谷崎潤一郎「痴人の愛」を読んだ | 花師論

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まるっきり今までの生活を捨てて、ひっそりと身を隠して起死回生をボ~っと見つめるただのおっさん。
世間では「報われない人」と笑われ、「前に出るな」と罵られながらも、いつも笑顔で暮らしている。
さてさて、この先どこまで行くのやら?

♫出逢いはスローモーション♫

新しい本に出会うと決まって、中森明菜のデビュー曲「スローモーション」が頭の中をリフレイン。何かに取り憑かれたかのように、ただただひたすら目で文字を追い、指でページを足早に捲り、その先を急ぐ。

何気なく綴った読み終えた本の感想を、LINEのタイムラインで紹介した事がキッカケで、薦められた分厚い一冊…

手を出しそうで出すことのなかった巨匠。

谷崎潤一郎「痴人の愛」を読んだ。

生真面目なサラリーマンの河合譲治が、カフエエで見初めた15の美少女ナオミ。
「奈緒美」は素敵だと、大変好奇心を投じる譲治が、「私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、ありのままの事実をを書いて見ようと思います。」で始まる…
そんな生真面目なサラリーマン譲治が、カフエエで見つけた美少女ナオミを、自分好みの女性に育て上げ妻にする。
成熟するにつれ妖艶さを増すナオミのまわりかに群がる男達。生真面目な譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼし狂って行く。
大正末期の性的にも文化にも開放される純文学。

出逢いとはこんなものだ。

カフエエでナオミを見かけなかったら、譲治の生真面目な生活が狂う事はなかった。し、この本を手にしなければ、もっとお気軽な本を2冊は読み終えていたはずだ。
日本一美しい日本語を使うと名高い谷崎潤一郎。
まさかのクライマックスでもなく、街に転がる至極普通のクライマックスは、今の日本では見慣れた風景であるにせよ、この時代背景で予想を覆す展開ではなかったか?
男が女に身を滅ぼされるも、その容姿や肉体に溺れるその様はいつの世も変わりない。

昭和二十ニ年十一月十日 発行

センセーショナルな描写で、昭和の日本人の心を鷲掴みにした谷崎純文学。

重版出来。を繰り返すの納得だ!が…
誰もが「オモロい!」と小膝叩いてニッコリ笑う。かは、読んでみないとわからない。

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