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  • 03Jan
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      ◆ Je vous souhaite une bonne année!

      Je vous souhaite une bonne année etune bonne santé ! 何はともあれ、時は刻々と流れゆき、生き活きと芽生え 芽出たき壬寅。 ごく普通の人々が ごく普通であることの かくも難しき日めくりを強いられてきたけれど、蓋し これも、地球という星に生まれ互いに生きていかねばならぬ 世の人々が 皆 丸ごとそうだったと 思えば、心いたく沁みいる経験ではあろう。今しも 虎視眈々と狙っているやもしれぬ、姿の見えぬ敵ではあるけれど、これ以上もう騎虎の勢いをつけさせ 野に放っては断じてならぬ。ここは是非、秘伝の虎の巻でも授かり、さらに虎の威を借りてでも、ごく普通をとり戻したいもの…。さて いいかげんで馬馬虎虎を絵に描いたような私ときたら、寅と言えば、フーテンの寅さんを取材カメラで追いかけたことや、台湾虎井島で海底遺跡を探査したり、トラサルディのファッションに想いを馳せたりと、そのイマジンたるやちょいと下世話。しかしそんな私ですら、今年の年越しは、地元 菅谷神社に 普通の世であらんかしと祈り、その鎮守の森の中で、清々しき心、久々に取り戻したのであります。Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 18Apr
  • 17Apr
    • ◆RICO 神島・・・その心にしみわたる声の響きは、まるで宙に浮く孵化器の中で・・・の画像

      ◆RICO 神島・・・その心にしみわたる声の響きは、まるで宙に浮く孵化器の中で・・・

       『菜の花の群生!春の兆し!いかがお過ごしですか・・・(中略)・・・コロナ禍に一節、お見舞い申し上げます。・・・歌う“アマビエ”めざしてー!?(笑)・・・(以下、略)』 RICOさんから、CDとともに、お便りをいただいた。運転中、眠りの前に聴き入る歌声に、うれしい新曲が加わる・・・RICO さんならではの即興唱のほか、Billy Joel のカバー「ララバイ」も入っている。・・・RICOさんのことを、随分前に連載中の月刊誌に書いていたので、そのまま掲載してみよう・・・RICO神島(りこ・かみしま)は、四国愛媛を中心に全国各地でユニークなアカペラコンサートを続けるヴォイスアーティストである。奥深い地底から湧き起こるような魂を揺さぶる歌はもちろん、その天衣無縫のステージ衣装も彼女の魅力の一つである。「衣装は筵(むしろ)の発想でまとう」という彼女のステージはまさに聴きもの見ものだ。時折届く彼女の手紙には、いつも、生命ほとばしる透き通った言葉が添えられている。     ☆    ☆    ☆ 「あなたは歌う人よ」と言われたふとしたきっかけが、二十数年も封印していた歌への情熱を沸々(ふつふつ)とよみがえらせた。 歯科医の妻から、三人の子供を抱えたワーキングマザーへと、「女の一生」を地でいくような暮らしを経て、40歳半ばを過ぎてから歌手としてデビューした。輝くブロンドにビビッドな衣裳をまとい、自らの声だけで歌うヴォイスアーティストRICO神島(愛媛県生まれ)のアカペラコンサートは、聴く人々の魂を揺さぶり、虜(とりこ)にする。 「歌う人」の素地はあった。大学(声楽科)を出た20歳の頃、東京労音フォークソングコンテストに入賞した。また、日本室内合唱団に所属しテレビに出演もしていた。とはいえ、音楽活動から遠ざかっていたブランクは大きく、発声練習を積み重ねた結果、かつてとは違う今の声を得た。 アカペラを歌うきっかけになった曲は、戦いと恋の歌・ブルガリア民族音楽「パルチザンソング(デリオは山に)」…四国を中心に全国各地で毎月「はとコンサート」を開くほか、毎年一回「からすコンサート」を開催。CDアルバムに「黄もくれん」「一輪の歌」他がある。  天衣無縫のステージ衣裳 そこには、奥深い地底から湧き起こるような声があった。 愛媛の山あいの村にある、古い木造校舎…。 「私の歌を精一杯伝えたい時にできることといったら、インパクトある衣裳選びと、より良い残響効果の得られる場所選びしかないんです」 と言うだけあって、そのステージ衣裳たるや半端ではない。RICO神島は、プロのデザイナーも後ずさりしてしまうようなデザインを、次から次へとあみだしてしまう。 また、コンサート会場も徹底して選ぶ。マイクを使わず、伴奏なしのステージで、声一つで思いを歌い上げるには、いかに建物と声を共鳴させるかの細かいチェックが必要なのだ。 「歌のイメージや、聴きに来てくださる皆さん、そして、私のまわりの背景にも神経を使って、衣装を考えています」 ステージ衣裳は、「和と洋」がほどよくミックスした魅力あるタイプばかりだ。 元々、彼女は、若いときから、おしゃれは大好きで、かなりこだわって選び、様々なファッションにチャレンジしたと言う。結局、行き着いたところは、「コムデギャルソン」や「イッセイミヤケ」のものだった。そんなインパクトのある服を身につけていたせいか、自然とそれらからのインスピレーションが、今のステージ衣裳にも活かされている。 しかも、「コムデギャルソン」のスパンコールの黒いキュロットパンツの片足を頭に被って帽子にし、片方は、安全ピンで止めて飾りにしたり、パニエ(ペチコートのようなもの)をそのままスカートにしたり、帯をリボンやロングスカーフにしたりと、自分流に新しく着こなしてしまう。 「まず布(きれ)から入るんです。たとえばおもしろい古布(こふ)が手にはいると、歌とステージを思い描きながらデザインを考えるんです」 そのデザイン哲学は、『巻く、繋(つな)ぐ、纏(まと)う』…一番簡単で、一番難しく、一番おもしろいものになる。 「衣裳は筵(むしろ=ワラや竹などの植物を編んでつくった敷物)の発想でいいんじゃないかと思っているんです。 夜鷹(江戸時代に、夜、道ばたで客を引いた女性)が、筵ひとつをもって、いとも簡単に、場面を転換できたように…。 海のイメージが欲しいと思ったら、黄色のTシャツを着て、青い布をインドのサリーのように巻く。 縫うのでなく巻くんです。だから、蚊帳(かや)だって、帯一本だって、安全ピンがあれば衣裳になる」 “天衣無縫”という言葉そのものこそ、装いの神髄…。 「高松塚古墳(美しい壁画で有名になった飛鳥時代の古墳)の、あの女人たちのイメージが、私の理想なんです」                                              アカペラを支えるエネルギー 「元々、濃い黄色、ウコン色が、大好きなんですが、髪をブロンドに染めるようになってから、派手さに拍車がかかり、ビビッドカラーやパステルカラーなど、観る人が元気になるようなビタミンカラーが多くなりましたね」 トレードマークになったブロンドは、ヘアーメイクのプロである長男が担当して、歌のイメージに合わせてアレンジしてくれる。長女は、インターネットを使ってステージ衣裳のヒントを探し出してくれたり、良きアドバイザーにもなってくれる。 「今こうして歌っていられるのは、子供たちの理解と手助けがあるからこそです。それに何よりも、がむしゃらな私に、沢山の方々がエールをいっぱいくださっているからなんです」 テレビも、南の国から放たれる不思議で熱いオーラに注目し、ゲストに招いたりドキュメンタリーに取り上げ、サポーターが集まって結成された「七百人の會」の活動も活発だ。 原始的な喉声だけのアカペラは、実は、未知なる前衛の世界でもある。彼女は、その原点を忘れることなく、時代の求める歌手として、世界に向けて歌っていけるようになりたいと言う。 「はとコンサート」の「はと」には集まるという意味があり、「からすコンサート」の「からす」には神様の使いという意味がある。 「世界中の人々がすぐに分かって覚えやすいものにしたんです」 その心にしみわたる声の響きは、まるで宙に浮く孵化器の中で、心地良い揺れに身を任せているような錯覚さえ起こさせてくれる。《月刊誌連載記事より》Copyright(C)JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.【無断転載使用不可】

  • 30Mar
    • ◆とどのつまり、異質な小宇宙を胎内に抱え持ったようなものだ…の画像

      ◆とどのつまり、異質な小宇宙を胎内に抱え持ったようなものだ…

        空港ロビーから「ドンガメ」の待つ駐車場まで、私の胸に柔らかに貼りついたMARIの微かな温かみを愛おしむように抱いて向かった。 HIROの感触もこうだったかしら…白磁のような肌と黒目がちの透き通った目をした男の子だった彼との繋がりを求めるように比べ、きっとHIROなら、小さな妹の突然の出現を、たじろぎながらも受け入れてくれるに違いないと、なぜか根拠のない筋書きを私は描き始めていた。 私と歩調をそろえるように付き従っている「顔の定かでない女」の、ちょっと不敵な微笑みを、私は見逃しはしなかった。 きっとここまでの目論みがあらまほしきように実現したうれしさとでもいうのか…CHIKOと私の間に、ベビーを認め印とするようにして強引に割り込むプラン…異なる国に離れて暮らすからには、一枚の紙切れを得るより、それは、私を将来的に繋ぎ留めておく何よりも確実な保証であるに違いない…。 女の恐らく「意図ある従順さ」に私はまんまとほだされてしまったのだ。 電話の向こうから be pregnant と告げられた時、私が咄嗟に抱いた「罠にはまってしまった好色な男の顛末はかくあるもの」という dramaturgy さながらに、まるで女に味方し加勢するかのように喝采を浴びながら細部に至るまで忠実に展開している。 私は、もともと女との関係を、こんなシノプシスに書いていたわけでは決してない。 CHIKOと私は、他の女が介在してくるなどおよそ考えられないほどに幸せな満たされた状態にあったのだ。 にもかかわらず、明らかにCHIKOを裏切る行為がもたらす顛末をわかっていながら、私は、あえてそれを描き直そうとしなかった。…しかも、自然の成り行きに任せて、いや、とても自然などと呼べる展開ではなかったのだが、どこかで正当化しようと強引な詭弁まで弄しながら、卑怯にもこのストーリーをこれっぽっちも悔やみすらしていない。それどころか、そんな行動に新鮮な己を発見しては、その意外さに驚き、ぬけぬけと喜びすら抱いて満足していたのだ。 だが、さすがに一方では、良心の痛みに耐えかね、まるで辻褄を合わせるように来たるべき神からの鉄槌と許しにすがり、とにかく今は、ちょっと辟易とした苦笑いをよそおって格好をつけ、みごとなパパぶりを演じる風であった。 静寂に沈んだ駐車場で、ひたすら私たちを待ち受けていた瑠璃色の「ドンガメ」を見て、女が、ため息のような歓声を上げるのに笑顔でうなずきながら、私は、MARIを女の腕の中に戻し、トランクの奥深く隠していたベビーシートを引っ張り出してセッティングし、再び慣れた手つきであやしながらMARIを座らせ、わざわざ指さし確認をしてみせた。 女がしなやかに座り込んだ「ドンガメ」のサイドシートは、いつもはCHIKOのものだ。 その領域を犯すように女の vagina がかぶさり深く埋もれている姿に、同時に二人の女との繋がりを獲得したかのような奇妙な達成感を覚え、私は、今の今も、恐らく六本木のオフィスで働いているCHIKOを思った。 「KIMI あなたの行動のストーリーは、いつも間違いなくちゃんと読めたけれど、あなたをそのように動かせる心のなぜってのは、読めなかったわ。それって きっと時が流れたからって分かるものでも、納得できるものでもないのね。ほんとうは、いつも ただあなたを私の心に繋ぎ留めておきたかっただけなのに・・・」 CHIKOは、瞳に愁いを溜めてじっと見つめていた私から 逃げるように視線を遠くに揺るがせ、力なく とても残念そうに呟く。 CHIKO、そもそもおまえは初めから物語を読み間違っていた。おまえは私の裏切りの行動を、ついにしっかりと捉えられてはいなかった。 知らないことで保証されるCHIKOの幸せのための嘘なら、いくらついたってかまやしないなどと 私は日常的に、おまえから疑いをかけられそうな行動を糊塗していた。 そんな私の厚く塗られた嘘を、優しいおまえは、私を信じたいがあまりに見抜けなかったのだ。そう、私の心はもちろん、ストーリーさえも読めていなかったと断言できるくらいだけれど、でもね、そのかわり、ここに こうして繋がれている私をよく知れば、おまえの最後の望みは、少なくとも事実上は、しっかりと ついに実現したってことにならないだろうか。 「それはそうかもしれないけれど。…私が、あなたをとりこんでからも、私のお腹の中心で、あなたは勝手に動き回って、ほら奔放に思いを巡らせているってわけだから、やっぱりKIMIの心を本当に繋ぎ留めているわけじゃないわ…」 確かに、私の imagine は、CHIKOがいくら繋ぎ留めていようとも、おかまいなしに自由だ。しかも、CHIKOの思いなどそっちのけで、いくつもの物語を紡ぎ出しては、幾重にも織り重なった時間とともに流れ渦巻いている。 CHIKOは、私の生殺与奪の主体でありながら、その望みとは裏腹な、まるで乱暴狼藉な男、手に負えないやんちゃな息子、ひっきりなしに子宮壁を蹴飛ばす元気なベビー、とどのつまり、異質な小宇宙を胎内に抱え持ったようなものだ。 「KIMI、TOMOがね、いつものあの独特なシニカルな微笑みと口調で、KIMIって奴は、女の子宮に戻ることを、いつも願っているような男だと、私に言ったことがあるの。そうよ、あなたの唯一の心の友だった彼が、まるで歌うように言ったわ。その時は、その意味がはっきりと解らなかったけれど、こうしている今は、TOMOの分析が的を正確に射ていたと思うわ」 曲がりなりにも、CHIKOと奇妙な形で互いに話しかけるようになって、さすがに、あの「神聖降臨」に直面しなくなったのは、正直うれしい。 もしかして私は「覚醒した不眠」の中で、CHIKOとの失われたあの幸せな日々を取り戻しつつあるのではないかしら…。 「TOMOがね、そんなことをおまえにね…あのころは、あいつとまるで恋人同士のようにつるんでいたからね。二人は、早稲田の穴八幡から文学部のヘルメット姿の仲間たちを遠く見下ろしながら、さながら Quartier latin のカフェで楽しそうに語り合う、プルーストとヘンリーミラーのようだった。ほら、パリって街は、人も時代も場所もおかまいなしに何もかもないまぜにして存在せしめるようなところがあるからね。TOMOと話したことは、不思議なほどに今でもはっきりと覚えているけれど、彼が、そんな風にとらえていたなんてね」 CHIKOは、私が思いを巡らしながら、言葉を選んで話している時の瞳を、「つぶらな貝の眼差し」と言ってとても喜んでみせた。 「きっと、この世に生きた痕跡を残すことなどなく、きっぱりと消え去るのが我が人生の望みだなんて言ったことを、TOMOは、そんな風に表現したのかもしれないね。二人とも思ったままぶつぶつと話していたからね。一つだけどうしても認識できないことがあるってね。今、ここにいるってことが…みんな同じようにそこに存在しているのだろうかってね。どうしてもしっかりと納得できるように捉えることができない。一瞬で消えてしまう、行き着く先への過程にあるただの点のようなもの。もともと実体などありはしない。確かにあるのは、imagine する主体と時と空間だけだなんてね。CHIKOが、心のなぜを読み取れないってのは、だから当たり前と言えば当然のことだよ。どうしたって、ここにいる自分が納得できない男に、その行動のなぜってのは、もともとありはしないからね」 私の外皮を隈なく覆っていた温かい羊水が、突然、波打つように揺れ、リズミカルな鈍く重い音が耳殻に伝わってきた。 それは、このところCHIKOが感情の揺れを私に伝える、手っ取り早いやり方になっている。 「KIMI、あなたはいつもそうやって、言葉で自分の存在を理由づけて説明しょうとするのよ。実際、今、私がいなければ、あなたもいないのよ。いいこと、私が、あなたの存在に必要なすべてを与えているってこと忘れないで」 私は、言葉をさがそうとするが、ぐうの音も出ないで沈黙する。私はCHIKOの傀儡で、言ってみれば、生きるためのインフラを握られ、主体的に生きてはいないのだから…。 「私、あなたのCHIKOさんとなら、仲良くやっていけそうな気がする」 首都高を新宿で下り、超高層ビル群の谷間に入ったところで、「顔の定かでない女」が、何の脈略もなく私を覗き込むようにして言った。【PHOTO:JULIYA MASAHIRO】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.ub40129菩提樹の丘B2判ポスター 栗原小巻 名高達郎 河内桃子 東野英治郎 シャムケーシーAmazon(アマゾン)13,000円別のショップのリンクを追加・編集寿利屋 おすすめシネマAmazon(アマゾン)牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(字幕版)300円時代を心ある人々でうまく切り取って見せた作品Amazon(アマゾン)ワンシェンホーム(字幕版)2,000円台湾に生まれた人々の熱い思いを心で追ったドキュメンタリー台湾きまま旅行―パーソナルガイドAmazon(アマゾン)1,080円アメリカ西海岸―旅する本 (オレンジ・トラベル・プレス (2))Amazon(アマゾン)4,937円パーソナルガイド台湾きまま旅行 [ 児玉正博 ]楽天市場990円

  • 04Jan
    • ◆恙無く迎えることなど予想だにしなかった我と齢に紐繋がりで重なる丑だと思えば・・・の画像

      ◆恙無く迎えることなど予想だにしなかった我と齢に紐繋がりで重なる丑だと思えば・・・

       さても、普通でないことの日常を思い知りながら瞬く間に明けてしまった感の令和も巡って三年目…干支でいう丑年の牛は、かの道真ゆかりの天満宮に鎮座し、某国ではより神に近い存在とされる一方で、とても粘り強く親しみある優しき我らの仲間。しかも恙無く迎えることなど予想だにしなかった我と齢に紐繋がりで重なる丑だと思えば、なんだか晴れがましくも、威を得た思いすらある。 この備後で永蟄居に近き我が身にも、このところ、ヒタヒタと得体知れぬ何ものかが迫り、徒疎かにできぬ事態が訪れ来るやもしれぬ兆しに、これは確かに世もグレイトリセットを迫られているに違いないと、いかなノー天気を自認する我とてもヒヤヒヤソワソワとしてしまうのは、恐らく己が頭脳に頼らずとも、ネット環境完備さえすれば、GPS的地球規模の視野・視点・俯瞰点を持ち得、SNS的雑多綯い交ぜ情報が否が応でも五感をチクチクと刺激しながら入ってくるからであろう。いずれにせよ、「ヒト・モノ・コトの同時代」の一切合切が、スルスルと去って行く一抹のさみしさと、「そろそろオマエも…」などと様子伺われるのもチョイと癪だと、心揺らぎながらも、なんとか眼開き、世をしかと見据え、丑年のこの大転換期に居合わせるのは、まさに僥倖であるに違いないと、五臓六腑に力こめるのである。【PHOTO:JULIYA MASAHIRO】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved. 台湾きまま旅行―パーソナルガイドAmazon(アマゾン)1,080円ub40129菩提樹の丘B2判ポスター 栗原小巻 名高達郎 河内桃子 東野英治郎 シャムケーシーAmazon(アマゾン)13,000円牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(字幕版)Amazon(アマゾン)300円

  • 29Nov
    • ◆依然として「覚醒した不眠」を、なんとか手なずけながら、私は温々とした闇の中にいる・・・の画像

      ◆依然として「覚醒した不眠」を、なんとか手なずけながら、私は温々とした闇の中にいる・・・

       依然として「覚醒した不眠」を、なんとか手なずけながら、私は温々とした闇の中にいる。 「このまま」を密かに願ってはいるけれど、そんな私の覚醒など、ついには収縮し収束するスポンジボールのような具合に塊となり、存在もろともドットと化し やがて消滅してしまう。 思考の彼方が、imagine の及ばぬ とてつもなく永遠の場であるとしたら…などという if は、今の私には確かめ得ない空論でしかありやしない。 「私の世界」の終焉と無は、まったくの自明の理で、そんな願いへの意志や努力など大いなる徒労でしかないように思える。 夏を惜しむ蜩のように、成熟して得られた瞬間の生が地上で尽きるまで、それが微かな揺らぎだとしても、継続する時をたぐり寄せ埋め合わせるように 輝く羽根を力強く鳴らし続けるのだ。 そうだ、私には全てのことがわかっていたとさえ言える。それを私は、幼い頃から身をもって知っている。 今はここで、さながら「瞑想する達磨」のごとくさえある姿だけれど、私のありようは、何も生み出すこともない空に近く、己に存在を問いかけながらいつもそうであり、そうしてきたのだった。 私の situation を、思い考え得る言葉を正しく並べかえながら、こうあるのが「あらまほしき姿」だと 懸命に肯定することでしか、私はここに在り得ないという確信…それは狂信と言ってよいほど。 変容の途中が確かである限り、時の流れに刃向かう徒労を知った上での諦観とともに、こうして前へ先へと歩み、精一杯の imagine を 時に委ね続けるのだ。 首都高を左右から覆うように聳えている超高層ビル群の点々とした明かりが サーチライトのように降り注いでいる向こうの やがて収束する光の果てに、さらに淵のない暗黒の闇が広がっている。 とぐろを巻いた不気味な予兆・・・逃れることの出来ないドラマが手ぐすね引いて待ち受けている。 掌に滲み出てくる汗の感覚を打ち消すように 指先に力をこめ、ハンドルを堅く握りなおし、フロントに映り込んだ透明の私を、意志を持つ「ドンガメ」のエンブレムさながらに駆りたてる。 羽田の入国ゲイトから出てくる「顔の定かでない女」を、どのように迎えたらよいのか…その女の「ベビーを抱いた母」の姿をどうしても描き結ぶことが出来ないまま、私は、意志もなく、ハンドルを左にめいっぱいきって壁に激突し、空中に飛び出していってしまいたい衝動に幾度も襲われている。 ここは、数え切れないほど、CHIKOを隣に乗せて走った羽田へのルートである。 「ドンガメ」のサイドシートの空間には、私がハンドルを握っている限り、いつ何時もCHIKOが鎮座しているのだ。 「ほら、KIMIが、深く考えもしないで私のアシスタントを、ここに座らせたことがあったでしょ。しかも、あなたは、見たこともないようなうれしそうな顔をして話し込んでいたわ。ここは私の空間よ、どんなことがあっても誰であろうと座らせないで欲しいの。KIMIの色男然とした姿なんて見たくもないわ。そうよ、とてもわがままでくだらないお願いのようだけど、私にはこのシート、この場所、この空間が何よりも大切なことなの、今後、そんなことをしないと約束して。いいわね」 CHIKOの決然として私を見つめる言葉は、何事も成り行き任せで行動してしまう男のふるまいに、タブーの領域を勝手に設けてはいるのだが、さながら杭と足枷で強引に十字架に縛り付ける刑罰のように、今も鋭く刺さっている。 高島平で首都高に乗るつもりで環八を右折したところで、マイクを通した抑揚のない太い声で白バイに呼び止められ、ブレーキを深く踏み込んだ。 スピード違反を告げられた「ドンガメ」は、初めての事態にも全く動じることのない普段のエンジン音を響かせて停まり、私もほとんど上の空で、ヘルメットの中の叱責する警官の唇の動きを追った。 瑠璃色の車体が、白バイの格好の餌食になり得ることに 細心であるべきだったけれど、私はこれから先のシノプシスをなぞってみることに懸命なあまり、ついついアクセルを踏み込んでいたようだ。 自ら書き続け 演じ続けてきたシナリオは、消しゴムと鉛筆で いかようにもアレンジできるのだけれど、なぜか抵抗も変更も中止もできない有無を言わさぬ説得力を持って 舌鋒鋭く自明の展開を見せ、容赦ない時を刻み続け、私は一言一句を忠実な大根役者のごとくなぞりながら前へと前へとページをめくっている。 シナリオに集中している私は、自ら個性と人生を与えキャスティングした人物であっても、勝手気ままに動き出してしまうことを、本を書くという仕事上、骨身にしみて痛いほど知っていたから、私自身にそれが起こることにも、何ら不思議さを感じることなく、どれもこれも私には分析可能な現実であっても、数多の物語は軌道修正不可能で、ほとんど暴力的だと思われるほど錯綜したカオスよろしく、今の今が濁流のように、存在し展開し続けていくにまかせる以外にないのだ。 入国の人混みと喧噪がひとしきり途絶えた羽田空港のロビーへと、スピード違反切符をバッグに押し込んで、やっと到着時刻を過ぎて駆け込んだ私に、すぐさま気づいた「顔の定かでない女」が、待ち受け焦がれた者が溜めた気持ちを弾けさすように、朱色のベンチからしなやかに立ちあがり微笑んだ。 スラリと背筋の伸びたモデルウォーキングで軽やかに近づいてくる女は VOGUE のページを彩る女のように見えたけれど、小さな人形を小脇に抱えるようにした姿は、似つかわしくはなく ちょっと異様で、私のそんな不安の揺らぎをすぐさま察知したのか、ウィンクのような目配せと共にベビーを差し出すような仕草をして頷いて見せた。 「ほら、あなたが私に産ませた子よ」 女は、私との間に確とした「印籠」を得たのだと言わんばかりの自信に満ちた微笑みだけで、終始無言だったけれど、私は、そんなストレートな台詞を読み取った。  女から、当然のようにして手渡されたベビーを、私は、自分でも驚くほど自然に抱きかかえ、幼かったHIROの感触を甦らせていた。 「あなたのMARIよ」 CHIKOが身籠もった時、女の子だったら名付けようと一緒に考えていた「MARI」という名を、私は、CHIKOを裏切って、この子に与えたのだ。 「あなたの初恋の女の名前を、私が生む子に堂々と名付けようなんて、KIMI、 あなた、どうかしているわ。よほど図々しいと思うけれど、私もその名前に賛成するわ。だって、あなたの初恋の話って、なぜか私も好きだし、MARIの響きは、とても可愛らしくていいわ。ただしね KIMI、男の子だったら、私に命名権を与えてね」 CHIKOは、一昼夜苦しんだ難産の末、帝王切開となり、男の子を産み、宣言通りCHIHIROと名付けた。CHIHIROは、白い肌とクリクリとした瞳を持った美しい男の子であった。 長老教会に通う熱心なクリスチャンの女も、私の名付けたMARIをマリア様のようだといってうれしそうに受け入れた。 私は、父のない子と呼ばれて育つベビーのこれからを、名前を名付けることによって免罪符としているような卑怯な居心地の悪さがあったけれど、そんな場に及んでも、CHIKOときっぱりと別れてしまうことなど、とても無理だった。CHIKO のいない私はあり得ないと思えた。 身のほど知らずの私は、どんなことをしても、CHIKOは決して私から去って行くことはないと盲信し、愛されていることの確信に胡座をかいて、身勝手にCHIKOをないがしろにしてきたにもかかわらずだ…。 それにしても、私は、私がそうだと確信する「私」になったことなどあっただろうか? そんな問いかけなど、ほとんど無意味に違いないけれど、それでも、幾重にも重なったconplicated な疑問を言葉にしてみることで、なんとか不安から一瞬間でも救われ、私はすがってしまうのだ。 いつも私は、私を疑いながら、コイツは「本当の私」ではないと思うことを原動力のようにして生きてきたような気がする。 素のままのピュアな私は、私の想念 imagine もっとわかりやすく言えば、夢のような中に生きて存在しているのだけれど、かといって、そこに確たる私がいるわけでもない。 どう考えてみたところで、私は私でしかないし、そんな私が失われれば、私どころか、よって立つ世界も、たちまちの内に零になるのだけれど…。 いずれにしろ、私は私の中でしか生きていないということだろう。けれど、たとえそうだとしても、不条理で、ある種の不思議さを感じるのは、今ここでは、どう足掻いてみたところで、私は私だけで生きているわけではないことだ。それはそうだろう、CHIKOとの繋がりを考えるとなおさらのことだ。 明らかに、CHIKOが生きているから、私があるのであって、私はCHIKOの胎盤に繋がれた細胞の塊なのだ。 そう、考えてみると私は、何らかの意志のようなもの(造物主、神、あるいは自然。決してそれは、私の母や父ではない)が私を生き物たらしめようとし、生き始めたときから、まるで傀儡のごときモノとして命を繋いできた。 それは、「私は私の人生を生きてきたのだろうか?」と考えるときの、極めて明解な答である。 ちょっと見には、うたた寝をする男のひとときの夢のようなものだ。・・・実体などない。だだ私は、imagine することで自由に生きているだけだ。 臍の緒から、存在に必要なすべてを与えられながら、ゆるぎない命として繋がれて存在してきた私は、何かに行き着く過程の点でしかない。【PHOTO:JULIYA MASAHIRO】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved. ub40129菩提樹の丘B2判ポスター 栗原小巻 名高達郎 河内桃子 東野英治郎 シャムケーシーAmazon(アマゾン)13,000円寿利屋 おすすめシネマ Amazon(アマゾン)牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(字幕版)300円 時代を心ある人々でうまく切り取って見せた作品 Amazon(アマゾン)湾生回家(字幕版)2,000円 台湾に生まれた人々の熱い思いを心で追ったドキュメンタリー

  • 29Jun
    • ◆世界というものは、個々人によって異なっていて、誰一人として自分と一寸違わぬ「世界」を・・・の画像

      ◆世界というものは、個々人によって異なっていて、誰一人として自分と一寸違わぬ「世界」を・・・

       私は生きながらにしてCHIKOに所有されている。 CHIKOは、それ以外に「定かな顔を持たない女」からKIMIを守る手立てはないと言う。  確かにそうだ…そうかもしれない。 いつ いかなる時もことごとく、CHIKOは、私が、何を考え どのように思い どう感じているかを、自分であることよりも優先させる女だ。この私を抱え込むことが、どんなに辛く危険なことか、私自身でさえ尻込みしてしまうほどなのに…。 つまり、私さえ穏やかでありさえすれば、CHIKOは、あえて私に鋭い刃を向けることはない。 だから、私はこのところ Heine を思い出しながら口遊むのだ。 眠りいるこそ いとよけれ 眠りいるこそ いとよけれ  しかしそれでも、「覚醒した不眠」は ひたひたと忍び寄る…。  あたりは果ても無く遠く、底もなく深い漆黒の闇…私は朧気な光すら感ずることなく、流れる時のない 渦巻く空間に漂う感覚にも似た、柔らかな襞の温かい感触に身を委ね、間断なく響く単調な音の 心地よい波に、私が求め続けていたものを遂に獲得したのだという安堵の感情を抱きながら、ただただ浸されているようだ。 だがそれでも、私のあらゆる感覚は、研ぎ澄まされ 覚めた、今ここで、ただ一つ認識できる「私」に、やさしく刺激されるように働き、思索のニューロンから さながら指令を受けるようにして、「私」自身を包み込み、「私」をも内包する闇に向け、恐らく意味のあろう言葉を浮かび上がらせ 深く刻み込むように羅列させ、私を形作る表皮を数え切れないほどのそれらを 隙間なくはりめぐらせ、やがて、えもいわれぬ芳醇な物語を、先へと打つ鼓動にドックドク ドックドクと駆りたてられるようにして、生き活きと銀幕の上に紡ぎ出したりもしている…。 私は、「覚醒した不眠」を、極めて居心地の良い状態にまで昇華できる ある種の「すべ」に熟達したのかもしれない。そうだ、そうに違いない。 オープニングの兆しのように、暗転したスクリーンの奥深いところから、violons の旋律が、びっしりと並んだ言葉の表皮を小刻みに振動させるようにして 忍び込み、低く、やがて しっかりと認識できる 妙なる調べとなって 聞こえてくる。 空間にディゾルブする、闇から浮かび上がってくる夜明けの森に似た この上なく深いdarkgreen のシークェンスが一瞬フィクスされたかと思うと、確かめようとする私を誘うように 半透明の幕に覆われ パッと消え、またディゾルブ…すると今度ははっきりと俯瞰する場にいる私は、小さな背を向けた、薄く白いレースのドレスを纏った、たわわな縮れっ毛をまるで天使の輪っかのように輝かせている少女が、その背を 絹糸のように繊細なメロディに乗せて、ゆっくりと ゆったりと気持ちよそうに揺らしているのを 見る。 violons を奏でる弦の上を、透き通った指先が小刻みに軽やかに行ったり来たり…こんなにもすべやかで無垢な掌を知らない私は、そこで今、それ以上何をも欲することはなく満たされた気持ちになり、うっとりとする…。 フローラルの香りが そよぐように頬をつたいあがり鼻孔を充たすと、私は、エクスタシーの頂点に上りつめたような震えとともに、眼前のスクリーンに、密かな場所に迎え入れるときのCHIKOの 一瞬のアクメの愛しく歪んだ 愛くるしくも可愛い微笑みのクローズアップを見る。 「ここにいるよ CHIKO ほら おまえの全てを 従順に受け入れて…」 私は懸命に呼びかけようとする。けれど、どうしたことか声ひとつ発することができない。「覚醒した不眠」の仕業だ。 CHIKOは、そんな私にすぐさま気づくと、身籠もった命の、小さなキックに呼応したかのように、しっかりと瞳を凝らすと、ちょっとかすれた sexual なトーンで囁くように話し始める。私の姿など見えようはずがないのだけれど…。 「KIMI、あなたはね、うんとすまし顔で寡黙なくせに、いったん話し始めると、ほとんど考えもしないで無意味な言葉をいたずらに、”なぜ、こんなことが解らないのだ”とばかりに繰り出してくるの。そうよ、私ほどおしゃべりな女はいないと、あなたは、あきれたように言うけれど、もしかすると、言葉にするかしないかは別として、あなたは私に負けないくらい饒舌かもしれないわ。そう、だからこそ言いたいの。少なくとも、私に向かってお話をするときは、一つ一つの言葉を慎重に選ぶことよ。牛のようにゆっくりと反芻しながら…ねッ。ほら、こんなふうに言うと、もう黙りこんでしまうじゃない。口をモグモグさせながら不満げではあるけれど、いつも、そんなふうに二枚貝さながらに堅く閉じこもってしまうのよ。私の言っていることに、反論も憤慨もしないのね。そうよね、その視線の曇り具合をみると、 心が揺れているようではあるわ。”それは、CHIKOだって同じだよ” って言いたいのね。ほら 図星でしょ。でも、私はあなたのように、軽々しく言葉にはしないわ。わかっているの、私は、憎しみも恨みも愛しさも恋しさも、憤りも悲しさも何もかもないまぜにした complicated な気持ちを、私の持つ言語表現力では、言葉にまとめ上げることができないと、痛いほどにもわかっているの。諦観と言ってもいいわ。いいえ、悟りと言ってもいいぐらい…ううん、もっとストレートに、それは言葉にしちゃうと、その後、なにも思わない、何も感じない女になってしまうような、あなたとともに存在していることの恐怖かしら。なんだか、私とKIMIとの、ステキな物語が、そこでエンドタイトルになってしまうような、そんな根拠のない確信があるの…」 確かにCHIKOの声だ。いや待てよ、この声は、いつかどこかで、CHIKOが私に向かって話したことを、私が勝手に編集し直し、都合よく繋げているのかもしれない。  だって考えてみると、私が今いる situation ったらないではないか。本当にはあろうはずのない、私だけの現実のようなものだ。 そう、例えば、こういうことだ。…もともと、私たちが共有している言葉ってのは、伝えたい事実や実体、さらには真実を伴うものであるけれど、難しくも悲しいのは、誰とて同じ体や頭脳、経験や想像力、ましてや心を持ち得るものではないのだから、発せられた言葉から汲みとられることが全く同じなんてあり得ない。限りなく不可能、極端なことを言えば、人を取り囲んでいる外界、世界というものは、個々人によって異なっていて、誰一人として自分と一寸違わぬ「世界」を持っている者など決して存在してはいないということだ。 しかもその上、発せられ書かれた言葉は、その瞬間から、私を離れ一人歩きしてしまう。 互いに交わした約束事に、どうも誤解があったなどということが起こるのは、そういうことで、ほぼ全てのことが誤解含み、馬馬虎虎で経過しているといってよいくらいだ。 そうだからこそ、その違いこそが、言葉を駆使し、求め合い、解かり合おうとするベクトルを生み、人々の日々の生業や行為を生み出していると言ってよい。 それに、恋する、愛するなどという情動は、そんな言葉の真実を思いっきり知らしめてくれる、最たるもの。だから不安に苛まれる私は、より近く一心同体になることしかないと、coitus に向かう。いやいや、これとて orgasm の一瞬間の出来事でしかありはしない…。 考えてみると、CHIKOに所有されている私の今の situation は、胎盤に繋がれている細胞の塊のように至福の瞬間を共有する 異なる二つの生命が共存する あらまほしき姿、理想ではないのか…。 【PHOTO:JULIYA MASAHIRO】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 27Jun
    • ◆私はまるで次元のない場を手にし、珠玉の imagine を羽ばたかせるのだ・・・の画像

      ◆私はまるで次元のない場を手にし、珠玉の imagine を羽ばたかせるのだ・・・

       “À la recherche du temps perdu” …プルーストのフレーズをなめるように読み、プルーストのペンをなぞるように書き、プルーストの生涯を映しとるように生きるのだと、馬場から明治通りを歩いてゴールデン街への深夜の道すがら、ボソボソと語るでもなく胸の内を明かしてくれたTOMOは、仏文を専攻する学生で、私が唯一人、あうんの感覚を共有できる男であった。 TOMOの眼差しは、いつも優しさに満ちあふれた心地良い揺れをもって私に注がれ、時折、均衡のとれた美しい顔の中の柔らかな輪郭の瞳が、ひときわ輝きを増し求めるように燦めくと、私は、まるで抵抗力を失った細胞かなにかのように自らの意志を喪失し、不可思議な光の渦に巻き込まれ、オルガスムスにも似た感覚に放り込まれたりした。おそらく私は、それと気づくことなく彼に惚れちまったのかもしれない。 TOMOとは、いくつかの専攻科目の教室が一緒で、何度か顔を合わせるうちに、四国の中学1年だった時、岡山から遊びに来ていた美しい従姉さんからプルーストを教えられ、彼女によって女を知ったと切れぎれに話してくれた。未だ童貞に近かった私は、その繋ぎ合わせたストーリーを、危うい誘惑をはらんだ動悸の高鳴りとともに聞いた。 私には、ほとんど読みこなすことなどできないはずの膨大なプルーストの全巻を、彼は、中学の頃から辞書を片手に読み続け、いつ何時でも、まるで小脇に抱えてでもいるかのように、流暢なフランス語で口ずさむように取り出してみせ、時を行きつ戻りつするように心地良さそうに微笑んでは、独自の翻訳にちょっとしたコメントをそえながら、私の反応をいちいち確かめるような悪戯っぽい目をして、やさしくわかるようにしてくれた。 フィリップ ソレルスの 「公園」や「ドラマ」を知り、ジャン チボードーの「夜を想像せよ」、アラン ロブグリエの「快楽の館」に耽溺したのも、あるいは、「澁澤龍彦集成」の全巻を、なけなしの金をはたきながらなんとか揃え、その分厚い黒表紙の本を終始持ち歩いたのも、TOMOが、それらを教えてくれたからだ。 私は、TOMOが見たり聞いたり、考えたり感じたりしていることを、少しでも多く深く知りたかった。 いずれにしろ、そこには、私とTOMOだけの密かな時の流れが確かにあったのだ。 60年代のどん詰まりで、安保闘争に揺れる文学部は活動家たちによってバリケードが築かれたロックアウト状態で、志ある者たちによる自主講座なども開かれてはいたが、ノンポリを自認する私の仲間たちは、早稲田より新宿に向かうことが多く、フーテンよろしく、日々街を彷徨していた。東口や西口広場、コマ劇前広場に日がな一日座っていても文句を言われたりはしなかったし、何と言っても紀伊國屋の立ち読みは魅力だったし、居座ることのできた小さな名画座が幾つもあった。ションベン横町の一杯飯屋、ゴールデン街や二丁目の安酒場、たむろできる凮月堂やクラシックをふんだんに聴けたランブル、トランペットを抱えてカウンターでコーヒーをすすったDIG や DUG があった。 その頃、TOMOは書店や百貨店で、ちょっとしたものを、こっそりと失敬して、気に入った見知らぬ女の子にプレゼントするという危険な行為を修行者のように自らに課していた。 もっとも、私も「共犯者」であることに心ときめかし、寄り添って aventure を楽しむようなところがあったが、CHIKOは、そんなTOMOのお眼鏡にかない、網の目にかかった一人というわけだった。 CHIKOは、ちょっとハスキーでセクシャルな声で歯切れの良い東京ことばを使い、アニメの小さなベティちゃんのように愛くるしく笑う可愛い女ではあったが、私には英文専攻にひとり恋い焦がれていた女がいた。 最初、CHIKOの椎名町の部屋へ行こうと言ったのは、TOMOだった。 とっくに夜の帳の下りた時間なのに、うまい口実を作ったTOMOは、かなり強引に大家さんに頼み込んでCHIKOを呼び出し、狭い廊下をたどるようにして2階にあった6畳ほどの部屋に上がりこんだ。 幾つか年上で、しかも仕事を持っていたCHIKOは、まるでやんちゃな困った弟たちを迎え入れるように優しかった。 一緒にいるだけで濃密な時が流れ、微睡むような一夜を明かしたTOMOと私は、CHIKOが用意してくれた味噌汁を啜って、仕事に向かうCHIKOと一緒に、西武線から山手線を乗り継いで、いつものように暮れの押し詰まった新宿の街に出た。 その日、歌舞伎町から角筈への見慣れた風景が、冷え込んだ朝の光の目映い揺らぎの中で、未だ経験したこともないように遠く透き通って見え、そんなことが、ちょっとアンニュイな気持ちを擽ったように、私は、TOMOにむかって、思わず意味のない微笑みをしてみたりした。  CHIKOは、いつも無理矢理幸せそうにしている、寄る辺ない女のようだった。 私は、そんな風情の女にほだされてしまう。 私は、一人だけでCHIKOの部屋を訪れるようになり、やがて、それが日常になっていった…。 時は過ぎ去り行き、時の中にあった事象もろともに「無」に帰するだけで、本当には点ですらないのだし、失われることによって、私たちは時を求めることができる。 私の、今の、ここに、すでに失われ、無いというのなら、私は私自身の中で想い描くしかない。もしそんなことができるならば、その時、私は、過去・現在・未来にわたるあらゆる時を、この肉体に内包し、その限りにおいて、私は失われた時だけでなく、それを含む時と空間に存在することができるのではないか。…あたかも、私は、私の想念の中で、くるりと皮膜を反転しさえすれば、あらゆる時にタイムスリップが可能とさえ思えるのだ。  「KIMI、ねェ、そこにいるのね…私の中に、しっかりと感じているわ…これって、あなたの温かい塊そのものなのよね。あなたは、きっと訳もわからず、そこにいるのかもしれないわ。ちょっと戸惑ったりしているのも、私の一部のように、ほら、伝わってくるのよ。はにかむように唇に力を込めて上目遣いにするときのKIMIは、ストレートに私に言えない何か不満があるときだから…少しでも恨んでいるとしたら、ちょっと悲しいわ…だって、こうやって私の中に閉じ込めている以外に、あなたの命を安全に私の下に引き留めておく手立てがあったかしら…あなたが、今そこにいることは、あなたのいつものやんちゃすぎた行状が招いたことって、きっとわかっているはずよ。ほらゾクッていうあなたのリアクションが伝わってきたわ。そうよ、薄々気づいていると思うけど、因果応報だって、もう受け入れているかもしれないわね…」 今、ここから最後の一歩が踏み出せないのは、思い巡らせてみると、恐らくCHIKOが投げ打つ「呪縛」の網にひっかかっているからに違いない。 それに、どうやら私は、そんな境遇にあっても「覚醒した不眠」の訪れを、夜となく昼となく心密かに待ち望んでいるようだ。 どんなに足掻いても、CHIKOの「天網」から到底逃れられない私が、「日々贖罪」の過程で気づいた、唯一の、これからも何とか「生きようとする意志」かもしれない…。 そう、この心地良い温もりに柔らかく包まれた安寧を、至福感に満たされた時の流れるままに素直にスンナリと受け入れ、それ以上の何かをあえて望まぬのが、とどのつまりの成り行きであり、きっと今、私があり得べき自然の姿なのだろう。 何かを意図し行動せぬままに、ただひたすら待ち続けることだけが、私に残された「今の在り方」だとしたら、「今ここにいる」こと自体が明らかに受けるべき償いであり、さらに「覚醒した不眠」を受け入れていくことこそが、CHIKOへの最も真摯な贖罪であろう。 なぜなら、やがて本当の「あら側」に行き、「こちら側」に生きた痕跡を時と空間を内包したまま、立つ鳥さながらに残さぬことをずっと願い続けてきた私にとって、「生きようとする意志」を持つことは、そのままそれは大いなる責め苦であり、重い「罰」となるはずだから…。 だが、しかし「覚醒した不眠」は、確かに責め苦ではあるけれど、今の私には、 grass を肺いっぱいに吸いこんで迷いこむ浮遊感にも似た甘い「蜜の味」である。私はまるで次元のない場を手にし、珠玉の imagine を羽ばたかせるのだ。  それは、少年の初々しく青い妄想の中にぼんやりと浮かび上がってくる、身を焦がし憧れた乙女の「秘所」にも似て、性懲りもなく私を駆りたててやまない。 触れる感触のその先にある美しく彩られた未だ知らない物語の奇想天外な展開を予感させながら、鬱々と私を魅惑し続ける。 私のリビドーの在処をたずね遡り行けば、ニューロンの先端で待ち構え、微笑んでくれているそれは、生きていこうとする意志そのままに、私にとってこの上もなく危険を孕んでいたりもするけれど…。 私が自らを問いただすこともなく、なんの疑いもなく私の行動を信じてきたのは、それを問いただして解を得られる類いのものではないという諦観が、すでに閃きのようにあったからだろう。それは恐らく私の創造主をしてしからしめるところで…言ってみれば「神の命ずるままに」というわけなのかしら。 微睡みの中で、これと意識できる際立った兆しもなく、手術台の上で痲酔をかけられ自然に移りゆく感覚にも似て、「覚醒した不眠」がすでに訪れている。 私は、体を失った軽さでフワフワと漂い、視界の果てに、おぼろげな border が遠く陽炎のように揺らいで見える。 ほら、私はTOMOと並んで、味噌汁の湯気を透かすようCHIKOの爽やかな笑顔を、今、見つめている…。【PHOTO:JULIYA MASAHIRO】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 25Jun
    • ◆あれはきっとこうしたことの「予兆」だったと、川面に突然浮かび上がってくる病葉のように・・・の画像

      ◆あれはきっとこうしたことの「予兆」だったと、川面に突然浮かび上がってくる病葉のように・・・

       深い山吹色の月の光に照らされて、影絵のように浮かび上がる高層マンションは、広大な cemetery の墓標さながら幾棟も林立し、私は、その一室に辿り着く度に、確かに「我が家」と呼んではいるものの、流れに淀んだ筏舟に一歩足をかけた不安に揺らぐ感覚を、いつまでも拭い去ることができない。 私は、どこで、どんな風に住もうと、一夜を明かす旅の体験や印象のように、ある種の糧としてそれらをニューロンに刻み込むことはあっても、住まいや物、周りの環境や暮らす人々に、不思議とさえ思えるほどこだわりも執着もほとんどない。 「光が丘」と名付けられたこの団地に、最後に建てられた真新しい建物への入居が始まってすぐ、吹き抜けになっている地下駐車場に32Fのベランダから男が落ちた。 正面玄関に向かうブリッジに、すぐさま集まった新住人の背越しに、私は、ジグソーパズルの剥がれた一片のように不自然に折れ曲がった男の体躯が、乾いた灰色のコンクリートの上で、どす黒い紅色にゆっくりと縁取られていく様を見下ろした。 一緒にいたCHIKOも、怖々と後ずさりする気持ちに抗しながら私の腕にしっかりとすがりついて、同じ光景を覗き見た。 「KIMI、やめようよ。見なかったことにしようよ…」 サイレンの音が喧しく響く中で、陽炎のように空間が攪拌し渦巻き、時が揺れた。 すると、その微かな歪みに現れたスクリーンに、ベランダから放物線を描いて飛翔する男の姿が、ゆっくりとフリーズをかけて fix され、海に向かって崖からダイビングしたあの日の私のイマージュが、記憶のチップから引きずり出され、ネガとポジのように重なって映り、ゆっくりとエンドロールのように流れて見えた。 おまけに、CHIKOの怯えた声が、まるでアテレコするように聞こえ、私は慌てて、甘い蜜の誘惑を振り払う時さながらの身震いをブルッとした。 「 accident だよ。そうだよ、違いない。…ベランダで新しいエアコンか何かを取り付けていて、不安定になった足場が倒れたのかもしれない…きっと…」 私は、何の根拠もない分析をしながら、彼の死が自ら意志したものではなく、できることなら偶然であって欲しいと強く願っていた。 「そうね、きっと…引っ越してきたばかりで死ぬなんて、そんなことあり得ないわ…KIMIでなくて…よかっ…」 CHIKOは言いかけて、自らを諌めるように言葉をフェイドアウトさせ黙ってしまった。 私のダイビングは、 accident に遭遇した男とは明確に違い、極めて complicated で、どだい言葉で説明することなど不可能な領域だ…とすることで、ダイビングした私や、岬の女の下へ、手負いの男を助けて届けようとしたことや、おまけに、一人二役を演じて同一人物だったなどという、錯綜した situation も、やがて置かれるであろう circumstances も、スンナリと納得でき、何とか平静でいられるような気がしたのだ。 こんなことは、己の中で整合性さえ持ち得れば、門外不出の私だけが知る世界として、そっと密かに小さな箱の中にしまっておけるわけだから…。 私のそんな願いが届いたのかどうか、新しい住まいで新しい生活を始める人たちばかりということもあってか、なぜか箝口令が敷かれたように、事故だったのか自らそうしたのか、どんな人だったのか、ベタ記事ほどのことしか伝わってこなかった。 私は、血痕が残る現場のすぐ前にあった「ドンガメ」の駐車位置の変更を管理事務所に願い出て、よりエレベーターに近い場所に移った。 けれど、消えない傷跡にも似て、大通りからマンションへの誘導路を入ってくる度に、チラリと空を仰ぎ見て、それ以上の連想を強引に停止させようとする習慣は残ってしまった。 それに、日常生活の中でも、何かちょっとしたこと…例えば、奇妙な無言電話がかかってきたり、台本が思うように書けなかったり、HIROがベランダで遠い目をしていたり、CHIKOのパリからの帰国便が遅れたり…なんて時に、あれはきっとこうしたことの「予兆」だったと、川面に突然浮かび上がってくる病葉のように思い出したりもした。 「ドンガメ」は、深夜に向かう六本木から246に出て、明治通り、新目白、練馬を経て豊島園を左手に見ながら光が丘への、首都高に乗らないコースをたどった。 学生時代から車を乗り回していた私だけれど、マシンへの興味も知識もいい加減なもので、ただ「ドンガメ」のように一目惚れしてしまった車があるくらいで、動きさえすればどんな車でもよいという、実に情けないドライバーである。 だが、その限られた運転席に一人座ることは、とても好きだった。海外取材の時もレンタカーを借りて走った。LAからハイウェイで向かうサンディエゴの自由な加速にちょっとした快感を味わったし、自らの小気味良いハンドルさばきに一人ご満悦だったりもした…。 かつて日本陸軍の軍用滑走路だった、光が丘の真ん中を貫いている大通りから、任務を果たせず戻ってきた神風特攻隊機のように、エンジン音をひときわ大きく響かせた「ドンガメ」は、駐車場の檻の中に、瑠璃色のボディを微かに震わせながら吐息をつくようにしてとまった。 エレベーターをエントランスで待つCHIKOの肩に眠るHIROを、私は、そっと目を覚まさないように胸に抱いた。 繊細なフローラルの香りがそよぐように漂ってきた。パリから運ばれてきたミスディオールのブルーミングブーケ…CHIKOの好んで纏う香り…忘れていた何かを思い出したときのようにドギマギして、言葉を探した。 「ぐっすりだね…随分、連れ回したからね」 「気をつかわせてるようだったわ…長く離れていたから…」 「とても繊細だからな…コイツ…」 そう言って、私は、HIROが私を見つめるときの愛くるしい表情を思った。 深夜のエレベーターは、幸せな家族をねぐらへと運ぶ熱気球のようでさえあったけれど、私の「女の平和」は、HIROを巻き込んで、とても敏感な小さな胸にチクチクと針を刺し続けていたのかもしれない。 私は、「定かな顔を持たない女」のために、CHIKOに背を向け、二人にとって最も大切な絆を自らの意思で断ち切り、冷え冷えとした関係に持ち込み、私の存在に辟易とさせることを目論んだ。だが、「女」の存在が、明らかになったとき、私の示威行動は、当然のことながら、何ら意味を持たなくなってしまった。 卑怯この上ない私の行動は、なぜそんなことをと不思議に思えるほど常軌を逸したとても稚拙なやり方だった。 案の定、私が長い海外取材を終えて、成田から我が家にたどりついたとき、事態は急転直下の様相で一変していた。 CHIKOは、大胆な反撃に出た。 何としても私を許すわけにはいかない、もはや聖女である必要などないと、私の部屋をノックし、強引に私との交わりを求めてきた。 CHIKOの sexuality は、とてもストレートでピュアである。【PHOTO:JULIYA MASAHIRO】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 24Jun
    • ◆そうすれば、一回りほど年の離れた二人は、私を媒介にして、姉と妹のように互いの役割を・・・の画像

      ◆そうすれば、一回りほど年の離れた二人は、私を媒介にして、姉と妹のように互いの役割を・・・

       灰白色のくすんだあっけらかんとした洗面台と便器、触れると怖気だつようなザラついた音のする二帖もない畳の、やけに天井だけは高く閉ざされた空間、窓と呼べるものはなく、限られた時にしか開くことのない分厚い扉…それらの一つ一つが、ここが意味のある「場」であることを思い知るにふさわしい佇まい、耳に響き続ける電子の飛び交うような音は、いっかな絶えることはないけれど、それでも、底なし沼の藻に埋もれた奇妙な静けさを醸し出している…。 私は今、牢獄の中に、まんじりともしないで正座している。 なぜ囚われ、私はここにいるのか…ごく当たり前のなりゆきのように、疑うこともなく腑に落ちて問いただすことすらしやしない。 私が、この場で持っているもの…つまり「私」であることの「証」といえば、生きて鼓動する身体…いやもっと正しくは、知覚し認識できる「ありさま」だけで、見聞き触れ、食し嗅ぐ感覚を頼りにする以外、手立てなどありはしないのだ。 それでも、唯一残された希望があるとしたら、それは、どこからともなく閃いてくる Inspiration を待っていられること…だから、私は、ひたすら Imagine し、祈り続けている。  人々の生活する社会こそが現実と言うなら、当然のことながら現実はここにはない。 なるほど、そんな風に考えると、私は、すでに「あちら側」の住人になってしまっているのかしら…。 「ざまァみろ!それは、おぼろげにも、おまえが意図していたことではなかったか」…そんな言葉が、微細なニューロンをすばやい速度で飛び交い意味を成し、私の心を弄んだりはする。 その上、そんな悪態に返す言葉が喉に苦しく詰まったように、いつもの弁舌爽やかにはうまく出てこない。これはとても歯がゆくも苦しいことだ。 半睡半醒ならまだしも、天の見過ごした恩恵のように心安まる瞬間もないままに、私の「覚醒した不眠」は、相変わらず、こうしてしつこいほどにも続いている。 いや、もしかして、知覚できることを、しかと見定めることができさえすれば、もともと時の経過などなく、「不眠」すらも、ほとんど瞬く間のことなのかもしれない。 しかし私は、「生から死」への長い旅路に匹敵しやすまいかと思えるほどの時の流れを、その瞬間に感じてもいる。 このような獄中の囚われ人となっても、何が起ころうと、どこに放り込まれようと、いかなる恐怖に襲われようと、それとも、揺蕩いながらも、離れがたき愉楽の中にどっぷりと浸かっていようとも、もしかして、臨機応変に対処することを、長い時間の果てに習得してしまったのかしら…。時には、それを楽しんでいたり…。 そうだ、「覚醒した不眠」をうまく手なずけてしまった。 例えば、重くネバネバとした感触の「臭い」に覆われるような空間に、逃げることもままならぬまま、腕と脚をがんじがらめの分厚い拘束帯に縛られたように…自由に動けはしないとしても、五覚はしっかりとしている。いやむしろ、一層研ぎ澄まされたような五感、そして Inspiration がある。 この「臭い」は、私に温かい懐かしさを思い浮かばせる…そこで、恐らく他の感覚よりも優れていると自認している嗅ぎとる力を全開し、繊毛をフルに揺るがせ蠕動させてみる。 そうしながら、空間の白紙に筆記する。 一言一句、感じ取ったことを、ピッタリと適切な言葉に置き換え、私自身に反芻するように投げかけ、返ってきた反響のような言葉を、さらに繋げながら、それでも、しっくりと感じ取ることができなければ、もう一度、同じことを繰り返してみる。 このような場にあってみれば、もはや、私には Imagine から生み出される「言葉」しかないのだ。…するといつも決まって、CHIKOの声が、温かい兆しを告げながら、輸血されるような具合に流れ込んできて、私の言葉の抜け落ちたところを埋め尽くし始める。 さらに、それを紡ぎ繋いでいくと、やがて甦った体液が生気を取り戻し、私の「存在」を、完璧に悟らせてくれる。しかも、それらの連携が、私の「覚醒した不眠」を、思わずこぼれる微笑みのように満たしてくれたりもする。 「ほらKIMI…あなたの身体の働きの中で、私が唯一信用していいと思うのは、きっと、あなたの、このお鼻…私の小さなお鼻に比べたら、匂いに敏感な部分の表面積は、きっと3倍かもっと、あるはずよ」 CHIKOが、私の鼻梁にゆっくりと唇を這わせながら、湿った声で呟いている。 「あなたは、言ったのよ。ボクにはね、おじいちゃんの父親ってのが、Cherbourg 生まれの宣教師で、フランス人の血が入っているんだ。まッ、この鼻は、その遺伝子のせいってわけなんだってね。あなたの言うことなら何でも信じていたの私…ボクは、女を匂いで記憶しているんだ…なんて憎らしいことを言って、ゴールデンリトリバーさながらに鼻を鳴らし、ちょっと得意げな口調で自慢したのじゃなかったかしら。じゃ、私は、どんな匂いで、KIMIの記憶にファイルされてるのかしら。その立派なお鼻で嗅ぎ分けた匂いを知りたいものだわ…なんて、ちょっぴり猟奇的かしら私…」 確かに私は、女たちの匂いを、花の香りや、パフュームに結びつけて即座に思い起こすことがなぜか本能的にできてしまう。 けれど、CHIKOが言ったことを無条件に笑い飛ばせる、そんな日々があったとは…。 きっと、それが可能だったのは、私のCHIKOへの一途な愛が確かであり、CHIKOの私への愛が揺るぎないものだったからこそのこと…。 ストレートに愛や憎しみや、あるいは恨みや嫌悪に彩られたものであるならば、すんなりと受け入れるか、黙ってしまえばよいだけなのだけれど…。 正直、私は、母によって暴かれた「事実」を知って後のCHIKOの「神聖降臨」に、かつて経験したことのない震え上がるほどの恐怖を覚えていたのだ。 それは、私が「今ここにある」根源的な意味のような「拠り所」を揺るがす生理的に擡げてくる震えのようなものだろうか…。 その頃からか、私に向けられたCHIKOの言葉は、常に辛辣な意味を含むようになった。 私が何気なく呟いたことにすら、柔らかく日常的なトーンではあるけれど、鋭く研ぎ澄まされた「棘」を内包した言葉を、きっと返してくる。 CHIKOは、私にまつわることは、およそどんな些細なことでも微に入り細に入り記憶している。 しかも私の言葉は、なぜか時として、小さな欠片になって飛散し、そんな記憶の狭間に食い込んで、思ってもみなかった展開を見せたりするのだ。 だから、私は、CHIKOが本当に言いたいことの真意を捉えようと、何とかその心の在処を懸命に探らねばならない宿命を背負ったように、いつだってその「言葉」から逃れられない。 いっそ、「定かな顔を持たない女」とCHIKOをともに生活させれば、そんなあからさまな、日常の routine が、あまりにも赤裸々であればあるほど、CHIKOの「神聖降臨」は起こりようがないのではないかなどと、窮余の策をひねり出すように思ったりもした。 そうすれば、一回りほど年の離れた二人は、私を媒介にして、姉と妹のように互いの役割を見出しうまく波風立てることもなく乗りこえていくようにさえ思われたのだ。 愛のベクトルが複雑であればあるほど、とても一人で処理できなくなり、やがて自然に互いの納まる場に、しっくりと納まってしまうような気がした。が、それは恐らく、私の身勝手、卑怯の極みに違いない言い分というものであろう。 六本木の晩餐は、HIROが掌で眠そうに目頭を薄桃色に染め始めた頃、急いで、東日ビルの駐車場に戻り、郊外の我が家へと「ドンガメ」を駆りたてた。 CHIKOは、私の隣に、深く背を埋もれさせたように座り、パリからの時差と疲れを宥めるように、流れゆく久しぶりの東京を瞳に映しながら会話を途切れさせた。 HIROは、家族的な時間に満足したのか、後ろのシートベルトにすっかり身をまかせ、深い安寧の眠りに入ってしまった。 「ドンガメ」は、狭い空間のしかるべき定位置に座った三人の絆を、何とか揺るぎないものにしようとしているのか、私の意を得た駿馬のようにアクセルを踏み込みどこまでも走り抜けていきそうに思われた…。【PHOTO:JULIYA KODAMA】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 21Jun
    • ◆なにもかもが、このまま永遠に続いていくような時の流れ…それが私の宿命・・・恐らく・・・の画像

      ◆なにもかもが、このまま永遠に続いていくような時の流れ…それが私の宿命・・・恐らく・・・

       あの夢をみたのが、そもそもの始まりだった。 海辺の廃屋に、女と隠れ住んでいる鮮烈なイマージュ…。 にび色の海から、きりたった崖をつたい上り、這うように吹いてくる湿った風が、窓の木枠の隙間をすり抜け、薄汚れたガラスを微かに震わせ音を立てている。 間断なく聞こえている、くぐもった女の呟きを、私はサティを聴くように風音と遊ばせている。 右腕に抱いた「定かな顔を持たない女」が、揺れる灯りの中で下半身をくねらせ、秘やかなものを開く…露出した白い臀、艶やかに輝いている襞…女の温もりを包む琥珀色の匂いが、「私の時」を覚らせるのだ。 夜の帳がうっすらとした光を含み始めるのを待って、満ち足りた寝息をたてる女をベッドに残し、後ろを振り返ることもなく走り抜き、私は崖の上からダイビングした。 そう、あの頃のことだ。…海を越えてかかってくる電話に、私は日々、戦々恐々としていた。 「私とあなたのことを、ちゃんと、CHIKOさんに言いたいの…私が、get pregnant であることを…今すぐ、お家に電話しても、あなたはいいのかしら…」 そうだ、あれは夢などではなかった。 何よりも、私に関わる女たちの影にとてもセンシティブなCHIKOのことだ、私の挙動に恐らく女の存在を感じ取っていたはずだ。 けれど、最後の詰めの明らかな証拠が手に入るまでは、認めたくない。この日常をあえて崩す必要などない。それは不安定に作為的な均衡ではあったけれど、私が試みていた「女の平和」をいっそ逆手に考えてしまえば、どうってことではないのだから…と、CHIKOは、そんな風に考えたに違いない。 私は私で、強引に前に進もうとするその女に、粘液でからみ取られた虫さながらに牽引されてはいたが、ここで「エイッままよ」とばかりに日本を離れる気持ちにはなれない。 仕事はさておいても、最後のどんずまりのところで、CHIKOを一人捨て置くことなどできはしない。そう、CHIKOは、私をぬきにして生きられない女なのだ。「寄る辺ない女」なのだ。 電話は、時を選ばず襲ってくる。その度に私は、マンションの非常階段を大急ぎで駆け下り、駐車場の隅に駆け込んで、懸命に女をなだめるのだ。 なにもかもが、このまま永遠に続いていくような時の流れ…それが私の宿命…恐らく「母の呪縛」に違いない…。 CHIKOがパリから戻ってきた。 私の海外取材の時もそうだったが、仕事と旅の疲れを癒やすためと、もっともな理由をつけ、六本木か赤坂で、旨いものを食べるというのが二人の決まりだった。 HIROが、その「儀式」に加わって、とことんグラスを交わすことはなくなったが、それでも、a good-mannered family の効果的な演出に、私は満足していた。 このところ、HIROは私の心を読む、ちょっと不思議な力を身につけてきた。 その時の表情が、考え込んでいるときの私にまるでそっくりだと喜んだのはCHIKOだったが、私も内心、「小型の私」を見るようで悪い気はしなかった。 しかし大いに困ったのは、両親の微妙な乖離を埋めるべく、私に関する情報なら、まず一番に私が傷つくことがないように自らの感受性の中で心憎いほどやさしいアレンジを加え、知らぬ間に母親に伝えてしまうことだ。 そんな小憎らしいほど愛くるしくも、ちょっと油断のならないHIROの、離そうとしない小さな手の感触から逃げるように、私は急ぎ足で阿弥陀籤さながらの路地をたどって、瑠璃色の「ドンガメ」を駐めておいたパーキングへ向かった。 私を母親の元へ届けるのが使命だといわんばかりに、クリクリとした瞳にいっそう力を込め、懸命に引きずられるように私の背に追いすがっている。 恐らくHIROは、私がこの街に残している女たちとの痕跡を、天性の嗅覚ですでに読み取り、寄せ集め、組み立てつつある。…鋭く穿った視点を持つそのストーリーの完結が、私は恐かったのかもしれない。 冬の夕刻とはいえ、沈もうとしない陽射しは、赤坂では珍しい父子連れの背を押すように、長い影となって揺れていた。 さすがに子連れで局に駐めるわけにはいかなかった「ドンガメ」を見つけ出したHIROは、私がわざわざ赤坂に立ち寄ったわけを追求し忘れたように、手をほどいて駆けだした。 「ドンガメ」は、私が書いていた番組に出演していた化粧品会社のUから、嘘のような値段で譲り受けたものだった。…ティーローズの香りが深く染み込んだシートは、元オーナーのヒップの形跡がそのまま残っていて、何だか愛おしく愉快だった。 だが、瑠璃色のワーゲンは、ちょっとした事件でも起こそうものなら、私の風貌さながらに逃げおうせるは車ではないのが、プライベートビーチで裸になった快感のように、なんだかゾクゾクさせるものがあった。 「あなたの顔は、モンタージュしなくてもすぐに見つけられるから、決して悪いことはよした方がいい」…昔、住んでいた大家の息子は、私を見据えると自信満々に言った。東大卒の彼は、元警視庁に勤め、猫屋敷と評判だった母屋の天井裏を昼夜なく這い回る癖があった。 私のアイデンティティと不即不離、「車は体を表す」ってわけか…。 80年代、赤坂や六本木周辺に事務所を構えていたTV番組制作プロダクションは、フリーランスの「作家先生」にとっては、飯のよりどころのようなもので、ぶらりと顔を出すのが、ちょいと粋な仕事のやり方で獲物にありつける手立てでもあった。 TBS正面玄関への桜並木の坂道や、いつも猫たちがたむろしていたゴルフ場を回り込んだ坂道は、スタジオに向かう私の心を躍らせたし、くねくねとした狭い廊下は、テレビの世界に生きていることを心地良く満足させ華やいだものにしてくれた。 初めてワイドショーの曜日を担当したテレ朝は、正面玄関のローターリーを囲んで翼を広げたように団地風の局舎が並び、近くには、六本木スタジオや画廊、私が関わった1000ドルパーティのオフィス、そして何より、CHIKOのディオールも、地下鉄に繫がる東日ビルにフロアーを持っていた。 ラピスラズリは、プロ受けする文具の店、六本木に「北回帰線」というお店を出したHOKIとよく待ち合わせに使った珈琲店もあったし、アポイントをとってはりついた「アマンド」は、便利な時間つぶしの場であった。 CXや日テレ、テレ東なども併せて、いくつかの番組を掛け持ちし、新宿に旗揚げした商業演劇一座で舞台の脚色や、企画から立ち上げた映画の本を書かせてもらったり、マギー司郎やユートピアに逢ったのも、私が構成していた子供番組がきっかけだった。 どこのプロダクション、誰の弟子というわけではないのに、なぜこんなことを始めたのか、まッ見よう見まねで何でもやっていた駆け出し「作家」さんではあった。 当然、収入は極めて不安定で、それでも自由奔放な生活が出来ていたのは、CHIKOの支えがあったからだ。 東日ビルの地下に「ドンガメ」を駐めるとエレベーターを避けて階段に向かった。 日産ギャラリーのある1Fのエレベーターの前に、すでにCHIKOは、パリの香りを漂わせて待っていた。 久しぶりのママに、HIROは子供らしくはしゃいで駆け寄った。 「ママ、パパはね、ママのこと首を長ーくして待ってたんだ。パパはすごいよ、ボクに、ニュージャパンの火事も見せてくれたんだ。赤坂はね、パパの庭だって…おかしいよね…」【PHOTO:JULIYA KODAMA】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 15Jun
    • ◆とてつもなく長い時の流れの果てに、「頭脳」と「情動」を持った、形ある「私」になっていく・・・の画像

      ◆とてつもなく長い時の流れの果てに、「頭脳」と「情動」を持った、形ある「私」になっていく・・・

       時のない場のドットは、やがて消滅するブラックホールに逆らい、不分明に果てしない闇に満たされた「空」に、おらそらく宙ぶらりんだろうけれど、はっきりと選ばれた「黒点」となって現れた。…私は、すでに「こちら側」の存在だ。 ごく自然の衝動のように、私は、広がる胎盤に根を下ろし、貼りつき、心音に合わせ温かい体液が送り込まれてくる透き通った皮膜をドックドックと揺るがせ、プニョプニョとした細胞を幾度も幾度も分裂させ、ひたすら「生」に向かって変化するプロセスを刻み込み、生来の羅針盤を頼りに航路を定め、自ら万華鏡さながらキラキラと輝いて、船出のドラを高らかに鳴らし続ける。 私が、「生命」となる胎内で目覚めた時、まるでスクリーンに映し出されるような鮮烈な物語は、その瞬間から、嵐のようにフラッシュバックする記憶さながらに、命の風景をしっかりと体感させるのだ。…あたかも、あらかじめ用意されたシノプシスに従った鮮やかな展開ぶり…。 この私に、選ばれし者の喜びも自負もありはしない。たとえ、「選んで選んで、この子じゃこの子じゃ」と呟く母がそうであっても…。 だがしかし、まるで人生のアバンタイトルを、まんまとうまく編集しきった恍惚と傲慢さを、思わず露わにした風ではあった。…いやそんなこと、あろうはずはない。 どこからか「閃きの声」を聞き「覚醒」し、ドットから穏やかな膨らみになり、透き通っていた皮膜の厚みを次第に増していく、とてつもなく長い時の流れの果てに、「頭脳」と「情動」を持った、形ある「私」になっていく。 その声が、「造物主」からのものなのか、私の母となる者が呼びかけたものか、私自身のモノローグなのか、あるいは他の「何か」であるのか、未だ定かではない…。 けれど今、「ここにある」という真実を認めざるを得ない私は、確信をもって言えるのだ…「こうして、母は、私の初めて知る女になった」…「宿命の呪縛」と言わずして何と呼ぼう。 私は、それでも、呪縛のがんじがらめの枷に懸命に抗いながら生きようとした。望まなかった「こちら側」での生を、課せられたことへの、かなわぬ「レジスタンス」…。 「KIMI、ねェそこにいるのね…わかっているのよ。KIMIを、そこに閉じ込めている以外、手負いのあなたを、私の下に引き留めておく手立てがあったかしら。元はといえば、それが、女たちによって傷つけられたものであればあるほど、そうよ、あなたは、私によって、そこで温かく抱かれたまま守られていなければならなかったのよ…でもね、いくらなんでも奔放すぎたわね。あなたが、海辺の古い館に逃げ込んでしまうようでは…まるで処女の芝居じみた自傷行為のようなものよ…自らの行動はしっかりと戒めるべきってことよ。KIMIのやりそうなことなんて、どんなにうまくおおい隠したって、私には分かるのだから。…ほら、あなたは私に嘘はつけない。あなたはやましいと、その広い額にポッと桜色の天使を浮かび上がらせるわ。それがわかるのは私だけ。そうよ、どんな女にもできやしない…たとえ敏腕の刑事にだって…」 今、こんなところから、最後の一歩が踏み出せないのは、思い巡らせてみると、恐らくCHIKOが投げ打つ「呪縛」の網にひっかかっているからに違いない。 私は、「ろくでもない男」になろうとした。けれど、なんのことはない、全くの大根役者の顛末で…まんまとCHIKOに取り込まれちまったというわけだ。 すっかりCHIKOの体の中に組み込まれ、身動きすらままならないままに、その場を放棄し逃れるなどとてもできやしない。 そう、私は、CHIKOから逃れられない。 やがて、CHIKOの胎内でこのままドットとなり、ブラックホールに飲み込まれ、消滅するのだろうか…。 ほら、そうすれば、CHIKOを抜きにした私の人生はなかったと言わしめるようなものではないか。 傲慢と言われようと、何よりも、私のいないCHIKOを思い描くことができるだろうか…。 CHIKOの眼差しに甘えるようですらある温かさの中で、私は目を閉じる。 浮かび上がるスクリーン…あたかも大島渚ばりの「青春残酷物語」のストーリーに、すんなりと飲み込まれていく。時折、刻印するように色鮮やかな展開を見せる。 それは、脳幹にためこんだ記憶片を、自由自在にコラージュし描き上げる「セクサス」「プレクサス」「ネクサス」…。 赤坂見附…地下鉄の階段を登り切ったところにある小さな公園…くるくると回る遊具に浅く腰を下ろした私は、遠く聞こえるデモ隊のシュピレヒコールを聞いている。 一ツ木通りから路地を抜けた正面のマンションの一室の小さなベッドで過ごした女を、成田からのフライトに見送って、気怠い眠りの中から、やっと起き上がり、たどりついた場所。…女の香りが、まだ指先に残っている。 ニューオータニの麦わら帽子が夕暮れの中に揺れて見える。 あァ、あの女たちと、どっぷりと過ごした一室が見える。彼女たちが出かけた後、夜の明けるのを待つようにして弁慶橋を渡った。 幼かったHIROが、私の掌に包まれて、焼け落ちたばかりのニュージャパンを見上げている。 「パパ、迷子になっちゃうからね…僕の手をしっかりと捕まえていてね…これから、ママに会いに行くんだから…」Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 13Jun
    • ◆「女」たちも、CHIKOと私の舞台に引き出し、せっせとオムニバス風の本を澱みなく書き続け・・・の画像

      ◆「女」たちも、CHIKOと私の舞台に引き出し、せっせとオムニバス風の本を澱みなく書き続け・・・

       依然として「覚醒した不眠」の中にいる私は、あらゆるシチュエーションを考え巡らせてみても、余ほど鮮やかに、あらゆるものを認識している。 それはまるで独立した「脳」が、自動筆記でもするように、次々と「言葉」を編み出し、色鮮やかな「曼荼羅」を描き上げていくかのようだ。 私は、揺籃の温かい心地よさにほだされることもなく、明らかに「覚醒」し、「眠ることなく」、暗闇でスクリーンに映し出される物語と一体化するような具合に生きている。 「ろくでもない男」になれば、CHIKOは、きっと私に愛想つかし、新しい生き方を選んでくれるだろう。…などと嘯いていた私は、一体、そんな手前味噌なロジックが通用するとでも思っていたのだろうか。 あえて自らを悪者にしたてあげ、小賢しくもしっかりと「逃げ場」を確保し、どろどろとした修羅場なんて御免被りたいと、本当は、「ろくでなし」なんかじゃないと自認し、「私は正しく良き男である」と悟った上での、「自虐一人芝居」の役者になりおおせたというわけだ。 私は、そんなおよそ七面倒くさいことを、あえてやった。なぜって、私の前にそれらの「女」が現れる前まで、いやそれからとて、私のCHIKOへの愛と言えば愛は、ほとんど変わることはなかったからだ。 CHIKOは依然として可愛く愛おしい存在で、その頃の私たちの日常は、かつてなかったほどにも満ち足りて幸せだった。   それは、小さな頃、両親の選んだ環境につき従うことでしか生きられなかった境遇を、将来を夢見ることで受け入れ、稀にみる純粋さで一途に生きてきたCHIKOが、初めて手にした「家族の幸せ」だった。 いずれにしろ、そんなCHIKOは今もなお、己のいる場から逃げたり、いなしたり、傍観者になったりすることがどうしてもできない。幼児のような素直さと厳しさで、何事にもストレートに反応し立ち向かう。それ故に、己自身を傷つけ、癒える間もなく命を削り尽くすことになりかねない。…いや、そんな心配をしていたのは、他ならぬ私自身なのだ。 極道非道も甚だしい私の行為は、甘っちょろい言い訳で許されるはずのものではない。 いやそれでも、詭弁も詭弁と分かっているが、その時、「女」たちに向かった私の行動は、幸せのまま、年老いていく私の最後の「冒険」だったのかもしれない。およそ冒険は、頗る安定した生活のバックボーンがあってこそ成り立つものであるだろうから。 そんな卑怯にもほどがある思惑もあって、CHIKOの私への愛を、あからさまに裏切るような行動をしてはならなかった…そう、少なくとも、私の存在自体に非があるという「ろくでもない男」…これからの生活を共にする男としてふさわしくないと、判断せざるを得ぬと思わせるのが、とびっきりの策だと思われた。 「不条理」は、時として、完結するストーリーの中で「条理」として通用したりもするものだ。 それが証拠に、CHIKOは、私の「ろくでもない男」に、不思議がってはいたが、これっぽっちも刃向かうことなく、従順につきあい、「ろくでもない男」を正しい軌道に乗せるために、私の思惑とは裏腹に、仕事で国内だけでなく欧州を行き来しながら、これから歩むべき道を見出したかのように果敢に私に立ち向かってきた。 私は私で、「女」たちも、CHIKOと私の舞台に引き出し、せっせとオムニバス風の本を澱みなく書き続け、一世一代の芝居にからめて技巧を凝らした演出を試み紡ぎ出した。 だが私は、やがてエンドマークが打たれるシークェンス寸前のところで、ドラマトゥルギーを遙かに超えた大団円に遭遇する。 ある「女」は、「あなたは選ばれた男」「初めてオーガズムを教えてくれた男」だと、体液で温かく濡れた中心に力を込めてククッと喉の奥で笑ってみせた。 その「初めて」という言葉を、私は信じた。そんな希有の瞬間を得ることはまずないのだけれど、その時は、信ずるに足る「生理」を私は感じとっていた。それは「天命」とさえ感ずる一瞬だった。 私の母は、私を「選ばれた子」と言った。 「つるつる帽子の水の子の中から、まァ選んで選んで、あァ間違いない、この子じゃこの子じゃ、出てきたきたあんたにはなァ、命がいっぱい、いっぱい、こもっとる、こもっとる…」 柔らかい股の間に小さな身を委ね、小さなペニスを不思議なほどにも堅くした私の耳元で、母は、まるで穏やかな時を食むように、心地良い旋律を囁きながら、いつも背を柔らかく撫でながら寝かしつけてくれた。 母の中で、望みや意識されることのない意志がどうあったかは分かりはしないが、私を形作ろうとする細胞の塊とは、ほとんど関係のないところで、恐らくこの世の様々なしがらみを慮った上で、確かに薄氷を踏むような選択の末、私は「選ばれた子」になった。 母の胎内から出てきたという事実は、私がいかようにしても消し去ることの出来ない事実であり真実なのだ。 「選ばれなかった子の中の一人になっていたとしたら…」 母は、私の「生殺与奪」をコントロールした。【PHOTO:JULIYA KODAMA  無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 11Jun
    • ◆そこで、「覚醒した不眠」だけが、私にとっての自然になった・・・の画像

      ◆そこで、「覚醒した不眠」だけが、私にとっての自然になった・・・

       私の眠ることのない「時」は、現幻の境界も朧で、まるで「胡蝶の夢かしら」と、あちらでもこちらでもなく、ただただ夢に包含された揺籃のようにゆらゆらと流れていく…。 夢の行き着く先などてんから分かりはしないし、知ろうとする気持ちすら今はない。 だから、これこそ条理なのか、苛まれてきた不安もなければ、好奇心に駆り立てられるようなときめきも、めくるめく快感への情動もない。 私は、この上なくハッキリと視線を定め、何かに狙いを定めて見つめ続けることも、自由に視線を操り周囲を見渡して見ることも、きっとできるだろうけれど、あえて意図するように視界を封印してしまっているかのようだ。 実際、半睡半醒というのではなく、言葉で表現するなら、やはり「覚醒した不眠」が当たっていようか…。 およそ人々がどのようにものや回りを見ているのか分からないけれど、幼い頃から、私がいつも見ているのは、私の網膜に原色で映し出された瞬間のドラマであり、次々と想起され飛び交い展開される、瞬間のドキュメントなのだ。願ったり、しようとしてするわけでなく、それこそが、私の真実であり、唯一私を私として認識できるものだということか。 そう、「銀幕」ってのは、今の今、光と影の織りなす「無」に違いない。それらは「幻灯」であって、そこに実体があるわけではない。 けれど、恐らく、いや確かに、私の中に、しかと刻印された記憶であり、かつてあったものやことの現の記録であるに違いない。だから、それを信じることこそが、私の生である。 かき消されかき消され続くとめどない私の真実…それらを繋ぎ繋ぎして、いくつもの物語を紡ぎあげていくことを、私は止めたりはしない。 こうして、私は見ないことによって、初めて真実を見る。 私は、きっとそんな風に自然を裏切りながら生き続けてきたのだ…そこで、「覚醒した不眠」だけが、私にとっての自然になった。 どこからともなく、いや、すぐそこから聞こえてくるCHIKOの囁きは、私には唯一の、こちら側での生を「ある」ものとして認識させてくれる。 「KIMI、あなたは、パリで私を抱こうとしなかった…同じベッドで背を向けたまま…きっと、あなたは疲れていたのね、今回のテーマはとても難しいなんてもらしていたあなたは、パリをロケで走り回った後、ホテルにやっとたどりついたようだったから、そうよ、そうに違いないわって、私は私にそんな風に言い聞かせていた。あなたの広い背中に額を寄せて、流れそうな涙をぐっとこらえ、息をかみ殺し私自身にそっと触れていたのよ。メゾンで、がんばってなんとか仕事に一区切りつけて、 Quatorze Juilletに合わせてロケを電話で伝えてきたあなたを、どんなにか待っていたかしら…日本を離れた、あの女のいないパリでなら、きっと私だけのKIMIになってくれると、余程お馬鹿さんのように信じていたの…」 今、ここにいる私を、分かっているに違いないCHIKOは、指先の感触で私の輪郭をなぞりながら、小さく呼びかけるように話している。  「やっと休日をあなたと合わせたあの日、バトームーシュでセーヌの風を心地よく肌に感じた気持ちよさに酔いしれた私は、ノートルダムの見えるセーヌ河畔を、あなたの手を、ちょっと強引に引いて一緒に歩いたのよ。私は、打ちのめされ傷ついた心を、なんとかあなたの掌に伝えようとしていたわ。知ってるでしょ、私の男は、あなただけよ。あなたぬきに暮らすなんて考えられないわ。うんと年老いたら、緑いっぱいのパリ郊外にあなたと暮らすのが、私の夢…でも、あなたは、別の女に、そうどんな顔した、どんな素性かも知らないけれど、心を奪われていたのよ。私以上にあなたを思っている女なんていない。きっと、きっとそれは本当のあなたじゃないわ。あなたは片時の間、あなた自身を見失っていたのよ。そのくせ、そのことを私に知られまいと、一生懸命、格好だけはルーティン作業のようにとりなしていたのよね…それって、私を悲しませないための、あなたの残された優しさだったのかしら…」 「ろくでもない男」になれば、CHIKOは、きっと私に愛想尽き、辟易として、憎しみすらも抱くことなく、それほど悲しまないで私から離れていくに違いない。愚かにも、アリストパネスの「女の平和」を実践しようとしたわけだ。 CHIKOの私への絶対的な愛の忠誠を、それまで、私はほとんど妄信していた。どんな魅力的な男が現れようと、CHIKOは、私を裏切りはしない。私が、疑心暗鬼に身をやつすことはなかった。事実、CHIKOは、そのとおりだった。私が背を向けている何年もの間、私との冷ややかな関係を外にもらすこともなく、表向きいきいきと仕事に没頭していた。仕事のあれこれをむしろ楽しそうにさえして、饒舌に話してくれていた。 だがそうであっても、私は、セクシャルな愛の繋がりを、あまりにも甘く見すぎていた。 「女の平和」…それは優しさなんてものではない、一人で思い込んだ奇妙な理屈、卑怯にも程がある。【PHOTO:JULIYA KODAMA  無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 04Jun
    • ◆透き通った果てのない場…私のあらゆるリビドーが冷たく横たわっている、「罪と罰」のない私の夢…の画像

      ◆透き通った果てのない場…私のあらゆるリビドーが冷たく横たわっている、「罪と罰」のない私の夢…

       私は、すっきりと明晰な頭脳を持つ人のように、三半規管をコンパスさながらに使い、今、在る「場」と、先に向かって打つ心音によって、流れゆく「時」を確認すると、明らかに覚醒していると、ホッとする。 いや、それも束の間だ。 次の瞬間、脊髄を駆け上るようにして襲ってくる得体の知れない感覚が、目頭から身体全体をジワジワと覆っていく睡魔となり、私の覚醒は、重く気怠い肉厚の皮膜に拘束されていく。 私は、目蓋に力をこめ、凍り付いていく身体に温かい気力を吹き込むようにして、眠りの誘惑に必死の抵抗を試みる。 だが、まるで早乙女に魅せられ、うっとりと潤んだ瞳の少年のように、眠りの底にズルズル、ズブズフと引きずり込まれ、もはや拒むこともままならぬまま身を委ねてしまう。 やがて、ニューロンが極上のオーガズムを味わう心地よさで、夢に喰われ、夢だけに満たされた空間に、私はゆらゆらと漂い始める。 パノラマのように展開される原色の夢は、私の目の前に迫ってパッと消滅してしまうものもあれば、ディゾルブして現れたり、ビリヤードのテーブルに飛び交うカラーボールのように、私を目眩ませするものもある。 それらのほとんどが、なぜか私の知る女たちと私との愛憎劇…いくつものストーリーが瞬時に、しかも幾重もの展開をみせ、過去から、今の私へとまるで因果応報と言わんばかりの結末を描いて繋がっている。 こうして、夢と戯れることはしごく簡単で、結構、楽しかったりもする。それに、女たちはみな愛おしく、私にやさしい微笑みをくれるのだ…。 いや今、そんな蜜の誘惑など、どうでもよい。 私は、次々とまとわりつく夢を振り払い振り払いして再び覚醒しようと、心底、強く望んでいる。 私はCHIKOに呼びかけ、忠誠を誓おうとする男なのだ。 そこで、夢の狭間から言葉を探し出し、絞り出すモノローグのように語りかける。 それは、CHIKOへの、私からのサイン…。 「ほらCHIKO、ここだよ。おまえの中に、柔らかく優しく温かく包まれて、ここにいる。おまえは、きっと、私からのこの呼びかけ…そう、私の、恐らく意志のような微かな動きを感じとり、おまえもおまえで、穏やかに満ち足りた至福の時の流れに身を任しているのかしら…きっとそうだ。そうだとしたら…」 ゆったりとした背もたれの長椅子に身体を横たえたCHIKOが、私のサインをなぞっているのか、天蓋に包まれた空間に、子供のように小さな指先を筆先のようにゆっくりと這わせ、言葉を描いているように、私には見える。 明らかに私を感じているに違いない。 「決して私を裏切ることのなかったCHIKO…私は、そんなおまえの一途な心に、卑怯にも胡座をかいて慢心していたのだ。おまえが私を感じながらも、私が見えないのは、それはきっと、私のせいだ。私の逡巡は、おまえのピュアな心に値しないことを痛いほど知った男の羞恥のあまりの尻込みのようなもの…」 言わねばならぬ、言葉で伝えなければならぬという私に課せられた、そう使命のようなものは、あれほど読みたいと思い続けてきたハードカバーの一冊、例えば、かつて貪るように読んだヘンリー・ミラーを手にした途端、極めて冷静に読む気を失ってしまうのと、なぜか同じように殺がれてしまう。 あるいは、人々とともに在ることを拒否し続けてきた日常生活の、きっとそれは代償…無名であることを望んだしっぺ返し…。 今は、夢を夢とすることのないように時は流れている。 透き通った果てのない場…私のあらゆるリビドーが冷たく横たわっている、「罪と罰」のない私の夢…つまり、無名の人としてCHIKOとともにあった日常生活の夢のような楽しさと、ひきかえにした、あえて選び取った「覚醒した私の不眠」が、こうして始まる…。【PHOTO:JULIYA KODAMA  無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 27May
    • ◆私を形作る細胞の一つ一つが私を裏切ることなく私の中に収まっているような…の画像

      ◆私を形作る細胞の一つ一つが私を裏切ることなく私の中に収まっているような…

       「なぜなの、KIMI、わかっているのよ、ここに来てくれたことは…。あなたは、岬の館にいるこの私に会いに来たのよ…ねェ、私が大好きなあなたの、あの笑顔を早く見せて。そうよ、たとえ、セーヌに行き着かなかったとしても、今は、そんなことどっちでもよいことなの。結局のところ、私はあなたの、ちょっと恥ずかしそうな、くぐもった笑い声と、白い歯を見せて大きく笑う、くったくのない笑顔を、いつも、ずっと見ていたいだけ…。どんなことがあっても、私は、KIMI、あなたのそばにいたいの…たとえ、あなたが、女とベッドの中にいたって、私はあなたを信じていたの、そうよ、とても可笑しなことよね、これっぽっちもあなたを疑っていなかったなんて、なんて馬鹿な女なんでしょう…だから、あなたがあの女に最後通牒を出した挙げ句にできた傷なんて、笑い飛ばしたいほどちっちゃなものよ…そう、私の傷ついた心に比べれば…ねェ、どこにいるのKIMI…傷はもう大丈夫なはずよ…あれから、随分と時は過ぎ、巡り巡っているのよ…」 まるで、緞帳の裏側にでも、「こちら側」をくるりと反転して存在している「あちら側」から届いてくる、エコーをかけた静かな響きをもった、なつかしくさえあるCHIKOの声が、それでも、唇にそっと触れられるくらいすぐそこからのように、私の耳殻の中へ忍び込み、間断なく私の意識を捉え、なんとも心地よい刺激をもたらし、私は思わずうっとりとしている。 「求めさえすれば」…呼びかけさえすれば、ここから抜け出せるのだと分かっていても、私は、未だ漆黒の闇に漂うように満足げにしっぽりと包まれている。 なぜだろう…あれほどにもCHIKOは、私の中に住みつき、私はCHIKOの存在に、これ以上ないというほど幸せに満たされたいたというのに…あえて、そう、あえてとった行動が、私を待ってましたとばかりに呪縛し続けているのだ。 一体、私は、女たちに何を求め、結末の分かった「三文オペラ」のようなシナリオをひっさげて、何を好き好んで、険しく錯綜した泥沼のような道に入っていったのか…なんのために…。 甘い誘惑…とろける愉楽…しとど濡れた女から、後ろ髪を未練がましく引かれるような、艶っぽい視線に絡みつかれ、拒んだら最後、もろともに奈落の底に落ちていく…幾たびも幾たびも…私は、まるで都合の良い弁証法を試みるような具合に、女たちの悲しむ姿を見たくはないなどと都合の良い認識をし、私にとってベストの選択をしているのだと、何の根拠があるわけでもなく、かたくなに自らを信じ込ませて彼女たちの中に止まってきた。 仕方のないことだったのだと、強引に卑怯な納得をさせながら、挙げ句の果てに、最も愛さなければならない女のもとに、手負いの醜態でヨタヨタと舞い戻ってきたってわけだ。 まるで何もなかったかのように…なんてこと、さすが恥知らずの私とて、おいそれと出来るわけはない。私にも、CHIKOには、こんな姿を見せられないという矜持があるとは、とどのつまり、ええ格好しいの卑怯者なのだ…。 「ねェ、どこにいるのKIMI…」 私は、ついに渾身の踏ん張りをきかして決意する。 今ここに、とても不思議だけれど、かつて、いかようにも私をコントロールしていたセクシャルな欲望もなければ、根源的に光を欲しがるような欲望すらもない…無数の欲望を綯い交ぜにして私を操り人形のように情動させていた、錯綜した糸からも、すっきりと解き放たれている私がいる。 さあ今だ、今、ここで、CHIKOを求めるのだ。 「CHIKO…おまえに会いたい…」 私は今を感じているだけだからこの温かく柔らかな心地よさは、恐らく瞬間の時の積み重ね…いや違う。失われることのない時、永遠に保証された安堵なのだろうか…。 もはや「私は誰?」という迷いはない。いや、そんなことを知る必要などありはしない私の存在…。 やがて私が行き着く先の、全ての呪縛から解放された浮遊感…私が私と意識することなく、私を形作る細胞の一つ一つが私を裏切ることなく私の中に収まっているような…私である場…ただ単に感覚や思念の場に過ぎない私…。【PHOTO:JULIYA KODAMA  無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 25May
    • ◆もしかして、「瞬間の生」の消費だけが事実であり、真実であるのかもしれない…の画像

      ◆もしかして、「瞬間の生」の消費だけが事実であり、真実であるのかもしれない…

       パリ…ホテルから歩いて行けるクチュール…CHIKOの部屋…天蓋のあるステキなベッド…私は、なぜ、闇の中にいるのか、それを知るには、きっと私自身に刻み込まれた記憶を、ニューロンを刺激し束ねるようにして、なんとかたぐり寄せるしかない…。 「セーヌの河畔…少し北よりの緑に包まれた…テラコッタ色の壁…時の流れるままの毎日を、あなたの微笑みを糧にして過ごすの…いつも、あなたと手をつないで、目についた小さなアクセサリーのお店に立ち寄ったり、賑やかなマルシェで新鮮な野菜を探してみたり、マダムたちとちょっとおしゃべりをする…そうね、できるだけ、まわりの喧しい日本には帰らないで、時折、子供たちがやってきてくれるのが楽しみ…」 CHIKOが、そんな風にパリに焦がれ、言葉で表現するのがもどかしいほどに渇望していることは、よくわかる。 お縫いこさんから、言わばたたき上げ、よく知られたクチュールで仕事ができるようになり、何冊かの本を書いたりしてきたキャリアは、並大抵のものではない。 そう、パリに住むことは夢や憧れというより、やっと現実にしたCHIKOの生命そのものに違いない。 そんなパリを、私も好きだ。 Paris, Je t'aime…取材やロケ、そしてCHIKOと一緒に訪れたパリは、ロンドンやローマ、ミラノ、フィレンツェ、チューリッヒ etc.ましてニューヨークやLAなどと違って、私をもまた魅惑し幻惑した。 パリは、いつも、抱いた思いをシャボン玉の中に包んで、時の流れをすぐ繋げるように漂い続け、そのままにしておいてくれる。 私は、訪れる度に、そんなシャボン玉を指先でそっとはじけさしてやるのだ。すると一瞬、飛散したシャボンの冷たい感触と漂う香りが、私を、その時のその場に引き戻してくれる。 17区クルセル通りや9区のピガール、そして、6区カルチェラタン…そうだ、7月14日、Le Quatorze Juillet…私は、トリコロールカラーで彩られたパリにいた。 外務省の特別番組の企画が通り、およそ地球を一周する形でロケを敢行していたのだ。 バスティーユ広場…1789年ルイ16世の時代、アンヴァリッド(廃兵院)で武器を手に入れたパリ市民たちが襲撃した、あのバスティーユ監獄…に近い消防署内の中庭で開かれたダンスパーティに招かれ、踊りの輪に加わった。 シャンゼリゼ大通りに面していたJALの支社のバルコニーからパレードを撮った。 ソルボンヌで文学を専攻する女子学生の生活にも密着した。 ソファに浅くかけた彼女は、古着屋で買ったという黒いサブリナパンツに、白いブラウスの質素な姿で、大学生活や将来の目標、趣味やファッション、恋人の話を歌うように話してくれた。 彼女の部屋は、小さな路地に面し、簡単には開きそうもない格子模様の窓から差し込む陰のある光と、パティオに向けて観音開きになる裏窓からの柔らかな光が、二つの部屋をつなぐ狭い廊下で握手をするような具合に交差していた。部屋にある灯りと言えば、深いランプシェードの白熱灯だけ…。汚れた漆喰の壁は、そのままで前衛画家が描いた水墨画のようなオリエンタルな趣があった。 パリジェンヌは、街の風景をキャンバスに見立てたかのように着こなし、しっくりと融け込むのがうまい。それは、にわか仕立ての真似ごとではない。 なんだか、住まいもファッションも食生活も、すべてが芸術に見えてしまうパリ…。 驚くほど鮮明に蘇る記憶…私は、そんなパリで、CHIKOに会った。 「人が時を生きる」ことを、私たちは、「時の連続性の中で因果を持って変容する」と考えてしまうのだが、もしかして、「瞬間の生」の消費だけが事実であり、真実であるのかもしれない…。 もしそうであれば、「今、ここに在る」ことは、きっと私にとっては「救い」であるに違いない。今、ここで、求めさえすればいいのだ…。【PHOTO:JULIYA KODAMA  無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 20May
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      ◆私の生きてきた行状は、隙だらけ欠点だらけ、かなり「馬馬虎虎」で・・・

       こんなにも、「人は人を憎むことが出来るのか?」と、このところ、とても悲しい思いで過ごしている。 それが、赤の他人ならまだしも…「美人でやさしい」と世間体も完璧、世渡りに長けた方からとなると、これはかなりこたえる…。 が、こちとら、まんざらバカでもボケてもいないから、なぜ憎むのかの理由は、およそ、いや、かなりハッキリと分かっている。 私などからすると、そんなことでと思える、親しい第三者からの、もっともらしい、裏取りのない「つげ口」を金科玉条のごとくし、いつまでも徹底的に責めたてる(当事者の事実は、聞こうとしない)。 おまけに、まるで「咎人」に向けるような斜め右下目線で、冷ややかに、過去のあれこれを、蔑んだ言葉でむしかえされると、私ってそんなに「性悪な男」かしらとつらつら我が身を省みるのである。 確かに、私の生きてきた行状は、隙だらけ欠点だらけ、かなり「馬馬虎虎」で、「女」にも「金」にも(因みに、下戸ではないが、何十年も「酒」はたしなまず、「ギャンブル」の才はないので、とことんやったことはない)、「夢屋の雲」(『はぐれ雲』はご存知だろう)のごとしで、それらの件に関して何と言われようと「暖簾に腕押し」の感があるのは自ら認めるところ…いつも、ことの核心から逃げている「卑怯」極まりない生き方をしてきた「ろくでなし」…である。 そんな私が、今度ばかりは、両手の爪が波打つほど変形し、日々の暮らしに障害があるほどのダウン状態である。 人は誰しも「弱さ」はあるもので、それらを欠点(罪)として「一刀両断」に糾弾(断罪)できない「救い」の隙間があってこそ、人々はなんとか穏やかに生きていけるのではないか。…少なくとも、この私はそのような思いを抱いて生きている。 それは、「甘え」かもしれないけれど、日々の生活の「潤滑油」であり、しなやかな「思いやり」であり、生きとし生けるものの「やさしさ」ではないだろうか。…つまり、他者からの言辞から、そのまま判断を下すのではなく、現象、起こったこと、事実から、その背景や、それらを生んだ心理を読み解いてみようと努力し、"imagination"しながら、あれこれと考える。 件の方々にとっては、私のそんな言い分は、「盗っ人猛々しい」というわけだろう。 しかし、それでもなおかつ、「盗人にも三分の理」などと言ってみたいのは、余程、私は身勝手なのだろう。 まァ、「なんとかは他人の始まり」とか「血は汚いもの」と、巷間、言われていることには、それなりの根拠があるわけで、誰しも実証済みの体験を持ち、現実は恐らくそんなもので、まっとうに対処することなど出来はしないのであろう…。 それに、「他人の不幸は蜜の味」なんて言うではないか…。 とにもかくにも、私は、血縁というものは「情」であり、「理屈」や「数字」、まして「金」などではないということを絶対的に信じているのである。Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 17May
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      ◆手探りをするように「軟体の襞の壁」が途切れる場所に、きっと、そこからの出口があるはずだ・・・

       明かり一つなく、光もない漆黒の闇の中で、私は、自らの呼吸と鼓動を何度も内に向けて確かめながら、皮膜一枚の外の世界から、奇妙なことに、なんだか心地よい満たされた肌合いをうっすらと感じていた。 私は、恐らく今まで居たことのない「場」にいるに違いない。 「もしかして、あちら側に…迷い込んでいるのかしら…」 宙ぶらりんの方位の定まらないCHIKOの声が、まどろみの中で聞くエコーをかけた響きのように、揺れながら、微かに、途切れ途切れに聞こえてくる。 「…どこにいるの…来てくれたのね…傷は痛まないの…」 打ち寄せるさざ波に乗ったような、ゆらゆらとした浮遊感が、私を不安に駆り立てはしたが、それでも、CHIKOを求める強い意志の中で、私は、私の中のどこかで、しっかりと考えることができた。 そうだ、「手負いの男」は私自身で、その男の女、つまり、KIMIの女というのはCHIKOのことで、だから、私がKIMIと呼んでいたのは私自身…。 そう、KIMIは、まぎれもない私自身だったのだ。 すると、明らかに、CHIKOは、この私に向けて呼びかけているのだ。 だが、CHIKOが見えない。 不安と安堵の断続的な「生」の感覚の中で、私は、生温かいヌメヌメとした感触を、なぜか心地よいと感じながら、手探りをするように「軟体の襞の壁」が途切れる場所に、きっと、そこからの出口があるはずだと、確信に近い思考回路で、迷うことなく考えていた。  それは、光を突き止めさえすれば、私は、きっとCHIKOに会えるという、まるで証拠のない盲信だったかもしれないけれど…。  錯綜する知覚は、まるで解れることのない神経繊維のように、私を闇のラビリンスの中で、いたずらに迷わせる。 そうやって行き着いた確信から、さらに、考え考えた末の、パッと晴れわたるような境地は、いかにもシンプル…そう、「求めさえすればいい」ということだった…。 私は、思わず微笑んでいたに違いない。 「KIMI、あなたを岬にある私の館に導いたのには、ワケがあるの…もちろん、傷ついていることも知っていたわ。あなたの性格からして、それを理由に、これ幸いに動かないことも、ちゃんと予測できたけれど、その傷は、あの女に最後通牒を出すときに、こっぴどい叫びを浴びせられて負わされたものだから、あえて私は、あなたの意志が欲しいのだから、温かいスープを用意するだけにして、それですませたの。そうよ、今にして思えば、あなたは、そのときはすでに、愛のベクトルを軌道修正してくれているのだから、言ってみれば、ちょっとした私のジェラシーの残り香だったかもしれない…けれどネ。それに、体力さえつければ、そんな傷なんてすぐに直ってしまうほど、深くはないはずよ。だって、傷が深ければ深いほど、私は立ち直れないほどのジェラシーの潮目に巻き込まれて、挙げ句の果て冷酷な本当にイヤな女になったはずだから…。そうよ、そんな風にして、私は、あなたが目ざすべきは、とにかく岬の館…そう、私であって、決してその女でないことを、心底知らしめねばならなかったの…」 CHIKOの声は、不思議なことに、次第に鮮明に、カンパネラ、そうフジコ・ヘミングの奏でるあの旋律のように、響き始めていた。 いまや私は、それを、ありとあらゆる感覚を束ねるような具合に、あたかも芳醇なお酒が体中に染み渡っていくような要領で聴き取っていた。 「KIMI、思い出してみてちょうだい。あなたは、私との同時代を過ごした中で、きっちりと5年間、この私を捨て置いたのよ。あなたは、私が女でなくなるのも、平気に見過ごしてしまったの。ほら覚えているでしょ。あのパリでのこと。あなたもロケでパリにやってきて、私のホテルの部屋を訪ねてきたじゃない。KIMIは、きっとパリでなら、私に優しくしてくれるはずだと、どんなにかうれしくって、待ち焦がれたか…。そうよ、あなたは、あの天蓋のあるステキなベッドで、私に背を向けたまま、私に触れもしないで、冬眠を待ち焦がれていた熊のように、ぐっすりと寝入ってしまったのよ。仕事の合間を縫ってくれたにしても、それってひどすぎるわ。私は、その時、いや、そんなことがあった後ですら、しばらくの間は、あなたを毫も疑ったことがなかったのよ…KIMIは、きっと、余程の疲れが溜まっている違いないと、すんなりと私自身を納得させたの。おかげでほとんど一睡も出来なかった私は、クチュールで、昨夜はさぞステキだったのネなんて、現実と裏腹に冷やかされてしまった…皮肉だけれど、うんそうだったのネきっとなんて、私は悲しい肯定をしたものよ…」 CHIKOの モノローグのような声は、私の「生の縁」を確認させるように、私の中で響き続けている。 「求めさえすれば」、この漆黒の闇は、まるで皮膜をつるりとひっくり返すように、光を浴びる場に反転するに違いないのだ…。【PHOTO:JULIYA KODAMA  無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.

  • 20Apr
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      ◆なぜ、私は、こんな愚にもつかぬことを、躊躇することなく、恥ずかしげもなく書き連ねているのか

       右手に湾曲して続く砂浜…遠浅の海から寄せてくる波が足元で白く冷たく砕け散る。 私は、今にも倒れこみそうな「手負いの男」に右肩を貸し、砂浜の切れる先に微かに見えている緑の岬を懸命に目ざし、ヨタヨタと歩いている。 「私は、いつだって、KIMIの味方だ。いつだって、そばにいるじゃないか」 男は私の右肩に貼り付いたようにいる。 右足を引きずりながら、私にもたれている男の重さが肩にズシリとのしかかり、頷いているのか、乾いた呼吸が私の耳に吹き込まれて、鞴のように響く。 「がんばれ、もう少し、ほら、あの緑のこんもりと茂ったところに、女が待っている…もう少しだ、しっかりしろ」 岬にたどり着けさえすれば、私は、この男を女に委ね、やっと解放される…。  それをかたくなに信じて歩く。 歩きながら時折、右肩の男の表情を覗き込む。 男が、私の部屋のドアを激しく叩いて助けを求めた時、私は、待ち受けていたようにすぐにドアを開けて男を招き入れた。 それというのも、私は、KIMIの女から、傷を負っている男を、なんとか岬の館へ案内して来てくれと、すでに頼まれていたのだ。 女に、ちょっとした借りがある私は、それを拒むわけにはいかなかった。 私は、男のために温めていた鶏ガラスープに刻んだパセリを浮かせ、とにかく少しでも体力を回復させようと励ましながら飲ませた。 男は、終始無言で、痛みに耐えるように歪んだ表情ではあったが、私の言うなりに従ってくれたのだ。 緑の岬の館が、後数百メートルの眼前に迫っていた。 男が、それに反応したのか、私の右肩がすーっと軽くなった。 おャ、男の存在が気にかかる。 一体どうしたのだろう。どう目を凝らしても、その男の輪郭に焦点を合わせ、男の姿を、きっちりと定かに確かめることができない。 思いを巡らすうちに、どうやら、私が、私の首に左腕を回して、どうしたことか、この私に支えられるような奇妙な格好で、一人で歩いている。 つまり、私が私自身を支えて…どうして、そんなアクロバティックなことができるのか。と、云々してみたところで、私は、そこでの現実を、そんな姿を、すんなりと感覚的なイメージとして知覚できているのだから…。 なぜ、私は、こんな愚にもつかぬことを、躊躇することなく、恥ずかしげもなく書き連ねているのか。 なぜ書くのか? いや、私は、そんな理屈も感情も、一切ない磁場にいて、ただ単に、何者かに操られているかのように、なされるがままに書いている。 おそらく、書くこと自体が、私の「ここにある」ことの証明の唯一の手段だからと言った方が、素直な理由であるのかもしれない。 最も正確な表現があるとすると、これは、「魂の発露」か。 いずれにしろ、だからといって、私にとって、そうすることが心地よいというわけでは決してなく、むしろ一瞬の次に、耐えがたい嫌悪感に、全身鳥肌立ってしまったりもするのだ。 たとえ奈落の底に沈んでしまうとしても、そう、麻薬患者が後先を考えずに、ひたすら薬を求めているのに似ている。 それは、筆を走らせる衝動の二の次の結果にしかすぎない。 こうして、書かれている男が、私自身になったとき、私は、物語に埋もれる。 そこは、閉じ込められた軟体の襞の壁のある部屋。 私は、肌でそれを味わうように感じる。 灯り一つなく、光もない漆黒の闇に包まれている。 えッ、女がいない。岬の館に、女が待っているはずだ。こんなにも求めてきた女が…。 「KIMI、KIMIなのね…どこにいるの…来てくれたのね…傷は痛まないの…」 CHIKO、CHIKOの声だ…。【PHOTO:JULIYA KODAMA 無断転載使用不可】Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.