風都。

鳴海探偵事務所。



「そうか、カトーが死んだのか・・・
 あぁ、告別式には参加するよ。

 梨沙ちゃんたちは?
 サムって人がアベンジャーズにって?
 そうか・・・」


左翔太郎は、
フィル・コールソンと名乗る男からの電話を受けていた。

元S.H.I.E.L.D.のエージェントを名乗る男だった。




探偵事務所の外には、


「本当に行くのかい? 甲斐享」


フィリップと


「ああ、三年間世話になったな


甲斐享がいた。


「甲斐享、ぼくはひとつだけ、
 ずっと疑問に思っていたことがあるんだが、
 聞いても構わないかな?」


フィリップの問いに、甲斐享はうなづいた。


「君が、妻子が出て行ってしまった後もここに残ったのは、
 妻子の行方を探すためだということは理解していたが・・・

 ぼくの地球の本棚を使えば、すぐに見つけられたはずだ。
 どうして、ぼくの力を借りようとしなかったんだい?

 現に、ぼくはすでに君の妻子の居場所を特定している」


「自分の力で探したかったからな。
 ようやく、なんとなくだが、手がかりがつかめたんだ」


「君が迎えにきてくれるのを
 待ってくれているとは限らないというのに?」


フィリップの言う通りだった。

甲斐享が、
妻の千尋や、ふたりのこども、瑠璃と琥珀の元に
訪れたとしても、必ずしも三人が
彼を歓迎するわけではなかった。

いや、
歓迎されない可能性の方がはるかに高いことを
甲斐享自身が誰よりも理解していた。


「そのときはそのときさ」


フィリップのことだ。

きっと、気づいているのだろう。

今、この探偵事務所を去ろうとしている自分が
彼や、左翔太郎、照井竜・亜樹子夫妻と離れ、
妻子のもとへ向かうことが、不安で仕方がないことに。


「もうひとつだけ、最後に、聞いておきたいことがある」


「なんだ?」


「ぼくは今、クイーンとエリザベスのふたりから
 求婚を迫られているんだが、結婚とはいいものなのかい?」


「所長と照井竜を見てればわかるだろ?」


「ああ、結婚とは、幸福の詰まった宝箱、
 いや、宝石箱のように見える」


「クイーンとエリザベスか・・・
 どっちにするかは決めたのか?」


「どちらかに決めないとだめなのかい?
 それは困ったな。どちらもぼくには魅力的だ」


それは実に、彼らしい答えだった。


「答えが決まったら連絡してくれ。
 ビートルフォンはもらっていくぞ」


「ああ、構わない」


「俺が言える立場じゃないのは
 わかってるけど、言わせてくれ。
 好きな女の子を、
 自分は世界で一番幸せな女の子だと思わせるのが男だ」


本当に、自分が言える立場じゃない言葉だった。



「それじゃ・・・名残惜しいが・・・行くよ」


「ああ、また会おう、甲斐享」


甲斐享は、バイクを走らせた。


フィリップは、
甲斐享の背中が見えなくなるまで、その背中を見送り続けた。


甲斐享は、けっして振り返ることはなかった。





ーーぼくはそのとき、あえて言わなかったが、
  甲斐享、君が向かっていった方角は、
  君の妻子がいる町とは真逆の方向だ。

  そして、
  君や翔太郎がいつまでもハーフボイルドであるように、
  この世界もまだハーフボイルドだ。

  ぼくたちも、世界もまだ、これからだ。

  もうひとつ、つけくわえておくとするなら、

  甲斐享、君の妻子は、今も君を待っている。








同時刻。


警察庁。



甲斐享の父、甲斐峯秋は、白いスーツの男たちと会談を行っていた。


「そうか、偽りの聖人が敗れたか・・・」


「甲斐峯秋、やはり、あなたも、
 彼が偽りの聖人だと気づいていたのですね」


「いくら顔を似せたところで、
 聖人と裏切者の違いに気づかないほど、
 ぼくの目は節穴ではないよ。

 もっとも、偽りの聖人を倒したのが、
 あのバカ息子だというのには、
 いささか驚かせされたがね

 仮面ライダー神威、と言ったか。

 まったく鳴滝という男も
 厄介なものを産み出してくれたものだ」


「しかし、それを産み出した鳴滝はもはや存在せず、
 千年細胞を甦らせた小久保晴美も、
 もう二度と表舞台に立つことはないでしょう」


「ようやく、ぼくの出番が来たというわけかね。

 加頭順による、
 ガイアメモリに適性のある者以外の
 全人類が消滅するガイアインパクトは失敗し、

 最上魁星による、
 平行世界同士を合体させることで
 片方の平行世界を消滅させるエニグマの起動も阻止され、

 我々を裏切ったとはいえ、
 レム・カンナギによる全エネルギーを支配することにより、
 仮面ライダーたちでさえ手が届かない
 神に等しき存在になろうとする計画も阻止された。

 偽りの聖人をかつぎあげた我々使徒も、
 残されたのはぼくたちだけになってしまったか。

 はじめから、ぼくにすべてをまかせてくれていたら、
 平成という時代のうちに
 すべてを終わらせていた自信があったのだがね。

 まあ、彼らの失敗を糧に
 財団はより大きな組織へと発展したから、よしとしよう」


闇の巨大組織にして死の商人、財団X。

そのトレードマークとなるのは「白」を基調とした服装である。


今、ここに、そのトップに、甲斐峯秋が就任した。



「ああ、そうだ。
 君たちに、空席を埋める新たな仲間をひとり紹介しよう。
 入りたまえ」


ドアが開き、


「はじめまして、神戸尊と申します」


会議室に入ってきた男は、その名を名乗った。



「もうひとり、紹介したい者がいるのだが・・・
 いいかね? 神戸くん」


「特命係は現在、伊丹刑事の穴埋めのために
 捜査一課預りとなっておりますので・・・」


「それではしかたがない。
 名前だけを伝えておくとしよう」


「顔写真は用意してあります」


写真を受け取った甲斐峯秋は、
それを2000年来の仲間たちに見せると、



「冠城亘」



空席を埋める二人目の存在の名を皆に告げた。

1.夢を見たとき、その夢世界からひとつだけ現実世界に持ち帰ることができる。

2.夢を見なかった場合、現実の世界において大切なものを順番にひとつずつ失う。

3.夢世界から持ち帰るものは、夢世界に存在したものの中から無作為に決められる。

4.夢世界から持ち帰ったものは捨てたり、第三者に譲ったりすることができない。手放せない。

5.失う「大切なもの」は、契約者が所有するすべてのものを指し、法律上の所有権を有するものとは限らない。

6.失う「大切なもの」は、存在するが姿形をもたないものも含まれるが、契約者自身は含まれない。

7.一度失った「大切なもの」は、二度と手に入れることができない。夢世界から持ち帰ることもできない。

8.失うものはひとつであるが、同じものが複数存在する場合、それら全てを一度に失ってしまう場合もある。

9.契約者は、契約満了時までドリーワンを放棄できない。

 

 

以下のリンクよりお読みください。

Ⅰ 2007/05/17-05/23
Ⅱ 2007/05/24-05/30
Ⅲ 2007/06/01-06/08
Ⅳ 2007/06/09-06/15
Ⅴ 2007/06/16-06/22
Ⅵ 2007/06/23-06/30
Ⅶ 2007/07/01-07/07
Ⅷ 2007/07/08-07/14
完結編
 

 

 2013年9月24日、無料通話アプリ・RINNEが「友だち削除」という新サービスを公開した。

 2011年6月にサービスが始まったRINNEは、今年7月に全世界のユーザーが2億人を突破。
 順調に利用者を増やし続けているが、これまでは一度“友だち”を登録してしまうと、それが誰であれ“友だち”を削除することはできず、受けとりたくない情報は、ブロックするか非表示にするかしか方法がなかった。

 しかしRINNEは今回のアップデートで、従来のブロックと非表示に加え、削除機能を追加。
 削除したい場合、「その他」→「設定」→「友だち」→「ブロックリスト」か「非表示リスト」に進み、削除したい友だちの名前を選んで「編集」→「削除」を押せば、その友だちを削除することができる。

 

 

プロローグ 2013年10月4日、金曜日

第一話 2013年10月7日、月曜日
第二話 2013年10月8日、火曜日
第三話 2013年10月9日、水曜日
第四話 2013年10月10日、木曜日
第五話 2013年10月11日、金曜日
第六話 2013年10月12日、土曜日
第7話(最終話) 2013年10月13日、日曜日