昭和の時代、ビフテキと言えば、ご馳走の代名詞だった。
牛のステーキをビフテキと呼ばなくなったのはいつの頃からだろう。
思うに、牛肉の輸入自由化が施行され、安い輸入牛が店頭に並ぶようになってからではないか。
昨夜は娘と二人きりだったので、夕飯に何か美味いものを食おうと何も決めずにスーパーへ出向いた。
精肉コーナーを歩くと、一枚のステーキ肉に目が止った。
目を見合わせる娘と私。
いっちゃうかいと問えば、いっちゃおうよ娘。
ならばいっそ肉専門店へ出向き、もっと質の良いものをと、そそくさとスーパーを後にした。
うやうやしくも高級感漂う包装紙に包まれた物を持ち帰り、牛脂を溶かして塩コショウで焼き、バター醤油のソースでシンプルに仕上げた。
国産牛にしかない、牛脂の甘味。
一口目、あまりの美味さに目を見合わせ頷きあう。
まごうことなきビフテキ。
しかし娘には、「ステーキうめえなあ」と言った。
娘も「ステーキ美味いねえ」と返す。
何を気取ってやがるんだ、ビフテキに失礼じゃないかと、己を叱咤。