藪木れいこです。
ぶ、ぶあつい…
読み切れるか?
自信がなくなるほど重厚感のある一冊でした。
で、読んでよかった。
最初は刑事もののルポルタージュかな?なんて想像してました。
刑事さんと新聞記者さんの駆け引きとか、ありますよね。
もちろんそういう要素は最後まで根底に流れながら、なんですがさらにさらに!!!!!
美術と愛情、「生きる」という根源的なことを突き詰めてえがかれた世界がありました。
「写実」という絵画のジャンルについて語られる部分がそのまま「世界をどうみるか」という生き方に繋がり、生き方(世界の見方)がそのまま作品として昇華していく。
そのまま、です。
純粋で繊細な部分を失うことなく生きる、ということ。
それがかなっていることにすごく希望が見えて、でもただ明るいだけじゃない。
底辺に流れる周囲の人間の生きざまがあってはじめて感じることができる希望。
人生の響きが多重奏となり集結する心地よさというのでしょうか。
「生きる」「存在している」をしっかり輪郭をもったものとして浮かび上がらせてくれたこと。
本の持つ力に圧倒されながら夢中で読んだ、心に残る一冊でした。
あまりしないんですが、登場人物の言葉を抜き出して書き留めてたくて、もう一度振り返りたくてたまりません。
それくらいに心にどっしりと残っています。
『存在のすべてを』
塩田武士(著)
朝日新聞出版
塩田武士(著)
朝日新聞出版