西加奈子の「通天閣」を読んだ。 | 花師論

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まるっきり今までの生活を捨てて、ひっそりと身を隠して起死回生をボ~っと見つめるただのおっさん。
世間では「報われない人」と笑われ、「前に出るな」と罵られながらも、いつも笑顔で暮らしている。
さてさて、この先どこまで行くのやら?

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真っ赤な表紙が印象的な西加奈子の「通天閣」を読んだ。
2007年に織田作之助賞大賞を受賞した西加奈子、
「読書芸人」の又吉、光浦、若林がこぞってオススメする本10冊の中にランクインしている。
又吉は「漁港の肉子ちゃん」
光浦は「自分を好きになる方法」
若林は「サラバ!」上・下巻を上げている。
若林オススメの「教養としてのプロレス」プチ鹿島も揃って紹介され、放送を観ながらすぐにAmazonしたのだが…
なかなか西加奈子に手を出しづらかった。
何故か?
Amazonのレビューの中に、西加奈子の特長として、後半からの盛り上がりは面白いが、前半はなかなかシンドいと目にしてしまった。
それが躊躇した理由の一つであり、どうしてもこの「通天閣」を初めに読みたかったからだ。
偶然見つけた通天閣を手にレジに進み、通勤電車で読みふける段取りだあったのだが…
レビュー通りでページが進まない。
2人の主人公が入れ替わり立ち替わりに登場する。登場前には必ず夢の話しが太字で書かれているのが馴染めなかった。

"マメ"って誰?

頭の中で登場人物を整理するのにページを半分過ぎまで費やした。が…
そこまで来た瞬間に西加奈子ワールドの住人になっていた。
あ行だけどもる件は、うかうかしてたらうつってしまいそうで、通天閣下の"大将"の塩焼きそばの大盛りが妙に食べたくなったり、そこで働く少し太めの女性定員を気になったりした時点で、かなりハマっているのだと確信しながら、後半部分の畳み掛けに読み切ってしまい、帰りの電車で読みモノがなくなってしまった事に気づき、愕然とした環状線の芦原橋付近。
帰りはボーッと通天閣の方を見つめながら、頭の中で物語を追いかけるとしよう。

なるほど、これが西加奈子なのか。

このなんとも不思議な空気感が、西加奈子ワールドなのだろうと噛み砕いて飲み込んだ。
読書芸人がこぞってオススメする西加奈子は、人の心の中に強烈な刺激を残すわけでなく、心を"撫でる"ような感覚に似ている。
この"撫でる"感覚を味わうと、たまらなく癖になるのだろう。
他の人は知らないが、少なくても自分ではそんな感覚に陥った。
次は何を読もうか?
読んで"撫で"られようか?
恐るべし西加奈子にまんまとハメられた、雨の月曜日。