ゆっくりと話をする機会も作れないまま、一区切り。

 

中学へと進級。

 

リョウ、コウタ、ハナ。

 

団を離れる三人へ、贈る言葉。

 

 

一人は自分の娘ですが、この三人は僕が松岡少年剣道教室に関わらせて

 

頂くようになり、初めて入団から現在に至るまで、小学生剣道の全ての時間を

 

共に過ごした子どもたちです。

 

長い子で5年間。

 

今になって、あの時こうすれば良かったのではないか?

 

もっとこのように出来たのではないか?

 

自分自身、考え始めるとキリがありませんが、それでも、やはり・・・、

 

結果全ては100点満点であった。

 

3人が3人とも、それぞれの居た場所で、出来ることを精一杯頑張った。

 

その事実を、僕は彼らに声を大にして伝えてあげたいと思います。

 

 

リョウは、もしかしたら剣道をするには優し過ぎる子なのかも知れません。

 

監督先生に一番最初にチームの大将を任され、しかしその試合で大逆転負け。

 

「全く考えていない!」と叱られて、声を出して号泣。

 

それ以来、「試合が怖いです・・・。」とこぼしたこともあり。

 

ただ、素直な性格。

 

教えられたことをまずはやってみる。

 

戦い方は単純明快、仕掛けて崩してメン!メンを印象付けたらコテ!!

 

一芸、これをひたすら磨こう。

 

もちろん、試合はお相手あってのこと、負ける相手には簡単に負けますし、

 

しかし、はまった時はしびれるぐらいに躍動!

 

錬成会ではあまりに見事な二本勝ちに、コートサイドの監督先生から

 

「それが剣道や!!」と賞讃を頂いたほど(笑)。

 

もちろん、団体戦の戦い方もひとつずつ、会得してゆき。

 

学年後半には残念ながら怪我が続き、戦列を離れましたが、

 

僕はリョウの「まずはやってみる。」

 

自由に考えて工夫する剣道が本当に大好きでした。

 

 

コウタは、一言で言うと「自分の世界を持っている」子。

 

別の言い方ではものすごく頑固な子でした(笑)。

 

与えられた素材で設計図通りではなく、いつの間にか独特の何かを

 

自分の感性で作り上げてしまう。

 

松岡でのあだ名は、「負けない大将」。

 

ポジションもあり、一本を取るのは決して簡単ではない。

 

でも、自分が取れないから、負けるのではなく。

 

取れなくても、チームは勝つ。

 

そして、それを狙って出来る頭の良さ。

 

狙って、と言ってしまっては告白になるのですが、

 

僕はただ一度だけ、コウタに「止めろ!!」と伝えてコートに送り出した

 

ことがあります。

 

チームは敢闘賞を頂いた、敦賀での勝ち抜き戦県大会。

 

次鋒にポジションを移したコウタは見事にその役割を果たし、それが続く

 

逆転劇への布石になりました。

 

彼のアイディアも気持ちも全てが伝わって来た、僕の個人的ベストマッチ。

 

試合後の、僕と目が合っての誇らしげな表情、今でも忘れることが出来ません。

 

 

ハナはチームのキャプテン。

 

個人戦ではぽろぽろと取りこぼしが多かったものの・・・(?)、

 

ことチームの勝敗がかかった局面では無類の集中力、

 

勝負強さを発揮した選手でした。

 

また大の負けず嫌い。

 

卒業を控えての中学生との試合稽古でも、使い慣れない37では勝てないと悟るや、

 

愛刀の36をこっそり引っ張り出して来て注意され(笑)。

 

とにかく、自分の不器用さを練習量と出来るまでコツコツやり切る根性で克服。

性格的に多少融通の利かない部分もありましたが・・・、

 

負けては泣いて稽古、また負けては泣いて稽古、また負けて泣いて・・・、

 

その繰り返しでどんどん力を付けて行った後ろ姿は、

 

本当に頼もしく、また見ていてとても楽しかった思い出です。

 

個人では男子に混じって県大会ベスト16、団体では女子の部で県準優勝、

 

総合団体では県ベスト8が最高でしたが、チーム移動の時に聞こえてきた、

 

「あの子、女の子だって。」

 

それは最高の褒め言葉だったと思います。

 

 

 

 

リョウ、コウタ、ハナ、3人とも、本当に大きくなりました。

 

3人でチームの先頭を任された最後の一年は、正直、辛かったこと、

 

悔しかったことの方が多かったかも知れません。

 

でも、仮に楽しいだけの時間ではきっと得られなかった経験を、

 

本当にたくさん手にすることが出来たのではないかと思います。

 

そして、それらはここから先の近い未来に、必ず生きて来る。

自分が燃え上がる程の「何か」がない青春は、本当に寂しい。

 

これは、その「何か」がなかった訳ではないけれども、それなりに、

 

可もなく不可もなく、二度とはないその時間をおそらくは浪費してしまった、

 

一人の大人からの贈る言葉。

 

冷めていることは、カッコイイことでもなんでもない。

 

 

ここから、さらにその道を進むのも、新しい何かを見つけて別の道を行くのも、

 

それはそれぞれの自由。

 

しかし、決めるのは、自分。

 

決める、ということは責任がともなうということ。

 

でも、その時には同じく、自分を心から心配してくれる周りの大人の言葉を、

 

アドバイスを、出来るだけ多く、いろんな角度から集めてほしい。

 

そして出来るならば、目の前の簡単に見える道よりも、

 

自分には少し、厳しいのではないか、難しいのではないか、

 

そう思える場所に、挑戦してほしい。

 

 

今は進行形で世の中は大混乱しているけど、

 

慌てないで、深呼吸。

 

しっかり構えて、足を作って、相手をよく見て、自分の剣道。

 

 

贈る言葉。

 

 

 

でも、やっぱり、最後に一回だけ、みんなで団体やりたかったな(笑)。

 

三人がちゃんと揃って、それぞれが生きる本当のポジションで、

 

後輩たちも混ぜて、たった一本を全員で懸ける心が痺れるぐらいの試合を。

 

勝っても、負けてもそれでいいから、全員で、もう一度。