高級外車
高校生の頃学校をサボってよく行ってた喫茶店がある。コーヒー1杯で何時間粘っても平気な店(っていうかマスターが次から次へと面白いマンガやバイクの本を席まで持ってきてくれて、勘定をしようとすると「え?帰るの?」なんて言ってくれる)だったのでしょっちゅう通った。ごくたまに友部正人や加川良のような大御所のフォークシンガーが歌いに来たりしてとても好きな喫茶店だった。
その店に先日約5年ぶりにコーヒーを飲みにいった。マスターは白髪が増えていたが元気そうだった。
マ「お、ベスパに乗っとうんか。ワシも昔乗っとったんやけど何年か前に商店街で放火があったやろ?…燃やされてもた。」
じ「…うわぁ。」
マ「ベスパは新車で買うたんか。ほう、1年半で18000㎞か、よう走っとうな。もうワシはそんなに距離走れへんから新車はええねん。」
じ「けどマスターの単車BMWやないッスか。めっちゃ高いんちゃうんスか?」
マ「そう思うやろ?それがそうでもないんや。ビーエムとかドカを新車で買えるような連中は単車に乗っとう暇がないんや。よう働いとうからな(笑)。」
じ「なるほどぉ。」
マ「そやから探せばけっこう安く買えるんや。」
新車のドカは買えないが俺は暇で良かったと思った。リッチじゃなくてもやっぱりバイクに乗っていたいのだ。
爆走!骨折犬
武庫之荘の踏切の近くの電話ボックスの前にバイクを停め、タバコに火をつけた。車高をかなり低くしたクルマが近づいてくる。俺の前でクルマが止まった。静かに窓が開く。クルマにはアタマの悪そうな若者が4人乗っていた。助手席の男が俺に向かってこう言った。
「骨が折れても走る犬を知らんか?」
クルマに乗った男たちはかなり切羽詰まった様子だった。まるで何かに追われているように。
ただならぬ雰囲気を感じた俺はもしかしてうちの犬のことを言っているならヤバい、悟られてはマズいと思い、
「シベリアンハスキー」
となるべく平静を装って答えた。するとタイヤを鳴かせながらそいつらは去っていった。
そういえば俺は女と待ち合わせしていたんだ。時間にルーズな女だ。あとで可愛がってやろうなどと考えながら3本目のタバコに火をつけたその瞬間、一台の大きなクルマが近づいてきてまた俺の前で止まった。カタギの人間にはとても買えないクルマに乗っていたのは一目でそれとわかる男が3人。そのうちの1人がやはりかなり切羽詰まった様子で俺に
「骨が折れても走る犬を知らんか?」と訊いてきた。
またかよ。少しうんざりしながらしかしさっきに比べて俺には余裕ができていたので
「ジャーマンシェパードなんかは軍用犬として使われてたのでそうかもしれませんよ?」と答えてやった。
「おう、そうか!」悪趣味なオーデコロンのにおいを残してそいつらも去っていった。
女はまだ来ない。
というところで目が覚めました。
アルバイト
いまから十年ちょっと前、たまには働こうかと思った僕はコンビニでアルバイト情報誌を買った。
生来ひどい人見知りの上、これといった取り柄もないのであれこれ記事を目にしてもどれもピンとこない。そんな中ひとつの記事が目に止まった。
「ギター弾き語り 時給千円」
これはやるしかないと電車でキタまで行き面接を受けた。
通った。
「〇月×日にここに来て。」と地図を渡された。
バイト先はキタの店ではなく心斎橋のとある雑居ビルのなかにあった。
ドアをあけておどろいた
「せまい」
四畳半ほどの店内にカウンターがあり、スツールが四脚、ステージと目されるスペースはやたら天井が低く幅も狭かったのでギターを斜めにしないとおさまることができない。
しかも客がくる気配が全くない。
だけどその日は大阪に住んでいる友達を二人呼んでいたのでその二人を前に歌うことにした(斜めになりながら)。
30分ほど歌い、しばらくしてまた30分ほど歌った。
結局お客はだれも来なかった。
カウンターの中の人が「じゃあ、そろそろ」と言ったので僕は帰り支度をした(斜めになりながら)。
帰り支度を終え勘定を払った友達を見送る。カウンターの人は何もなかったかのように「お疲れさん」と僕に言った。
「あの、バイト代を…」
と僕が言うと、チッ、覚えてやがったかというような顔をして「じゃあ領収書にサインして」と仕方なさそうに金が入った封筒をくれた。
二千円入っていた。
なぜか少し悲しかった。
その店からはそれ以来なんの連絡もなかった。
なんでアルバイト情報誌で募集してたのかいまだにわけがわからない。まあ、不思議な体験だった。
生来ひどい人見知りの上、これといった取り柄もないのであれこれ記事を目にしてもどれもピンとこない。そんな中ひとつの記事が目に止まった。
「ギター弾き語り 時給千円」
これはやるしかないと電車でキタまで行き面接を受けた。
通った。
「〇月×日にここに来て。」と地図を渡された。
バイト先はキタの店ではなく心斎橋のとある雑居ビルのなかにあった。
ドアをあけておどろいた
「せまい」
四畳半ほどの店内にカウンターがあり、スツールが四脚、ステージと目されるスペースはやたら天井が低く幅も狭かったのでギターを斜めにしないとおさまることができない。
しかも客がくる気配が全くない。
だけどその日は大阪に住んでいる友達を二人呼んでいたのでその二人を前に歌うことにした(斜めになりながら)。
30分ほど歌い、しばらくしてまた30分ほど歌った。
結局お客はだれも来なかった。
カウンターの中の人が「じゃあ、そろそろ」と言ったので僕は帰り支度をした(斜めになりながら)。
帰り支度を終え勘定を払った友達を見送る。カウンターの人は何もなかったかのように「お疲れさん」と僕に言った。
「あの、バイト代を…」
と僕が言うと、チッ、覚えてやがったかというような顔をして「じゃあ領収書にサインして」と仕方なさそうに金が入った封筒をくれた。
二千円入っていた。
なぜか少し悲しかった。
その店からはそれ以来なんの連絡もなかった。
なんでアルバイト情報誌で募集してたのかいまだにわけがわからない。まあ、不思議な体験だった。