昨日のこと

貴重な経験をさせていただきました。 
津田塾大学1年生に向けて、視覚障害者柔道の特徴や私の「運動の工夫」について、話す機会をつくってもらいました。

学校の授業でお話ししたのは数年ぶりのこと!
話すことは好きだけど、「伝える」ことは一味違って難しい。
私の話は、学生の皆さんにどのように届いたのだろう??

話し始めは、私自身の緊張を和らげる目的で「歯磨き粉クイズ」。定番のネタだけど、ちょっと噛む珍事!笑  みんなしっかり考えてくれたかな?


今日お話しした内容を振り返って、思うこと。
それは、改めて自分自身を振り返る時間を持つことができ、それを言語化し実際に口にすることで「自分とは何か?」を問い直すきっかけになったことがとても嬉しいということ。

中学1年で柔道と出会い、大学1年で視覚障害者柔道に出会って、22年の歳月をかけて柔道に育んでもらいました。
その間に、3回のパラリンピックに出場し、遠征で訪れた国の数は14カ国にものぼります。

そして、その間には「見えにくい選手」から「見えない選手」となり、多くの工夫が必要になりました。

困ったこと
1、真似ができないこと
2、真っ直ぐがわからないこと

見えにくいということは、「見る」工夫が出来ること。
見えないということは、視覚的に見ることを諦めること。
* この書き方だと弱視の大変さが伝わらないですねごめんなさい。

それで・・・・
「真似」を代償するために行うことは3つ。
1、触る
2、感じる
3、やってみる・話す

1の触るでは、断片的なイメージを頭に作るための材料集めです。運動を分解し、体のパーツを分解して、固定されている部分、実際に運動が行わている箇所の起動を認識します。
2の感じるでは、タイミング、緩急、強弱、力の向きなどを1の材料と組み合わせます。
3のやってみることで、始めてトライ & エラーで努力の土台に立つことが出来ます。ここで重要なことは、鏡が見えないために、「主観と客観のズレ」に気付きにくい。それを指導者が客観的な情報提供でサポートを行うことです。ここで言語化が必要になるわけですね。

新しい動きや技を学ぶときにはこのようなことが繰り返し行われており、途方も無い時間が費やされています。
一番必要なものは忍耐かもしれませんね。笑


次に、まっすぐを知るための工夫です。
私は3軸性で運動を捉えています。
運動学で言えば、前額面、矢状面、水平面
数学で言えば、座標のイメージでx軸、y軸、z軸で考えます。
・両方の肩を結ぶ横の線と両方の腰骨を結ぶ横の線が並行になるように動くとか。
・足の中指と踵を結ぶ縦の線と膝のお皿とお尻の骨を結ぶ縦の線が重なるようにしゃがむとか。
・お尻の骨と踵を結ぶ縦の線と背骨の縦の線が並行になるように前傾するとか。

とにかく!!!自分の体に意識を向ける。鏡で姿勢を修正できないのだから、感覚を研ぎ澄ませるのみです。

この「まっすぐを知る」練習は、他競技で練習することができます。
まっすぐ走る
まっすぐ泳ぐ
自分の中心を探す
重心のズレに気づく。

私の今の流行りは、「25mプールをコースロープにぶつからずに泳ぐこと」
今の段階で1 / 40でまっすぐ泳げるようになりました。
書き換えれば、1000m泳いだうちの25mだけ、何にもぶつからなかったということですね。




あとは、クロスカントリースキーがとても面白い。
見える人からすれば類似点がまるで無いこの二つの競技
スキーも柔道も「外乱」に対してバランスを崩さないようにするという点で同じ。
その外乱が自然がもたらすものか、他人によってもたらされるものかの違い。
手と足4本がそれぞれにバラバラの動きを繰り返すし、私からみればとても似ている。


・・・・・長い!!!!!

いつも反省する。話しすぎちゃう。
どう考えても、情報量が多い。帰りの電車で反省しました。

だから、ブログで少しだけ補足したいなぁと思ったのに、またかきすぎてる。苦笑

授業の反省点は他にも2つ。
1、見える人にもわかりやすい資料の提示が必要だったかなぁ。
ブログにまとめたように、キーワードを箇条書きにするだけで、印象に残りやすいかもしれない。
「聞く」ことが当たり前になっているのは私だけで、見える人は見たほうが良い。
2、イメージが浮かぶ話し方に変換する
見えない世界、見えにくい世界を、もっと頭の中で体感できるお話を加えたい。もっと身近に感じてもらいたいなぁと感じました。


授業の最後には沢山の質問をいただきました。その中で印象に残ったものが、、、、
・試合前の緊張を和らげる方法
2、怪我に対する恐怖心について克服の方法
どちらの質問も、私の最善でお答えしました。湧き出た感情は、受け止めることが必要なんだと思うなぁ。


最後に!!!
今回の授業の中で、「みんな同じ」と何度かお蔦しました。
でも、これ、なんか、ちょっと違う。しっくりこなかった。
同じなのは、同じく感情があって、人権があるということ。
でも、その他は違う。価値観だって、生活の工夫だって。
んーーーー、
だから言えることは、
みんな同じだし、みんな違う、かな?!笑


取り急ぎ、今日の感想と反省でした。
ステキな時間を、ありがとうございました。


おまけ

私の今の流行りの本は伊藤亜紗さんシリーズです。
・手の倫理
・目の見えないアスリートの身体論
・目飲めない人は世界をどう見ているのか?
・記憶する体