日本三景に代表される『日本三大◯◯』というくくりは
多岐にわたりあげられますが、
石仏界においてもこれは例外ではありません。
『日本三大磨崖仏』と呼ばれる磨崖仏があるのをご存知でしょうか。
ひとつは九州、大分の臼杵石仏。
こちらは国宝にも指定されている石仏界のスター的存在。
規模、歴史、石仏のクオリティーと全てにおいて日本一の磨崖仏、
と言っていいんじゃないでしょうか。
臼杵石仏については2019年のブログに書いていますので、
参考までリンクを貼っておきます。
もうひとつは関東、栃木の大谷磨崖仏。
こちらも本当に素晴らしい石仏群です。
私は「関東でおすすめの磨崖仏は?」と聞かれたら、
「まず大谷寺に参拝してください」と答えます。
それぐらい素晴らしい。感動で震えます。
ただ大谷磨崖仏は撮影禁止ですので、このブログに写真はありません。
『道ばた仏さんぽ』にともに掲載させていただいています。
ご覧いただけると嬉しいです。
さて臼杵石仏、大谷磨崖仏ときまして、
日本三大磨崖仏、最後のひとつに長いこと行けてなかったんですが、
少し前(といってもけっこう前)にやっと参拝してきました。
この最後のひとつが東北、福島県の
大悲山の石仏(だいひさんのせきぶつ)です。
福島県は大分県に次いで磨崖仏の多い県です。
これまで福島の磨崖仏もたくさん参拝してきましたが、
大悲山の石仏は福島でも海側の南相馬市にあり、
そこを目指さないと、なかなか行かない場所でした。
ですが実際に行ってみると
「なぜ今まで行かなかったんだ…」
と軽く後悔するぐらいの迫力でしたので、ご紹介します。
南相馬市小高区にある大悲山の石仏は、
「薬師堂石仏」「阿弥陀堂石仏」「観音堂石仏」
の三つに分かれた大規模な石仏群です。
駐車スペースに車を停め、まず向かったのは「薬師堂石仏」。
お堂に向かう途中、石段の左手にある大木が…
とんでもなく大きかった!
写真では大きさがなかなか伝わりませんが、
『大悲山大杉』というこの大木は高さ45メートル、幹回り約8メートル、
樹齢は1100年と言われているんだそうです。
大杉に見とれつつ石段を上がり切ると、正面に薬師堂が現れます。
立て看板には
『建物の中に石仏が有りますので、自由に見学して下さい』
とあります。
参拝料もお納めしないで参拝できちゃう感じ?
ちょっと心が広過ぎるんじゃないでしょうか。
参拝料、私はお納めしたいです。せめてお賽銭させていただきましょう。
「ありがとうございます」と手を合わせ、靴を脱いでいざ堂内へ。
堂内に入ると人感センサーでパッと照明が灯ります。
わかりますか?
ガラス戸で隔てられた向こう側にズラリと並ぶ石仏群!!
薬師堂石仏です。
繰り返しになりますが、写真では伝えづらくてもどかしいんですけど、
何が凄いってね、大きいんですよ!
間口15メートル、高さ5.5メートルの空間に、
2〜3メートルの4体の如来像と2体の菩薩像が浮き彫りされています。
かつ、線彫りの菩薩像、飛天もあって、
目の前に石の仏ワールドが展開されているわけです。
少しは伝わったかな…この壮大な規模感。
ガラス越しですし、暗いので、写真で全体像を伝えるのはとても困難なんです。
事前に申し込めばガラス内から撮影もさせていただけたかもしれませんが、
そんな時間的余裕もなかったもので。
気になるのは、身体はディティールも彩色も残っているのに、
お顔部分がまるで削られたように欠損しているところです。
これにはいくつかの説があるようで、
ひとつが明治時代の廃仏毀釈でお顔が削られてしまった説。
これは仏像界の定番説ですね。
他にも『目の病気の人が削って薬にした説』もあるそうです。
「えー、石を薬…それはないでしょ」
とお思いでしょうが、私はこれに似た話を同じ福島で聞いたことがあります。
2年ほど前に参拝した福島県須賀川市にある和田大仏という磨崖仏にまつわるお話です。
過去のブログに書いていますのでリンクを貼ります。
和田大仏は胸の部分が大きく欠落しているんです。
これには
母乳の出が悪い女性が大仏さまの胸の部分を削り、
それを飲むと母乳が良く出るようになる、
という信仰があったと伝えられています。
同じ福島県内ですし、和田大仏は母乳に、大悲山の石仏は目にご利益が…
というような言い伝えがあったとしてもなんら不思議ではありません。
私はこの説はけっこう有力なんではないかと思いますね。
まぁ、専門家でもなんでもないんですけどね…聞き流してください。
また長くなってしまいました…2000字超えちゃったな。
もっと書きたいことはありますが、このへんにしておきましょう。
「阿弥陀堂石仏」「観音堂石仏」は後編につづきます。
しばしお待ちください。