ブティック

池井戸潤 ダイヤモンド社 2026年5月



 

 

池井戸潤、2年ぶりの最新長編(全578ページ)。 「君、銀行辞めて、どうするの?」 入行3年目、エリート街道を歩んでいた雨宮秋都は、 ある案件をきっかけに、理不尽な戦力外通告を受けてしまう。 退職を決意した秋都が見つけた、新たな希望とはーー?





池井戸潤 さんの金融ものは面白い。


今回はM&Aの話。

業者には、

売る側と買う側の間を調整する業者と、どちらか一方のアドバイザーの業者がある。


ランパス東京は、後者なので、会社に親身になってアドバイスできる。



自分たちの利益しか考えてない人たちと、クライアントの会社の利益を重視する人たちとの戦い(?)


クライアントの将来を考えている方が勝つだろうという結末 は予想がつくが、 そこに至るまでの過程を読むのが楽しい。


実際には、こんな簡単なことではないだろうが、だからこそ、スカッとする。


世の中の会社の力になり、困っている会社を救いたいという、秋都の一途な想いが熱かった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

白色光の影を浚う

遠坂八重 祥伝社 2026年5月



 

 

「引きこもりの友人が、別人に入れ替わっている」
鎌倉の名門・冬汪高校に通う滝蓮司と卯月麗一は、学内便利屋「たこ糸研究会」の活動に勤しんでいる。ある日二人は、一年生の曽我朝美から奇妙な相談を受ける。朝美は長年、部屋に閉じこもる幼馴染・新藤文乃とドア越しに対話を試みてきたが、先月、部屋の中から聞こえた生活音や差し出されたメモの筆跡が、明らかに文乃のものではないというのだ。調査に乗り出す二人だが、文乃の引きこもりの原因を聞くなり、麗一の態度が一変する。文乃は、六年前の交通事故で妹を亡くしていた。そしてその事故には、麗一の父親が関わっていた――
つらい記憶に向き合う痛みとその先にある光を描く物語。



高校生探偵の第三弾
とは知らずに読んだ。
滝蓮司と卯月麗一のおいたちや 小学校時代のふたりが仲よくなった出会いの場面の描写があり、胸が熱くなった。


プロローグで事故の現場の様子が語られる。
その後、現在と過去が交互に語られ、どういう状況なのかわかってくる。
この事故に関係した人たちのことを思うとやるせない気持ちになる。

その中で、自分の間違った行いをなかったことにしようとしている人物がいて、許せないと思った。

罪を犯したら、なかったことにはできない。隠し続けては心の平穏は訪れないだろう。

おおー。そういうことだったのね。

時は進むから人は止まれない。止まりたくても勝手に浚われていく。ならば流れに身を任せるよりも、自分の意思で歩いていたい〉
という麗一の思いに強い意志を感じた。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

ヒカリノオト

川邉徹 ポプラ社 2024年5月


 

 


大ファンだったアーティストの担当になったものの、努力が結果に結び付かず苦悩する若手レコード会社社員、上司の期待に応えようとするあまり、知らないうちに心身を壊してしまった40代手前の女性、久しぶりの恋の予感にときめくカメラマン、合唱コンクールで伴奏と曲のアレンジを任された女子高生、海辺の町のリサイクルショップで壊れた物を修理し続ける男性――。時に慰め、時に励まし、彼らの人生の岐路に寄り添っていた一つの音楽が、場所や時間を超えて広がっていく奇跡を、ミュージシャンとしての経験を持つ著者がみずみずしく描いた連作短編小説。




染谷達也の曲に憧れマネジャーになった寺井。

しかし、染谷達也は、「夢のうた」という曲を最後に音楽活動をやめる。

寺井は、これから先どうなりたいか考える。


がんばりすぎて心も体も疲弊してしまった会社員の美智。友達の真理子から心療内科をすすめられ ……


地元のカメラマンをしている 水口は、スタイリストのアシスタントとしてやって来た坂本かなみと知り合う。

水口は町をPRする動画を作ることに……



高校の合唱コンクール。自由曲に、「夢のうた」をアレンジして望む。


地元に帰りリサイクルショップで 働く海。自分の人生がこれでいいのか考える。


 どの章にも染谷達也の曲が関係している。

音楽はいい。

時に寄り添い、癒し、励まし、応援してくれる。

音楽を聴くと 聴いていた頃のことを思い出す。

音楽はいい。


 染谷達也の母もテラもいい人だな。彼を応援している気持ちが暖かかった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


エピクロスの処方箋

夏川草介 水鈴社 2025年10月



 

 

大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。
ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。
患者は82歳の老人。
それは、かつて哲郎が激怒させた大学病院の絶対権力者・飛良泉寅彦教授の父親だったーー。




スピノザの診察室 

の続編



雄町哲郎(マチ先生)は、風変わりな人物で甘いものが大好き。

手術の腕はいいが、甥の龍之介と暮らすため、大学病院から離れ、今は原田病院で働き、地域医療に貢献している。



死をどう受け入れるのか。

幸福とは何かを

考え続けているマチ先生。

彼の目指す医療とは?



最近の医師は残業や休日出勤を嫌がる。医師が増えているのに内科と外科の医師は不足している。

それも現実なのだ。


病気と共に、人と対峙しているマチ先生の姿がよかった。



甥の龍之介くん、中学一年生になり、ずいぶんしっかりしてきた。
時には、哲郎の保護者のよう?

花垣との信頼関係、家族ぐるみの付き合いがいい。

研究生の南とのこれからも気になるところ。


心に残ったマチ先生の言葉があったので、書き留めておく。

生きていくことの哀しみを知っている人間は、理由などなくても、誰かの力になりたいと思うものですよ〉p54

〈世の中には、治せない病気が山のようにある。けれども癒やせない哀しみはない〉p85

〈君や、君の家族の努力が足りなかったから、お父さんの病気の発見が遅れたわけじゃない。誰かの努力によって変えられるほど、世界中は脆弱ではないんだ。だけどその理不尽で強固な世界の中でも、我々にできることはたくさんある。降り続く雨を止めることはできないが、傘をさすことはできる……}p222



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

わすれていいから

大森裕子 KADOKAWA 2024年2月



 

 

あるひ、いえにやってきた おれ。
そこには、うまれたばかりの おまえ がいた。

ここは、おれたちのなわばり。

嬉しいときも悲しいときも、子どものそばには猫がいっしょ。

二人とも隅っこが好きで、いつもくっついていたけど、
気がついたら隅っこに おまえ がいないことが多くなって――。




予約したら、絵本でした。


ねこ目線で、生まれたばかりのおまえとそこに来たねこのおれの成長が描かれている。


いっしょにいる姿が愛くるしい。


おまえが成長して、いっしょにいる時間が少なくなっていく。

そして、おまえが巣立って行くのを見守っているおれの姿は、親のよう。


「わすれていいから」って、

わすれるはずないよ、きっと。


窓から外を見ている構図がいい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


探偵小石は恋しない

森バジル 小学館 2025年9月



 

 

小石探偵事務所の代表でミステリオタクの小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ている。だが実際は9割9分が不倫や浮気の調査依頼で、推理案件の依頼は一向にこない。小石がそれでも調査をこなすのは、実はある理由から色恋調査が「病的に得意」だから。相変わらず色恋案件ばかり、かと思いきや、相談員の蓮杖と小石が意外な真相を目の当たりにする裏で、思いもよらない事件が進行していて──。  




話題になってるので読んでみた。


 小石探偵事務所は代表小石と調査員の蓮杖、事務員の雛未だけの小さな事務所。

 そこに持ち込まれる案件は、浮気調査ばかり?張り込んで調査するが、その浮気調査には裏があり……



最初は、ちょっと苦戦したけれど、後半面白くなってきた。


愛にも色々あるよね。


固定観念でみていて、見事にだまされた。


伏線がいっぱいちりばめられているのが回収されている。


ネタバレになるので多くを語れないのが残念!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


君が眠りにつくまえに

水沢秋生 新潮社 2025年4月



 

 

救いのない日々。でも、何気ない行動が、誰かの人生を救うことだって――ある。
事故で妻を亡くした会社員、友人も彼女も才能もない大学生、母の看病で全てを失った女性――コンビニですれ違っただけの3人の男女。人気最下位の競走馬「マジメガイチバン」がレースで一発逆転した夜、彼らの人生をひっくり返す大事件が起こる。懸命に生きているのに報われない人たちの、運命の72時間を描く感動作。




 交通事故で妻を亡くし眠れない日々を送っていた川西淳郎は死ぬことが生きる目的となった。

大学生の柿谷達彦は、ジムでトレーニング、プロテイン、大学の授業、昼食。授業、帰宅。夕食、資格の勉強。風呂、睡眠。と特別な予定など何もなく毎日を送っていた。


神田里子は、母親の医療費のため、市役所をやめ、デリヘルで働いていたが、母が亡くなった今も惰性で働いている。


そんな苦難を抱えている三人は、ニアミスを繰り返している。

競馬場で合った人、タクシー運転手、コンビニの店員なども絡んでくる。


どこでどうかかわってくるのかと興味津々で読み進んだ。



最後にひとつの大きな事件に三人が遭遇するのだろうと、勝手に想像したが、そうではなかった。


けれど、それぞれの事件に巻き込まれる。
そして、今までの生活に変化があらわれる。

人々は、知らないうちに影響しあっているのかもしれない。

川西の大学時代の友達ふたりや達彦の双子の弟の克彦がいい感じ!

お気に入り度⭐⭐⭐⭐


暴走正義 

下村敦史 幻冬舎 2025年8 月



 

 


正義を見破れ! 全編どんでん返しミステリ集

一億総”正義の暴走族”時代を生きる

今日もスマホを握りしめ怒っている
「正義系」の私たちのための
常識大逆転ミステリ。

『同姓同名』『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』の著者最新作も話題作!

今日もどこかで誰かが絶賛炎上中。



「暴露系」ーー俺があいつの悪事を晒してやる。


真実があるなんて想像もせず、片側の主張を鵜呑みにして フォロアー数をふやしてきた暴露系インフルエンサー。

「帝国鮫」との攻防、どちらが事実?


事実がわからないのにいちいちコメントを寄せるフォロアーも困ったものだ。





「報道加害」ーー夫を殺した毒婦のネタを掴んだ。


喫茶店で偶然、妻に殺されるかもしれないという話が聞こえてきた。

「エスカレート」ーー私が殺されたらどうするんですか!


ストーカー被害、警察はなかなか動いてくれない

「誤認逮捕」ーー現場にはいつもヤツがいる。


誤認逮捕されるような行動をとる男。この男を逮捕できるのか?


「再犯」ーー犯人は「厚生」できるのか。


更生プログラム「再起の光」

再犯を防げるのか?

実は、逆の目的?





「死刑反対」ーー法の下、人を殺すなんて何事だ


殺した理由

「死刑になりたかった」

「死刑にはならないから」

真逆の動機?

それに乗っかって死刑制度の有無を議論するのもどうかと思う。


二転三転する話。

でっち上げはダメだと思うし、捕まえるために、新しい被害者をだすこともいけないと思う。


正義だと思っての行動?

それは正義の暴走にすぎない。

物事を多面的にとらえないといけない。



逆転正義

登場した

高校時代いじめ加害者を曝しものにした先輩。

「 週刊正義」の記者。

刑務所から出てきたばかりの受刑者から金をまきあげていた男の子のひとりetc.

がいた。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐





のない理髪店

一色さゆり 講談社 2024年10月



 

「私の祖父は“日本で最初の、ろう理容師”です」
作家デビュー後、前に進めなかった五森つばめが祖父の半生を描くことを決意する。
──時を超えて思いがつながっていく、実話に基づく物語

大正時代に生まれ、幼少時にろう者になった五森正一は、日本で最初に創設された聾学校理髪科に希望を見出し、修学に励んだ。当時としては前例のない、障害者としての自立を目指して。やがて17歳で聾学校を卒業し、いくつもの困難を乗り越えて、徳島市近郊でついに自分の理髪店を開業するに至る。日中戦争がはじまった翌年のことだった。──そして現代。3年前に作家デビューした孫の五森つばめは、祖父・正一の半生を描く決意をする。ろうの祖父母と、コーダ(ろうの親を持つ子ども)の父と伯母、そしてコーダの娘である自分。3代にわたる想いをつなぐための取材がはじまった……。





五森つばめは、日本最初のろう理容師である祖父の五森正一の小説を書くために、取材を始める。
ろう者として差別を受けていた過去を知ることになる。

つばめは何を書きたいのか自身に問いかける。


正一は小さい時、病気で聴覚を失う。
教育者であった彼の父は、健常者と同じように育てたいと普通の小学校に入れる。しかし、まわりに理解されることなく、正一は、つらい日々を過ごすことになる。

日本で最初に創設された聾学校理髪科に正一は通う。

そこで始めて、同じ仲間とわかりあえた時にはどれほどうれしかったことだろう。


正一の信念、強さに驚かされる。



ろう者が自立できる仕事だと聾学校理髪科を創設した人たちも並大抵の 苦労ではなかっただろう。


正一の妻の喜光子もつらい思いをしてきたことだろう。


つばめは何を書きたいのか?

ろうあ者が差別されていた過去の世の中ではなく、正一の生きざま、信念、そして、家族のつながりを書きたかったのではないか。



ろうあ者も健常者もかわりなく、助けあっていける世の中を願う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

七人の記者

一本木透 朝日新聞出版 2025年9月



 

 

大学の新聞部に所属する美ノ輪七海は、学内での男性教授のセクハラ問題を追及するうち、同大出身の政治家らが絡む私学助成金の不正受給疑惑を突き止める。
大学でたまたま出会ったタウン誌の老記者や新聞部のOBに相談を持ちかける中で、七海の「真実の追及」に対する情熱に心を動かされた者たちが集い、タウン誌の小さな事務所兼自宅を拠点に取材を始める。
しかし、新聞、テレビ、週刊誌、Webニュースは、政界や広告主から圧力をかけられており、大手メディアの上層部は現政権に完全にコントロールされていた。
さらに、どこかから情報が漏れ、検察に取材資料も持ち去られる。
追い詰められた彼らは、真相を書いたタウン誌を都内中心部でばら撒く「ゲリラ戦法」を思いつく






美ノ輪七海は大学の新聞を発行している。大学内でセクハラがあることを知り、追求していくが私学助成金の不正受給を突き止める。


タウン誌の編集長、はみ出し者の新聞記者、放送記者、 写真記者らとともに真実にせまっていく。

しかし、事実を記事にしようとすると、検察や国家の権力につぶされてしまう。



 誰が味方で誰が敵なのか?

身の危険も迫るなか、七海たちは、悪と戦う。


スリリングな話だった。


読み物としておもしろかったけど、国家権力が悪すぎ。

こんなことでは、海外から日本の信頼が失われるのではと思った。



七人の記者?七人目は?

なるほど!


お気に入り度⭐⭐⭐