めだか屋で奮闘しまっせ(フィクションです。)

 

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第二十三話 愛のめだかの巻(1)

 

 あいのしるしは夏が過ぎても順調に売れ続けたが、翌年の春には全国各地で一斉に安く売り出され、召田輔(めだすけ)も値下げをしない訳には行かなくなっていた。

「しゃーないなあ、1ペア一万円に下げまっか。」と断念したように言う召田輔に、あかねは「何言うてんのん、ホームページで見てると1匹千円って書いてるやん。」と言って、大阪のペットショップのホームページを見せていた。

「ほーう、角の養魚場でも作ってるっちゅうことでっか。ちょっと見て来まひょか。」と言って出掛けようとする召田輔の手を引っ張って、

「何言うてんのん、行ける訳無いでしょ、あんな別れ方してしもたんやさかい。」

「そうでっか。」と、相変わらず呑気な召田輔だった。

そうこうしている間に、白やブルーの光沢を持ったものや明るい黄色のものなど、あいのしるしに似た色違いの新品種が次々と発表され、あかねは、あいと名が付くめだかを検索しては悲鳴を上げていた。

召田輔は、何とかして通販を伸ばそうと懸命なあかねの横に座っては、「次、どんなん作ったらええでっしゃろ。」と聞いて来る。

「まだ、作ってないの。」

「そうでんなあ、迷いまんなあ。」

「迷ってる暇あったら何でも作ったらええのに。」

「あいのかがやきと引っ付けたら、丸いキラキラしたの出来るやろか。」

「せやねェ。」

「せやけど、赤く無くなってしまうかも知れへんしなあ。」

「そうかもね。」

「やっぱし、赤いのがええと思うし。」

「せやねェ。」

「赤いキラキラを買うて来て引っ付けた方がええかもなあ。」

「そうかもねェ。」

「せやけど、何も赤にせなあかんちゅう訳でも無いやろし。」

「せやねェ。」

「せやけど、赤やのうなったら愛っちゅうのも終わりでんなあ。」

パソコンの画面を見ながら答えていたあかねは、突然、召田輔の顔を見つめて、「何で、何で愛が終わんの。」と泣き出した。

「めだかの名前でんがな。」と、驚いた顔をして答える召田輔に、

「めだかかって一緒でしょ。何で愛が終わるなんて言えんの。」

召田輔は、自分の一言に酷く動揺したあかねの顔をじっと見ていた。

「せやなあ、愛は続けなあかん。あかねちゃんの為にも。」

「うん。」

「あかねちゃん・・・。あかねちゃん・・・。あかねちゃん、せや。」と、何かに気付いた様に召田輔は立ち上がって温室へ走って行った。

召田輔は温室へ上がるなり水槽の中を探していた。

「此処におる筈やけど。」掬っては戻し、掬っては戻しして、「おった。」と、何かを見つけた召田輔は、それを小さなガラス水槽に移して、追いかけて上がって来て「どないしたん。」と言うあかねに見せた。

それを見たあかねは、にっこりと笑って「あかねづきやん。」と言った。

(つづく)

 

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