冷え症の僕にはとてもつらい季節です…ウー c(`Д´c)サミィ!
今週はまだ寒いらしいですね。
表題の糸の太さです。
先日の事
通常のポリエステル糸の太さは5番や20番などの数字で表しますが、レーヨン糸の太さは75dや120dという表記になっています。
レーヨン糸の場合の太さの基準が分からないのですが、どのような場面でどのような太さを使ったらよいのでしょうか?
というメッセージを頂きました。刺繍の糸の使い分けについての質問です。
僕もこの業界に足を突っ込んだ頃、同じ疑問にあいました。
まず僕は糸の専門家ではないので、あまり深い所で指摘されてしまうと困ってしまうのですが、分かる範囲で尚且つチェーン刺繍寄りの視点で疑問にお付き合いさせていただきます!
( ゚Д゚)ゞ リョーカイ!!
まず外堀から。
(知っていることでしたらそのままスルーで)
*糸の太さの表記は国によって表記の仕方が違います。
*糸の状態によっても表記の仕方が違います。
主に糸の太さを表すのに、TEX(テックス)やTkt. No.(チケット・ナンバー)が広く使われています。他に番手や番数という物もあります。
一般的な刺繍糸としてレーヨン糸がありますが、これはd(デニール)の表記です。
一般に糸と言っても色々あるのはご承知の通りで、細かく分けると説明が大変ですが、糸の作り方とでも言ったらよいでしょうか、長繊維と短繊維と分けます。
★長繊維(フィラメント)は見たとおり長い繊維です。逆が短繊維(スパン)です。
長繊維では絹やナイロンなどが代表的です。絹(生糸)は1,000m前後もある長い繊維です。
このフィラメントはデニール表記だったり、テックス表記です。
デニールやテックスは一定の長さに対しての重さを表記しています。
●1TEXは1,000mで重さ1g(1,000mで重さ0,1gは1デシテックス)
●1dは9,000mで重さ1g
表記の数字が大きくなると糸は太くなります。
★短繊維(スパン)は糸にする前(紡績前)の繊維が短いものを、紡績して長い糸に加工して作ります。素材の短い物として考えると分かりやすいかも。
綿糸などが代表的で、糸の太さは番手や番数で表記します。#60など。
番手・番数は一定の重さに対しての長さを表記します。1lb(ポンド) = 453.592 gで長さ840ヤードの物を1番手としています。
つまり重さを一定にして長さが長くなれば糸は細くなり、表記数も大きくなるほど糸は細くなります。
大半の人はここまで読んでない……
(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン
気を取り直して。(゚∀゚)
余談ですが、というか質問にあるポリエステルですが、ポリエステルはもともと長繊維で作ります。材料は石油でドロドロになっている粘液を、シャワーヘッドの様なノズルという口金を通過させ、固めて糸にしています。
なので切らなければとても長い繊維になります。
ポリエステル糸ではこの長繊維のまま糸にしたものと、それを10cmほどにカットして、紡いで(紡績)長い糸にしたスパンもあります。
つまり長繊維は短繊維にもなりえます。逆は無い。
また市場にあるポリエステル糸を見てみると、長繊維ポリエステル糸でも番手表記です。
同じ番手でも長繊維の方が細いので注意。
ん~読者が去る靴音が聞こえます…ヽ(・ω・)/ズコー
糸の説明はこの位にしておいて、『レーヨンの糸の太さの違いをどう使い分けているのか?』
僕がお客様からご依頼があった時に、使い分けているレーヨン糸の太さはこちらです。
太い 300d/2
↑ 200d/2
↓ (180d/2)
細い 120d/2
300dの繊維を2本合わせているという意味です。

300d/2のレーヨン糸です。
右からショートストロークピッチ、中ストロークピッチ、大ストロークピッチと縫い分けてみました。
ピッチが短いと、細かな柄が繊細な精度で刺繍できます。
ピッチを長くとると輪っかも大きくなって綺麗なリングに。

紺75/2(右の二本)・白120d/2・ピンク180d/2
よく見るとリングになっています。ショートストロークで細く強度が足りず糸切れが多発しました。(同じ糸調子での話)生地は1mmフェルトですが、300d/2と同じ条件ではほぼチェーンの体をなしていません。
糸調子を変えることで

一般的なリングサイズになります。赤は200d/2
つまりチェーン刺繍において、糸の太さというのはボリューム感です。
細い糸に特によく見られますが、糸調子をゆるくとって広げたリングは、リングサイズが安定しないことがあります。↑の画像でも見受けられます。
なのですべての要求に答えるのはちょっと厳しいのかも。
昨今、大手アメカジブランド様からのご依頼では、レーヨン200/2~300/2が主流で、綿糸#50が多いですね。
ヴィンテージなどのオリジナルがあるケースでは、それに合わせた糸の太さをチョイスします。
リングの大きさはそれに合わせるか、より綺麗に見えるように僕のさじ加減でサイズを決めます。
あまりにも太い糸はミシンのルーパー(リングを作る部位)の穴を通過できず、刺繍ができないものもあります。
糸の硬さで言えば、綿糸#30などは太く硬い部類で、刺繍はできますが見頃の方も刺繍で硬くなります。
アルファベットのTがあったとします。

一本縫いなら左のように刺繍。けれどリングって頭と尻で太さ(形)が違うので、厳正な文字の形を要求されると、右のように小さいリングでこのように刺繍しないと角が出ません。
柄のイメージがラフな雰囲気であれば、左のリングを使えばよいし、手間がかからず若干経済的でもある。
太い糸を使うとより輪郭(エッジ)が甘くなり、大味な印象になる。
精度を要求するなら迷わず細い糸で小さいリングをチョイスします。
しかしその反面、刺繍面積が稼げなくなるので、打ち込み(刺繍する量)が膨大に増えることになる。
総括すると、
レーヨン糸なら120/2~300/2が使いやすく、図案に対して綺麗に見える糸を使うのが一番良い気がします。
綿糸なら迷わず#50でしょうか。
現在のレーヨン糸は比較的撚りの強いものが主流で、ヴィンテージスカジャンやボーリングシャツやレーヨンシャツに刺繍された糸より強撚です。
撚りが強いと強度が増し、光沢が無くなります。
僕が使っている300/2のレーヨン糸は、甘撚りになっていてヌメッとした光沢がヴィンテージに近い風合いになっています。
(撚りが甘いと糸切れのリスクが増します)
あとは柄とクライアントの意見を加味して決める。です。
非常に地味なスレッドになりましたが、いかがなものでしょうか。(;´∀`)
それではまた次回