いで、
自分の言葉で奮い立たせた男が、
今度は自分を奮い立たせてくれようとしていた。

サムはあれから大きく成長し、
今や先代のキャプテンに勝るリーダーシップと
それにふさわしい実力を発揮している。


「そうだな・・・
 今はこんなことをしている場合じゃなかった。
 晴美を取り戻さなきゃいけない」

それが、あの神そのものという存在から、
世界を、人々を守ることに繋がる。

自分に遺された命はわずかしかないが、
やるべきこと、やりたいことが山ほどある。

どれかひとつでもやり残したら、絶対に死ぬ時後悔する。



「忘れたのか?
 梨沙はお前たちを操る力があるんだぞ。
 かわいそうだから使ってないだけだぞ」

姉妹喧嘩はまだ続いていた。


「同じカテゴリーに属する者を操る力か・・・」

長女である珠璃が言う。


「珠璃も亜美も紫帆も、そして梨沙も、
 みんなパパの娘で、みんな仮面ライドレスだけど、

 珠璃たちは梨沙の中にいる間に
 万が一のことを考えてその対策をずっと練っていた。
 操れるものなら操ってみろ!」


「言ったな、バカ珠璃! 後悔しても知らないぞ」


ウムギが刀身の見えない刀を構え、
カミムスヒ転生がさらに蝶を出そうとした瞬間、
ふたりの体は蜘蛛の糸のようなものに絡みとられた。

ふたりだけではなく、その直後には残りのふたりも。


「な、なんだこれ?」

「ネバネバする・・・とれない・・・」

「蜘蛛の糸?」

「まさか、スパイダーマン?
 アベンジャーズが彼以外にもきてるの?」


そうではなかった。

蜘蛛の糸を手首の装置から発射したのは、
彼女たちの父親、アイアンアウトレイジだった。


「ピーターに作っておいてもらって正解だったな・・・」

「おいおい、カトー、
 俺はそんな武器がついてるなんて知らなかったぞ」

「サムが盾を貸してくれるとは思ってなかったからな・・・
 いざというときにほしかったからピーターに頼んだんだ。
 スパイダーマンスーツについてるものと
 同じものを作ってくれってな」

「せっかくおそろいのスーツを用意してやったのに・・・」

「なんだ、そんなにペアルックがしたかったのか?」

「ああ、そうだよ」

「じゃあ、もうひとつ悪い知らせだ」

「おいおい、まだあるのかよ・・・」

「サム、お前は絶対はずすことはないだろうが、
 背中のフライトユニットは一応、
 スーツから分離することができるようにしてあるだろ?」

「ああ、いざというときに爆発に巻き込まれたり、
 バランスが悪くて飛べないんじゃ困るからな」

「俺のフライトユニットは、
 スーツから分離した後、
 さらに細かく分離させることができる。

 そのすべてが、攻撃と防御、
 どちらにも対応できるように作られている。

 そして、俺の脳波でコントロールが可能だ」


「はあ!? なんだそれ・・・」


アイアンアウトレイジのスーツから分離した
フライトユニットは、さらに細かく分離し、
56機のフライヤーとなると、彼の周りを浮遊した。


「フライヤー、俺の代わりにあの子たちを守ってくれ」

フライヤーたちは、
蜘蛛の糸にからめとられた
四人の娘たちの元へと向かっていった。


「その子たちは今、動けないからな。頼んだぞ」



「パパ!」

「お父様!」



「梨沙、亜美、珠璃、紫帆・・・
 姉妹喧嘩はもう終わりにしてくれ。

 パパの悪口なら、この戦いが終わったらまとめて聞くから。

 あとのことは、パパやサムやみんなにまかせてくれ」


アイアンアウトレイジは、
そう言うと、スラスターを噴射させ、仲間たちの元へと飛んでいった。



to be continued....

甲斐亨=仮面ライダー神威は、
その手で触れるものすべてを、人型機動兵器に変えていた。

千年細胞、ヒヒイロカネ、
神威システム、そのAIであるE2C-0、

人型機動兵器カミシロを作り、
操縦するには、それだけのものが必要だったが、
神威システムの代わりになるものを、
その場にいた仲間たちは持っていた。

あとは、E2C-0が仲間たちの持つ、
神威システムの代わりとなるものに合わせた調整を行えば、
仲間たちもカミシロを操縦することができる。


仮面ライダーウィザードであれば
ウィザードライバーとウィザードリング、

ドライブであれば
ドライブドライバーとシフトカー、

ゴーストであれば
ゴーストドライバーとゴースト眼魂(アイコン)、

エグゼイドであれば・・・

そして二人のWには、
それぞれダブルドライバーとガイアメモリ・・・

タカミムスヒ輪舞曲にも、
ガイストにも、
それぞれの持つ力でカミシロを
操縦することができるようにし、
仮面ライダーたちは皆、カミシロのコクピットにいた。


神威もまた、カミシロ「ナルタキ mark Ⅱ」に。


「ちょっと都合が良すぎやしないか? 悦子」


ーーそんなことはありません。
  鳴滝様は、財団Xとヒドラが
  仮面ライダーを共同開発していた頃、
  仮面ライダースーツをパイロットスーツとする
  人型機動兵器についても研究されていましたから。


「いや、そうじゃなくてさ、この町・・・
 この町はなんなんだ? 悦子。
 町全体がヒヒイロカネで出来てるだなんて」


ーーわかりません。
  ですが、町全体をヒヒイロカネで作ることは、
  非常に合理的です。


「災害に見舞われても、すぐに復興が可能とか、か」


ーーそうです。
  災害だけでなく、戦争が起きたとしても。
  人の命が還ることはありませんが、
  町はすぐに元通りになります。


「たとえ世界が滅亡したとしても、
 この町は永遠にこのまま存在しつづけるわけだ」


ーーそして、甲斐亨、あなたにとっても、
  この町は非常に合理的な戦場です。


「その表現はどうかと思うけど、
 神威システムの、悦子のデータベースにある
 どんな武器も、どんな人型機動兵器も
 作り放題なのは認めるよ」


町自体も不思議だったが、
それ以上に、今この場に、
これだけの頼もしい仲間がいてくれることが
甲斐享には不思議だった。


「それじゃぁ、さてと、みなさん、行きますか」


甲斐亨のその言葉を合図に、
仮面ライダーたちが操縦するカミシロは一斉に、

神そのものという存在に攻撃をしかけた。



それぞれのカミシロは、
それぞれが持つ変身ガジェットに対応し、
操縦する仮面ライダーではなく、
カミシロがフォームチェンジをする。

神威は、神威之参式ケイローンとなってから、
アイアンアウトレイジ一家のすったもんだの大騒動の中で、
さらに五つのリミッターを解除し、
神威之八式マダラとなっていた。

一体神威システムは、どこまで進化するのだろうか。

同じ数だけあるというファティマの預言も、
一体いくつまであるのだろう。



ーー甲斐亨、地下数百メートルに、複数の、
  いえ、信じられない数の千年細胞を持つ者の
  存在を確認しました。


「どういうことだ?
 もっと詳しく調べられるか?」


ーーすべての千年細胞は、同一のDNAです。
  すべて、魂を持たない器としての肉体。


「小久保晴美の体の複製体だろうな」


ーー数、666、そのすべてが
  筒状の生命維持装置のようなものの中から
  血液を町へと送り出しているようです。


「なるほど・・・そういうからくりか」





「ようやく、本気のお前が見れるな、カトー」


サムは嬉しそうに言った。
彼は仮面ライダーではないため、
カミシロには搭乗してはいなかった。


「すまなかったな、サム。
 俺は、仮面ライダーであること、
 九頭竜の化身であることに、こだわりすぎていたみたいだ」

カトーもまた、カミシロには搭乗していない。


「三年前の俺みたいにな。
 お前が、俺は俺でいいと気づかせてくれた。
 だから、今の俺がある」


「おかげで、俺も今の俺を受け入れることができたよ。
 三年前、いや、俺にとっては千年以上も前だが、
 あのときの俺に感謝しないとな」


「まったく、ややこしいやつだ。いろんな意味で。

 でもさ、やっぱり仮面ライダーってやつはすげーや。
 あんなガンダムみたいなのに乗っちゃってさ。

 さてと、それじゃ、俺もあれにきてもらおうかな」


「まだ何か隠し球があるのか?」


「トニー・スタークは、
 バナー博士がハルクになり、
 手がつけられなくなったときのために
 奥の手を用意してたろ」


あれのことか、とカトーは思う。


「それをバナー博士にビブラニウム仕様で
 作ってもらうのは気がひけたけどな。
 なんたって名前が」


ハルクバスター。

サムはそれを、キャプテンアイアンファルコンのスーツの上に着こむ。


「名前を変えなきゃな、いい加減これも。
 何かいい名前はあるか?」

サムは言った。


「ゴッドイーター」

カトーは、そう答えた。




まもなく、すべてが終わろうとしていた。

だから、ファティマの預言とは何かについて記しておきたい。


まず、ファティマとは、ポルトガルに実在する小さな町だ。

1916年の春、ファティマに住む
ルシア、フランシスコ、ジャシンタという3人の子供の前に、
自らを「平和の天使」と名乗る14、5歳くらいの若者が現れた。

自らを天使と名乗る若者は、
祈りの言葉と額が地につくように
身をかがめる祈り方を三人に教え、
その後も天使の訪問は続いたという。

そして、天使の訪問から一年がすぎた1917年5月13日、
ファティマの3人の子供たちの前に聖母が現れた。

聖母は、毎月13日に同じ場所へ会いに来るように言った。

子供たちは様々な妨害に遭いながらも、
聖母に会い続け、様々なメッセージを託された。

聖母からのメッセージは大きく分けて3つあった。

これが、ファティマの預言と呼ばれるものである。


ファティマの第一の預言は、
死後の世界である、地獄が実在することであった。

多くの人々が罪な生活、傾向によって、
死後に地獄へ導かれており、
肉欲や傲慢など現世的な罪から
回心しないままでいることにより、
人は死後、永遠の地獄へと行くという。

具体的に、聖母はこの少女ら3人に、
7月13日に地獄のビジョンを見せた。


彼女たちはそのあまりの光景に戦慄したという。


地獄は神話ではなく実在し、
そこは全ての人が死後に行く可能性のあるところであり、
入ったが最後、二度と出ることはできないという。



ファティマの第二の預言は、大戦争の終焉と勃発であった。

当時は第一次世界大戦の最中だったが、
それはまもなく終わる、と聖母は三人に告げた。

しかし人々が生活を改め罪を悔い改めないなら、
さらに大きな戦争が起き、沢山の人が死に、
そしてその多くが地獄に落ちてしまうだろう、と。

その前兆として、
ヨーロッパに不気味な光が見えるだろう、と。


そして、
教会が長年に渡り秘匿し続ける第三の預言について、

聖母は、

1960年になったら公開するように、それまでは秘密に、

と、ファティマの三人のこどものひとり、ルシアに厳命した。


その内容は「ファティマ第三の秘密」と呼ばれ、
ルシアを通じて教皇庁に伝えられたが、
1960年が過ぎても教皇庁は公開しなかった。


ファティマに出現した聖母は、
カトリック教会が公認している、聖母の出現の一つだ。

何万もの群衆を前に
太陽が狂ったように回転して見えたり、

水源のないところから水が湧き、
飲む者に奇跡的な治癒があったりしたことから、

1930年10月13日、
現地管区レイリア司教によってこの出現は公認された。


同年、教皇ピオ12世は同地に巡礼する者への贖宥を宣言した。


1967年には教皇庁により
最初の聖母の出現のあった5月13日が
ファティマの記念日に制定され、
歴代ローマ教皇が巡礼に訪れたり、
この出現のメッセージに基づき世界の奉献を行った。


だというのに、第三の予言は長年にわたり秘匿され続けた。


教皇庁は聖母が発表を命じた
1960年になっても啓示の第三部について公表せず、
その内容については多くの憶測を呼んだ。

過去の予言が世界大戦などで60年代当時は
東西冷戦真っ只中であることから、
核戦争や第三次世界大戦ではないかと危惧する者もいた。


1981年5月2日、
アイルランド航空164便がハイジャックされた。

犯人はカトリック修道士であり、
その要求は

「ファティマ第三の秘密を公開せよ」

というものであった。


60年代に閲覧したローマ教皇ヨハネ23世は
内容に絶句して再度封印し、

次代教皇パウロ6世も再度封印を解くも
あまりの内容に数日間、人事不省になったという。

こうした経緯を経て、
教皇庁は2000年5月に、
1960年以来40年間発表を先送りにしてきた
ファティマ第3の預言を正式に発表した。


教皇ヨハネ・パウロ2世は、その内容を

1981年5月13日の教皇暗殺未遂事件であったとした。


背後に20世紀に生まれた暴力的なイデオロギーに属する
しっかりした組織(=ヒドラ)があったと述べ、

2005年4月に発表された遺言においては、
核戦争なしに冷戦が終結したことを
神の摂理として感謝している。


2000年に発表された文章は、
前の二つの預言と比べるとあまりに規模が小さく、
40年もの長期間隠匿され、
60年代の教皇が絶句し、
発表を見送った内容とはとても思えなかった。


また、公開された「第三の預言」は、

一群の兵士達により白衣の司教ら大勢の高位聖職者達が射殺される、

とあり、

1981年の事件とはあまりに食い違うと
疑問視する意見もある。


教皇庁の発表は虚偽、あるいは
全文ではなく一部分に過ぎないのではないか
とする主張においては、

第三の秘密は、未だ本格的には未公開とされる。



ファティマの3人のこどものうち、
フランシスコ・マルトとジャシンタ・マルトの兄妹は、
聖母の預言どおりに、まもなく病死している。

残る一人の、ルシア・ドス・サントスは修道女になった。

彼女は「予言」の内容を教皇庁に伝え、
2005年2月13日に97歳で死去している。

一連の奇跡や教皇庁の認可、啓示などから
ファティマは有名になり、
カトリック信者の大規模な巡礼地となった。。


ジャシンタ・マルトの遺体は
1935年と1951年に墓地から掘り返されたが
顔の箇所は全く腐敗しておらずに奇跡とされ、
現在はファティマ大聖堂の中に安置されている。


2017年3月23日、
ローマ教皇庁は福者である
フランシスコ・マルトとジャシンタ・マルトの
取り次ぎによる奇跡を認定する教令に
教皇フランシスコが署名した、と発表した。


2017年5月13日、
ポルトガル・ファティマで
教皇フランシスコの司式により列聖式が執り行われた。


しかし、いまだ、
第三の預言についての真相は明らかにされていない。


そして、
第四の預言以降はすべて、
存在自体が秘匿されている。




to be continued....

ーーなるほど。
  この器がなぜ我になじむか、ようやくわかったぞ。

神そのものである存在は言った。


ーー56億7000万回も人生を繰り返し繰り返し生きてきた中で、
  この器は、数千、数万の歴史改変に立ち会っている。

  1917年5月13日のファティマの地に降り立ったこともあるようだ。
  ・・・いや、これからか、それは。


「あいつ、俺たちと戦いながら、
 小久保晴美の記憶をたどっていたのか?」


「どうやら、そのようですねぇ
 本気を出しているとは思ってはいませんでしたが、
 まさか片手間に相手をされていたとは」


「そうか、そういうことか・・・」


「どうした? フィリップ。何か分かったのか?」


「ファティマの聖母の正体は、おそらく小久保晴美だ」


「なんだって?」


「それも、今の言葉・・・
『いや、これからか、それは』から察するに、

 神そのものは小久保晴美の
 56億7000万回分の記憶をたどる過程の中で、
 彼女の未来まで見てしまったのだろう。

 どうやら、この戦いのあと、
 小久保晴美は1917年5月13日へ行くようだ」


「おいおい、それは一体どういうことなんだ?」


「ぼくにもまだ正直よくわからない。
 しかし、ひとつだけ分かったことがある」


「俺たちは、この戦いに負ける・・・か」


「その通りだ、カトー。いや、アイアンアウトレイジ」


「そして、晴美を助けたければ、
 俺たちが負けてしまう未来を変えたければ・・・」


「誰かひとりでも逃げて、生き延び、
 1917年へ小久保晴美をおいかけるしかない」


「その役目にうってつけなこどもが
 あそこに四人いるな・・・」


「ファティマの聖母から預言を受けた三人のこどもを、
 あの四人にすり替えるのか?」


「しかし、聖母の前に現れる、
 14,5歳くらいの天使という存在がよくわからない・・・」


「それもすり替えればいいだけの話だ。
 聖母が小久保晴美となり、
 ファティマの三人のこどもが四人になる。

 三人のうちの一人は男、ふたりは女だが、
 みんな女になり、10才くらいのこどもたちが、
 14歳の女の子たちになるのだからな」


「平和の天使役になれるのは、
 お前しかいないだろ、魔少年」


「待ちたまえ、翔太郎、照井竜、
 君たちは一体何を言っているんだ?」


「もし、俺たちが本当に負けちまうとしたら、
 お前がカトーのこどもたちを連れて逃げろって言ってるんだ。

 俺に二回もお前が消えるところを見せないでくれ。
 ・・・頼む、相棒」


「翔太郎、やめてくれ・・・
 君にそこまで言われてしまったら、
 ぼくはそうせざるを得なくなってしまう。

 もう二度と、ぼくがいなくなることで、
 君に寂しい思いをさせたくない」


フィリップは、ふたりの提案をのむしかなかった。

石ノ森章太郎は、黙ったままだった。




「悦子、あの神そのものっていうやつは、
 地下のことには気づいてないのか?」


ーーおそらく


甲斐享は、左翔太郎や照井竜とは別の作戦を考えていた。


「そうか・・・」


ーー何か思い付いたことが?


「いや、なんとか小久保晴美の魂? 人格? 精神?を、
 あの体から取り出すことができれば、
 地下の体に移すことができるのかなって思っただけ」


ーー可能です。ですが・・・


「魂をどうやって取り出すかがわからないか」


ーーそれも可能です。


「じゃあ、何が問題なんだ?」


ーー小久保晴美の精神は、
  あの神そのものを名乗る存在の精神世界に囚われています。
  あなたはたったひとりで、
  その世界であの神そのものを名乗る存在と
  戦わなければいけません。


「その役目は俺じゃないような気がするけど」


ーー確かにそうかもしれません。
  ですが、今、それができるのは、

  亨、あなただけなのよ。


こいつはずるいやつだ。
悦子の口調でそんなことを言われたら、やるしかないじゃないか。

いいぜ、やってやるさ。





小久保晴美の肉体を器とし、
自らを神そのものと名乗った存在は、
攻撃を受ける度、その体は簡単に破損した。

しかし、すぐに修復を行い、それをもうかなりの回数繰り返していた。

修復をする際には、周辺の町の建造物を利用していた。


「まさかとは思うけど、
 この町の建物がすべて似たような色をしていたのは、
 このためだったわけじゃないよな・・・」


その姿は、まるで
テレビゲームのラスボスのように巨大ではあったが、
けっして醜悪なものではなかった。

修復するたびに、
その体は規則性があるものになり、
造形美を増していくと同時に防御力をも増していく。


「この町そのものが、
 こいつを強くするために作られていたのか?」


「ちっ、どれだけ攻撃しても、すぐに修復されちまう。化け物め」


「亀山さんよ、俺から
 すごーく大事な千年細胞や九頭竜、
 仮面ライダーの力を奪ったパーフェクターで、
 そいつの力を吸いとれるだけ吸いとってくれ!」

ビブラニウム製のハルクバスター「試作型ゴッドイーター」の中で
カトー/アイアンアウトレイジは叫んだ!


その名の通り、サムのゴッドイーターの試作型だった。


「お前、意外と根に持つタイプか?
 パーフェクターって言ってくれりゃわかるっての。
 やってやるよ。でも、どこまで吸いとれるかはわからんからな」

亀山薫=仮面ライダーガイストの駆る
人型機動兵器カミシロ「アポロ」が、パーフェクターを高く掲げた。

神そのものである存在から
パーフェクターに向かって生命エネルギーが流れ込んでくる。


「おい、たった数秒で、すごいエネルギーが流れ込んできたぞ!
 このままではパーフェクターもアポロも持たない!!」


ーー亀山様、そのエネルギーの調整は私にまかせてください。
  アポロ自体の能力の向上と、
  パーフェクターによる攻撃が可能なように
  エネルギーの転嫁を行ってみます。


甲斐享の神威システムの補助AIであるE2C-0は、
ナルタキ mark Ⅱだけでなく、他のカミシロ全機を補助していた。


「やっぱり鳴滝は、そこまで予見していたか。
 さすがだな・・・」

カトーは言う。


「わかった。まかせる。ていうか、あんた誰!?」


ーー私は神威システムの補助AI、E2C-O。
  現在、甲斐享の肉体と神威システム、
  そして、このカミシロ「ナルタキ mark Ⅱ」を、
  そのすべてを甲斐享より任されております。

  そして、みなさんの搭乗されているカミシロ、
  そのすべての補助も行っております。


「カイトくんは、どうしたのですか?」


ーー甲斐享は、現在、
  小久保晴美さんを取り戻すために、
  神そのものを名乗る存在の精神世界にいます。


「そうか、その手があったか・・・
 ぼくや石ノ森章太郎ならそれが可能だったな」


フィリップが言った。
彼は、左翔太郎や照井竜の言葉を受けてから、
ひどい混乱状態にあり、その方法を思いつけないでいた。


「しかし、ここは甲斐享くんにまかせよう。
 今、私や君がダブルから離れるわけにはいかない」

石ノ森章太郎に言われ、
フィリップは今やるべきことにようやく集中することができた。

かつての魔少年もまた、今はもう、完全に人間だった。

それが良いことであるのか悪いことであるのかは、
彼自身にも正直わからなかったが、おそらく良いことなのだろう。

これが鳴海壮吉が、あの夜に自分に望んだ、成長し覚悟をした姿なのだ。




to be continued....

ーー君たちは、歴史改変をしすぎた。
  つまりは、そういうことだ。

神そのものを名乗る存在の精神世界。

甲斐亨の精神体は、そこにいた。

そして、そこには
美しいドレスを着せられ、お姫様のように眠る
小久保晴美が存在し、彼女を優しい目をして見守る男がいた。

その男は小久保晴美の頭を優しく撫でると立ち上がり、
甲斐亨を出迎えそう言った。


「俺は一度も歴史改変をしたことはない。
 俺が知る限り、アベンジャーズによる
 歴史改変ですら二度しかなかったはずだ」


ーー本当にそうか?

  この女は56億7000万回、人生を繰り返してきた。
  その中では、君が九頭竜の化身となったこともあった。

  君が一度も歴史改変をしたことがないと、
  君は本当に言い切れるか?


「その俺は今の俺じゃないだろ?
 その責任は俺にはないと思うけどな」


ーー君が君であるということに代わりはないというのに。
  責任転嫁か。やはりくだらないな人間は。


「お前は誰だ?」


ーー言ったはずだよ。神そのものだと。


「どうしてお前は、カトーに似ているんだ?」


男はカトーにそっくりの顔をしていた。

しかし、その神そのものを名乗る男には
手足がなく、義手義足だった。


ーーぼくは、そのカトーという男と、
  小久保晴美の最初の子だからね。
  ね、母さん。

  ぼくは五体満足で生まれることができなかった。
  父さんと母さんは、日本神話の有名な二柱神のように、
  ぼくを蓮の葉で作った舟に乗せて川に流した。

  そして、ふたりは、ぼくの存在を、
  互いに記憶から消しあうことで忘れてしまった。

  後に九頭龍国と呼ばれることになるあの亜空間・・・
  川に流されたぼくはあの空間から、
  紀元前の世界に流れ着いた。

  あの空間は、どうやら出る場所によって
  どの時代にも繋がっていたようなんだ。

  そこでぼくは、
  いわゆる古代宇宙飛行士と呼ばれる存在に出会った。


「古代宇宙飛行士?」


ーー古代には、とうてい作ることのできなかった建造物や
  オーパーツと呼ばれるものがが世界には今も存在するだろう?


「ピラミッドやナスカの地上絵のような、か」


ーーーそう、そういったものは、
   すべて外宇宙から来た高度な科学文明を持つ
   異星人によってもたらされたものだ。

   彼は、君たち仮面ライダーに良く似ていたよ。
   この戦場にはいないが、フォーゼにとてもよく似ていた。

   宇宙船を持たず、強化外骨格単独で大気圏突入が可能であり、
   その強化外骨格は様々な科学技術や医療技術を持っていた。

   ぼくは彼に拾われ、この体を手に入れた。
   そして、彼の使徒、つまりは弟子のひとりになった。

   彼は後に聖人と呼ばれるようになり、
   様々な奇跡を起こしたが、使徒のひとりに裏切られ、
   あらゆる技術を盗まれ、そしてゴルゴダの丘で処刑された。


「イスカリオテのユダとか言うやつか」


ーーそう、ぼくが聖人に与えられた名前がユダだった。


「お前がユダ?」


ーーユダは、たかが銀貨数枚のために
  聖人を裏切ったことを後悔し自害したことになっているが・・・


「身代わりの山羊(スケープゴート)をお前が仕立てあげたわけか」


ーーーその通り。
   当時の人々には、そのユダの死体が
   本当にぼくの死体であるかどうかなんて、
   調べることはできなかったからね。

   背格好が似ている者を銀貨数枚で雇い、
   顔さえぼくに似せて作り直してやれば、簡単に騙せたよ。

   ぼくは、聖人の墓を荒らし、
   遺体を処理し、聖人に成り代わった。

   三日後に聖人は復活をとげることになるが、それはぼくだ。

   ぼくは、数人の使徒をつれて、この島国のこの地に渡来した。

   そして、聖人に成り代わったぼくと使徒たちは、
   二千年にわたり、この国と世界の歴史を影から操り続けてきた。

   ぼくの使徒の中には、
   インドを目指していたはずのコロンブスが
   アメリカ大陸を発見するように航海図を書き換えた者もいれば、
   ケネディ暗殺の真犯人もいるし、
   2020年に、世界に新型コロナウィルス「カーズ」を
   ばらまくきっかけとなった者もいる。

   そして、君がよく知る者もいる。


神そのものの言葉に、甲斐享が
思い当たる者はひとりしかいなかった。


「親父・・・か」


ーーよくわかったね。
  今は甲斐峯秋を名乗ってはいるが、
  彼はかつて源頼朝や明智光秀を演じたこともある。

  ぼくの忠実な手足のひとりだ。
  しかし、甲斐峯秋を演じる彼には、唯一誤算があった。


「それが俺か」


ーー君だけではなく、この地に集まった
  仮面ライダーやアベンジャーズは、
  皆ぼくの使徒たちの関係者であり、
  君と同じ、ぼくたちにとっては誤算でしかない存在だ。


「なるほど。それで、あんたの目的はなんだ?」


ーー誤算でしかない君たちを集め、殲滅する。


「お前の父親もか?」


ーーそうだ。あの男だけは許すことはできない。
  母さんのことは許してあげるけれどね。


「お前の存在そのものがなくなるぞ」


ーー今のあの男を殺しても、ぼくはすでに産まれた後だ。
  ぼくには母さんがいればいい。


「とんだマザコンだな」


ーー本来存在しないはずの母さんを、
  ひとりの少女の頭の中に別人格として誕生させ、

  先祖返りによって、生まれつき千年細胞を持つ者と
  母さんが出会うように仕組んだ。

  千年細胞を見つけた母さんを、
  一度マスコミに持ち上げさせ、
  その後バッシングを受けるようにし、
  ヒドラに組みするように仕組んだのもぼくだ。

  鳴滝に出会わせたのもね。

  一度、56億7000万回、人生をやり直す運命を与えたのも。

  そして、その果てに、幸福を手に入れさせ、
  再び人に絶望するように、九頭龍国の民を煽動したのもね。


「マザコンのくせに、母親に随分ひどいことをするんだな」


ーーそうしなければ、ぼくは産まれることができないからね。
  すべては母さんを愛するがゆえだよ。


「お前のような奴が、簡単に愛なんて言葉を口にするな」


ーー君だって誰も愛したことないだろ?


甲斐享は、

「そうだな。そうかもしれない」

否定できなかった。


ーーすべては、君たちの歴史改変によって起きたことだ。
  君たちが、ぼくを産み出した。

  56億7000万回のループに歴史改変、
  さらにはパラレルワールドに生きる者たちとの接触・・・

  それにより、産み出された、
  ループパラドクス、タイムパラドクス、
  パラレルパラドクスは、
  もはや何が正しい歴史であったかさえ
  わからないほどに歴史を狂わせた。

  だから、ぼくは、ぼくと母さんにとってだけ、
  都合のいいように、すべてを作り替えることにした。


「俺たちの歴史改変を否定しておきながら、
 お前も歴史改変をするのか?」


ーー君たちによる歴史改変が
  二度と起こらないような歴史をぼくが作る。
  ただそれだけのことだ。


「悪いが、止めさせてもらう。」


ーーできるものなら。

  ここでは神威システムは使えないぞ。
  この世界の外で、君の肉体が今まさに使っているから。

  ぼくは、変身できるけどね。
  九頭竜 天禍天詠の力は、今ぼくの中にある。


「俺にはもう、
 カムイドライバーや神威システムは必要ない。
 すべてのリミッターがはずれたらしいからな。
 俺そのものが、神威だ」


ふたりは、仮面ライダーに変身すると、
次の瞬間には互いのマスクに拳を叩き込んでいた。



to be continued....

「俺にはもう、神威システムは必要ない。
 神威システムの、リミッターはすべて解除した。
 俺そのものが、神威だ」

甲斐享の言葉通り、
彼はカムイドライバーを装着せずとも、
八十三式神威へと変身した。


正式名称は、
仮面ライダー神威 神威之八十三式神威。


「だから、どうした?
 母さんが作った九頭竜天禍天詠は無敵だ!」

八十三式神威と九頭竜天禍天詠は、
互いの拳を互いにマスクに叩き込んだ。


「無敵、か。確かにそうだな。
 だが、それは、お前ではなくカトーが
 その姿になったときの話だ。
 お前では、その力を使いこなせない」

八十三式神威のマスクに叩き込まれた
九頭龍天禍天詠の拳は、神威に全くダメージを与えていなかった。

ダメージを受けたのは、天禍天詠の方だった。

強化外骨格の拳だけでなく、
偽りの聖人の義手まで、粉々に砕けていた。


そして、天禍天詠のマスクに叩きこまれた
八十三式神威の拳は、彼のマスクを叩き割っていた。


「そして、お前が無敵ではない理由がもうひとつある。
 俺が神威の力をすべて引き出したからだ」


「なぜだ、なぜ、
 母さんが作った仮面ライダーと
 鳴滝の仮面ライダーにこんなに力の違いがある!?
 同じヒヒイロカネだろ?」


「お前と俺ではヒヒイロカネの純度が違うんだ」


「ヒヒイロカネの純度? それが何だって言うんだ!?」


天禍天詠は、すぐに腕を再生した。
その腕に九頭竜が絡みつく。

かつて彼の父親であるカトーも同じ技を放ったことがある。

一発の拳が、叩き込んだ瞬間には九発となる、九頭龍拳という技だ。

八十三式神威は腹部に打ち込まれたその技を、
避けることも、防御することもせず、あえてその直撃を受けた。

だが、やはりダメージを受けたのは天禍天詠の方だった。

天禍天詠は腕を再び再生させながら、
次は脚に九頭竜をまとわせた。

同様に一発の蹴りが九発となる九頭龍脚だ。

しかし、結果は同じだった。

脚が砕けた天禍天詠は大きくバランスを崩し、尻餅をついた。


「純度が違えば、攻撃力も防御力も違う。
 お前の父親の方がはるかに強かったぞ。
 お前とは桁違いにな」


「ぼくが脚が砕けるとわかっていながら、
 なぜ攻撃をしかけたかわかってないのか?

 なぜ、割れた仮面を
 修復しなかったのかもわかってないのか?」


口を大きく開いた天禍天詠は、
まるで怪獣映画の怪獣のように、
口からガスバーナーのような青い9つの熱線を吐き出した。

熱線は八十三式神威に直撃し、


「お前を油断させるためだ」


八十三式神威は跡形もなく消え去った。


「勝った! 勝ったよ、母さ・・・」


八十三式神威は、跡形もなく消え去ったわけではなかった。

天禍天詠が消し去ったのは、残像でしかなかった。


「速度も違うんだ。
 ヒヒイロカネの純度が違えば」


八十三式神威は、小久保晴美を抱き抱えようとしていた。


「やめろ! 汚い手で母さんに触れるな!!」



波動全一九頭龍脈(はどう ぜんいつ くずりゅうみゃく)

かつて、天禍天詠と分離した九頭竜が
9つの首で吐いたその技は、
虹の七色に白と黒の二色を足した9色の熱線だった。

それをいくらマスクが壊れているとはいえ、
無理矢理、天禍天詠が口から出せば、
威力は半減することだけではすまなかった。

天禍天詠は、頭部そのものを失っていた。


だが、その頭部は、すぐに再生した。

それも、ふたつ。


甲斐享はそれを見た瞬間に気づいてしまった。


「どおりで弱いはずだ。
 お前は九頭龍天禍天詠ですらないのか」


「どういうことだ!?」


本人すら気づいていない九頭龍天禍天詠の正体に。


「ひとつの首を切ったら、ふたつの首が生えてくる・・・
 それは、ヒドラの力だ」


「ヒドラだと・・・!?」


「姿形はよく似せてはあるが、
 お前は九頭竜の化身にはなれなかったんだろうな。
 だから、ヒドラの化身となるしかなかった。
 お前の妹たちは、九頭竜になれたのにな」


「ヒドラだろうが、九頭竜だろうが、
 ぼくは、お前から母さんを取り戻せればそれでいい」


『クロックアップ!』


天禍天詠は加速した。


「加速した時の中でなら、
 ヒヒイロカネの純度など関係ないと思ったか?」


しかし、八十三式神威は
小久保晴美を抱きかかえ、同じ加速した時の中にいた。


「母さんを返せ!」


『ダブルクロックアップ!』


かつて、
ディケイドや彼の父親が使った
ダブルクロックアップですら


「遅い。遅すぎる。
 言っておくが、俺は加速すらしていないぞ」


八十三式神威の速度にはたどりつくことができなかった。


八十三式神威は、加速せずとも、
二重加速した時の中にいる天禍天詠より早く動くことができた。


「わかるか?
 それが、ヒドラと九頭竜の、
 お前と父親との決定的な違いだ」


天禍天詠は、三重、四重の加速をしたが、結果は同じだった。


「それ以上の加速はやめておけ。
 いくら精神世界とはいえ、
 お前だけ加速した分だけ時間が過ぎていくぞ」


「かまうものか!
 お前より早く動けなければ、母さんを取り返せないんだ!」


「お前を、牢獄の中に閉じ込めてやる!

 九頭龍獄!!」


重力が存在するかどうかわからない、
地面と呼べるものが存在するかどうかすらわからない、
精神世界において、
それでも彼らが立っている場所は、
地面と表現すればいいのだろうか?

地面から、現れた9つの首は、龍ではなく、やはり蛇だった。


「閉じ込められるのはお前だ」

八十三式神威は、
9つの蛇の首の牢獄に向けて、天禍天詠を蹴り飛ばした。

圧倒的な力の差は、天禍天詠を一蹴りで真っ二つにした。


牢獄の中で、ふたつに蹴り裂かれた体を修復しながら、


「こんな牢獄くらい、すぐにやぶれるんだよ!

 九頭龍極!!!」


天禍天詠は、自ら作った牢獄を、自ら破壊した。


「九頭竜でもヒドラでもいい、分離するぞ!
 同時にぼくたちの最強の技を・・・」


その声に、彼が化身となった存在から何も返答はなかった。


「ど、どういうことだ・・・?」


彼は状況を理解していなかったが、甲斐享は理解していた。


「言っただろ、それ以上加速するなと。
 お前を心配して言ってやったんだがな。
 一体、何重の加速をした?」


「数百・・・いや数千だ・・・
 それでもお前のスピードは、それ以上だった・・・
 もっと、もっと加速しないと・・・」


しかし、彼の思いとは反対に、変身は解除されてしまった。


加速に加速を繰り返した天禍天詠は、老人になっていた。


「俺にとってはわずか数分の戦いだったが・・・

 お前にはその数千倍、
 いや、通常の加速自体がそれくらいだから、
 そのさらに数千倍・・・違うな・・・数千乗か?
 それだけの時間が流れた。

 お前の千年細胞とヒヒイロカネは、
 その加速に耐えきれなかったんだ。

 千年細胞も、いつかは劣化するんだな。

 一度劣化することを覚えたら、
 劣化だけを繰り返すようになるのか・・・」


甲斐享のその言葉は、
もはや老人となった彼の耳には届いてはいなかった。


母さん、と彼は言おうとしたが、
声を出すことさえできなかった。


「お前はもう、戦えない。
 お前の作りたかった世界の歴史を作ることもできない。

 お前の命まで奪うつもりはないが、
 三つのパラドクスにより、
 大きな矛盾を抱えた世界を作ったのは確かに俺たちだが、
 お前も無関係ではない。

 お前にも責任がある。
 お前も残された時間をこの世界で生きろ」


甲斐享の言葉は、彼の耳には届いておらず、


「・・・いやだ」


彼の出そうとしている声もまた、甲斐享には聞こえない。

互いに口の動きを読むことだけで、会話をしていた。


「まだ戦うつもりか・・・」


甲斐享は、変身を解除した。

それで対等にはならないが、
相手の変身が解除されてしまった以上、
自分もそうすべきだと思った。


しかし、
天禍天詠は、
そのまま動くことはなかった。


偽りの聖人は塵芥となり、甲斐享の前で崩れていく。




to be continued....

同時刻、N市八十三町。


神そのものを名乗る存在が突然崩壊をはじめた。


その一部となっていた町は
元通りの建物に戻っていき、
全裸の小久保晴美だけがその場に残った。


「どうやらカイトくんは、うまくやったようですね」

カミシロから降り変身を解除した杉下右京は、
コートを脱ぐと、小久保晴美の体にかけながら言った。


「それにしても、この神そのものを名乗る存在は
 一体何者だったのでしょうねぇ・・・」


ーー彼は偽りの聖人。


E2C-0は答えた。


「偽りの聖人?
 神ではなく、聖人でもなく、
 聖人のふりをした何者か、ということでしょうか?」


ーーそうです。


「なぜ、あなたがそれを?」


ーー甲斐享が、すべてのリミッターをはずし
  神威システムなしでの変身が可能となったとはいえ、

  神威システムの補助AIである私はずっと、
  偽りの聖人の精神世界にいる甲斐享の精神を
  こちら側の世界に繋ぎ止めるため、
  常に彼の精神と神威システムを
  命綱のようにリンクさせた状態にありました。

  だから、その世界で
  甲斐享が見聞きしたことをすべて把握しています。



「奴は、器とした晴美の体と
 自分がなじむ理由がよくわかると言っていた。

 もしかしたら、俺と晴美の最初の子かもしれない」


カトーは言った。


ーーあなたは、その記憶があるのですか?


E2C-0の問いに、

「晴美の記憶からは消した。

 だが、俺は、互いにその記憶を
 消し合うふりをしただけで、すべてを覚えている。
 やはり、そうか。あの子だったか・・・」


ーーあなたは、優しい人なのですね。
  享のように。


「いや、最低の男さ」


カトーは自嘲気味に言った。

自嘲気味などという表現はふさわしくないから訂正しよう。


自らの存在に、完全に絶望して、彼はそう言った。



E2C-0は、
仮面ライダーたちのカミシロもまた解体し、
町を完全に元通りにした。


亀山薫は、
パーフェクターを使い、火野映司とアンクを回復させた。

そして、


「伊丹には悪いが、俺には、
 このパーフェクターや千年細胞、ヒヒイロカネ、
 わけのわからないものは、もう必要ないんだが」

カトーに向かって言った。


「だろうな。
 パーフェクターは、俺が責任をもって
 アベンジャーズと国連に厳重に保管させる」


カトーは亀山薫から、パーフェクターを受け取った。


「あんたが、それを使って、俺を元の体に戻し、
 あんたが元の体に戻ることはできないのか?」


「それは無理だ。
 千年細胞にもDNAが存在し、
 今はすべて、完全におまえのものになってしまっている」


「そうか・・・じゃ、ま、いっかな、このままでも。
 いざってときに、こどもたちを守れるからな。

 美和子はいないが、
 俺は孤児院のこどもたちとこれからも生きていく。

 あ、あんたの娘の二人の女王様も、俺が預かるからな」


「・・・すまない」


カトーは亀山薫に深々と頭を下げた。


「ところで、甲斐享は?」


ーー戻ってきていません。
  小久保晴美さんの魂も。


「君は命綱・・・意識をリンクしていたんじゃないのか?」


ーーー偽りの聖人・・・
   あなたの息子の精神世界の崩壊と共に、
   甲斐享とのリンクは切れました。

E2C-0は、AIでありながら今にも泣きそうな声でそう言った。


「そうか・・・」


その場にいる誰にも、
甲斐享を救出するどころか、
現在位置を把握することさえ不可能だった。


「晴美、帰ってこないのか?」


加藤梨沙が、杉下右京のコートに
包まれた晴美の肉体を見つめて言う。


「梨沙・・・」


「晴美の体はここにあるのに?
 パパはもうすぐ死んじゃうのに?」


「おそらく、ふたりとも、
 偽りの聖人の精神世界と共に消滅したか・・・
 あるいは」


ーー甲斐享は1916年に、
  小久保晴美さんは1917年に
  跳ばされてしまったのかもしれません。


「だとすれば、甲斐享が平和の天使になり、
 小久保晴美がやはり聖母となってしまうわけか・・・」


「すべては一度、
 1916年のファティマの地に向かえばいいだけのことだ。
 当初と予定が違うとすれば、
 ぼくではなく、甲斐享が
 平和の天使になってしまったことだけだ」

フィリップは、何の根拠もない希望的観測を口にした。


「梨沙たちをファティマの子どもたちにしろと?」


ーー梨沙さんたちが
  ファティマのこどもたちになる必要があるかどうかは、
  1916年と1917年に行かなければわかりません。

  そこにいる平和の天使と聖母が、甲斐享と晴美でなければ・・・

  ふたりは、偽りの聖人の精神世界の崩壊に巻き込まれた、
  ということになるでしょう・・・



「梨沙は行くぞ。
 晴美がまだ生きてる可能性があるなら」


「亜美は行けません」


「どうしてだ?」


「珠璃も行かないぞ。
 パパはもうあと何日かしか生きられないってこと、
 梨沙はもう忘れたのか?」


「紫帆も行けない・・・」



「パパ・・・」

梨沙は、今にも泣きそうな顔で
カトーにすがりつくように抱きついた。

他の娘たちもそれに続く。


「梨沙も行かないでくれ。そばにいてくれ」


「でも、それじゃ晴美は・・・」


ーー大丈夫です。
  1916年には、私が
  甲斐享の肉体と神威システムの力で向かいますから。

  甲斐享と小久保晴美さんがいれば、
  今日というこの日、この時間に戻ってきます。


「すべて君にまかせる形になってしまってすまない・・・」


カトーはAIである彼女に深々と頭を下げた。


その時だ。


「おいおい、悦子、
 俺を神威システムを使って、
 あいつの精神世界に飛ばしたのは、お前だろ?」


甲斐享の声が皆に聞こえた。


ーーえ? 享? どこにいるの?


「俺は今、神威システムの中だ。小久保晴美もな」


ーー亨・・・よかった・・・



まるで恋人のように
甲斐享の名前を呼ぶE2C-0に、
皆は驚いたが、

杉下右京にだけは、
その理由がなんとなくではあるが、わかった。



to be continued....