しどろもどろ
テレビ局の番組ディレクターからインタビューの依頼があった。
僕の以前の職業は、新聞記者。
これまで、多くの人たちを取材してきた。
殺人、汚職、窃盗などの事件から、心温まる地域の話題まで。
取材相手にたどり着けば、なんとか記事になる。
だが、快く取材に応じてくれる人ばかりではない。
ときには「その件については、話したくいない」という人もいる。
それでも交渉を重ね、取材しなければならない。
だから、携帯電話の向こう側から、切羽詰まった声で頼まれると断れないのだ。
自分がやってきたことだから。依頼する側の気持ちが、手に取るように分かる。
インタビューの内容は、広末涼子さんの事件。
6月に予定していた大分での音楽イベントに彼女をキャスティングするなど、社会を騒がせた責任の一端は僕にもある。ディレクターの要請には、応じなければならなかった。
そのインタビューが、今終わった。
ずっと、しどろもどろ。
聞くのは得意だが、答えるのは難しい。
ボツになればいいのだが、なんて思ってしまう。
この顔がテレビの画面に出るかもしれません。笑顔がインタビューの内容にそぐわない気がする。