お探し物は図書室まで
青山美智子
仕事にやりがいなど持てなかった。
好きで入った会社でもなかった。
おそらくそんな人は世の中にたくさんいる。
図書室の小町さんに
『でもあなたは、ちゃんと就職活動して採用されて、毎日働いて、自分で自分を食わせているんでしょう。立派なもんだよ』といわれて少し泣きそうになる朋香。
食わせている〜の意味はまだわからない。
『メシ大事だよ。しっかり働いてしっかり食う』という桐山くんの言葉に〜そしてその後の桐山くんとのやりとりに〜“胸がきゅるっと甘く痛む”のだ。
朋香は小町さんから薦められた一冊の本と出会い、その後さまざまなことに気づき始める。
桐山くんが自分自身に話すように『何が起きるかわからない世の中で、今の自分にできることを今やっているんだ』と言っていたこと。
婦人服販売員が“大した仕事じゃない”なんてとんでもない間違いで、ただ自分が“大した仕事をしていない”だけだったこと。
エデン〜楽園の名がついた総合スーパーを心のどこかで少し見くだしていたこと。
そしてそれは自分自身を見くだしていることだった。
カステラを作ろうと思い立ったとき、自分の部屋にはフライパンもボウルも泡立て器も〜はかりや計量カップも、卵や小麦粉や砂糖やバターも牛乳も〜これらのものがほとんどなかったけど、
“まったく素晴らしいことに、エデンではこれらすべてが揃うのだった。”
背伸びしないで今の自分にできることを精一杯。
この先の毎日で
森の中で大きな卵に出くわしたとき
慌てぬよう
きちんと〜おいしいカステラを作れるように……