めだか屋で奮闘しまっせ(フィクションです。)

 

 

第二十六話 召田輔とあかねの漫遊記の巻(その1)(1) <=以前はこちら

 

第二十六話 召田輔とあかねの漫遊記の巻(その1)(2) <=前編はこちら

 

第二十六話 召田輔とあかねの漫遊記の巻(その1)(3)

 

 大阪から福岡空港へ向けて飛び立った飛行機の中で、召田輔(めだすけ)は相変わらず座席にへっぱり付いたまま一言もしゃべらず、横であかねは一人で観光地や土産物の話ばかりしていた。

福岡空港は博多の近くにあり、空港へ降り立った二人はその足で博多の街へ向かい企画メンバーと落ち合っていた。

昼食を兼ねて、開催場所の確認と鹿児島での課題の対策を話し合い、明日の朝からの設置に掛かる段取りを伝えて、二人は予約していたホテルへ向かった。

その日の夕方、あかねは「ラーメン、ラーメン。」と言いながら、召田輔と中洲辺りを歩いていた。

ラーメンを食べて、デザートを食べて、デザートのデザートを食べて満足した後、賑やかな通りを外れた所で二人は建物全体がキラキラとイルミネーションで赤や青に飾られた店を見つけた。

あかねが「わあ、綺麗。」と言って駆け寄って見ると、沢山のガラス水槽が立体的に並べられていることが分かった。

「LEDの光がガラスにも水面にも反射してるから、こんなに全体が輝いて見えるんやね。」と感心して見ているあかねに、

「良う考えたもんでんなあ。」と言いながら水槽の中を覗き込んでいた召田輔は、「ありゃ、これ、めだかでんがな。いっぱい入っとるし、こいつらもキラキラしとりまんがな。」と見て回っていた。

「写真撮ってもええかな。」と言うあかねに、

「店に聞いて見まひょ。」と召田輔はドアを開けて入って行った。

暫くして、召田輔は目を丸くして出て来て、「別に構わへんって、中も凄いでっせ。」と言う通り、店内も一面に電飾された水槽が並べられ、キラキラしためだかがたくさん泳いでいた。

店は喫茶店で、気に入った召田輔は、あかねが写真を撮っている間、コーヒーを飲みながら此処の主人と思われる白髪の老人と話をしていた。

召田輔が「わいは大阪でめだか屋をやってまんねんけど、こんな店見たん初めてでっせ。」と感心して話し出すと、

「大阪から何の用で来たのですか。」

「めだかの展示会がおまんので来てまんねん。」

「めだかの展示会なんぞに、わざわざ大阪からですか。」

「いやあ、大々的に展示されまっし面白いよって行かはったらええでっせ。」

「あんまり興味は無いですけどな。」

「せやけど、ここの展示も凄いでんがな、展示会で飾りたいくらいでっせ。」

「別に展示で飾ってるつもりは無いですけどな。」

「せやけど、趣味でこんなにようけいのめだかを作ってはんのやさかい、見に行ったら好きになりまっせ。」と話している時にあかねが入って来て話に加わった。

話を聞いていると、本業は全国へ出荷している卸専門のめだかの養殖業で、夜だけ、さっきコーヒーを持って来た娘が経営しているこの店の手伝いに来ているとの事だった。

三人は、この店でめだかの話で盛り上がって、召田輔は「こんなにめだかが好きなんやし、展示会なんぞに興味無いなんて言わんと、一度来て見なはれ。」と伝えて、二人はホテルへ戻ったのだった。

(つづく)

 

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