森の木にぶら下がる、真っ黒い玉はいったい何…⁉ | 季節の花と短歌と共に

季節の花と短歌と共に

 このブログでは、私の住む横浜市旭区にある「こども自然公園」で、散策をしながら見つけた季節の草木に目を向け、紹介していきたいと思います。さらに、植物に対して感動、感謝や感情を込めて、拙い自作の短歌を共に載たいと思います。

  冬には冬の楽しみが!

 年明けて、2023年1月になりました。真冬の大池公園を散歩していて気がつくことは、元気のいいのは“散歩をしているワンちゃん”だけ。相変わらず、口から舌を出しながら、急ぎ足で歩いている姿です。飼い主も犬に先導されて、急ぎ足。元気と言えば元気なんでしょうけど、しかし、主体性に欠けますね!そこへ行くとワンちゃんの主体的な動きは、羨ましいくらいです。寒さも風も物ともせず、颯爽とそして嬉々として、尻尾を激しく振りながら小走る姿は、正に「冬こそ自分の季節」と言わんばかりの、快活とした動きで、見ている方も心が浮き浮くしてきます。その他には、箱根駅伝の余韻が残る中、真冬にありながら、若い人たちが半袖短パンで軽快に走り去っていく姿にも、生命力の躍動を感じます。真冬の公園の植物は、殆どが葉を落とし枝だけになっています。よく見ると小さい木の芽が付いていますが、まだまだ堅い状態です。草はロゼット状になって地べたに伏し、冬の寒さをしのいでいます。早朝に出かけると一面が白く霜に覆われていて、まだまだ春の訪れの遠さを感じさせます。そんな中でも、森の中、林の合間に所々に見つけられるのがあります。秋から冬にかけて実った木の実が、そのまま木に付いていて、自然の造形美を見せていることです。何種類かの木の実、草の実を見つけることができました。今日紹介するのは、トウネズミモチの実です。

 

  白から緑、そして黒へ変身!

 ネズミモチは、ネズミモチとトウネズミモチがあります。どちらもモクセイ科イボタノキ属、常緑小高木です。トウネズミモチのトウは唐の意味です。ですから、中国が原産です。どちらも初夏に花が咲きます。トウネズミモチの方がひと月位遅く6月頃から咲きます。今は冬なので花を紹介できませんが、黒い実からは考えられないですが、白というか乳白色の花をたくさん咲かせます。半年を過ぎると、こんな姿になるんですね。花だけを見ただけでは、誰にも想像がつかないでしょう。トウネズミモチとネズミモチでは、見た目の違いがあります。遠くからだと分かりにくいかもしれませんが、トウネズミモチはネズミモチより葉と花が少し大形です。また、トウネズミモチは葉質が薄く,葉を光にかざしたり,裏側から見るとはっきり側脈が透けて見えますが、ネズミモチは側脈がほとんど見えません。更に、実で言えば、でき始めの果実は緑色ですが、10月頃から熟しどちらも黒紫色の実をつけ,ネズミモチは楕円形です。一方トウネズミモチの実はほぼ球形で、そしてネズミモチより、実もやや大きく数も多いです。実はたくさん付けて垂れ下がっています。形はネズミモチよりやや球形になります。これらの観点で上の写真を観ると、トウネズミモチの特徴がはっきりとがはっきりと分かります。

  驚きのパワーを秘めた”黒い実”

 ネズミモチモチの名前の由来は、この黒い実がネズミのフンに似ているからです。今でこそ殆ど見かけることはなくまりましたが、私が子供の頃住んでいたのは福島県いわき市です。その頃は、家は、田んぼと畑に囲まれていました。家には物置というか納屋があって、そこにはその年にとれた米や野菜などが収納されていました。そうすると、自然にネズミがそれらを食べに出入りしていました。そして、たくさん食べた後に、黒い置き土産を残していくのです。確かに、その置き土産とトウネズミモチの実はよく似ています。

 実は、この実は女貞子(じょていし)といい、漢方で生薬として使われています。実を乾燥したものが、生薬のジョテイシ(女貞子)です。ジョテイシは強心、利尿、緩下、強壮薬として古くから用いられており、肝臓、腎臓、腰、膝を強くし、精力も養い、若白髪や月経困難にも効き目があるとされています。現在でもジョテイシエキスは、滋養強壮を目的とした市販のドリンク剤やカプセル剤に配合されています。また果実(女貞子)酒としても長年親しまれてきました。果実の女貞子のほかに、樹皮は女貞皮として風邪の熱に、抗菌作用のある葉は女貞葉として解熱に、根は女貞根として咳嗽治療の目的で利用されてきました。その他、葉や樹皮は染色にも利用されていたようです。漢方処方の二至丸(ニシガン)はジョテイシと旱蓮草(カンレンソウ)からなるもので、視力低下、目のしょぼしょぼ感、かすみ目、足腰の重感無力感、若白髪などに用います。歯痛には葉を噛むこともありました。更に、戦時中には砕いた実をコーヒー豆の代用として飲まれたこともあるようです。

 このように、わずかな甘さと苦味がある黒紫色の実は、野鳥や動物も好んで食べます。見た目と違って、実に驚くほどのパワーを秘めた実だったのです。

 

<一首>黒光る トウネズミモチ 一粒に 

    秘めたる力 生薬王子か