あの胸が岬のように遠かった/永田和宏 | 我が家の本棚

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お酒や音楽、趣味のバレエ、鉛筆デッサン、ナンタケットバスケット関連話も時々。




こんにちは



細胞生物学者であり
歌人であり
知識人としてもご活躍の
永田和宏さんの話題本です
NHKでもドラマになっていたような


『あの胸が岬のように遠かった』


10年前に亡くなった奥様
河野裕子さんの日記を
何年も経ってから読んだことが
執筆のきっかけだったそうです
ご自身の生い立ちと
2人の出会いから結婚までを振り返った
回想録
日本一有名な歌人夫婦が
学生時代に綴った手紙や日記の文章は
我々の想像の遥か上をいくもので
感性とか感受性とか
言語化しにくい感情の機微を
見事に表現しています
河野さんの神経の繊細さは
ある種の不安を感じさせるものの
永田さんの複雑な生い立ちを
柔らかく包むように受け止められたのは
彼女のその感性あってこそ
出逢うべくして出逢ったおふたり

あとがきで永田さんが紹介している
ご自身の著書『知の体力』の一節は
非常に堪えます
愛する人を失ったとき、失恋でも、
死による別れでも、
それが痛切な痛みとして堪えるのは、
愛の対象を失ったからだけではなく、
その相手の前で輝いていた自分を
失ったからなのでもある。
私は2010年に、40年連れ添った
妻を失った。彼女の前で自分が
どんなに自然に無邪気に輝いていたかを
今ごろになって痛切に感じている。




義兄の葬儀が無事に終わりました
姉は気丈に振るまっていて
落ち着いていました
永田さんがおっしゃる通りならば
いつか痛切な痛みの核心を
知ることになるのでしょうか
その人の前で無邪気でいられた日々が
どれ程かけがえのない時間だったのかを