からさんの家 まひろの章

小道幸也 徳間書店 2023年8月



 

 

まひろの家族事情は、ちょっと複雑。実の両親は幼い頃に離婚。父親は再婚した母親とともに事故で死亡。義母の妹に引き取られるも、彼女が結婚した相手の転勤で北海道へ行くことになるが、高校卒業間近だったので、同行せず、新しい父親の母が住む家に引っ越すことになった。
義理の祖母となった三原伽羅は、詩人で小説家で画家で、女優だったうこともある多才な女性。
彼女が住む東京の下町にある古い洋館には、新進の芸術家、建築家志望の学生、バーを営む歌手の女性といった個性的な面々が住んでいる。
新しい環境の中、ユニークな同居人たちとともに暮らすまひろの日常を描く。





複雑な家庭で 育ったまひろ。

義理の祖母となった三原伽羅の家で暮らすことに……


そこは大きな洋館で、さまざまな住民が暮らしていた。


まひろは、からさんや住民たちに囲まれて、そこに居場所を見つけていく。


みんないい人たちで、踏み込み過ぎない距離感でいながら、困った時には協力しあう。その生活ぶりがよい。



まひろの母親のことは、同じような話を読んだことがある。そういう人もいるのかと……。

でも、まひろがいい人たちに育てられてよかったものの、無責任だと感じてしまった。



続くとあるので、次の「加羅の章」も読まなくては~


気に入り度⭐⭐⭐⭐



マイ-グレート-ファーザー

平岡陽明 文藝春秋 2020年2月



 

 

2023年⇒1993年

人生のどん詰まり、死んだ父と過ごした奇跡の3日間
最低の父がくれた、最高のメッセージとは--

後悔と悲しみを抱え生きる全ての人へ
心震わす、感動作





タイムスリップもので目新しさはないけれど、亡くなった父に会えて、3日間を一緒にすごすことが出来てよかったと思う。




昔の賭け事の結果 が 現在ではわかっていて、それを知ろうとする行為には興ざめだったけど、それがひきこもり息子を部屋から出すきっかけになったので、よしとしよう。


同年代の父の時代にタイムスリップしているので、

息子を持つ同じ父親として、語り合うことが出来てよかったんじゃないかな。


気に入り度⭐⭐⭐⭐

地雷グリコ

青崎有吾 角川書店 2023年11月



 

 

ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!

射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。





めちゃくちゃ面白かった。私好み。

グリコ、神経衰弱、坊主めくり、だるまさんがころんだ、じやんけん、ポーカーといった昔からある遊びに、新しいルールを設定してゲームする。
相手の考えを推測し、ルールを読み込むこと。
これが、勝者への道につながる。
 ルールに反してなければ、怪しい行いもOK。
どのような手段をとるのかが腕の見せどころ。

私には到底思いつかないことばかりで、相手の心理を読み取るのも、頭脳を使うのも、感嘆の連続だった。

ゲームに挑む射守矢真兎(いもりや・まと)の人物像がよくわからなかったけど、最後まで読んで、いいやつだと思った。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



だめになった僕

井上荒野 小学館 2024年10月



 

 

著者23年ぶりの書き下ろし長篇恋愛小説

綾「私は初めて会った16年前から涼さんを愛し続けている」。涼「僕にかかわった者は、みんな死んでしまう。女も男も。僕が綾を愛しすぎているせいで」――
音村綾(旧姓・上里)は30代半ば。現在は信州でペンション経営兼漫画家として活躍。夫・子ども・母と四人で暮している。
祥川涼。画家。40代後半。妻を失い、その後同棲していた女性とも別れ、現在は酒浸りの日々を送っている。
冒頭の「現在」では、綾のコミック発売記念サイン会のシーンの衝撃的事件から始まり、「1年前」「4年前」「8年前」「10年前」「12年前」「14年前」、そして二人が出会った「16年前」へと時をさかのぼり「現在」に戻る。謎とサスペンス、そしてストーカー小説の雰囲気も交えた〈究極の恋愛小説〉である。



 綾と涼、お互い惹かれあっていたのに結ばれなかったふたり。

衝撃的な事件が起きる現在から、年代を順次さかのぼっていき、ふたりの出会いのあと、最後に現在の続きが描かれる。

最初は、
結婚して子どももいて、本も出版できて、幸せそうにみえた綾だったので、何を今さら、昔の男の人が忘れられないなんて……
と思ったが、
読み進むうち、だんだん切なくなってきた。

どこで道を間違えたのか?

過去は変えられないのだから、せめてこれからは、綾にとっても、涼にとっても、穏やかでありますようにと願わずにはいられなかった。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

息が詰まるようなこの場所で

外山薫 KADOKAWA 2023年1月



 

 


タワマンには3種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ――。
大手銀行の一般職として働く平田さやかは、念願のタワマンに住みながらも日々ストレスが絶えない。一人息子である充の過酷な受験戦争、同じマンションの最上階に住む医者一族の高杉家、そして総合職としてエリートコースを歩む同僚やPTAの雑務。種々のストレスから逃れたいと思ったとき、向かったのは親友・マミの元だった。かつては港区で一緒に遊び回り、夢を語り合った二人だったが――。
幸せとはなんなのだろう。
逃げ場所などない東京砂漠を生きる人々の焦燥と葛藤!



小学生受験を描いた

君の背中に見た夢は

を先に読んだので、中学校受験がメインの話だと思ったら、タワマンに住む人達の事情を描いていて、中学校受験は、その中のひとコマにすぎなかった。


平田さやか、その夫の平田健太

高杉綾子、その夫の高杉徹

この4人の視点で描かれていて、それぞれの生い立ち、家庭の事情、仕事のこと、考え方などがよくわかる。



東京にあこがれ地方から出てきた人達。

そのみんなが成功したというわけではない。

タワマンに住む高層階に住む上流階級の人にも、低層階に住む人にも、それぞれに悩みがあるということ。見た目の印象とは違う。




平田家と高杉家と伊地知家とでキャンプ行く。

 中学校受験で争っていても、キャンプでの子どもたちの様子は無邪気で、また、子どもを通しての家同志の付き合いっていいなと思った。


卒業式での隆の答辞、よかったよ。


カバーの裏に

特別短篇「高杉隆の初恋」が収録されているらしいのだが、図書館本で表紙がテープで貼ってあって、カバーの裏、読めないよー

本返却の時に司書さんにお願いしてきたが……


気に入り度⭐⭐⭐⭐

サーチライトと誘蛾灯

櫻田智也 東京創元社 2017年11月



 


 

 



昆虫オタクのとぼけた青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。昆虫目当てに各地に現れる飄々(ひようひよう)とした彼はなぜか、昆虫だけでなく不可思議な事件に遭遇してしまう。奇妙な来訪者があった夜の公園で起きた変死事件や、〈ナナフシ〉というバーの常連客を襲った悲劇の謎を、ブラウン神父や亜愛一郎(ああいいちろう)に続く、令和の“とぼけた切れ者"名探偵が鮮やかに解き明かす。第10回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む連作集。





蝉かえる

六色の蛹

を先に読んだが、この作品が一作目。


虫好きのとぼけた探偵誕生!

この作品から始まったのね。


サーチライトと誘蛾灯

ホームレスを一掃した公園の見守りをしていた吉森は、妙な動きをする男に声をかける


この男が魞沢なのだが、このふたりのトンチンカンな会話が笑える、

その後、公園で死体が発見される。



ホバリング-バタフライ

奥羽山脈の北部に位置するアマクナイ岳でチョウの観察をしていた魞沢は、丸江と出会う。丸江は、あることを計画していた。


ナナフシの夜

昆虫を探していた森で、たくさん採れたきのこで、パスタを作ってもらった「 ナナフシ」というバーで保科夫婦に出会う。

翌日その保科が背中を刺されたというニュースがテレビで流れた。


火事と標本

近くの火事の現場にかけつけたとき、旅館の主人は客と会う。旅館に戻り、ロビーに飾ってある標本に関する昔話を客に聞かせる。


人が亡くなるという事実は同じだとしても、なぜそのようなことをしたのか、その時の気持ちに寄りそえることは大切だと思う。




アドベントの繭

住吉台教会の神父が亡くなっているのが発見される。第一人発見者である佐野と魞沢は、捜査に協力する。


「あなたの敵を愛しなさい」という聖書の教え。

神父は、神父としてと、夫としての狭間で苦悩したことだろう。

これはつらい。



昆虫のうんちくもさることながら、少しの違和感から、真相に たどり着く魞沢の推理が見事。


気に入り度⭐⭐⭐⭐



無限の月

須藤古都離 KADOKAWA 2023年7月



 

 


中国のある町で起こった奇妙な出来事。真夜中、パソコンのディスプレイに「誰かたすけて」の文字が、いくつも表示された。しかも、1軒だけではない。次から次に、異変は連鎖する。何者かによるハッキングが原因かと思われたが、犯人はわからない。日本では、脳科学をテクノロジーに昇華させ「時代」を作ったやり手のIT経営者の妻が、階段からころげ落ち、大怪我を負った。相手の不倫が原因で別居をしていた夫と、妻は久しぶりに会う。そして、気づく。この人は、私が愛したあの人じゃない。別人だ……。





作者の

ゴリラ裁判の日 」
が面白かったので、読んでみた。

聡美の夫 -隆が浮気。
聡美は離婚する決意をするが、病室に現れた隆は別人のように思えた。

監禁されていたという隆の話を聞くと……


脳に機械を埋め込んでいる人の脳に外部からアクセスできるようなことが可能な社会の中で、隆の話は、信じられないような出来事だったけど、この先どうなるのかと先を読まずにはいられなかった。

ある人を助けようと、危険もかえりみず行動する場面があった。
もっと計画立てて……とも思ったが、助けたいという一心な気持ちには共感できた。


途中まではとても面白かったのだが、ラストは 話が大きくなりすきてる。





自分の考えが共有されるとか、他人の記憶が入ってくるとか、混乱しそう。

人類がひとつの存在だとしたら、戦争などおこらないのか?

お気に入り度⭐⭐⭐

わたしたちに翼はいらない

寺地はるな 新潮社 2023年8月



 

 


他人を殺す。自分を殺す。どちらにしても、その一歩を踏み出すのは、意外とたやすい。
それでも「生きる」ために必要な、救済と再生をもたらす、最旬の注目度No.1作家・寺地はるなのサスペンス

同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。
4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。
朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。
マンション管理会社勤務の独身――園田。
いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。





中学生の時、いじめられていた園田。
同級生の言葉に2階から飛び降りたことのある朱音。

一方、 中学生の頃、上位にいた大樹と莉子は、結婚していた。
しかし、その 結婚生活は、うまくいっているとはいえない。


いじめていたほうは、ふざけていただけだとしても、いじめられた方のの記憶は、いつまでも消えない。

再会したことで、憎しみが増すこともある。

復讐を誓う園田。

偶然出会った朱音に救いを求める。


莉子と朱音は、娘が同じ保育園で娘のことで、知り合うことになる。


そんな同級生たちの話が絡み合っていく。




暗い話であったけれど、過去に囚われていた人達が、一歩を踏み出すところはよい。


友だちじゃなくても、相手のために行動したり、大切に思うことはできる〉


敵対していた莉子と朱音が、友だちじゃなくても、仲よさそうに話していたのがよかった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐






鎌倉駅徒歩8分、また明日

越智月子 幻冬舎 2024年11月



 

 

いつだって、ここからが始まり。

心もお腹も満たされる、
淹れたてのコーヒーと賄いパスタあります。『鎌倉駅徒歩8分、空室あり』、待望の続編。


鎌倉の古い洋館でシェアハウスを始めた香良。
個性豊かな住人たちと楽しく穏やかに暮らしていたが、そんな日々も永遠には続かない。
シェアハウス「おうちカフェ」の住人たち

尾内香良 男出ひとつで育ててくれた父が亡くなり、カフェを引き継ぐことに。人付き合いが苦手なシャアハウスのオーナー。


林三樹子 香良の大学時代からの親友。離婚して家を飛び出し、今では共同経営者のよう。

藤村里子 ちょっと神経質。愛犬「ツン」といつも一緒。三樹子と大喧嘩をするも今では仲良し。

道永あゆみ コーヒー豆の焙煎を勉強している。絶賛、片思い中。

加藤千恵子 大事に育てた息子とその嫁に嫌われ、自分の家から追い出されてしまう。

倉林美佐緒 隣人・グラディスさんの愛娘。フランスから帰国し、「おうちカフェ」の新しい住人に。






鎌倉駅徒歩8分、空き室あり

続編


隣の住宅、倉林さんの娘美佐緒が、パティシエになるどころかお金を使い果たしてフランスから帰ってきた。父親に「尼寺行け」と言われ……



シェアハウスの住民たちは以前よりだいぶ打ち解けた感じ。

美佐緒が加わり、どうなるのか心配だったけど、すぐ馴染んでいた。

香良のコーヒー、美佐緒のパスタがおいしそう!



新しい恋の予感あり……


智恵子さん、

年を重ねてからでも、心のおける友だちができるっていいなって思った。


「すみません」を「ありがとう」 に置き換えなさいというゆき先生の言葉がいい。


人が亡くなることは悲しいことだけど、その人の魂は近くにいて、メッセージを送っていると思うとそれほど悲しいことではないかもと思えてきた。


ゆき先生の息子-碧。あゆみに対する接し方が大人だと思った。


托卵するカッコウ、

カッコウにはカッコウの理由があるという話、じーんときた。


生活の中での鳥のさえずりっていいなー


いろいろ悩みをかかえている人達だけど、食べて話してー

新しい出会いや別れを繰り返しながらの毎日の生活がいとおしく思えた。


韓国語で「ユンスル」という言葉を知った。

「陽光や月光を反射してきらめくさざ波」

いい言葉だな


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



この会社、後継者不在につき

桂望実 KADOKAWA 2023年11月



 

 

中小企業診断士・北川が悩める経営者を導く! ”会社の終活”エンタメ小説

自分が引退しても、我が子のように大切な会社には末永く続いてほしい――経営者の願いも虚しく、中小企業の後継者不足が問題となって久しい。

二人の息子のどちらかに会社を継がせたい、洋菓子店の二代目社長。
社内に目ぼしい人材がいないとボヤく、ワンマンバッグメーカー社長。
社長の急な逝去により外国人オーナーのもとで働くこととなった、刃物メーカー社員。

会社の行く末に三者三様の悩みを抱える人々に、型破りな中小企業診断士・北川は、前代未聞の経営改革案を提示する。





中小企業診断士・北川が相談を受けた、後継者問題に関係した短編集。

役者をしていたことがあり胡散臭い北川の、

ふつうとはちょっと違ったアドバイスがなかなかおもしろかった。



洋菓子店を、息子ふたりのどちらに継がせるのか?
真面目なんだが商売のセンスがない長男か、 柔軟さはあるがいいかげんなところのある次男か、悩んでいた。


バックメーカーの女社長は、社内の誰も会社を任せられる人材がいないと思っていた。
そんな時、コロナ禍となり、店を休まざるをえなくなった。


刃物メーカーの社長が急遽亡くなり、M&A により、外国人オーナーが社長となる。
社員は今まで通り働くことができるのか、不安になる。


後継者問題は、むつかしい問題だと思う。
北川の提案により、息子や従業員たちの今まで気づかなかった面を知ることができた。
見方を変えることは、大切だと思う。


外国人オーナーとなった会社では、今まで流されて働いていた従業員が、自ら動いて会社を盛り上げようとするところがよかった。


気に入り度⭐⭐⭐⭐