副題 「 妻・河野裕子 闘病の十年 」
…
短歌に詳しくもなく
人より興味があった訳でもなく
でも
強烈な印象を受けた歌が
河野裕子さん21歳の時の一首
たとえば君
ガサッと落ち葉すくふやうに
私をさらって行ってはくれぬか
4年前に乳がんを再発
64歳の若さでお亡くなりになった
日本の歌壇界で最も有名だった女性
ご主人は学者で歌人の
永田和宏氏
奥様の歌に対する情熱と闘病生活を
その間に詠んだ歌を交えながら
静かに語っていらっしゃいます
12年前に乳癌を患い
その後再発するまでの7年間
精神状態が不安定となり
攻撃的になった奥様との生活が
地獄の様相であったと
刃物を持ち出し殺すか殺されるか
というところまで
追いつめられた時期も
あったといいます
そんな生活の中でも
歌を詠んだ奥様
あの時の
壊れたわたしを抱きしめて
あなたは泣いた泣くより無くて
「後年、この一首を見たとき、
私は、それまでの彼女の錯乱にも似た
発作と激情の嵐、私への罵言のすべてを許せると思った。…」
再発後
死への怖れ、不安に向き合いながら
歌を詠み続けるお二人
歌は遺り(のこり)
歌に私は泣くだらう
いつか来る日のいつかを怖る …和宏
わが知らぬ
さびしさの日々を生きゆかぬ
君を思へどなぐさめがたし …裕子
そして死の前日
河野裕子さん最後の歌
手をのべて
あなたとあなたに触れたきに
息が足りないこの世の息が
あとがきに
「私たちはよくぶつかり合い、喧嘩し
そして傷つけあった。普通の夫婦に
比べれば、突出して激しい感情を
互いにぶつけ合う夫婦であったかも
しれない。しかし、よく話をする
夫婦ではあった。……」
言葉への感性が鋭敏で非凡なお二人
ぶつかり合うのは当然で
ぶつけ合える伴侶であったことは
このうえなく幸運なこと
お二人ともそのことを
十分に感じていらしたからこそ
生涯にわたって
お互いを歌の対象として
詠みあえたのでしょう
人と人との出会いは
時に凄いものを後世に残します
歌だけでなく
短歌の世界の入り口を
ぐんと広げたお二人
この本
本当にオススメです
言葉の持つ力
そして
言葉の果てしない可能性を
感じることが出来ます
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