長野県東筑摩郡の筑北村にある修那羅山安宮神社。
この神社の奥におびただしい数の石神仏が奉納されていて、
修那羅石神仏群と呼ばれています。
この石神仏群に辿り着くまでの経緯を書いた
の後編となります。
前編ありきの内容になっていますので、
つづけて読むことをおすすめします。
さて前回は、
拝殿と脇の建物とをつなぐ渡り廊下の前に鳥居があり、
その鳥居と渡り廊下をくぐるとその先に異世界が広がっている!
というところまででした。
はたしてその先の異世界とは。
上の写真は渡り廊下をくぐっているところです。
くぐり切ると目前に広がるのは鬱蒼とした森。
空気が変わったような、温度が一度下がったような、不思議な感覚。
このとき私の他に人は居ませんでした。
ただ私の鳴らす熊鈴の音だけが鳴っている。
そんな空間。
すでにいくつかの石仏が見えていますが、
くぐって正面、薄暗い中にひときわ明るく木漏れ日が照らす石仏がありました。
私を出迎えてくださった石仏です。
イカツイのかチャーミングなのか表現に悩みますが、
装備から偉い方であることは伝わるこの像、
修那羅大天武(しょならだいてんぶ)の像です。
修那羅大天武は実在の人物で、生まれは現在の新潟県。
長い修行の末、幕末から明治にかけこの地に住み着いた大天武は、
霊験を示し(つまり奇跡をおこしたのかな、雨を降らせるとか)
村人の信仰を集めました。
安宮神社の裏にはおよそ800体と言われる
石神仏、石造物がひしめき合っているのですが、
これらの多くは幕末から明治にかけ、
大天武の信奉者や村人たちが建立し奉納したものだそうです。
庶民の願いや祈りに満ち満ちたここは
『民間信仰の縮図』と言えるわけです。
つまりこの方は開祖。
前編でご紹介した『石神仏ガチャ』の全5種のひとつにもなっています。
安宮神社拝殿の裏側は、
コの字でぐるっと囲むように無数の石造物が祀られています。
拝殿の後には本殿があり、本殿の真後ろの位置にあるのは、
ずらりと並ぶ石祠の列。壮観です。
境内には石祠だけでも109基が奉納されているそうで、
この一角には40基の石祠があるとのこと。
もうあまりの石造物の多さに興奮というか…
時を忘れるほどで、まったく追いついてなかったです。
何度か通わないと全貌は観られないと思います、ボリュームが凄すぎて。
祠の列の中には千手観音像。
後々わかることですが、
この観音像が最後まで出せなかった『石神仏ガチャ』のシークレットでした。
シルエットで予想はついてたけどね。
この千手観音は非常に精巧なつくりですが、
修那羅山石神仏の一番の特徴は、
民間信仰ならではのユニークさ、自由奔放さです。
例えば、同じ千手観音でもこんな像もあります。
こちらも千手観音。
光が当たっていなかったので、若干わかりにくいかもしれません。
こちらもガチャのランナップになっていたので、
フィギュアの写真の方がわかりやすいかな。
正直「これ千手観音?」ってなりますよね。
まるで手袋のようなパーの手は10、人柄の良さそうな顔は4面。
つまり四面十臂の省略化された千手観音。
この平面的で素朴な表現がまさに修那羅仏の典型と言えます。
もちろん、前述のような精巧な千手観音もいい。
でもこの簡略化された千手観音もキュートでいい!
いかにもプロではない素人がつくったような像容に、
庶民の信仰とか願いが感じられるじゃないですか。
こういった像がたくさんあるので、ほんの一部をダイジェストでご紹介します。
左は子育て観音。
こうした子供を抱えた、また子供と並ぶ像が修那羅仏には非常に多い。
子供への願いは今も昔も変わらないということでしょう。
子供の成長を願って奉納された石仏です。
右は子供や家族に次ぐ、人の悩みといったらこれ、というものかな。
手に持っているのが何かわかりますか?
そうです、お金!
銭謹金神(ぜに神様)です。
丸と四角の穴の空いた銭を持つ、
お金を得られるようにと奉納された神像です。
左は「たこやき大明神」と読んでしまったのですが、
正しくは「ささやき大明神」でした。
素敵な言葉をささやいてくれる神様ではないんです。
笹を焼き病害虫駆除を行っていたことから、
耕作地拡大のために祀ったものとのこと。
ならば「笹焼き大明神」と書いてほしかったですね。
よく見ると手に笹を持ってるのかな?
右は猫神さま。
(これもガチャにあったので横に置かせていただいています)
養蚕の天敵であるネズミから蚕を守るため猫を飼ったことから、
猫を神聖化した猫像です。
他の地域でもよくみられますが、この猫神さまは丸彫りでカワイイ。
こんな自由奔放、個性爆発の石仏が延々と並んでいる異空間、
それが修那羅山安宮神社なのです。
いや、本当に素晴らしかった…
2回でまとめるつもりで前後編としましたが、
まとめきれずまた長くなってしまいました。
もう少し書きたいことがあるので、もう1回追加させてください。
次回、補足編につづきます。









