いただきます

人生が変わる「守衛室の師匠」の教え

喜多川泰 2025年8月

株式会社ディスカヴァー-トゥエンティワン




 

 

高校を卒業後、楽に稼ぎ、好きなことをして遊んでいたいとバイトを転々とする日々を送っていた19歳の翔馬。
楽に稼げると聞いて飛び込んだ警備員バイトの仕事先は、まさかの大学の守衛室。
自分と年齢の変わらない学生たちに見られながら、老人と一緒に働くなんて……。
「遊ぶ金がたまったらとっとと辞めてやる」と後悔し始める翔馬。

しかし、一緒に働く松原、薮島、天野の過去を知り、翔馬の世界の見方は変わっていく。
仕事とは何か、人生とはなにか、生命のつながり……
3人が自分の生きざまを通して教えてくれたのは、「未来の誰かの笑顔のために行動する」ということだった。
なぜなら、自分たちは皆、誰かの何かを「いただいて」生きているのだから。






遊ぶ金欲しさにバイトを転々とし、楽な働き口を求めていた翔馬。


警備員のバイトで 大学の守衛室で働き始めた翔馬だが、そこで働く松原、薮島、天野の3人の老人たちといっしょに働くうち、考え方が変わっていく。




啓発本かな。

とてもいいお話で、わかりやすく、働くことの意味、人生とは何かを教えてくれる。

「いただきます」という言葉も深い意味があると感じた。


人生80年とすれば、19歳 はまだ始まってない。人生はこれから。

「未来の誰かの幸せのために働く」そんな気持ちで人生を送れたら……


翔馬が前向きに考えるようになり、行動にうつせてよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐


嵐をこえて会いに行く

彩瀬まる 実業之日本社 2025年2月



 

 

闇を抜け、私たちは羽ばたき続ける――
大切な「誰か」の存在に気づかせてくれる、5つの物語

古い友人。遠くの恋人。業界を去った恩人。すれ違う家族。
途切れかけたつながりを、どうしたら取り戻せるのか。
紅葉の季節に、東北・北海道新幹線で青森、盛岡、仙台へ向かう人々を描く、
心に深く響く連絡短編集。
『桜の下で待っている』で、東北新幹線でふるさとへ向かう人々を描き大きな支持を得た著者。
あれから10年、著者がひらく新境地!



コロナ禍で外出がむつかしい中、会いに行く 話。


ひとひらの羽

元同僚で年に一度会う間柄。
男と女でもの恋愛ではない友人関係がいいと思った。


遠まわり

ウミネコの繁殖地、蕪嶋神社。
旅行で行ったこの神社のことを思い出しながら読んだ。


あたたかな地層

小説が書けなくなった作家が元担当編集者が開いたブックカフェを訪れる。

花を連ねて

特別養護老人ホームに入居している祖母の見舞いに行く。


親戚の関係はむつかしい。
言い争いやケンカもあるだろう。
母は言う
〈いいところだけ覚えておいてよ〉
〈心の底ではいいものだけを渡したいって思ってる。〉

風になる

女性議員、政治活動に忙しく、家庭のことは夫に 任せっきりに……



北海道、東北地方を旅行したような気分。
どの話も明るいきざしがみえてよかった。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

翠雨の人

伊予原新 新潮社 2025年7月



 

 

私は闘う。科学だけが導いてくれる真実を手に――。
「雨とは何だろう。なぜ降るのだろう」。少女時代に雨の原理に素朴な疑問を抱き、女性が理系の教育を受ける機会に恵まれない時代に、科学の道を志した猿橋勝子。戦後、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定にたずさわり、アメリカが主張するよりも放射能汚染が深刻であることを証明した。勝子の研究成果は、後年、核実験の抑止につながる影響を国際社会に与えた。研究を愛した実在の女性科学者の先駆けの、生涯にわたる科学への情熱をよみがえらせる長篇小説。『藍を継ぐ海』で科学の壮大さとあたたかさを伝えた著者による直木賞受賞第一作。





事実に基づいて 書かれた小説。

猿橋勝子のことを知ってほしいという作者の思いを受け取った。


高等女学校を卒業後生命保険会社で働くが、もっと学びましたたいと、

東京女子医学専門的学校を受験する。

しかし、面接の時、憧れていた吉岡彌生の言葉に失望し、合格するも、女子医専には行かず帝国女子理学専門学校に入学する。



女性は結婚して子どもを産むのが普通だった時代、勝子のように勉学に意欲を持って進学する人はまれだった。

また、戦争が勝子の生活に大きな影響を与える。


それでも、勝子は困難や逆境にも負けず強い意志を持って科学の道を進んでいく。


中央気象台の三宅泰雄との出会いがあってこその勝子だと思った。


また、両親 も兄も勝子を信じ応援している姿もよかった。


勝子は、フォルサムとの測定精度対決のために渡米する。

掘っ立て小屋のような実験室。環境は最悪にもかかわらず、ひとり、コツコツと真摯に測定する姿に感銘を受けた。

その結果にドキドキした。




科学を戦争に使ってはいけないという勝子の強い思いを感じた。





お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

放課後に死者は戻る

秋吉理香子 双葉社

2014年11月



 

 


病院で目が覚めると、冴えないオタクだった僕の見た目は、イケメンの姿に変わっていた。
そうだ、教室の机に入れられた手紙で呼び出され、僕は誰かに崖から突き落とされたのだった……
助けに入ったイケメンと一緒に。
退院した僕は、元いたクラスに転校生として潜入した。
一体、誰が僕を殺したのか?
僕は、僕を殺したクラスメイト探しを始める――。切なさと驚きに満ちたラストが待ち受ける、傑作長編ミステリー。



手紙で呼びだされ、 崖から突き落とされる。
その時、声をかけ、助けに来てくれた人も転落する。
病院で、目をさますと知らない体になっていた。

退院後、僕のいた学校に転校し、犯人探しを始める。

いったい誰が僕を突き落としたのか?

地味だった僕だが、イケメンになったことで、生徒の見る目が違う。

以前までは、避けていた人たちとも話をしてみれば、いい人だってことがわかってくる。
自分も見た目で判断していたのだと 気づく。
高校生の青春ものとしてもおもしろかった。

途中、母親も先生も友達も信じられない 場面があり、困惑してたけど……

犯人は…

そういうことだったのね。

お気に入り度⭐⭐⭐

9月1日の朝へ

椰月美智子 双葉社 2025年8月



 

 

高永家の子供たちは四兄妹。中学の新米教師で正義感の強い長男、いわゆる美容男子である高三の次男、スカートを穿いて進学校に通う高一の三男、いちばん如才なく兄たちのことを観察している中二の末娘たちだ。
父親は再婚しているけれど、離婚した「ママ」も気ままに子供たちに会いに来る。そんなフクザツな家庭で過ごす四兄妹が夏休みを経て、新学期の「9月1日」を迎えるまでを描いた青春家族小説。9月1日、それは学校に通う子どもたちにとって、とても大きな意味をもつ日――。




父親の離婚により、

生みの親「ママ」

継母「玲子ちゃん」

祖母「おかーさん 」

と3人の母を持つ高永家の子どもたち4人 善羽、智親、武蔵、民。


それぞれの夏休みを過ごし、9月1日を迎えることになる。



 リストカットをくり返す同級生。


いじめ、SNSの炎上。


中学生の自殺。

自殺するちゃんとした理由(?)があれば納得できるのか?

両親もだけど、弟の気持ちを考えるとつらい。


女装や化粧する男子。

それは個性だとわかっていても、まだまだ、世間では受け入れられず、好奇の目で見てしまう人も多いだろう。


さまざまな困難に直面するけれど、仲のよい友達や理解してくれる家族がいることが救いだと思った。



9月1日は18歳以下の自殺者が一番多い日。


生きて9月1日を迎えること、それが大切なこと。




人はいつでも変われる。)

〈人生なんてあっという間なのかもしれない。

楽しまなきゃ損だ。

おもしろがらなきゃ損だ。

ワクワクしなきゃ損だ。〉


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



ネバーランドの向こう側

佐原ひかり PHP研究所 2025年7月



 

 

文化センターで働く30歳の実日子。実家で何不自由ない生活を送っていたが、両親が交通事故で亡くなり、母方の叔母と同居することに。箱入り娘で、家事ができず、世間知らずな実日子と合理主義の叔母は全く波長が合わず、実日子は人生初めての一人暮らしを決意するが……。
新居であるメゾン・ド・ミドリで出会った大学生サイトーくんや声優の新田さん、お見合い相手の椎名さんとの交流の中で、実日子は少しずつ強くなっていく。

大人になり切れない大人の葛藤と進歩を描く、ハートフルストーリー。




30歳の実日子は、両親の過保護のもと、 両親に依存する生活を送っていたが、両親が交通事故で他界。一人になった実日子の家に叔母がやってくる。何もできない実日子に、叔母は指示する。実日子は両親の家を乗っ取られた気持ちになる。

実日子の成長が描かれている。


お見舞い相手の椎名さん。自分磨きに忙しく、結婚する気持ちはないようだが、実日子の相談にのってくれる。
いい関係だと思った。


ひとり暮らしをするところから始まり、新居での隣人たちとの関係や、小学生の郁ちゃんと遊んだり、おばあさんたちとの交流を通して、ずいぶん行動力が ついたと思う。

人とのかかわりが、実日子を成長させたのだと思った。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

真珠配列

岩井圭也 早川書房 2025年10月



 

 

2029年、北京。常軌を逸した速さで進行する癌で有力者の息子が死亡した。これは仕組まれた連続殺人なのか? 刑事偵査総隊の刑事アーロンは、ウイグル人の遺伝子エンジニア、マリクとともに捜査を行なう。やがてアーロンとマリクは、生命科学上の闇に直面し……




2029年の北京を舞台にしたSF。


常軌を逸した速さで進行する癌で有力者の息子が死亡したことから、刑事アーロンが、この捜査にあたる。


ウイグル人の遺伝子エンジニア、マリクを紹介されるが、彼はアーロンに横柄な態度をとる。マルクは信頼のおける人物なのか?


アーロンとマルクの関係性が変化していくのが読みどころ。



アーロンとマルクが、国家が行う機密をあばいていく話だと思って読んでいったのだが……


見事に裏切られた。


アーロンのラストの行為は、信じられない。

アーロン自身反対していたし、マルクの苦悩も知ってたのに~



お気に入り度⭐⭐⭐


龍の守る町

砥上裕將 講談社 2025年11月



 

 

魚鷹が見守る町で、秋月龍朗は最高の消防士だった。五年前のあの日、濁流が町と彼の心に、癒えない傷跡を刻むまでは。現場を追われ、辿り着いた指令室。そこは、同じ痛みを抱える仲間たちと、声だけで命を繋ぐ場所。炎の中から命を救ってきたその手で、男は今、受話器を握る。

町と、そして自分自身の再生をかけた静かな闘いが、いま始まる。





消防士として自分の危険も顧みず、救助にあたる消防士たち。
助けられた命もあれば助けられなかった命もある。

最高の消防士と言われた秋月龍朗は、助けられなかった命のことで、 水がトラウマとなっていた。

現場から離れ、指令室で働くことに ~


PCの操作に慣れず、電話に出るのも戸惑う秋月だったが、指令室の仲間と打ち解け、指令室の重要性を認識していく。


指令室では、

気が動転している通報者から、必要事項を聞きだし、なにが重要か、瞬時に判断し、救助隊員に伝える。1秒を争う、重要な部署だ。



緊張する内容であるが、

樋口さんの作るおいしそうなお菓子や犬のマメなど、ほっこりする場面もあった。


汗をごまかすために腕立てや懸垂する秋月にクスッと笑える場面も~。


みんながそれぞれ自分を磨いて、自分に与えられた仕事を一生懸命やるから最高の仕事ができるんだ。それでやっと誰かを助けられる。誰かを助けるために、隣にいる誰かを助ける。そうやつて最高の仕事を作っていくんだ一番なんてない。最高があるだけだよ〉


現場で働く消防士も指令室で働く人たちも、人を助けようとする熱い想いに感動した。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

白魔の檻

山口未桜 東京創元社 2025年8月





 


研修医の春田は実習のため北海道へ行くことになり、過疎地医療協力で派遣される城崎と、温泉湖の近くにある山奥の病院へと向かう。ところが二人が辿り着いた直後、病院一帯は濃霧に覆われて誰も出入りができない状況になってしまう。そんな中、院内で病院スタッフが変死体となって発見される。さらに翌朝に発生した大地震の影響で、病院の周囲には硫化水素ガスが流れ込んでしまう。そして、霧とガスにより孤立した病院で不可能犯罪が発生して──。過疎地医療の現実と、災害下で患者を守り共に生き抜こうとする医療従事者たちの極限を描いた本格ミステリ。



禁忌の子

活躍した、感情を持たない医師城崎と研修医の春田が事件を解決に導く。


濃い霧、地震。

閉ざされた病院。クローズドサークル。

硫化水素が徐々に下から押し寄せてくる恐怖。見えないものだけに余計に怖い。


そんな中で 起きた殺人事件。

4W1H

いつ、だれが、どこで、なぜ、どのようにして殺人は行われたのか?

過疎地医療協力で派遣された城崎が真相にせまっていく。


恐ろしい行いもあったけど、それにも意味があったのね。

置き配がこんな形で使われるとは!


謎解きとは別に、

過酷な労働環境で働く過疎地での 医療従事者たちの現状がそこにあった。


命を削って人を助けても貰えるのは感謝状一枚で、何か起こったら 叩かれるのは俺たちだ〉


そして、
どんな状況下にあっても、最善を尽くして、患者を守ろうとする医療従事者の姿には頭がさがる思いだ。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐


逆転正義

下村敦史 幻冬舎 2023年8月



 

 

もくじ:
「見て見ぬふり」教室のいじめ。僕は見て見ぬふりなんかできない!
「保護」コンビニの前で佇む制服姿の女性。彼女を一人にはできない!
完黙」麻薬の売人。麻薬取締官に口を割るわけにはいかない!

「ストーカー」人を殺めたトイレに男を入れてはいけない!
「罪の相続」罪のない俺の息子が殺されたなんて許せない!
「死は朝、はばたく」刑務所から出てきたら普通の生活を送っていいのか!




どれも、思っているのとは違う結末が 待っていて、正義が逆転する短編集だ。

見て見ぬふり」

いじめがあっても、見て見ぬふりをするの人が多い中、僕は行動に出た。

先生に訴えるが先生は何もしようとしない。


ネットで裁くことは、正義なのか?




保護」

行くあてのない彼女を家に連れてくる。

一緒に生活を始めるが……


同意があっても、17歳の未成年との行為は罪になる?


完黙」

麻薬の売人が裁判でも、完全黙秘した理由は?


「ストーカー」

ストーカーに悩まされていた女性。トイレで誰を殺めたのか。


「罪の相続」

先祖が犯した罪を相続せねばならないのか。


「死は朝、はばたく」

刑務所から出てきた人目当てに金を強請る少年たち。


この話は死刑問題にも迫っている。




どれも、ミスリードしてしまう。だまされる ことが楽しい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐