中山七里 NHK出版 2020年12月

 

 

2018年5月某日、気仙沼市南町の海岸で、女性の変死体が発見された。女性の遺留品の身分証から、遺体は宮城県警捜査一課警部・笘篠誠一郎の妻だったことがわかる。笘篠の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流され、行方不明のままだった。遺体の様子から、妻と思われる女性はその前夜まで生きていたという。なぜ妻は自分のもとへ戻ってこなかったのか――笘篠はさまざまな疑問を胸に身元確認のため現場へ急行するが、そこで目にしたのはまったくの別人の遺体だった。
妻の身元が騙られ、身元が誰かの手によって流出していた……やり場のない怒りを抱えながら捜査を続ける笘篠。その経緯をたどり続けるもなかなか進展がない。そのような中、宮城県警に新たな他殺体発見の一報が入る。果たしてこのふたつの事件の関連性はあるのか? そして、笘篠の妻の身元はなぜ騙られたのか――。


震災から10年が経つ。もう10年なのか?まだ10年なのか?

物語は、震災から7年後。
今まだ、震災を引きずっている人達がいる。

宮城県警の笘篠もその内のひとり。妻が行方不明のままなのだ。
その妻の遺体が見つかったという所から、物語は始まる。


個人情報の漏洩。
その何がいけないのか?
その答えが、わかりやすく用意されているように思う。



震災の時の様子の描写もあったが、読むのが、つらい。

受刑者が逃げると困るからという理由で、刑務所は、頑丈に作られているという。
地震があった時、外の世界に比べ、刑務所内の方が安全というのは、皮肉な気がした。

震災で、失ったのは、家や家族だけでなく、倫理感までも・・・・・・・・というのがやるせない。
行方不明者。いつかは、心に区切りをつけるべきなのだろうが、当事者の気持ちを考えると切ない気持ちになった。

お気に入り度★★★★★