禁断 | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

禁断 (中公文庫)/明野 照葉
¥660
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この人の作品を読んだのは、「汝の名」http://ameblo.jp/haneokiciao/entry-11043244191.html に次いで2冊目。


若きサラリーマン邦彦は、ある晩、子供の頃からの大親友だった江藤航の突然の死を知らされる。無残に暴行を受けて殺された友の亡骸と対面し、大きな衝撃を受ける邦彦。航は温厚な性格で、決して他人から恨まれるようなはずはない。一体なぜ彼がこんな目に遭わなければならなかったのか。


邦彦は友への弔いの気持ちから、事件の真相に迫ろうとして、航の生前の交遊を探るうち、水商売をしていた謎の女の存在に行き当たる。いくつもの名前を持ち、転々と職や住まいを変えて生きる彼女は、果たして何者なのか。航の死に何か関係があるのか?


・・・ってなところから始まって、ありがちな展開ですが、邦彦自身がだんだんその謎の女に惹かれていきます。彼女の本名は岡島郁子26歳。夜の仕事をしているわりには清楚な雰囲気、だけどワケアリで、航とは面識はあったがただの客で、深い関係ではない。ファム・ファタルにしては何か地味でつまんないし、邦彦が何をそんなに夢中になっているのかが、読んでてよくわからないのですね。それとも、そこまでわかったうえで、「男ってバカでしょー」と言いたい作者のメッセージなのかな。


まあとにかく、頑なだった郁子といつしか恋仲になる邦彦の周辺に、奇妙なことが起こり始めて、だんだん浮かび上がってきた真実は、あらまあなんと恐ろしい!


郁子の両親が40代半ばの元ヤンキーで、夫婦で惣菜会社を切り盛りしている、という設定なんだけど、いくつになっても容貌の衰えを認めたくなくて、必死で努力して若作りして綺麗にしている母の美郷が、相当に「痛い女」として描かれます。あと、どうでもいいけど彼女がいつも『濃厚なコロンの香り』を漂わせている、というのは苦笑。コロンの香りはすぐに飛ぶからコロンなのであって、濃厚な香りというのならパルファンか、せめてオーデトワレにしてあげようよ、と思いました。


読んでいてだんだんうんざりしてきたところで、ラストの急転は結構毒があって面白かった。