前回の旅の記録で間藤駅のことを書いたので、ここで本書のご紹介です。
いわゆる元祖「乗り鉄」(阿川弘之氏が本当の元祖でしょうが、正当な後継者でもある宮脇氏をあえて、元祖と書かせてください)。
日本の(当時)国鉄全線を乗りつぶした名著です。
本書発売当時は、「乗り鉄」などという言葉はなく、いい歳をして汽車に乗る趣味なんて。。。と白い目で見られることも多く、あまり鉄道趣味を大きく言えない空気がありました。
そんな中、当時50歳代の宮脇氏が、堂々と国鉄の全線を制覇し、本まで書いてしまうという快挙。
これによって、鉄道に乗るということ自体を趣味とすることに対して、市民権を得たように思います。
氏は、中央公論社の編集者時代から、細々と鉄道に乗り続け、ついに念願がかなうわけです。
私は、初読が高校生の時。澤木耕太郎さんの名著「深夜特急」(詳細は下記参照)
とともに、私の人生で何度か再読してきました。
内容としては、とにかく乗っていない路線に時刻表とにらめっこをしながら、徐々に野望に近づいていくという、鉄道に興味がない人にとっては、酔狂としか思えないことを、坦々と進めていくだけの話です。
ただ、何が面白いかというと、各路線の風景がどうこうという次元ではなく、残ったこの路線に乗るためにどうやったら効率よくいけるか、また少しずつ残りが少なくなっていくときの達成感と寂しさという心境の変化が読みどころとなるでしょう。
私は、国鉄から移行したJRだけでなく、日本の鉄道の全線をコンプリートするという目標があり、現在約98.5%まできていますが、残りが少なくなると、上記と同様に、達成感と寂しさが同居する心境を感じるようになりました。
本書では、足尾線の間藤駅で一旦全線完乗となりますが、その後開通する路線に乗車して、その乗車記も書かれています。
このいわゆる「タイトル防衛」についての心境もなんか共感しますし、本書の記述で、
「また、乗る線がなくなった」という100%防衛したからこその心境がよく伝わります。
余談ながら、氏は別の著書で、
「日本の国鉄に全線乗ったけれども、1回乗っただけですべてわかるわけではない。少なくとも夏と冬の2回は乗りたい」
という内容のことを述べておられます。
また、私もそういった心境になってきていて、一度乗った路線でも季節を変えて、再訪したいと思っています。
ということで、そのスタートとなる本書は、鉄道好きに限らず、趣味の酔狂さを味わう上で、また、鉄道に乗るだけの著書を「鉄道文学」というジャンルにまで言わしめた名著です。

