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はるか昔、今からおよそ2000年も前の弥生時代のことです。
ここには、青々と茂る水田と、豊かな恵みをもたらす川に囲まれた、小さな集落がありました。
夕暮れ時、ひとりの優しいお母さんが、新しく焼き上がったばかりの赤茶色のツボを、愛おしそうに撫でています。
ツボの表面には、作った人の指の跡が、かすかに残っていました。
そのツボの中に大切に仕舞われているのは、黄金色に輝く「モミ種」でした。
それは、単なるお米ではありません。次の春に田んぼに蒔き、家族や集落のみんながこれから生きていくための、かけがえのない「命の種」です。
「来年も、みんなでおいしいお米がたくさん食べられますように」
傍らでは、小さな子どもたちが泥にまみれて走り回り、お父さんがそれを目を細めて見守っています。
お母さんは祈るような気持ちで、モミ種の詰まったツボを大切にしまいました。
彼らの衣服は麻のように粗く、現代とは似ても似つきません。
けれど、子どもたちの弾けるような笑い声や、明日の暮らしを願う家族の温かな空気は、今の時代の家庭と何も変わらないものでした。
しかしある時、その大切なツボは割れてしまい、長い歴史の土の中へと静かに埋もれていきました。
それから、気の遠くなるような季節が巡りました。
いくつもの時代が移り変わり、何百世代もの人々が、この土地で生まれ、恋をし、次の世代へと命の灯火を繋いでいきました。
あの家族の記憶は、完全に消えたかのように見えました。
――そして、昭和という年のある日のことです。
静かに眠っていた土の中から、あのツボのカケラが出てきました。
それは、あの日の家族が、未来の命を託してモミ種を入れていた、大切なツボのカケラだったのです。
さらに時は流れ、
一人の青年が、その土地の土を愛おしそうに弄(いじ)っています。
かつてその土地で無邪気に遊んでいた、弥生時代の子どもたちのように。
彼は、子供の頃からの夢を叶えて学芸員となり、今、足元にある歴史をそっと見つめているのです。
2000年前にお母さんがツボに込めた「命を繋ぎたい」という願い。
そのバトンが途切れることなく引き継がれたからこそ、今、“彼”という存在がここにいます。
遥か昔のモミ種のツボと、現代を生きる彼の物語。
二つの時間は、この大地の底で、今も優しく、しっかりとつながっています。
おわり。
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この土地にはしっかりと過去の記憶が刻まれています。
大地は単なる土の塊ではなく、ここで生きた人々の喜び、願い、愛といった目に見えないエネルギーをもすべて吸い込み、記憶する巨大な器なのだと思います、また機会がありましたら、それに関するお話を書かせていただきます![]()
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