開運童子のブログ -120ページ目

雨のあとに虹 その2

エスカレーターを上って来た俊之はトレンドカフェに入ってきた。久美子は30代後半に見える俊之の姿をじっと見た。紺色のスーツが精悍なイメージを感じさせていた。どこかの商社に勤めているような雰囲気が久美子にも見て取れた。俊之はカウンターにいる久美子と目を合わせた。20歳くらいだろうか?モデルにして良いくらい美人である。ただ美人だというだけではない。どこか優しい雰囲気を漂わせている。テキパキと仕事をこなしそうな頭の良さも伺えた。

「ご注文は何になさいますか?」

久美子が言うと俊之は

「ミートソースとブレンド珈琲をお願いします。」

と言った。

「かしこまりました。」

と久美子が言って作業を始めた。このわずかな時間がいつもの俊之には長く感じられたのであるが今日は意外にも短く感じていた。久美子が珈琲を置いた。

「ありがとう。」

と俊之が言って会計をすませた。

「ミートソースは後ほどお席にお届け致します。」

久美子は笑顔で言い俊之はうなずいた。俊之は空いている席に座って一息つくと少しだけリラックスできた。俊之は店内を見回して落着いた雰囲気に心を和ませた。そして少しずつ頭脳が回転を始めた。俊之は

「矢島のあらたまった話とは何だろうか?」

と呟いた。俊之は親友の矢島正一から久しぶりに呼び出しを受けて少しだけ緊張を覚えたのだ。矢島は高校時代の親友である。たまには落着いた話をするのも必要だろうと思ったのであるがあらためての話とは始めて事である。俊之の頭脳はさらに回転を速めていた。その時

「お待たせ致しました。」

と言いながら久美子がミートソースを乗せたトレイをもって俊之のところへ来た。久美子が俊之の前にトレイを置こうとした時である。客のひとりが急に手を動かして久美子を突飛ばしたのである。俊之はその突飛ばした手を一瞬だけ見た。久美子は身体のバランスを崩さざるを得なかった。やがて大きな音が店内に響いてミートソースを乗せた皿はトレイから俊之の膝を通り床に落ちた。飲みかけの珈琲もこぼれ落ち俊之のズボンはミートソースと珈琲ですぐに汚れてしまった。 

「すみません。」

久美子は言った。

「大丈夫ですか?」

俊之は言って久美子を見た。

「すぐに新しいものをお持ちします。」

久美子が言うと

「僕は大丈夫だよ。」

俊之は言った。

「珈琲もすぐにお持ちします。」

久美子はそこまで言うのがやっとだった。急に誰かに突飛ばされたのであるからひとたまりもなかった。

「僕はかまわないけど怪我をしなかったですか?」

俊之が優しく久美子に声をかけた。不可抗力とは言え久美子がかわいそうになったのである。久美子は

「私は大丈夫です。」

と言って後片付けをしていた。

「気にしなくて良いからね。」

俊之は久美子を見て言った。

「すみません。」

と久美子が言って後片付けをしていると久美子の後ろにあるカウンターからひとみがやって来た。

「お客様大変失礼致しました。」

ひとみは店長として丁寧な対応で俊之に接した。

「僕は大丈夫です。」

と言った俊之のズボンは汚れているのがひとみにもはっきり見えたのである。

「珈琲とミートソースは新しいものをすぐに用意させます。」

ひとみが言うと

「解りました。」

俊之は言った。

「後ほど私のところにお立ち寄りください。」

とひとみが言うと俊之は

「気にしないでください。」

と言った。俊之の言葉を聞きながら久美子は床を片付けていた。急な事で久美子は慌てていた。少し悲しい気持ちとはこういう時の悔しさややるせなさを言うのだろうか?久美子は俊之を見た。そして

「すみません。」

と久美子はもう一度謝った。

「もう大丈夫だからね。」

俊之が言った。俊之の優しい意言葉が久美子を救ったのである。

雨のあとに虹 その1

「ここまでで何か質問はありますか?」

高村俊之の声は教室中に響いた。駅に近い専門学校で経営者を集めてのセミナーである。俊之を見つめる社長たちからは質問はないようであった。受講生にの社長たちは黙っていたがひとりの年配者が

「直接関係ないのですが?」

と言った。

「何でも良いですよ。」

俊之が言うと

「依頼すれば高村先生が当社の顧問になっていただけるのでしょうか?」

年配者が言った。

「それは条件にもよりますね。」

俊之は言った。

「基本的には可能ですよね。」

年配者が言うと

「このセミナーは斡旋していませんのでね。」

俊之が言うと

「そうでしたね。」

年配者が言った。

「どうしても今すぐのご依頼は難しい状態です。」

俊之が言うと

「日を改めてなら良いわけですね。」

年配者が言うと

「大きな声では言えないですけどね。」

俊之は言った。

「解りました。」

年配者は納得したように言った。

「他は何かありますか?」

俊之は言った。

「大丈夫です。」

年配者が代表する形で言った。

「他は無いようですので本日はここまでにしましょう。」

俊之は言った。

「はい!」

と年配者が言うと俊之は

「次回はいよいよみなさんの課題を発表していただきますのでよろしくお願いします。」

と少し時間が長引いた事をすまなさそうに教室中を見渡して言った。

「それではみなさんお疲れ様でした。」

俊之が言うと受講生である社長たちが

「ありがとうございました。」

と一斉に言った。これで今日の講義は終了である。20人ばかりのいかつい社長を相手に軽快に話す俊之は一見すると30代後半見えるのだが今年で46歳になっていた。俊之は大手商社のサラリーマンのような雰囲気を漂わせて気品も備えている。俊之は腕時計を見た。講義が終わったが次の約束の時間まで余裕がのを確認すると俊之は帰る仕度を整えて出口の係員に

「お先に失礼します。」

と声をかけた。教室があるビルを出ると秋深い風が頬をかすめる。行政の政策で緑が増えている町並みが映画のワンシーンのようである。時刻は夕方にさしかかり秋空は日が傾きかけていた。俊之は交差点で赤信号を待つ。信号が青に変わってつい早歩きになる俊之はこの先にある駅ビルに珈琲ショップがある事を思い出した。その珈琲ショップへは3回ほど入った事があるのだ。俊之は駅ビルの方へと足早に歩いて行く。サラリーマンが帰宅する時間にはまだ早いからだろうか?人混みと言っても数はそんな多くはない。俊之は駅ビルの人の流れをうまくさばいてエスカレーターに乗った。

「休憩が終わりました。」

堀川久美子は明るく声をかけて30分の休憩を終えて仕事に戻った。珈琲ショップトレンドカフェは駅ビルの新装開店から2週間ほど経つが今日は朝から大入りで店員は対応に追われた。

「あともうひと頑張りお願いね。」

店長の石倉ひとみは久美子に優しく言った。立上げスタッフとしてもまじめに仕事をこなした久美子をひとみは高く評価していた。

「今日は思ったより大入りで良かったですね。」

と久美子が嬉しそうに言った。

「立ち上げ業務が大変だったからね。」

ひとみが言うと久美子も

「新規立ち上げってこんなに雑用が多いとは思いませんでした。」

と正直な感想を言った。

「だから尚更これだけお客さんが来てくれると嬉しいわ。」

ひとみも正直な気持ちを言った。今日の大入りを久美子は若いながらも機敏にこなしてくれてひとみは助かっていた。これからの時間はそんなに混雑はしないだろう。休憩が終わった久美子とひとみは息が合っていた。これからの数時間を3人で乗り切るのだから少し気合がないと乗り切れないのである。

仕切りなおし

「雨のあとに虹」をアップしたのであるが

途中が抜けてしまっていた。


おそらく文字数の問題だと思う。

月曜日から再度修正して連載していこうと思っている。