雨のあとに虹 その1 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その1

「ここまでで何か質問はありますか?」

高村俊之の声は教室中に響いた。駅に近い専門学校で経営者を集めてのセミナーである。俊之を見つめる社長たちからは質問はないようであった。受講生にの社長たちは黙っていたがひとりの年配者が

「直接関係ないのですが?」

と言った。

「何でも良いですよ。」

俊之が言うと

「依頼すれば高村先生が当社の顧問になっていただけるのでしょうか?」

年配者が言った。

「それは条件にもよりますね。」

俊之は言った。

「基本的には可能ですよね。」

年配者が言うと

「このセミナーは斡旋していませんのでね。」

俊之が言うと

「そうでしたね。」

年配者が言った。

「どうしても今すぐのご依頼は難しい状態です。」

俊之が言うと

「日を改めてなら良いわけですね。」

年配者が言うと

「大きな声では言えないですけどね。」

俊之は言った。

「解りました。」

年配者は納得したように言った。

「他は何かありますか?」

俊之は言った。

「大丈夫です。」

年配者が代表する形で言った。

「他は無いようですので本日はここまでにしましょう。」

俊之は言った。

「はい!」

と年配者が言うと俊之は

「次回はいよいよみなさんの課題を発表していただきますのでよろしくお願いします。」

と少し時間が長引いた事をすまなさそうに教室中を見渡して言った。

「それではみなさんお疲れ様でした。」

俊之が言うと受講生である社長たちが

「ありがとうございました。」

と一斉に言った。これで今日の講義は終了である。20人ばかりのいかつい社長を相手に軽快に話す俊之は一見すると30代後半見えるのだが今年で46歳になっていた。俊之は大手商社のサラリーマンのような雰囲気を漂わせて気品も備えている。俊之は腕時計を見た。講義が終わったが次の約束の時間まで余裕がのを確認すると俊之は帰る仕度を整えて出口の係員に

「お先に失礼します。」

と声をかけた。教室があるビルを出ると秋深い風が頬をかすめる。行政の政策で緑が増えている町並みが映画のワンシーンのようである。時刻は夕方にさしかかり秋空は日が傾きかけていた。俊之は交差点で赤信号を待つ。信号が青に変わってつい早歩きになる俊之はこの先にある駅ビルに珈琲ショップがある事を思い出した。その珈琲ショップへは3回ほど入った事があるのだ。俊之は駅ビルの方へと足早に歩いて行く。サラリーマンが帰宅する時間にはまだ早いからだろうか?人混みと言っても数はそんな多くはない。俊之は駅ビルの人の流れをうまくさばいてエスカレーターに乗った。

「休憩が終わりました。」

堀川久美子は明るく声をかけて30分の休憩を終えて仕事に戻った。珈琲ショップトレンドカフェは駅ビルの新装開店から2週間ほど経つが今日は朝から大入りで店員は対応に追われた。

「あともうひと頑張りお願いね。」

店長の石倉ひとみは久美子に優しく言った。立上げスタッフとしてもまじめに仕事をこなした久美子をひとみは高く評価していた。

「今日は思ったより大入りで良かったですね。」

と久美子が嬉しそうに言った。

「立ち上げ業務が大変だったからね。」

ひとみが言うと久美子も

「新規立ち上げってこんなに雑用が多いとは思いませんでした。」

と正直な感想を言った。

「だから尚更これだけお客さんが来てくれると嬉しいわ。」

ひとみも正直な気持ちを言った。今日の大入りを久美子は若いながらも機敏にこなしてくれてひとみは助かっていた。これからの時間はそんなに混雑はしないだろう。休憩が終わった久美子とひとみは息が合っていた。これからの数時間を3人で乗り切るのだから少し気合がないと乗り切れないのである。