幸運でしたね | 我が家の本棚

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大好きな読書について書いてます。
お酒や音楽、趣味のバレエ、鉛筆デッサン、ナンタケットバスケット関連話も時々。




「NHKスペシャル『聞いてほしい 
心の叫びを ~バス放火事件 
被害者の34年~』」

28日夜NHK総合で放送された
番組を観ました。
1980年の「新宿西口バス放火事件」で体の8割に火傷をおいながらも
奇跡的に命を取り留めたノンフィクション作家、杉原美津子さん。
この時の輸血が原因で現在肝癌を患い、余命宣告を受けた彼女に密着取材していました。

内容についてはここで簡単に
要約出来るような生易しいもの
ではありませんでした。
被害者として平坦ではなかった
長い年月
どう事件と向き合い
自分の一生をどう受け入れて死んで
ゆくかを模索している杉原さんの姿…
同じ時代を生きているのに
彼女を真っ正面から正視出来ない
弱い自分を情けなく思いました。

番組の中で
言葉を生業としている杉原さんが、
同じ被害者の女性に会い
迂闊な発言をしてしまいます。
自分より火傷の部分が小さかった相手に
「幸運でしたね。」

相手の女性がその後一人になった時に
語った言葉が頭から離れません。


「幸運だったのかどうかは
長い年月をかけて、そのことを
受けとめた本人自身が決めることで
あって、他人が口にしたり決めつけたりすることではないと思う。」


のちに誤解はとけるのですが
同じ被害者同士であるのに
気を使う余り、言葉選びを誤り
相手を傷つけてしまった杉原さん
散々傷つけられてきた自分も
誰かを傷つけている事実に
愕然とします。

これがきっかけになったのでしょうか…
30年疎遠だった実兄と交流が始まり
新しい作品へとりかかる杉原さんを
映して番組は終了しました。


事件のことだけでなく
言葉がいかに重要であるかということ
誰も傷つけずに
生きていくことは不可能だということ
街中ですれ違う人の中には
杉原さんのような想像を絶する
体験をなさっている方もいるということなど
改めて考える機会となりました。





















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