元週刊ファイト副編集長の「週刊ファイトとUWF」を読んだ | 花師論

花師論

まるっきり今までの生活を捨てて、ひっそりと身を隠して起死回生をボ~っと見つめるただのおっさん。
世間では「報われない人」と笑われ、「前に出るな」と罵られながらも、いつも笑顔で暮らしている。
さてさて、この先どこまで行くのやら?

「週刊ファイト」とUWF
元週刊ファイト副編集長
波々白部哲也著

ほおかべ…
週刊ファイトを目にしていても、波々白部を"ほおかべ"なんて読めない。
いつもよ如くAmazonサーフィンをしていると、おすすめとしてこの本が浮き上がって来た。I編集長が愛した週刊ファイト。
「前田がキレた!藤原が極めた!佐山が消えた!高田が泣いた!」と、韻を踏んだ帯下に、「24時間にプロレスを考えなさい」と、鉄人I編集長こと井上義啓さんの言葉が踊っていた。
大阪発の奇跡の専門紙週刊ファイト。
駅の売店でしか手に入らなかった新聞代の週刊紙は、独特の世界観を持つI編集長の魂がギッシリと詰め込まれていた。
UWFに心酔していた甘酸っぱい高校時代を思い出しながら、通勤電車で貪り読み、飽き足らずにpeachの機内まで持ち込み、本州最北端の真上で読み終えた。
UWF…
この3文字にどれほど胸を躍らせ、理想のプロレス誕生に夢を膨らませたか?
プロレスこそ最強はいつしか、UWFこそ世界最強と、打・投・極に真っ直ぐに走り出した。
問題となった堺・臨海スポーツセンターに出向き目撃した、藤原vs佐山戦は、チキンウィングフェースロックで佐山が肩を脱臼し、救急車で担ぎ込まれ、リング上で「友を傷つけた」と泣き叫ぶ藤原に、これぞプロレス!と拳を握りしめた。
そして不穏を残した前田vs佐山の一戦は、スポットライトだけの薄暗い臨海スポーツセンターの雰囲気に呑まれ、金的を主張する佐山の顔と、理想を求めて辿り着いた場所がここか?と、なんとも言えない表情浮かべた前田の姿を、文字を通して思い出す。
その現場に高校時代に居合わせた奇跡と、50を前にし、北海道上空で読み終えた文字の証言と照らし合わせながら、一人I編集長を想い黄昏る。
奇跡の瞬間に出くわす事は、そうそうあるものではない。
実際、その瞬間に出くわしたとて、それが奇跡なのか?なんて微塵もないない。それは後々の経過の中に浮かび上がるものであり、その奇跡を思い出し、噛み締める時だけに味わえる「甘味」なのではないか?
その時代を生き、発信して来た生き証人と、その瞬間に居合わせた青臭いガキの不思議なリンクが詰め込められた一冊。
「週刊ファイト」とUWF
誰もが経験出来る事ではなく、極一部の限られた人間だけの喜びであり、あの前田の言葉だけが頭の中を駆け巡る…

選ばれし者の恍惚と不安、我ふたつ

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