どうして気になったのか?
この事件が人生の節目を考えさせるから、です。
サリン事件(平成7年3月)の年、私は大学に入学しました。
ちなみに同じ年の1月に阪神淡路大震災が発生しています。
受験勉強がピークでそれなりに緊張が絶えなかった時期に起きた事件だから、印象にあるのかもしれません。
衝撃だったのは教祖云々以上に、実行犯の思考が分からなかったことです。
違ったかたちで社会に貢献できる能力があったであろう人々が犯した罪。
当時の情報では詳細はわからず、でした。
詳細がわからないことで、今から自分が進む「大学」という場所が何やら未知の世界に思えたし、大学で4年間をどう過ごすのか?という問いを入学前からつきつけられました。
それまでの「学校」とは違う何か、それが大学には「在る」そんなことを感じて報道に接していましたが、もちろんそんな問いに対する答えはなく。
それでも私はしあわせな学生生活を送りました。
校内は学問することに本当に自由でした。
心のどこかにあった「人はかんたんに引っ張られてしまう」という発想は、消えることはないですが、あらわにしなくても安全にすごす環境でしたから。
そこには感謝しかないです。本当に。
今回この本を読んでみて、自分の学生時代に何が起こっていたのかを初めて知ることができました。
医学の立場から事実を着々と積み上げていく過程にまず圧倒されます。
当時も報道されていたのかもしれないけれど、自分は全く知らずにいた調査。
あたり前なんだけど、ありのままから拾い上げること。
当時は「詭弁じゃん!」程度の言葉しか持てなかった、教義のほころびにも言及があります。
論理的に落とし込むことができたことで自分の中にあった「何を信じて生きるか」がもっとクリアになっていくことが読み進める原動力にもなりました。
当時を知る人も知らない人も、読んで損はないし、自分の子どもが学生生活を送るにあたり手渡したい、力強い本です。