「狐の嫁入り」と、鏡に映った本当の心 | 花緒no心理学ブログ

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ものの見方転換アドバイザー、心理カウンセラー花緒の、昔話分析
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こんにちは!ものの見方転換アドバイザー・花緒です!
今日もご覧くださいまして、ありがとうございます(*^^*)


空は晴れているのに、雨が降ってくるという現象を一般に「天気雨」と呼びますが、そういった天気の日は『狐の嫁入り』が行われる、という伝承を御存じでしょうか?


全国各地に伝わっている伝承で、雨雲もないのに雨が降ってくる現象がまるでキツネに化かされているかのようであることから、そう呼ばれることが多いようです。

 

今日は群馬県に伝わる「狐の嫁入り」という昔話をご紹介します。

 

 

ざっくりストーリー

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昔、ある男が隣村に買い物に行く途中、子供たちが一匹の子ギツネを棒でたたいていじめているのを見かけました。かわいそうに思い、男は子どもたちから子ギツネを買い取って、山に放してやりました。

 

隣村からの帰り道、天気が良かったのに雨が降り出します。晴れていたのですぐやむだろうと近くの木の下で雨宿りをしていると、遠くからなにやら明かりが行列をなして近づいてきます。

 

それは、見事な嫁入り行列でした。

 

参列している者たちは男を見つけると、これも何かの縁。めでたいことであるから、ぜひともいっしょに来てお祝いをしてほしい、と誘います。

 

男はそれならと、行列について花嫁の家についていきました。


結婚式は盛大で、男もたくさん酒やごちそうを振舞われました。やがて夜もふけ、もう遅いので泊まっていくようにと引き留められて、男は一晩お世話になることに。

 

花嫁は男を部屋に案内し、布団をひいてくれました。その部屋には、大きな長持ち(布団や衣服をいれておく長方形の木箱)があったのですが、花嫁は「この長持ちの中は決して、覗かないでください」と言い残して、部屋から出ていきました。

 

男は逆に長持ちの中身が気になり、どうにも我慢できなくなって長持ちを開け、中を覗き込むと・・・そこには鏡が入っており、なんと、映っている男の顔は、キツネになっていました。

 

あまりのことに驚き、こんな顔では家に戻ることはできないということで、男は花嫁に事情を打ち明けてそのまま家に置いてもらうこととなりました。

 

花嫁はたいそう喜んで、毎日男をもてなしてくれました。

 


・・・そうして3年が過ぎました。

 

ある日、男はふと家のことが心配になりました。家に残してきた妻や子供はどうしているだろうか。いきなり自分がいなくなって大変なことになっているのではなかろうか?

 

そこで花嫁に願い出て、家に帰ることにしたのです。花嫁は泣いて引き留めましたが・・・。

 

キツネ顔を驚かれることを覚悟で家に戻ってみると、顔はもとどおりに戻っていることに気づきます。そして、3年留守にしたはずが、たった3日しかたっていませんでした。

 

村の者たちは子ギツネが助けてもらったお礼に、男を精一杯もてなしてくれたのだろうと噂したとのことです。


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キツネに化かされる、だまされる昔話はとても多いですが、このお話は恩返しのためにキツネが男をだました、という珍しいパターンです。

 

キツネの化かし能力は「時間の経過の感覚」までだませるんですね~!

 

それにしても・・・この男、妻も子供も家に残したままで、気になってどうしようもなくなったのは3年もたってからなのかい!!この薄情者!!!・・・と思ってしまうのはわたしだけではないはず(苦笑)

 

「キツネ」という生き物は、狡猾さや騙されて不利益を被ることを暗示しますが、「白いキツネ」の場合は神の遣いとされ、利益をもたらすと言われます。

 

この物語で出てくるキツネは花嫁で、白無垢を着ているわけなので、幸運をもたらす「白ギツネ」とみなすことができるでしょう。そこには悪意はなかったわけですね。

 


ところが心理学的に見てみると、面白いことが浮かび上がってきます。

 

他の人の結婚式に参列する、という状況は、自分の結婚相手や現在の夫婦生活に不満があることを暗示するんです。

 


お話の中の、一連の男の行動から考えられる「裏読み」は、こうです。


男は、妻の家に婿養子として入りました。妻はよくしてくれ、子どもにも恵まれました。

 

義父母もよくしてはくれていましたが、立場的には逆らえません。かといって気の弱い自分は妻子を連れて強引に袂を分かつこともできず、そこまでの器量もないと自分で分かっていました。

 

毎日義父の仕事を手伝う自分を、まるで奉公人のように感じ、心のどこかで逃げ出したいと思っていました。


そんなとき、嫁入り行列に出会います。


花嫁の乗っている籠はとてもきらびやかで、まるで別世界のことのよう。

 

男がまったく見ず知らずの人の嫁入りについていったのは、現実世界から逃げ出したかったからでした。

 

遠慮せずに飲んだ酒は、格別においしかった。

 


いっぽうキツネのほうは、子ギツネを助けてもらったお礼にと男を招待したものの、長く引き留めるつもりはなかった。なので我に返ってもらうために、長持ちに鏡を仕込んで、心理的に見たい気持ちにさせるためにわざと「見るな」と言ったのです。

 

 

「鏡」を見ると、人間は我に返ります。


たとえばディズニーランドのトイレには、手洗い場のところには鏡がありませんよね?あれは夢の国に来てくれたお客様を、悪い意味で現実に引き戻さないための配慮だというのは有名な話です。

 

この昔話のキツネは、男が我に返って家に戻るよう、仕向けようとしたんです。

 

ですが男は、そこに「自分の本心」を見てしまいました。いい婿を演じ、一生懸命働いて、よき婿、よき夫、よき父になろうと努力していたけれど、本当の本当は・・・・

 

男は、そこに人を化かす「キツネ」の姿の自分を見たのでした。

 

仕方なくキツネたちは、魚や木の実などで一生懸命もてなしました(苦笑)


そして3年も過ぎたんだよ、という暗示をかけた。

 

3年もいた、と思い込んだ男は、さすがに妻子がどうしているか心配になってきました。なにもせずただ出されるごちそうを食べて、自堕落に過ごす自分を恥じ、家に戻ることを決めました。

 

実際には3日しかいなかったわけですが、3年もの間、妻子を忘れて遊びほうけていたという自責の念は、きっと忘れることがないでしょう。妻子に対する気持ちも、以前とはちょっと変化したでしょうから、この先は妻子を大切にしながら、仲良く暮らしたのではないでしょうか(*^^*)

 


家族やパートナーって、毎日そばにいるのが当然になってしまうと、甘えもわがままも出てきますよね。離れてみて、なくしてみて、はじめて大切さがわかったりします。

 

もし、大切な人とうまくいかなくなったときは、すこし距離を置いてみるのも手です。


感情的にならずに、自分の本当の気持ちを探してみてください。

 

大好きなら大好きで、きらいならきらいでいいんです。


大切なのは、本当の自分の気持ちを認めてあげること。

 


自分にウソをついても仕方ありませんからね(*^^*)