甲斐享は、ダークナイトと呼ばれた、
かつての自分がしたことを、その罪を、
一生背負っていく覚悟を決めていた。

黒歴史や中二病などという言葉で
片付けていいものではなかったからだ。


鳴海探偵事務所の
雇われ探偵となってから3年になる。

風都は、良い街だった。

街中の至るところに風車がある景観は美しく、
左翔太郎が愛し、
あの街やあの街に住む人々を泣かせる者は許さない、
と強く思う気持ちがとてもよくわかる。

鳴海探偵事務所も居心地が良かった。


だが、風都には、
いや、風都だけではなく、
風車のある街には、ある欠点があった。

風車の回る音のせいか、
うつ病になる者が他の街に比べて圧倒的に多いのだ。


甲斐享の従姉妹にあたり、妻であった千尋は、

(厳密には、獄中自殺したことにされた彼には
 もう戸籍がないため、籍はいれてはいなかったが)

風都に来てから、彼の二人目の子どもを妊娠し、出産した。


しかし、ひどい産後うつに悩まされ、
産後と呼ばれる期間が終わったあとも、
うつ病は治らずにメンタルクリニックへの通院を続けた。



ある日のことだ。



甲斐享が仕事から帰宅すると、
妻はふたりのこどもを連れて出ていってしまっていた。


書き置きのひとつもなく。


今では、どこにいるのか、
生きているのかさえ、
何も、何一つ、わからなくなっていた。



探偵の仕事が楽しかった。
生き甲斐だと思えるほどに。


だから仕事に夢中になりすぎた。

妻やこどものことを、考えているつもりになっていただけだった。

大切にしているつもりになっていただけだった。


ちゃんと妻やこどもたちとの時間を作り、
話し合うことをしていれば・・・


悔やんでも悔やみきれない。


それは、甲斐享が犯した新たな罪だった。


だから、
その代わりに、というわけではないが、
妻やこどもたちが、
もし今も、どこかで生きていてくれるなら、
世界を滅ぼさせるわけにはいかない。

絶対に。


「あんたとは一度、ゆっくり話がしたいと思っていた。
 ちょうどいい機会だ」


九頭竜 天禍天詠もまた変身をといた。


「俺もお前も、お互いに、
 不老長寿で時間をもて余している
 それもまた一興か」


甲斐享の持つビートルフォンに、
米沢守からの電話の着信があったのは、
二人が地べたに腰をおろした
まさにその瞬間のことだった。


「米沢さん? どうかしたんですか?」


甲斐享は、昔の仕事仲間にだけは、
どうしても当時のままの接し方になってしまうことが
自分のことながら可笑しかったが、


「伊丹さんが死んだ・・・?」


米沢守からの電話に、動揺を隠しきれなかった。



伊丹刑事≠アポロガイストは、
パーフェクターによって九頭竜の生命エネルギーを吸いとり、
九頭龍国の二人の女王の命までは奪わずに、
元の姿に戻すことに成功した。


それまで必死に押さえつけていた
アポロガイストの人格は、
伊丹刑事が安堵した一瞬の隙をついて、
パーフェクターが吸いとった
九頭竜の無尽蔵の生命エネルギーを利用し、
伊丹刑事の肉体を乗っ取った。


乗っ取られながらも、
伊丹刑事はなんとか自我を取り戻そうと
必死にもがきくるしみ、
アポロガイストと伊丹刑事の
自我が代わる代わる交代した。


火野映司=仮面ライダーオーズは、
そんな彼を攻撃することはできなかった。


だが、
アンク=仮面ライダーリバースは
躊躇なく攻撃をしかけた。


伊丹刑事の苦しみがもっとも少なくすむように、
アポロガイストになった瞬間、その一瞬にだけ。

それは、欲望そのものの存在、グリードである彼が、
火野映司と、人と、接することにより覚えた優しさだった。


仮面ライダーリバースは、
バースやプロトバースの変身システムを元にしてはいるが、
その姿形はほとんど残ってはいない。

右腕だけではないアンクのグリードとしての本来の姿が、
まるでオーズのタジャドルコンボに
近づこうとしている(超えようとしている?)ような姿だった。

タカやクジャク、コンドル、
アンクの持つ鳥の力を、
リバースシステムがさらに増幅させることにより、
圧倒的なスピードを得ていた。

そのスピードが、
伊丹刑事がアポロガイストへと代わる瞬間に
攻撃を叩き込むことを可能としていた。


「亀山・・・」


伊丹刑事は自我を取り戻すたびに、
亀山薫の名前を呼んだ。


「伊丹・・・もうしゃべるな・・・」


「しゃべらせろ・・・
 お前には・・・言いたいことが・・・
 山ほど・・・あるんだ・・・」


「伊丹・・・」


「いきなり・・・刑事をやめて・・・
 外国に行っちまい・・・やがって・・・
 どれだけ待っていても、帰ってきやしねえ・・・」


「すまん・・・伊丹・・・」


「ずっと・・・お前に・・・会いたかった・・・
 俺は・・・お前が・・・羨ましかった・・・

 刑事は・・・事件が起きてから・・・
 しか動けない・・・

 俺が事件・・・現場に行くと・・・
 知っていれば・・・助けられた・・・かも
 ・・・知れない被害者と・・・罪をおかさせる・・・
 前に、止められた・・・かもしれない・・・容疑者、

 そのことに・・・いつも・・・
 俺の胸は・・・かきむしられるようだった・・・」


「・・・伊丹」


「被害者の・・・家族も・・・容疑者の家族も、
 ・・・守ってやりたくても・・・すぐに次の、
 事件が・・・起きて、守ってやれない・・・

 亀山・・・お前はこんな・・・遠い国で・・・
 大人たちが勝手に・・・始めた戦争の・・・
 被害者の・・・こどもたちを、守って・・・

 こどもたちは・・・お前に出会えた、おかげで、
 将来、自分たちの・・・ような、戦争で親を失う
 ・・・こどもたちを・・・生み出す、
 ようなことはないだろう・・・

 お前は・・・すごいやつだ・・・
 警部殿も・・・とんでもないが・・・
 お前も・・・いや・・・俺にとっ、ては、
 お前の方が・・・もっと、とんでもない・・・」


「伊丹・・・伊丹・・・」


「いいか、亀山・・・
 一度しか・・・言わないからな・・・
 いや・・・言えないからな、
 もう・・・限界だ・・・」


「なんだ? 伊丹、言ってくれ」


「お前は・・・俺のことも、俺の人生も、
 変えてくれた・・・

 お前に・・・出会えて、よか・・・よかった・・・」


「俺もだ、伊丹・・・
 俺も、お前に出会えて、よかったと思ってる・・・」


亀山薫は、


「・・・アンク、頼む」


涙を流しながら、言った。


「いいのか? 本当に」


「ああ、こいつを楽にしてやってくれ・・・」


「わかった」


「特命係の亀山ァッ!!」


伊丹は、かつてのように叫んだ。


「・・・伊丹、ありがとう」


「礼を、言うのは・・・俺の方だ・・・
 あ、あ、あり・・・がと・・・う・・・」


伊丹刑事の自我が消失し、
アポロガイストにその体を明け渡した瞬間、
アンクは、リバースの持てる力のすべてを発揮した。


伊丹刑事は灰となり、
あとにはパーフェクターだけが遺された。




亀山薫とアンクは、それぞれ、

「ひとりにさせてくれ」

そう言い残し、米沢守と火野映司に
ふたりの女王のことをまかせ、孤児院のどこかに消えた。


米沢守と火野映司は、
意識を失い眠る二人の女王を孤児院の医務室に運ぶと、
パーフェクターの力を少しずつ、
点滴のように生命エネルギーを注いでいった。



to be continued....

甲斐享と、九頭竜の化身改め「竜王」が、
(竜王と呼ばれるのをとても気に入ったらしい)

亀山薫が戦災孤児たちの面倒を見る孤児院に
到着したのは、それから数時間後のことだった。


ふたりは、米沢守と火野映司から伊丹刑事の最期を聞いた。

甲斐享は涙したが、竜王は、眉ひとつ動かさなかった。



寝息を立てて眠るふたりの娘を横目に、


「その伊丹という男は、無駄なことをしたな」


と、竜王は言った。


「あんたなあ! 伊丹さんのおかげで、
 あんたの娘たちは助かったんだぞ!!」


甲斐享は、竜王の胸ぐらを掴んで、そう言ったが、
刑事時代の、青かった、
青すぎた自分を思いだし、すぐに手を離した。


「だから、なんだ?
 確かに伊丹という男がしたことは、
 人として立派なことだ。

 だが、人がすべて、その男のように
 他人のために命をはれるわけではない。

 そういう人間が損をして、
 そうではない人間が得をする・・・」


甲斐享は、改めて思い知った。

この男は、本当に人に絶望しているのだ。

表情を変えず、淡々と事実を述べながらも、
その絶望は、娘たちを守り死んだ男の死によって、
さらに大きくなっているように思えた。


だが、それでも、

「せめて弔いの言葉とか・・・
 娘たちが無事なことを感謝するとか・・・
 なんかあるだろ・・・」

言わずにはおられなかった。


しかし、竜王の視線はすでに、
伊丹の遺体にも甲斐享にも向いてはいなかった。



「そこの男は人間ではないようだが・・・
 そうか、グリードか」


床に座り、壁にもたれていたアンクを見ていた。

アンクは、フンッと鼻を鳴らすだけで、

「どうして、そのことを・・・」

火野映司が代わりに尋ねた。


「地球の本棚にアクセスすれば、すぐにわかることだ」


竜王の回答に、映司は戸惑う。

「それは、Wの・・・」

地球の本棚へのアクセスは、
Wの片割れであるフィリップという魔少年の
専売特許ではないのか? と彼は思った。



地球の本棚は、
フィリップの脳内に存在するアカシックレコードだが、
そこに、フィリップ以外の者が立ち入ったことが
過去に2度あった。


1度目は、鳴海壮吉。

彼はそこで、自分の名前すら知らず、
ミュージアムのガイアメモリ製造に
ただただ利用され続ける少年にフィリップという名を授けた。

しかし、このときの彼は、
あくまでイレギュラーなゲストでしかなかった。


2度目は、50年後の未来から2018年にやって来た
謎の予言者であるウォズという男だ。

始まりの仮面ライダーであるクウガが存在せず、
すべての仮面ライダーが架空の存在に貶められるという
歴史改変が行われた際のことだった。

彼は地球の本棚にアクセスし、検索までも行っている。

しかし、彼はそこで鳴海壮吉とは違い、
フィリップには会ってはいない。

つまり、ウォズがアクセスした地球の本棚は、
フィリップの脳内にあるものとは
別のアカシックレコードである可能性がある。


竜王もまた、ウォズと同様に、
地球の本棚にアクセスできる力を持っていた。

それが
フィリップの脳内に存在する地球の本棚なのか、
それとも別のアカシックレコードなのかは定かではないが、
地球の本棚とは、もはや、
フィリップだけがアクセスできる専売特許ではないのだ。


無論、火野映司には、
理解も想像もつかない話であるのだが。


甲斐享もまた、アンクを見つめ、

「アンクって言ったっけ・・・
 伊丹さんのこと・・・ありがとう」

深々と頭を下げた。


アンクは再び、フンッと鼻を鳴らし、

「俺はリバースシステムの能力を確認したかっただけだ。
 別に相手は、その伊丹という奴でなくとも、
 映司でも、お前でも、誰でもよかった」

そう言った。

お前でも・・・その言葉に、甲斐享は気づいた。

彼は、自分もまた仮面ライダーであることを知っているのだと。

誰かから聞いたのか、それとも、
グリードという人外の存在の直観のようなもので気づいたのか、
そこまではわからなかったが・・・。


「アンク・・・俺からもお礼を言わせてくれ。
 ・・・ありがとう」

火野映司も、アンクに礼を言った。

彼にとって、伊丹刑事は初対面の人物だったはずだ。
だがそれでも、伊丹さんの死を悼んでくれている。

そして、鼻を鳴らしてばかりいるアンクもまた・・・

甲斐享は、それが嬉しかった。
人という存在に絶望するには、まだ早すぎる。そう思えた。

ふん、とアンクはまた鼻を鳴らす。

彼は、言動が素直じゃなく、誤解を招きやすいだけで、
仮面ライダーである火野映司が
信頼を寄せるほど、優しい、いい奴なのだ。

誰かに似ているような気がした。

あぁ、伊丹さんに似てるんだ、と甲斐享は思った。



「欲望そのものである存在が、人と馴れ合い心を持ったか」

しかし、竜王はそんなアンクを馬鹿にするように言った。

すぐにアンクは言い返す。

「そういうお前は、人から進化したが、
 心をなくしたようだな。閉ざしただけかもしれんが。
 人を滅ぼす無慈悲な神きどりも大概にしろ。
 たかが人間風情が進化したところで神になどなれん」


「人を滅ぼす、、、?」

亀山薫が、米沢守が、火野映司が、キョトンという顔をした。


「世界中でカオスとかいう化け物が
 暴れだしたのは、こいつのせいだ。
 こいつからはカオスのにおいがプンプンする」


「ほう、よくわかったな。さすがはグリードだ」


竜王は、
その事実を絶対に認めてはいけない者の前で、
それを認めてしまったことに、まだ気づいていなかった。



to be continued....

「人を滅ぼす、、、?」

亀山薫が、米沢守が、火野映司が、キョトンという顔をした。


「世界中でカオスとかいう化け物が
 暴れだしたのは、こいつのせいだ。
 こいつからはカオスのにおいがプンプンする」


「ほう、よくわかったな。さすがはグリードだ」


竜王は、
その事実を絶対に認めてはいけない者の前で、
それを認めてしまったことに、まだ気づいていなかった。



亀山薫は、ベッドに寝かせた伊丹刑事の遺体を前に、
椅子に座り、何時間も伏せたままでいた顔を上げた。


「神話の神や天使、悪魔の姿をしたやつらのことだな・・・
 俺が九頭竜を見た日・・・
 美和子を殺した・・・
 そうか、お前がやったのか・・・」


亀山は、枯れるほど涙を流し、生気のない顔をしたまま、
米沢守や火野映司がいくら声をかけても返事をしなかった。

甲斐享は、まだ亀山に挨拶すらできてはいなかった。


しかし、竜王の言葉に反応し、顔を上げた亀山は、
かつて、
学生時代からの親友が殺人鬼だったと知ったときのように
あるいは、
この孤児院の本来の主である友人を殺した犯人を
目の前にしたときのように、
その両の瞳は、絶望と、憤怒に燃えていた。


「美和子って・・・?」

甲斐享は、米沢守に問う。


「亀山さんの奥さんです。ご夫婦でこの孤児院を
 きりもりされていると聞いておりましたので、
 美和子さんお見かけしないなと思ってはいたのですが・・・

 踏み込んで良い話題なのかどうか悩んでおりました・・・
 まさか亡くなられていたとは・・・」


亀山美和子は、元フリージャーナリストだ。
亀山薫が亡き友人の跡を継ぎ、
この地で戦災孤児たちの面倒を見ることを決め、
警視庁を退職した際に、共にこの地にきた。

今から十数年も前の話だ。

しかし、Sの襲来から八年、
夫と共に戦災孤児たちの面倒を見ながら、
フリージャーナリストとしての活動を再開していた。

世界中を混乱に陥れているカオスが
この地に現れたという情報を聞き付けると、
夫の制止を振り切って、ジープを走らせた。

そして、行方不明となっていた。

見つかったのは、
破壊されたジープと血のついた結婚指輪、
そして、その指輪をはめた左手の薬指だけだった。


「お前が・・・お前が・・・美和子を・・・」


椅子を蹴とばすようにして立ち上がった亀山薫は、
伊丹刑事の遺したパーフェクターを手に持っていた。

「そんなやつのこどもを守るために、
 伊丹は死んだのか・・・?」

亀山はパーフェクターを、額にかざそうとしていた。


「映司! 亀山を止めろ!
 あの装置には、九頭竜の生命エネルギーが
 まだ大量に残ってるぞ!!」

アンクが叫び、火野映司は躊躇することなく
素早く亀山の背後に回り込むと、
パーフェクターを握る手をつかんだ。

「亀山さん・・・それを・・・
 それから、手を離してもらえませんか?」

映司は亀山の手をつかみこそしたものの、
血がしたたるほど強く握りしめた亀山の手から、
パーフェクターを奪い取ることはできなかった。


「好きにさせたらどうだ?
 どうせ、その男には、九頭竜の力は扱えない」

竜王が、まるで楽しんでいるかのように言った。

その意味がわかったのは、おそらく甲斐享だけだろう。

「・・・千年細胞を持ってないからか。
 亀山さん、やめてくれ!
 あんたまで死んだら、
 この孤児院のこどもたちはどうなるんだ!?」

その声は、もはや亀山には届いていなかった。


「伊丹・・・俺に力を貸してくれ・・・
 俺は美和子の仇を討たなきゃいけないんだ・・・」

亀山は、映司の手を振りほどき、
一歩一歩、竜王ににじり寄る。


「やはり、人というのは、醜い生き物だな・・・
 伊丹という男の死を、
 この男は無駄にしようとしている・・・」


「無駄かどうか、確かめてみるか・・・?」


亀山薫は、パーフェクターを額に当てた。

凄まじいまでのエネルギーが
自分の体に流れ込んでくるのを彼は感じた。

パーフェクターと亀山薫はまばゆい光を放ち・・・

あまりのまぶしさから、
皆が目を閉じ、そして目を開いたとき・・・


「ありがとう・・・伊丹・・・
 今、俺とお前はひとつになったみたいだな」


亀山薫の姿が変わっていた。

その姿は、
アポロガイストの面影を残しながらも、
仮面ライダーに近いものだった。


ほう、と竜王は、感嘆の声を漏らす。


「仮面ライダーアポロ・・・
 あるいはガイストと言ったところか」


それは、後に
「仮面ライダーガイスト」と名乗ることになる、

アポロガイストと九頭竜の力を持ち、
そして、千年細胞を持つ、
新たな仮面ライダーの誕生の瞬間だった。



to be continued....

エクストリームメモリは、
左翔太郎ら名探偵や名刑事たちを、
一度分子レベルにまで分解し、データ化することによって、

フィリップと照井竜が変身した
仮面ライダーW サイクロンアクセルの元へと運んだ。


左翔太郎は開口一番に、

「なんだそのW!?」

と、唖然とした。


「翔太郎、君がかつて、
 ミュージアムの長であり、ぼくの父でもあった
 テラードーパントの恐怖を克服出来なかった場合、
 ぼくの母が、ぼくと君ではなく、
 ぼくと照井竜によるW、そして、
 エクストリームを検討していたことを覚えているかい?」

左翔太郎にとっては苦い思い出だった。


「あのとき君が恐怖を克服できたからこそ、
 ミュージアムを壊滅できた。ぼくはそう思っている。

 だが、ぼくは、そのWのもうひとつの可能性に
 ずっと興味があった。

 そして、今回、それを試す機会がようやく訪れた」


「なるのか・・・? フィリップ。
 サイクロンアクセルエクストリームに」


「おそらく、そうしなければ、
 ぼくたちは、これから現れる脅威に対抗できない」


「これから現れる脅威?」


「すべてのカオスの産みの親だよ。

 千のコスモの会の長にして、
 カオスシードと、それから生まれるカオスにより
 世界を滅ぼそうとする者・・・

 その者は、人に絶望し、虚無に生きる、
 真の世界の破壊者・・・

 Sの再来であり、そして、
 秘匿され続けてきたファティマの
 第三の預言にある存在・・・」


地響きが始まり、街中の家屋が倒壊していく。

落雷が起き、比較的海に近い
N市八十三(やとみ)町に、
津波が押し寄せてくるのが遠くからでも見えた。


「まるで聖書の中の出来事だな」


「何かが来る・・・」


『エクストリーム!』


「照井竜、君とぼくのWの真の力、試させてもらうよ」


『サイクロン! アクセル! エクストリーム!!』


仮面ライダーW サイクロンアクセルエクストリームは、
迫る脅威に対して臨戦態勢をとった。


「そりゃないぜ相棒・・・
 俺じゃ役不足ってことかよ」


「翔太郎、君は役不足という
 言葉の使い方を間違えている。

 役不足というのは本来・・・」


「はいはい、
 日本語は日本人でも難しいんだよ・・・

 それじゃあ、俺もこいつの本当の力、
 試させてもらうかな・・・」


左翔太郎は、ジョーカーメモリに
再度ガイアメモリ強化アダプターを取り付けた。


『ジョーカー!アップグレード!!』


「変身!」


『アンリミテッド・ジョーカー!!』


その姿は、仮面の一部がスカルのようであり、
体はジョーカーをベースにしつつも、
まるで黒いエターナルだった。


アンリミテッド・ジョーカーとなった
左翔太郎も臨戦態勢をとる。


「左はやはりお前を俺にとられたのが、
 相当ショックだったようだな・・・」


「翔太郎には翔太郎の役割がこの場には存在する。

 彼はやはり、常にぼくらの切り札なんだ。

 サイクロンアクセルエクストリームは、
 実は翔太郎のアシストをするための変身に過ぎない」


「・・・ほう。それは楽しみだ。
 それにしても、
 甲斐享と九頭竜は間に合わなかったな」


照井竜が言う。


地響きと共に現れた華奢な女を、
その場にいる者で、知らない者はいなかった。

千年細胞の発見者である小久保晴美だ。


「おいでなさい、ライドドレス!」


小久保晴美は、強化外骨格というよりは、
美しいドレスのようなものをその身にまとった。


      (アマテラス・リンネ)
「仮面ライドレス天照・輪廻・・・
 それが、ファティマの第三の預言にあった
 真の世界の破壊者の名前・・・」


フィリップが言う。

しかし、


「鳴海探偵事務所のフィリップ・・・
 お前ですら、知らないんだな・・・
 ファティマには、聖母から預言を授かった
 四人目の少女がいたことを・・・」


さらなる真実を告げる少女の姿があった。


「加藤梨沙・・・?」


フィリップに名前を呼ばれた少女は言う。


「第3の預言は、
 その内容が秘匿されていただけだけど、
 第4の預言はその存在自体が秘匿されていた。
 だから・・・しかたないか。

 来て、梨沙のライドドレス!」


梨沙もまた、ライドドレスに身を包む。


「第4の預言は、第3の預言と対になるもの。

 天照輪廻がカオスと共に現れたとき、
 九頭竜と造化三柱が現れ、それを止めるだろう。

 ぱぱは間に合わなかったけど、梨沙はここにいる。
 杉下右京も。

 そして・・・」


左翔太郎の、
アンリミテッド・ジョーカーの変身が突然解除された。


「なんだ? 何が起こった?
 さらに強力なガイアメモリジャマーか?」

ロストドライバーさえも消失した。


「お、おい、相棒・・・」


「大丈夫だ、翔太郎。
 まもなく彼が来るはず・・・」


『クリエイター!』


左翔太郎の腰に、見たこともない
ガイアメモリがささったダブルドライバーが現れた。


「さあ、翔太郎、ジョーカーメモリを」


「何が何だかわからねえが、わかったぜ相棒」


『ジョーカー!』


「ぼくたちは以前、九頭竜の化身と出会ったとき、
 長野県にある岩戸のことを教えたことはあったが、
 彼と共に戦ったことはなかった」


「甲斐享から話を聞いてはいたが、確かにそうだな」

照井竜が答える。


「そして、九頭竜の化身の二人の娘と
 ぼくたちは出会うことになるわけだが、
 ぼくはその少し前、
 地球の本棚に膨大な量の情報が
 更新されていることに気づいた」


「お前がおとぎ話について調べるために
 地下室にひきこもっていたころか・・・」


「ぼくの他にも
 地球の本棚にアクセスできる人間が持つ、
 歴史改変が行われる以前の状態のまま、
 千年の時を別の亜空間で生きた記憶・・・

 それが地球の本棚に記録として保存されていた。

 だから、ぼくは、
 この時のために陰ながら動いていたのさ」


照井竜には、
彼の言葉の意味や真意は
半分も理解できてはいなかったが、


『クリエイター! ジョーカー!』


左翔太郎が、その場にいる誰も見たことがない、
仮面ライダーW クリエイタージョーカーに
変身するのを見た彼は、なんとなく理解した。


「だ、誰だ、あんた!?」

翔太郎は、
いつものフィリップのように、
自分の肉体に入り込んできた
精神体に驚きの声をあげた。


「翔太郎、その人は、
 ぼくたち仮面ライダーすべての創造主だ。

 石ノ森章太郎。

 ふたりのショウ太郎によるW・・・
 それがWの、さらにもうひとつの可能性だ」


フィリップは、
桃太郎や浦島太郎、金太郎について調べている中で、
地球の本棚のデータベースの更新に気づいたが、

おとぎ話についてというより、
名前に太郎を持つ者について調べることに
夢中になっていき、

その中でたまたま偶然に
ふたりのショウ太郎によるWの可能性に
気づいただけであったが、
そのことは黙っておくことにした。


「こういうときは何て言うんだったかな・・・
 ああ、そうだ・・・

 真の世界の破壊者、天照輪廻、

 さあ、君の罪を数えたまえ!」


左翔太郎の中のもうひとりのショウ太郎は、
そう言って、
まるで「寿司ざんまい」とでも
言うかのようなポーズをとった。






to be continued....

「石ノ森章太郎・・・?
 俺たち仮面ライダーの創造主・・・?」

困惑する左翔太郎に、
もうひとりのショウ太郎は言う。

「詳しいことは後で話そう。
 だが、まさか、このように、
 私が産み出したわけではない
 仮面ライダーに、ぼく自身がなるとはね・・・

 それも、漢字こそ違うとはいえ、
 ぼくと同じ名前の青年と
 ふたりでひとりの仮面ライダーとは・・・

 だが、これは、
 クリエイタージョーカーは、
 私と君のWの真の姿ではない。

 来てくれるかい? アメノミナカ!!」

石ノ森章太郎が名前を呼ぶと、
エクストリームメモリによく似た姿をした
特殊なガイアメモリが、
クリエイタージョーカーの真上に現れた。

サイクロンジョーカーやサイクロンアクセルが
エクストリーム形態に変化するときと同じように、
クリエイタージョーカーは眩い光に包まれ、

「クリエイタージョーカー・アメノミナカ」に変化した。



それを見つめる照井竜に、フィリップは言う。

「照井竜、ぼくには君とWになるという可能性が存在し、
 それがこのサイクロンアクセルエクストリームだ。

 だが、Wはぼくと誰かによる変身だけでなく、
 翔太郎とぼくではない誰かがWとなる可能性が存在していた。

 そして、今、ぼくと翔太郎が、
 それぞれ別のWとして、同時に存在している。
 ゾクゾクす」


「ゾクゾクしているところ悪いが、そろそろ始まるぞ」


仮面ライドレス カミムスヒ転生に
変身した加藤梨沙が、
真っ先に天照輪廻に攻撃をしかけた。

「ゴールデンバタフライエフェクト!!」

カミムスヒ転生を中心に、
無数の黄金の蝶が飛んでいた。

カミムスヒ転生は、
右手の親指と人差し指を立て拳銃のような形を作ると、
その一羽に向かって、指先から光線を放った。

蝶は、それを反射し、
さらに別の蝶に向けて反射し、またさらに、
その繰り返しがコンマ数秒の間に起き、
無数の光線となって天照輪廻を撃ち抜く。


「梨沙ちゃん、あなたも私を裏切るの?」

「お前は、梨沙の好きな晴美じゃないからな。
 梨沙は、まだ人に絶望したりしてない。

 晴美も梨沙もパパも、
 56億7000万回も人生を繰り返して、
 ようやく幸せになれた。

 でも、その幸せは、長くは続かなかった。
 千年細胞のせいで。長く生きすぎたから。

 でも、梨沙たちは一度はたどり着いた。
 人はまだこれから。

 梨沙も晴美もパパも
 何度も何度も間違えた。失敗した。

 たまたまやり直すことができたから、
 目指してた場所にたどりつくことができただけ。

 だけど、みんながみんな、やり直せるわけじゃない。
 みんな、失敗する。
 失敗から学ぶ。
 取り返しのきかない失敗だってもちろんある。

 でも、だからって、晴美が人を滅ぼしていい理由にはならない。
 梨沙は人の可能性を信じたい」


「そう・・・
 あの父親にして、この子あり、ということね・・・

 わたしたちは、家族ごっこをしていただけみたいね。
 結局、わかりあえたつもりになっていただけで、
 わかりあえてなんかいなかった・・・」


「梨沙は晴美を家族だと思ってる。

 でも、今の晴美は違う。
 パパも違う。

 パパには九頭竜が、晴美には天照がいて、
 今、パパも晴美も、
 そいつらに支配されているだけ。
 だから、梨沙の好きな晴美に戻す」


九頭竜の化身に最も愛された女と、
九頭竜の化身に最も愛された娘、

ふたりの戦いは、
街をあっという間に焼野原に変えた。



「よくわかりませんが、
 私がこの場に居合わせたということは、
 こうすれば良いのでしょうか・・・」

警視庁特命係の刑事であり、
甲斐享や亀山薫のかつての相棒である杉下右京は、
慣れないポーズをとると、小さな声で、変身、と言った。

杉下右京は、
仮面ライダータカミムスヒ輪舞曲(ロンド)となり、

そして、今、
ファティマの第四の預言の通り、


N市八十三町に造化三神が降臨した。





一方その頃、中東では・・・


亀山薫=仮面ライダーガイストの
繰り出した拳が、竜王の腹部を貫通していた。


「なぜお前が九頭竜の力を扱える?」


竜王はもはや痛みすら感じないのか、
表情を変えず、ただ声色だけは不思議そうに
亀山にそう尋ねた。


「どうやら、このパーフェクターってやつが、
 お前の娘たちから九頭竜の力だけでなく
 あんたらの持つ千年細胞とかいうものも
 奪っていたみたいだぜ。

 あの子たちは、もうただの人間だ」


「そうか・・・
 人を滅ぼす時は、千年細胞を持つ者だけは、
 生かしておいてやろうと思っていたんだがな」


竜王は、もはや、
自分の娘に対してさえ興味を失ったようだった。


「伊丹さんが命をかけてまで助けてくれた、
 自分の娘すら殺すつもりか・・・」

甲斐享の言葉は、竜王には届かない。


亀山薫は、
彼にしかわからない変化の説明を続ける。

「そして、その千年細胞と
 九頭竜の力が、今俺の中で暴れている・・・

 体が熱いなあ、伊丹・・・
 まるでお前みたいな暑さだ・・・
 熱いじゃなくてな・・・

 でも、悪くない・・・
 むしろ、心地よさすら感じる」

その言葉は、亀山薫らしいものであったが、
彼が亀山薫でなくなろうとしていることに
気づいた者がその場にひとりだけいた。


「映司、甲斐享、変身しろ!
 亀山の、あの仮面ライダーの持つ
 エネルギーが爆発しかけてやがる!
 まずは、あいつを止めるぞ!」

アンクの言葉に真っ先に反応したのは、甲斐享だった。

カムイドライバーはずっと腰につけたままで

(その方がヒヒイロカネを操り易いし、
 何より竜王と行動を共にするには
 そうすべきだと判断したからだった)、

即座に変身が可能だった。

まさか、亀山薫を止めるために
変身をすることになるとは思いもよらなかったが。


「亀山さん、もう、やめてくれ。
 あんたまでここで死んだら・・・
 杉下さんが悲しむ」

米沢守もまた、生身のまま、

「美和子さんも悲しみます。」

甲斐享と共に亀山の手をとった。


「あのグリードの言う通りだ。

 千年細胞は、その名の通り、
 千年の時を生きることができる、
 細胞分裂による劣化も、
 ガン化という突然変異も起きることのない細胞だ。

 数千年前に起きた大洪水の際に一度、
 全知全能の唯一神により書き換えられた人の遺伝子を、
 元通りに書き換え直すことによってしか生まれず、
 その遺伝子の書き換えは、10000人に数人しか成功しない」


火野映司は、対応が遅れた。

亀山を止め、竜王を名乗る九頭竜の化身を
そのどちらかも相手にしなければならないとなると、
コアメダルを途中で交換などしていられない。

百以上ある組み合わせから、
最初からどちらにも対抗できる
最善の組み合わせを考えていたからだ。


「スーパータトバだ、アンク!」

「ほらよ!」

「変身!」


仮面ライダーオーズ スーパータトバコンボ。

それはかつて、
四十年後の未来から来た仮面ライダー、
アクアから受け取った
未来のコアメダルを使って変身する、
オーズの最強形態だ。

下手に組み合わせを考えるより、
最強形態が一番だという結論に至った。

そして、アンクもまた、


「変身」

仮面ライダーリバースに変身した。


「これはもっと先まで
 とっておくつもりだったんだがな・・・」

リバースドライバーに手持ちのコアメダルを挿入する。

コアメダルに強制対応させた
バースのすべての追加武装を装着した形態

リバースデイへと変化した。

鴻上ファウンデーションの社長によれば、
コアメダルへの強制対応は一度しかできず、
使用後はすべての追加武装が大破する、
リバースの奥の手だった。


「アンク、頼りにしてるからな」

「お前こそ足を引っ張るなよ」


ふたりが考えていることは同じだった。

この孤児院の中で戦うわけにはいかない。

一刻も早く、亀山薫と九頭竜の化身を
孤児院から遠く離れた場所に・・・

ふたりが、まだ話をしているうちに・・・


「心配はいらないさ、竜王さん」

「心配などしてはいない。
 もうすぐ無駄死にする命だ。
 大切にしろと助言しているだけだ」

「そいつはありがとうな。

 だが、このパーフェクターは、
 どうやら生命エネルギーを吸い取るだけじゃないようだ。

 もう、千年細胞や九頭竜の力を抑えつけはじめている」


「厄介な装置だ。
 アポロガイストは確か、
 大ショッカーの幹部・・・
 鳴滝が開発したものか・・・」

亀山薫=仮面ライダーガイストの腕は、
竜王の腹部を貫通したままだった。


「だが、お前が千年細胞を持つ者となったなら、
 その体に流れる血は、
 神の液体金属ヒヒイロカネとなったわけだ」

竜王が何を考え、何をしようとしているか、甲斐享だけがわかった。


「亀山さん、すぐに腕を抜くんだ!
 取り込まれるぞ!」

亀山はあわてて腕を引き抜いたが、すでに遅かった。

すでに、その腕は竜王の腹部の修復に使われており、
引き抜いた腕は、肘から先がなかった。

「ぐっ・・・」


「米沢さん、亀山さんを連れて安全な場所に」

うめき声をあげる亀山を甲斐享は米沢守に託すことにした。


「離してくれ、米沢さん・・・
 そいつは、美和子と伊丹の仇だ・・・」

亀山薫は変身がすでにとけていた。

だから、米沢守は、失礼、とだけ言って、
彼の首筋に手刀をあびせ、昏倒させた。


「甲斐さん、あとはおまかせください」

「頼みます、米沢さん」



「映司、甲斐享、
 おそらく奴は九頭竜と分離し、
 どちらかが死んでも、復活できるようにするはずだ」

「つまり、分離する前に倒すか、
 分離した後は同時に倒すか、
 そのどちらかしかないわけか。厄介だな・・・」

「厄介でもやるしかない」

「その通りだ」

「三対一か、ちょうどいいハンデだな」


竜王のその言葉に、


『仮面ライダーを舐めるなよ』


三人は、力を爆発させた。




to be continued....
 

仮面ライダーW サイクロンジョーカーエクストリームには、
プリズムビッカーという武器が存在する。

プリズムメモリを装填することで、
プリズムソードとビッカーシールドに分離する
剣と盾がひとつになった武器だ。

ビッカーシールドは
四隅に展開されたマキシマムスロットにより、
4種類のガイアメモリの「地球の記憶」を
同時に再現することが可能な他、

中央のプリズムマズルからは
ガイアメモリの力を光線に変えて撃ち出すことができる。

盾に装填するメモリは、
サイクロンとジョーカーを除いたWの基本メモリとなる
ヒート、メタル、ルナ、トリガーである。

シールド本体もかなりの硬度を持ち、
材質は不明だが、キャプテンアメリカの盾の材質である
ビブラニウムと同等かそれ以上の硬度である。

また、プリズムソードの斬撃は
プリズムメモリによって発生したエネルギーを纏うことで
敵のガイアメモリの力を無効化し、
強力な斬撃を放つことができる。


サイクロンアクセルエクストリームもまた、
このプリズムビッカーを持つ。

仮にこれをプリズムアクセルビッカーと呼称するが、
メタルの代わりがエンジン、トリガーの代わりがトライアルとなる。

さらに盾を持つのではなく腕や背中に装着することで、
エンジンブレードとの二刀流が可能となり、
盾をキャプテンアメリカのように投擲することも可能だ。

サイクロンアクセルエクストリームは、
サイクロンジョーカーエクストリームより機動性に優れ、
攻撃に特化したWと言えるだろう。


「あれは、いい武器だね。ぼくたちにも是非欲しい」

クリエイタージョーカーアメノミナカの中で
左翔太郎ではないもうひとりのショウ太郎、
石ノ森章太郎が言った。

左翔太郎は、
クリエイターメモリも、
アメノミナカメモリも、
石ノ森章太郎という男も、
この日はじめてその存在を知ったし、

Wに自分とフィリップや、
照井竜とフィリップによる変身ではない
第三の可能性があることもまた、
この日はじめて知った。

クリエイタージョーカーが
どんな能力を持つのか、まだよく理解していないというのに、
アメノミナカ形態になってしまい、困惑の極地にいた。

アメノミナカメモリが
エクストリームメモリによく似ていたから、
もしかしたら
プリズムビッカーのような武器があるのかもしれないが・・・


ーーそんな都合のいい話あるのかよ。


というのが、彼の本音だった。


「左くん、ぼくのメモリはクリエイターだ。
 なければ、作り出せばいいだけだとは思わないか?」


「作り出す? 今から?」


「そう、クリエイターは創造のメモリ、
 そして君のジョーカーは切り札のメモリ・・・

 君は探偵業を営んでいるようだが、ぼくは漫画家でね。
 探偵が捜査に行き詰まることはよくあるだろう?

 漫画家も煮詰まることがよくあるのだが、
 そんな時は引き出しをいくつ持っているか、
 君もぼくもそれが切り札となっているはずだ」


石ノ森章太郎の言葉に、

「確かに・・・」

翔太郎は思い当たる節があった。

だが、それが何を意味しているのか、
翔太郎にはよくわからなかった。

捜査と創作、
ふたりは全く違う仕事をしているが
似たような局面によく遭遇し、
それを打破するための方法もまた同じ・・・

全く違うようで非常によく似た仕事をしているというのは、
かろうじて理解はできたが・・・


「そして、漫画家には、いわゆる
 神が降りてくるという状態が存在する。
 アイデアが溢れてきて、筆が追い付かないような・・・」

探偵にも似たようなことがあった。
神が降りてくるという表現をすることはないが、
何かをきっかけに行き詰っていた捜査が
一気に進展してしまうひらめきを得ることがあった。


「今のぼくたちは、クリエイタージョーカー、
 そこに造化三神の一柱アメノミナカの力が加わり、
 クリエイタージョーカーアメノミナカとなっている。
 これが何を意味するか、わかるかな?」


「もしかして、神が降りてきてるってことか?」


「その通りだ」
 

『スターダスター!!』


石ノ森章太郎がその名を呼ぶと、
プリズムビッカーに似て非なる、盾と剣が現れた。

プリズムビッカーの盾は、
ガイアメモリを装填するスロットが四つだが、
目の前に現れたスターダスターはそれが24あった。


「なんだ、これ・・・
 これは、まるでエターナルが
 すべてのT2ガイアメモリの力を使って、
 とんでもない力を出したときみたいな・・・
 そうか、クリエイターであるあんたが、
 俺の中にある経験・・・
 つまり、ひきだしをジョーカーとして・・・」


「理解が早くて助かるよ」


「だけど、差すメモリは?
 24個もないだろ?
 俺はジョーカーの他にはメタルとトリガーしかない」


「ないなら、作り出すだけだ。
 二度目だよ、言うのは」

『アメイジング!』
『ビヨンド!』
『ドラグーン!』
『エゴ!』
『ファンタスティック!』
『ガイア!』
『ハザード!』
『イデア!』
『キラー!』
『リンク!』
『ノーバディノウズ!』
『オデッセイ!』
『ペルソナ!』
『クイック!』
『リッチ!』
『スーサイド!』
『アルテマ!』
『ヴァンパイア!』
『ワンダーランド!』
『ゼノ!』
『ユアセルフ!』
『ジッパー!』


翔太郎と石ノ森章太郎、
ふたりによるWの目の前に、
メタルとトリガーを除いた22のガイアメモリが出現した。

「さあ、左くん、スターダスターをその手に・・・」

「・・・ああ、わかるぜ。
 全部俺の知らないメモリだが・・・
 こいつらがとんでもない力を持ってるのが・・・」

左翔太郎は、スターダスターを手に取り、


『スターダスト!』


プリズムビッカーと同じように、
まずはスターダストメモリを差し、剣と盾に分離させた。

その瞬間、
メタルとトリガーを含む24のガイアメモリが、
盾にある24のマイシマムスロットに
引き寄せられるように装填された。

「まずは、カオスと呼ばれる有象無象を一掃しよう」

「ああ、フィリップや照井に負けてられないからな」

クリエイタージョーカーアメノミナカは、
スターダストシールドから24筋の光線を発射すると同時に、
高く飛び上がり、スターダストブレイドを振りかぶる。

「くらいやがれ!」

一振りで光線と同じ数だけの斬撃が、
衝撃波となってカオスたちを一掃した。



to be continued....

米沢守は、
片腕を失い変身が解除された亀山薫を背負い、
孤児院から数キロ先まで走った。

元鑑識課の小太りの中年も、
警察学校の教員となって数年がたつ。

自分が教員よりも、
古巣である鑑識の仕事の方が性に合っていることは、
未だに思うことではあった。

しかし、これから警察官となる若者たちの中から、
第二の杉下右京や亀山薫、
神戸尊、冠城亘といった者が現れるかもしれない。

あるいは、甲斐享のように、
若さゆえに過ちを犯す者も現れるかもしれない。

そう思うと、
警察官としての自分の仕事に優劣はないが、
今任されている仕事にもやりがいが持てた。

教員として、常に相応しく、
若者たちの見本とならねばならない。

知識はもちろん、体力、心構え、
警察官に求められる、すべてにおいて。

生活習慣を改めるところからはじめ、
長い月日をかけて、すべてを一から磨き直した。

だから、成人男性のひとりくらいならば
背負って数キロ走ることなど造作もない程度の
体力は持ち合わせていた。


「ここまでくれば、もう安全でしょうな・・・」

さすがに息は切れてしまってはいたが・・・

米沢は亀山を下ろし、木にもたれかけさせると言った。

そして、亀山がある物を持っていないことに気づいた。

洞察力もまた、かつての米沢とは
比べ物にならない程研ぎ澄まされていた。


「・・・亀山さん、パーフェクターは?」


「あぁ・・・あれなら、置いてきました」


「・・・?
 置いてきた? どこにです?」


「そのために、わざと、この腕をくれてやったんです。
 いまごろ、あの竜王だか、九頭竜の化身だかは、
 腹の中のパーフェクターに力を奪われ続けているはずです」


「亀山さん・・・あなたって人は、相変わらずですな」


「そういう米沢さんも変わってないみたいだ」


「杉下警部もお変わりないですよ」


「右京さんか・・・会いたいな・・・」


「特命係はよく謹慎処分を受けますからな・・・
 その度に杉下警部は
 ヨーロッパに行かれているようですが
 ・・・こちらには?」

「右京さんは来ないよ。あの人は、不器用だから。
 俺と会ったら、どんな顔をしたらいいか、
 なんの話をしたらいいか、全然わからないんじゃないかなぁ」

「さすがは亀山さんですな・・
 杉下警部をよく理解してらっしゃる」


「右京さんとは、長い付き合いだったからなあ・・・

 1日か2日か、いや半日でいいから、
 日本に帰りたいなと何度も思ったけど、
 帰るなら美和子もいっしょに帰りたいだろうし、
 でもそれだと、
 あの子たちの面倒を見る大人がいなくなってしまう。
 だから、なかなかね・・・

 美和子が死んじまったから、
 ますますここを離れられなくなったな・・・」


「そういえば・・・孤児院の子どもたちは?」

米沢守は、大切なことを忘れていたことに気づく。


「まだ、あそこだ・・・米沢さん、俺戻らなきゃ」


「そのお体では無理です。ここは私が・・・」


そのとき、
亀山薫の孤児院がある方角から、
九つの竜の首のようなまぶしい光・・・

いや、エネルギー体が、空を割るのが見えた。


加藤梨沙も知らない、
ファティマの第五の預言の扉が開こうとしていた。







竜王は、亀山薫によって腹部の、
それも丹田に埋め込まれたパーフェクターによって、
生命エネルギーを奪われ続けていた。


「こ、このままでは、
 千年細胞もヒヒイロカネも持っていかれる・・・!
 九頭竜の力も・・・すべて・・・
 俺が俺でなくなる・・・
 このままでは・・・娘たちのようにただの人に・・・」


竜王はこれ以上エネルギーを奪われないために、
九頭竜と分離しようと試みた。

九頭竜が生きてさえいれば、
自分がすべての生命エネルギーを吸いとられ、
渇れ果てたとしても、再生が可能だからだ。

しかし・・・


「まさか、我の化身である貴様が、
 たかが人間ごときにここまでやられるとはな」

竜王の脳に直接、九頭竜が話しかけてきた。


「同感だよ・・・
 大ショッカー時代の鳴滝が作ったものなんだろうが、
 まさか生命エネルギーだけでなく
 千年細胞やヒヒイロカネ、
 あんたの力まで奪うことができるように
 作られているとは・・・」


「鳴滝という男は、
 貴様や貴様の女と同様に56億7000万回、
 人生を繰り返していた・・・

 貴様同様、その記憶はやり直しのたびに
 消去されていたはずだが、
 断片的な脅威に対する記憶が残っていたのだろうな。

 貴様や、貴様のスペアが、我の化身となったのは、
 56億7000万回のうち、一度や二度ではないだろうからな」


「なるほど・・・とんだ置き土産だ。
 ・・・あの亜空間で暇を潰していた将棋の
 逆恨みかと思ったくらいだよ、鳴滝。

 おそらく、千年細胞やヒヒイロカネ、
 あんたのことまでは覚えていなかっただろうが・・・

 人が進化し、たとえば、
 神人合一を果たした場合に持つ能力を想定し、それを奪う、
 それくらいのことは視野に入れて作っていたんだろうな・・・

 じゃなければ、ディケイドに倒されたはずのアポロガイストを、
 わざわざ地球の記憶としてガイアメモリに遺しているわけがない」


竜王の体は、既に干からび、生命エネルギーはほとんど残っていなかった。
手足の指先から徐々に灰と化し始めていた。


「悪いな、九頭竜さんよ。俺はもうすぐ死ぬみたいだ
 再生してくれるか?」


「貴様はもう用済みだ。
 我は新たな宿主を探すとする」


「ま、待ってくれ
 俺はまだ戦える! 次は負けない」


「貴様や、貴様の女が、人という存在に絶望し、
 人を滅ぼす、というのは、なかなか面白い遊びだった。

 だが、貴様のなかにはそれを実現させるだけの覚悟がない。

 貴様には心がまだ残っている。
 それゆえに迷いがある。

 本当に、人を滅ぼしていいのか、
 そこまで人という存在は愚かなのか、とな。

 貴様もまた愚かな人だからだ。人は神にはなれない。

 人を滅ぼすことができるのは、神だけだ。
 それも、九頭竜や造化三神などといった
 神格の低い神ではなく、我のようなな」


「どういうことだ?
 あんた、九頭竜じゃないのか?」


「九頭竜は、すでに先の神威との戦いで滅した」


「俺が再生したはずだ」


「貴様が再生したのは肉体だけだ。
 その肉体を我が器とした」


「あんた、誰だ?」


「唯一無二の絶対神。
 人がみだりにその名を口にしては
 ならない存在といえば、貴様にもわかるか?」


「まさか、ヤハ・・・」


九頭竜は、
いや、みだりにその名を口にしてはならない、
唯一無二の絶対神は、
竜王を見棄てた。


絶対神は、竜王の体がすべて灰になるのを見届けると、
九頭竜の体のまま、9つの竜の首のエネルギー体となり、
新たな宿主を探し始めた。


「まずは、あの男のスペアだ。
 56億7000万回繰り返された歴史の中で
 過去に何度か、九頭竜の化身となったこともある」


竜の首のエネルギー体のひとつが、
甲斐享=仮面ライダー神威の体を貫いた。

そして、残り八つのエネルギー体は、
アンク=仮面ライダーリバースデイを目の前にすると、
彼が人ではなかったからだろうか、その体を貫くことをやめ、


「映司、逃げろ!そいつは危険だ」

すぐそばにいた火野英司=仮面ライダーオーズの体を貫いた。

「映司!!」


亀山薫と米沢守が見た9つの竜の首のエネルギー体・・・
そのうちのふたつは、仮面ライダー神威とオーズであった。

そして、それらは、東の方角に向かっていった。

その先にあるのは・・・



日本だ。







灰と化した竜王の前に、一人の男が舞い降りた。

背中にはフライトユニット、
そして左腕には星条旗をイメージした盾・・・
鍛えあげられたその身を包む、
ビブラニウム製のパワードスーツ・・・


「すまない・・・間に合わなかった。
 いつか必ず迎えに行く・・・
 そう心に決めていたんだが・・・
 ローディ大佐がやられちまったり、
 こっちもいろいろあってな・・・」


その男は、
かつてキャプテンアメリカと呼ばれた男と、
アイアンマンと呼ばれた男、
その二人を彷彿とさせる姿をしていた。


「あんたに認めてもらうため、
 あんたに名前を呼んでもらうため、
 そして、今度は、俺があんたを助けられるように・・・
 それだけを目標にして、やってきた。

 やっと会えたなカトー
 すぐにドクターストレンジを呼ぶ」




to be continued....

9つの竜の首のようなエネルギーが、
中東から極東の島国へ向かうのを、国連が察知したとき、

「また日本か・・・それも、またしても九頭竜・・・」

と、国連のトップである事務総長は大きくため息をついたという。

極東の島国、日本の上空で、
9つのエネルギー体はそれぞれ進路を変えた。

このエネルギー体を以降、番号で呼称する。


一首は、N市八十三町へと向かった。

その目的は、二人で一人の仮面ライダー、Wだった。


甲斐享=仮面ライダー神威や仮面ライダーオーズにしたように、
みだりにその名を口にしてはならない唯一無二の絶対神は、
自らのエネルギーの一部を
仮面ライダーたちの体内に浸入させることにより、
意のままに操れる仮面ライダーの軍勢を作り出そうとしていた。


しかし、
「二人で一人」のはずの仮面ライダーWが、
「三人と精神体一人で二人」という、
後に国連も非常に理解に苦しむ状況にあり、
一首はどちらが本物のWかわからず困惑した。
(どちらも本物なのだが)

なおかつ、そこにはさらに、
どうにかして変身したまま紅茶を飲もうとする
仮面ライダーがひとりおり、

仮面ライドレスを名乗る女性まで、ふたりもいた。


一首は、間もなく消息不明となる。

合計五人の仮面ライダーのいずれかに
消滅させられたと推測される。


一首が消息不明になったことを察知した
二首=仮面ライダーオーズは、N市八十三町へと進路を変えた。

「三人と精神体一人で二人」の仮面ライダーW、
サイクロンアクセルエクストリームと

クリエータージョーカーアメノミナカ、
仮面ライダータカミムスヒ輪舞曲(ロンド)、
仮面ライドレスカミムスヒ転生(テンセイ)、
造化三神の力を持つ仮面ライダーたちと、

真の世界の破壊者である
仮面ライドレス天照輪廻(アメテラス リンネ)との戦いに、

仮面ライダーオーズ・サーバントが参戦した。

火野映司の肉体はそこにはあるが、
意識はなく、完全に乗っ取られていた。


三首は、
天ノ川学園高校の教師、
如月弦太朗=仮面ライダーフォーゼの体を狙っていた。

しかし、時は2027年。
如月弦太朗は、およそ10年前に、

突然、変身能力に目覚め、
若さゆえに力に溺れ暴れる生徒たちを説得するため、
フォーゼドライバーを溶鉱炉に捨ててしまっていた。

三首は、目標を他の仮面ライダーへと変更せざるを得なかった。


四首は、
「指輪の魔法使い」こと操真晴人
=仮面ライダーウィザードの体を貫くことに無事成功した。


しかし、五首もまた、目標変更を余儀なくされてしまう。

葛葉紘汰=仮面ライダー鎧武を探したが、
見つけることはできなかったからだ。

鎧武として最後の戦いを終え、黄金の果実を得た彼は、
始まりの女と共に古い世界を滅ぼし、
新たな世界を作る創造主「始まりの男」となった。

しかし、始まりの男と、始まりの女/高司舞は
人類社会の破壊を行わず、空に巨大なクラックを展開し、
地球上を侵食したヘルヘイムの植物やインベスを全て吸い込み、
生命の欠片もいない死の惑星へとすでに移住しており、
日本どころか地球にすらいなかったためだった。


そのため三首に続いて五首もまた、
目標を変更せざるをえなくなってしまう。


しかし、
六首は、泊進ノ介=仮面ライダードライブの体を、
七首は、天空寺タケル=仮面ライダーゴーストの体を、
八首は、宝生永夢=仮面ライダーエグゼイドの体を
無事貫くことに成功した。

しかし、
仮面ライダービルドへと目標を変更した五首は、
またしてもビルドを見つけられなかった。

なぜなら、この世界における日本は、
パンドラボックスを開けたことによる
スカイウォールという壁の出現と、
日本の分断が起こらなかった世界だからである。

ビルドという仮面ライダー自体が存在しない世界であった。


また、三首が目標を変更した仮面ライダージオウもまた、
一度は50年後の未来を支配するオーマジオウの力を手にしたものの、
歴史改変を行い、自らが仮面ライダージオウに、
そしてオーマジオウになることのないようにしてしまっていた。


やがて、三首と五首は、
消息不明となっていた一首と合流を果たすこととなり、

九首=仮面ライダー神威・サーバントを筆頭とする、
みだりにその名を口にしてはならない
唯一無二の絶対神に支配されたサーバント仮面ライダーたちとは、
たもとを分かつことになるのだった・・・




造化三神による天地開闢は、
高天原という神の国を作り、
イザナギとイザナミは国産みにより
ヤシマ(日本列島)を作った。

日本神話の神々は自らが住む世界と、
日本列島を作ったに過ぎず、

この星の、それ以外の世界は、
みだりにその名を口にしてはいけない
唯一無二の絶対神が、作り出したものだ。


唯一無二の絶対神が、自らに似せ人を作り出した。

唯一無二の絶対神が、人を楽園から追放した。

唯一無二の絶対神が、
大洪水を起こし、人から千年の寿命を奪い、
細胞分裂を繰り返すうちに劣化し、
突然変異により細胞がガン化するように遺伝子を組み換えた。

唯一無二の絶対神が、
楽園へと帰ろうとした人々が作り出した高い塔に
雷を落とし、人の言語を分けた。


人と人がわかりあうことは難しくなり、
人の歴史は、戦争の歴史となった。


そして、唯一無二の絶対神は、
人を見限り、人を見捨て、人を滅ぼすことにした。


人が産み出した仮面ライダーの力を使って。





甲斐享=仮面ライダー神威は、
竜王の中で九頭竜のふりをしていた、
その唯一無二の絶対神の放った
9つのエネルギー体のひとつに体を貫かれた。

それは、彼の意識を閉じ込め、
仮面ライダーとしての肉体を支配し、
神の操り人形=サーバントとするためだった。

その後、
火野映司=仮面ライダーオーズもまた体を貫かれ、
仮面ライダーオーズ・サーバントとなり、
二人のサーバントライダーと残り七つのエネルギー体は、
中東から極東の地に旅立ち、
さらに四人の仮面ライダーがサーバントと化した。

サーバントと化した仮面ライダー六人は、
N市八十三町での戦いに第三勢力として加わることになる。





中東に残されたアンクと亀山薫、
米沢守の三人は国連の所有する、
要塞空母によって日本に運ばれた。

それは、
かつてS.H.I.E.L.D.が所有していた
ヘリキャリアにさらに改良を加えた、
新型の秘密基地兼要塞空母であった。

ヘリキャリアとは、
ロキとテッセラクト捜索時に運用され、
アベンジャーズとウルトロン軍団の戦いでも、
浮上してしまったソコヴィアの市街地に出現し、
市民たちの救出活動にあたった空母・・・

その最新型だと言えばわかるだろうか。

S.H.I.E.L.D.は
インサイト計画実行のために
インサイト・ヘリキャリアという
新型のヘリキャリアを建造したが、

国連はそれとは別に、新型のヘリキャリアを建造していた。


亀山薫の孤児院のこどもたちは、
奇跡的に誰ひとりかすり傷ひとつなく、
彼らもまた、国連によって
一時的にヘリキャリアに保護された。


アンクと亀山は、
N市八十三町の上空にさしかかると、
警視庁へと皆を送り届けようとする
ヘリキャリアから飛び降りた。




甲斐享の閉じ込められた意識は、
真っ白な空間の中で、
かつての自分、ダークナイトと対峙していた。


「いまさら、何のようだ? 昔の俺」


「俺はまだ、お前の中にいる。
 いつでもお前にとって代わることができる。
 勝手に過去にしないでもらいたいな」


「まだ俺の中にいるなら、
 今の状況くらいわかるだろ?
 俺は竜王さんから出てきたエネルギー体に体を貫かれ、
 こうして意識を閉じ込められ、体を乗っ取られてる」


「そうだな。だから諦めるのか?
 俺らしくもない」


「俺らしくない、か・・・。
 俺らしさってなんだろうな。
 俺から仮面ライダーであることや、
 ダークナイトであったことをとったら何が残るんだ?」


「ダークナイトは、俺は、
 法による裁きを免れた犯罪者を許すことができない、
 お前の中にある、そんな、煮えたぎるように熱い正義と、
 被害者やその遺族への思いから生まれた」


「それが俺らしさか?
 だったら、その俺らしさは、間違ったものだ」


「お前は今、苦悩している。
 伊丹刑事を殺したのは、自分だと。
 亀山薫を巻き込んではいけなかったと。
 違うか?」


「違わない・・・」


「悦子だけでなく、千尋も守れなかった。
 千年細胞や神威の力を得た今ですら、
 自分のことしか頭になく、
 自分が犯した罪への贖罪という
 大義名分がなければ生きられない」


「さすがは俺だ。何でもお見通しだな
 お前の言うとおりだ・・・」


「お前には、何もない。からっぽな人間だ」


「そうだな・・・」


「自分のことが許せないんだろう?」


「ああ、許せない。
 だからと言って自分を裁くことはできない」


「だから、俺がお前を裁く」


「この無限に続く地獄から解放してくれるのか?」


「それが、ダークナイトとしての、俺の最後の仕事だ」



to be continued....
 

「石ノ森さんよ、
 スターダストブレイドのマキシマムドライブは
 俺にやらせてくれ」

「では、私はシールドの方を担当しよう。
 光線と斬劇を同時に放とう」

左翔太郎は、フィリップとのWほどではないにせよ、
石ノ森章太郎とのWでの連携が、徐々にではあるが、
うまく取れるようになってきていた。


彼が仮面ライダーとして歴戦の猛者であるからなのか、
石ノ森章太郎が、創造主(クリエーター)だからなのか、
アメノミナカという神が降りてきているからなのか、
その理由はわからなかったが。


『スターダスト・マキシマムドライブ!』


スターダストシールドに
装填された24のガイアメモリがそれぞれ、
マキシマムドライブの音声を発し、

スターダストブレイドの斬撃の
マキシマムドライブにあわせて光線を発射した。


それと同時に、
加藤梨沙=カミムスヒ転生が、
両手を広げ、無数の黄金の蝶を出現させていた。


「スターダスト・ゴールデンバタフライエフェクト!」


スターダストシールドの光線を、
無数の黄金の蝶が反射に反射を繰り返し、
その数と威力を増した。


「必殺技の名前というのは、
 叫ばなければならないものなのですかねぇ」

杉下右京=カミムスヒ輪舞曲は、
いやいやながらも、だが、まんざらでもない様子で、

「エンドレスワルツ・エンドレスロンド!!」

手に持ったサーベル「ロンドベル」を
フェンシングのように構えると、

カミムスヒ転生がその数を増やした
スターダストシールドの光線をワルツやロンドを舞いながら、
華麗にすべてよけ、天照輪廻にサーベルの斬撃を浴びせる。

その斬撃の数は、一瞬に数百、
いや、数千はあろうかという恐ろしい攻撃だった。



『プリズム・マキシマムドライブ!』

『エンジン・マキシマムドライブ!!』


「照井竜、ぼくたちも負けてはいられない」

「ああ、絶望があの女のゴールだ」

サイクロンアクセルエクストリームもそれに続く。


しかし、小久保晴美=仮面ライドレス天照輪廻の力は、

仮面ライダーW クリエイタージョーカーアメノミナカ、
仮面ライダータカミムスヒ輪舞曲、
仮面ライドレスカミムスヒ転生、

造化三神の力を持つ仮面ライダー三人に、
サイクロンアクセルエクストリームの四人の力を持ってしても、
傷ひとつつけることができなかった。


「私はすでに絶望の中にいる。絶望はゴールではない」

天照輪廻は言う。

「なぜ、俺たちの攻撃がまったく効かない・・・?」

照井竜の問いに、

「あらゆる攻撃を無効化する能力・・・?」

左翔太郎が疑問で返し、

「あるいは、ここにいる彼女は幻覚か何かで、
 ここではないどこかに本体が存在するか・・・」

石ノ森章太郎は別の可能性を示唆した。

「そのどちらかだろう。
 ぜひとも後者であってほしいものだけれど」

フィリップが希望的観測を述べる。


本来なら、フィリップには、
サイクロンアクセルエクストリームになった瞬間に、
地球の本棚の力によって、
天照輪廻のすべてを閲覧できるはずだった。

どのような能力を持ち、何が弱点であるか・・・

だが、地球の本棚とのアクセスは途切れていないというのに
フィリップには、彼女について何一つ閲覧することができなかった。


「それにしても、突然現れたかと思えば、
 オーズやウィザードたちは一体何をしている?」

加藤梨沙が問う。

絶対神のサーバントと化したはずのライダーたちは、
皆、まるで時間をとめられたかのように、行動を停止していた。


「みんな戦っているんだろう・・・
 彼らもまた、仮面ライダーだからね」

フィリップは、加藤梨沙に優しくそう言った。



小久保晴美=仮面ライドレス天照輪廻は、
彼女の愛した男、九頭竜の化身が、
すでに死亡していることに気づき、更なる絶望の中にいた。

長年にわたりその内容が秘匿され続けていた、
ファティマの第三の預言・・・

そこに記された真の世界の破壊者である自分や
九頭竜の化身に対抗する者の存在が、

預言の存在自体が秘匿された
第四の預言に記されていたとは思いもよらなかった。

さらに、第五の預言が存在し、
唯一無二の絶対神がその姿を現すなど、
彼女の想像をはるかに越えた出来事が起こっていた。


彼女は、自分の中の、
人への絶望、
人を滅ぼすという決意、
それを邪魔する者の存在、
加藤梨沙の裏切り、
ありとあらゆる絶望を力に変えていた。

さらなる絶望の中でより強い力を得た。

絶望の中の絶望が、彼女の体を、
造化三神の力を得た仮面ライダーたちですら、
傷ひとつつけることのできない体へと、進化させていた。

それは、しかし、
彼女自身の身を滅ぼしかねない諸刃の剣であった。


彼女はさらに、
まだ唯一無二の絶対神による支配に抵抗しているであろう、
動きを止めたままの仮面ライダーたちにカオスシードを撃ち込んだ。

彼女の想像通りに事がまだ運ぶのであれば、
カオスシードは仮面ライダーたちを、
ここではない時間軸にその存在が確認できた
アナザーライダーへと変化させ、
唯一無二の絶対神のサーバントではなく、
彼女のサーバントへと変化させることができるはず・・・

しかし、カオスシードはすべて、
カミムスヒ転生に打ち落とされた。


「晴美、邪魔をするな」


「梨沙ちゃんこそ邪魔しないで。お願いだから」


「仮面ライダーたちは、今、神に支配されようとしている。
 それに必死で抗ってる」


「お願い、梨沙ちゃん・・・
 私の体、もうこれ以上はもたないの」


「・・・どういう意味だ?」


「天照輪廻の力を使いすぎたみたい・・・」


「だから、梨沙たちの攻撃がきかなかったのか」


「もう、このライドドレスの中の私は、
 あの人に、あなたのお父さんに
 見せられないような体になってるの。

 体が腐り始め、骨が見え・・・」


「だったら、戦いをやめたらいい。
 このまま戦い続けても死ぬだけだ。
 死んだらすべておわりだぞ」


「梨沙ちゃんは感じないの?」


「なにがだ?」


「梨沙ちゃんのお父さんが
 もうこの世界のどこにもいないこと」


「感じてる。気づいてる。
 だから、梨沙はさっきまでは、
 心のどこかでパパがまた晴美を救ってくれると期待してた。

 でもパパがいないなら、晴美を救うのは梨沙しかいない」


「・・・梨沙ちゃん、あなたは強いわね。

 わたしはもうだめなの・・・
 あの人のいない世界なら・・・

 わたしがいる意味なんてない・・・

 わたしは真の世界の破壊者・・・
 生きていちゃいけない・・・

 いいえ、生まれてきちゃいけなかったの」


「そんなことない!
 梨沙は晴美が大好き!
 パパと同じくらい好き!!
 晴美には生きていてほしい!
 またいっしょに仲良く暮らしたい!!」


「もうだめなの・・・
 もうすぐ、この体は動かなくなる・・・
 その前にやれるだけのことをやっておかないと・・・」


「・・・晴美? 何をする気だ?」


「この体に残された力でも、
 まだ人を滅ぼすことはできるから・・・」


天照輪廻は、空に向かって両手を広げた。


「さよなら、梨沙ちゃん。
 わたしは、この世界に生きるすべての人を殺して死ぬわ」



「晴美、やめろ!!」



「そうはさせない」

「ああ、そんなことさせてたまるか」


そのとき、天照輪廻の両腕が、切り落とされた。


「な!?」


ふたりの仮面ライダーWの
プリズムビッカーとスターダスターが、
天照輪廻の両腕を切り落としていた。


「小久保晴美、君が天照輪廻の力を最大限に使い、
 ぼくたちの攻撃を無効化しているのには、とうに気づいていた」

「あんたが力を使いすぎた反動で、
 一気に弱体化するのは目に見えていた」

「俺たちはそのときを待っていたというわけだ」

「だが、私たちは、君の命を奪うつもりはない。
 すぐに変身を解くんだ。
 まだ間に合うはず。
 君が見つけた千年細胞なら、その体の修復が可能なはずだ」


フィリップが、翔太郎が、照井竜が、石ノ森章太郎が言う。



「・・・どうやら、ここまでのようね」


小久保晴美は、変身を解いた。

彼女の言う通り、その体は腐り、骨が見え、
今にもさまざまな部位が落ちてしまいそうだった。


「晴美・・・」

梨沙もまた、変身を解き、晴美のそばに駆け寄った。


「梨沙ちゃん、わたしは間違ってたの?」


「晴美がしようとしていたことは、指パッチンと同じ」


「梨沙ちゃんまで指パッチンって言うのね・・・
 本当にあの人そっくりなんだから」


「晴美が、もう一度、
 真の世界の破壊者になろうとした理由はわかる。

 でも、晴美がしようとしていることは、
 晴美がしてきたことやパパがしてきたこと、
 鳴滝がしたこと、その全部に
 意味がなかったってことになる」


「・・・そうね」


「梨沙は晴美のスペアだから、
 同じだけ人生を繰り返してきたから、
 晴美がしてきたことに意味がなかったなんて思えない。
 思いたくない」


「梨沙ちゃん、あなたは、本当に優しい子ね」


「感じるか? 晴美。
 仮面ライダーたちが、必死で
 神の支配から逃れようとしてるのを」


「えぇ・・・ずっと感じてるわ」


「晴美を倒すためじゃないぞ。
 みんな、晴美を助けようとしてる」


「・・・そうね」


「一度消えた、パパの生命の鼓動を感じるか?」


「・・・感じる」


「パパも晴美を救うために、帰ってこようとしてる。
 パパか甲斐享なら、晴美を救えるな?」


「たぶん・・・できると思うわ」


「梨沙や晴美やパパや甲斐享や仮面ライダーたちが、
 これから誰と戦わなきゃいけないか、わかるな?」


「あの人を、梨沙ちゃんのお父さんを
 一度殺した存在・・・
 唯一無二の絶対神・・・」


「そうだ。
 だから、晴美、もうちょっと我慢しろ。
 きっと助かる。パパか甲斐享が絶対助けてくれる」


「・・・わかっ」


その瞬間、小久保晴美は、
竜の首のようなエネルギー体がみっつ、
梨沙の体を貫こうとしているのを見た。


もう動かないはずの体が、勝手に動いていた。

加藤梨沙をかばい、小久保晴美は
その体を三つのエネルギー体に貫かれた。


「・・・晴美?」


それは、
甲斐享=仮面ライダー神威や
火野映司=仮面ライダーオーズたちが、
神の支配から逃れた瞬間の出来事であり、

アンク=仮面ライダーリバースデイ、
亀山薫=仮面ライダーガイストが、

そして、
彼女が愛した九頭竜の化身であった男が、

N市八十三町に舞い降りた瞬間の出来事だった。



to be continued....

「梨沙ちゃん、どこにいるの?」

小久保晴美は、もう目が見えてはいなかった。


「ここにいるぞ、晴美。パパもそばにいる」

「梨沙ちゃん? 梨沙ちゃん?
 どこにいるの? 返事をして?」


梨沙は小久保晴美の手を握っていたが、
彼女はもう目が見えないだけでなく、
耳も聞こえず、手を握られていることにも気づけないでいた。

五感のすべてが失われていた。


「パパ、晴美を助けて」


梨沙は、父親である九頭竜の化身にすがりついた。

しかし、九頭竜の化身は首を横に振るだけだった。


「梨沙、パパはもう、千年細胞を持ってはいないんだ。
 九頭竜の力も何もかも失った。

 パパはもうただの人で、この体は一度灰となったものを、
 ドクターストレンジの魔法で
 一時的に形をとどめているだけなんだ」


九頭竜の化身は、いや、九頭竜の化身だった男は、
今はもう九頭龍天禍天詠の姿をしてはいなかった。

そばにいる、
星条旗をモチーフにしたような盾を持ち、
フライトユニット付きのパワードスーツを身にまとった、
アフリカ系アメリカ人の男と、
盾こそないものの同じパワードスーツを身につけていた。


「カトー、この子は?」


「俺の娘だよ、サム」


サムと呼ばれた男は、九頭竜の化身だった男をカトーと呼んだ。

ふたりは、いつか、
互いの名前を呼びあう関係になろうと
約束をしたわけではないが、
そんな関係を互いに目指していた。

それが今、叶っていた。


「はじめまして、だよな? たぶん」


「ああ、だが、そんな場合じゃないと思うぞ」


「すまない、どうやら、そうみたいだな」


カトーにたしなめられ、サムは素直に謝罪すると、
一歩身を身を引いて、久しぶりに再会した親子と
小久保晴美を見守ることにした。


「パパは晴美が死んでもいいのか?」


「いいわけがない。
 でも、パパにはもう無理なんだ」


「甲斐享、お前ならなんとかできるな?」


しかし、甲斐享もまた首を振った。


「なんでだ?
 お前はまだ千年細胞を持ってるはずだろ?」


「さっきまでなら、なんとかできたかもしれない・・・
 でも、彼女の千年細胞は、
 三つのエネルギー体に貫かれたことで、
 さらに進化をはじめているんだ・・・」


甲斐享の言う通り、小久保晴美の千年細胞は、
すでにさらに上位の細胞に変化しつつあった。

それは、千年細胞を失ってしまったカトーにもわかった。


「・・・そうか、俺たちの体を狙ったのは」


「なぜ、神は自らに似せて人を作ったのか・・・
 その答えがここにある・・・」


「なぜ人は楽園を追放されたのかも・・・」


唯一無二の絶対神の支配から逃れた、
オーズ、ウィザード、ドライブが言う。


「人は、神がこの地に降臨する際の器に過ぎなかった・・・」


甲斐享と、カトーは、同じ結論にたどりついた。




小久保晴美の腐り、ただれ、骨が見え、
今にも身体中の至るところが、
落ちてしまいそうだった体が修復していく。

甲斐享たちの体の中にまだ存在していた
六つのエネルギー体もまた、彼らの体から飛び出し、
小久保晴美の体の中に吸い込まれていく。


「小久保晴美は、
 真の世界の破壊者だったわけじゃなかったんだ」


「彼女は、真の世界の破壊者の器となる存在・・・」


ゴーストとエグゼイドが言った。


「そして、真の世界の破壊者とは・・・」

照井竜が言い、


「唯一無二の絶対神・・・」

左翔太郎が続ける、


「そして、唯一無二の絶対神が、
 真の世界の破壊者として、その器に降臨することこそが」

石ノ森翔太郎がさらにつづけ、


「ファティマの第六の預言・・・」

フィリップが結論にたどり着く。



「甲斐享」

かつて九頭竜の化身だった男・カトーは、
自らのスペアであった男の名を呼んだ。


「あんたが何を言わんとしてるかくらいわかるよ。
 俺はあんたのスペアだったかもしれないが・・・」


「俺が千年細胞も九頭竜の力も失った今、
 お前は俺のスペアではなくなった。

 逆に、今は俺がお前のスペアだ。
 俺は、お前の一部になるために、ここにいる」


「だろうな。なんとなく、そんな気がしていた」


彼らは、ふたりにしかわからない話をしていた。

カトーにはそれしか方法がなかった。


「何を言ってるんだ? パパ」

愛娘の梨沙が、涙で顔をくしゃくしゃにして言った。


「パパと晴美の物語は、
 もうとっくに終わってるって話だよ。

 この物語は、甲斐享と梨沙、ふたりの物語なんだ」


「物語? これは現実だぞ?」


梨沙の問いに、フィリップが答える。


「加藤梨沙、君の父親が言わんとしているのは、
 ぼくたちにとっては現実でも、
 たとえば石ノ森章太郎が存在した世界から見れば、
 ぼくたちの存在は物語に過ぎないということだよ」


「なんだそれ・・・意味がわからない」


そんなことを突然言われて、
意味がわかる者がいるのだろうか?

梨沙は思った。


だが、フィリップに名指しされた石ノ森章太郎は言う。


「そうだね、そして、私がかつて存在した世界には、
 こんなことを言った者がいる。

 私が蝶になった夢を見ているのか、
 蝶が私になった夢を見ているのか・・・」


「なるほど、ぼくたち仮面ライダーを
 産み出した石ノ森章太郎が存在した世界ですら、
 さらに上位の世界が存在し、
 石ノ森章太郎という存在自体が、
 物語の登場人物に過ぎない可能性があるわけか」


今度は、フィリップと石ノ森章太郎、
ふたりだけにしか理解できない会話だった。


「私と君たちは、さきほどの
『私』と『蝶』の関係に置き換えることもできなくはない」


「お前たち、こんなときに何の話をしている?
 梨沙にもわかるように話せ」


梨沙は泣きながら怒っていた。


「戯れ言はこれくらいにしようか、石ノ森章太郎」


「そうだね、どうやら、私と君以外には
 誰も理解してはいないようだし・・・
 やはり、章には感謝しないといけないな・・・
 死してなお、君のような素晴らしい友人に
 出会わせてくれたのだから・・・」


小野寺章・・・それは、
石ノ森章太郎が存在した世界における、
彼の息子の名前だった。

彼に代わり、仮面ライダーという物語に携わり続けている。

しかし、この世界においては、その存在を認識することはできない。



「パパ・・・
 パパ、いなくなっちゃうのか?」


「いなくなりはしない。
 甲斐享の一部となって生きていくだけだ。
 これからも、梨沙のことをずっと見ている」


「でも、もうパパと話せなくなるんだろ?
 パパが梨沙をだっこしてくれたり、
 あたまをなでてくれたり・・・もうできなくなるんだろ?
 ・・・だったら」


梨沙は、大きく深呼吸をした。
そして、

「だったら梨沙は、晴美の側につく」

そう言った。


「・・・梨沙?」

今度は、カトーが
愛娘の言っていることの意味が理解できなかった。


「梨沙は晴美のスペアだ。

 パパが甲斐享の一部になるように、
 晴美を梨沙の一部にする。

 梨沙が、晴美といっしょに、
 真の世界の破壊者の器になる・・・」


「梨沙、やめろ・・・やめてくれ、、、」


「やめない。
 パパのいない世界なんて、梨沙はいらない」


そのときだ。



ーーこのときを、待っていた。



唯一無二の絶対神の声が聞こえた。



ーー上位世界からの招かれざる客よ


「私のことかな・・・?」


石ノ森章太郎が、神の声に応えた。


ーーそう、汝の存在が、我をその世界へと運ぶ方舟となる。

  唯一無二の絶対神である我は、
  汝の存在した上位世界をも支配する。

  そのためには、汝の存在と、
  我が器がひとつになることが必要不可欠・・・


「唯一無二の絶対神が聞いて呆れるな。
 人の力を借りなければ、できないことばかりだ」


石ノ森章太郎は呆れていた。


「君と同じ名を持つ唯一無二の絶対神が、
 私の世界にもいるが、
 それについてはどうするつもりかな?」

ーー我はふたりも必要あるまい。


「私はてっきり、
 ファティマの第三以降の預言は、
 ぼくのいた世界で起こるものとばかり思っていたが・・・
 なるほど、君をここで足止めすれば、
 章たちの世界は守れるわけか・・・
 ・・・だが、しかし」

石ノ森章太郎は、甲斐享とカトーを見た。

甲斐享は、カトーに言う。

「その前に、ひとつやるべきことができたみたいだな。
 俺はやっぱり、あんたのスペアでいい。
 この体はくれてやる。
 あんたが自分で娘を守れ」

甲斐享は、九頭竜の化身だった男に、その身を差し出した。


「言ったはずだ。
 これは、お前の物語だと」

しかし、カトーはその提案を拒絶した。


「だったら、あんたは、あんたで居続けろ。
 さっさとあのくそったれな神様を片付けて、
 かわいい娘を抱いてやれ」

甲斐享は、カトーの肩を拳でついた。


「・・・わかった。
 サム、援護を頼めるか?」


「ああ、援護だけじゃなく、また背中も守ってやる」


「誰かが主人公である必要なんかない。

 俺たちは、たとえ社会や組織の歯車や、
 神の駒に過ぎないとしても、
 ひとりひとりが自分の人生の主人公だ」


 甲斐享のその言葉が、人からの神への宣戦布告となった。



to be continued....