ノーベル文学賞を受賞なさった
カズオ・イシグロさんの
初期の作品です
バレエ仲間であり読書仲間のMさんは
以前からのイシグロ作品愛読者とのことで
今回の受賞は大変なお喜び
オススメよ、と2冊貸してくださいました
『 日の名残り 』カズオ・イシグロ著
まず特筆すべきは美しい日本語
*翻訳は土屋政雄氏
この翻訳者の方の力量によって
より見事な物語になっていると思われます
職務に忠実な執事の一人称で
物語はすすんでいきます
大きな出来事や
驚くような展開はありません
老年を迎えた執事が
新しい雇主から休暇を与えられ
短い旅に出ます
わずか数日のドライブ旅行中に
かつての雇主ダーリントン卿に仕えた
黄金の日々を回想していきます
ダーリントンホールの全盛期に
卿に、仕事に、常に誠実に仕えてきた
スティーブンス
お屋敷の中で
政治的に大きな局面を迎えたであろう時も
自身の父親の死の間際にも
好意的な女中頭のミス・ケントンが
淡い恋心をチラつかせてきた時も
彼は品格ある忠実な執事であることを
優先して生きてきた過去を振り返り
ふとある事実に気づくのです。。。
国も人も
いつかは斜陽の時を迎えるのでしょうか
スティーブンス個人のお話ですが
世界大戦前後の英国の立場や
貴族階級の方々の役割、行く末なども
描き込まれており
歴史の1ページに触れた気持ちです
良い文章とはなにか
良い小説とはなにか
嗜好だけで良し悪し、好き嫌いを
判断しては勿体ないかもしれません
こういう一冊との出合い
貴重です