めだか屋で奮闘しまっせ(フィクションです。)

 

 

第二十三話 愛のめだかの巻(1) <== 以前はこちら

 

第二十三話 愛のめだかの巻(2) <== 前編はこちら

 

第二十三話 愛のめだかの巻(3)

 

 そして、各地でめだか屋が閉店し始めている情報が入ってきて、日本中に浸透しためだか熱も次第に冷めてきていると、あかねは肌で感じていた。

「このままやったら、うちみたいな小さいめだか屋なんて淘汰されてしまう。」

そこはかとなく心の中から湧き出る恐怖に怯えるあかねの傍に召田輔(めだすけ)の姿は無かった。

あかねは、いつの間にか知らない道を歩いていた。

「次の角を左に曲がれば、めだかの家があるはず。」と、小走りに駆け寄って左を見たが、めだかの家は無かった。

「違うやん、もう一つ次の角やん。」と、また小走りに駆けて行くと召田輔が待っていてくれた。

「何、うろうろしてまんねん。」と笑いながら聞く召田輔に、

「せやかて、道に迷たと思たさかい。居ててくれて良かったわ。」

「早よ帰らんと暗なるさかい、急ぎまっせ。」と言って、召田輔が走り出した。

「待ってえな。」と追い掛けるが走っても走っても追い付かない。

とうとう夜になり、辺りは真っ暗になっていた。

「召田輔さん、何処へ行ったの。」走り続けていると、遠くに灯りが見えた。

「いたっ、ちょっと待って。」灯りに向かってひたすら走り、

「やっと追い付いた。もっとゆっくり歩いてよ。」

「せやかて、急がな今日中に着かへんでっしゃろ。」

「何言うてんの、めだかの家はすぐそこでしょ。」

「めだかの家、それ、何じゃいな。」

「エーッ、めだかの家忘れたん。」

「そんなもん、とっくに潰れたやおまへんか。」

「エッ、めだかの家潰れた。もう、めだかおれへんの。」

「何時の話ししとんねん。何時の話ししとんねん・・・。」

そのうちに辺りが急に明るくなり開いたあかねの眼に、瞼を真っ赤に腫らした召田輔の顔が飛び込んで来た。

「あっ、目が覚めた。あかねちゃん聞こえまっか。」とあかねの肩を揺らして叫ぶ召田輔に、「めだかの家は。」と聞いた。

「そんなもん、どうでもええでっしゃろ。」と言う召田輔に、あかねは「潰れてしもたん。」と泣き出した。

「大丈夫でっせ、一カ月休んだくらいで潰れたりしますかいな。」

「一カ月?」

一カ月前に、めだかの家で倒れていたあかねを見つけて病院へ運んでから今迄眠り続けていたのだった。

医者からは、以前の病気が再発したみたいで今度は目を覚ますかどうか分からないと言われ、召田輔は、あかねが倒れた日からめだかの家を休業して看病していたのだった。

(つづく)

 

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