今回からは不妊治療でよく使われるお薬についてのお話をしたいと思います。
第1回目は「クロミッド」についてお話しします。

クロミッドは一般名(有効成分の名前)をクロミフェンクエン酸塩という、いわゆる排卵誘発剤です。


 

主に排卵が起こりにくい方に処方され、タイミング療法や人工授精のための排卵誘発に使われます。また、体外受精のための排卵誘発にも使用します。まずはこの薬が排卵誘発剤として働く仕組みをご説明しましょう。

一言でいうとクロミッドが持つエストロゲン拮抗作用を利用します。
どういうことかと言いますと、
卵胞を育て、排卵させるために不可欠な卵胞刺激ホルモン(FSH)黄体形成ホルモン(LH)は脳の下垂体というところから分泌されますが、その分泌をコントロールしているのが卵胞ホルモンであるエストロゲンです。
エストロゲンがまだ少ない(卵胞が育っていない)間はFSHがたくさん分泌され卵胞を育てようとします。エストロゲンが高くなるとFSHの分泌は少なくなります。(これをエストロゲンのネガティブフィードバックといいます)

クロミッドはそのエストロゲン拮抗作用により、エストロゲンのサインを脳が受け取るのを妨げますので、脳は卵胞がまだまだ育っていないと思いその結果FSHの分泌が増えるのです。

このように実際にはクロミッドが直接卵胞を育てる作用を持っているのではなく、自分自身のFSHをしっかり出るようにして卵胞を発育させ、排卵を促すのです。

一般的な使い方は、月経開始3日目頃から1日1回1錠(50mg)を5日間程度服用します。それで効果が不十分であれば次の周期は1回2錠に増量することもあります。

副作用はあまり多くありませんが、主なものとして食欲不振や悪心などが見られることがあります。また、まれに目の霞みが現れることがあるのでもし服用されて何か気になる症状を感じたら処方医に相談されるとよいでしょう。

クロミフェンの特徴は、排卵誘発作用がマイルドなこと、飲み薬のため投与が簡便なこと、価格が安いことなどが挙げられます。

また、抗エストロゲン作用により子宮内膜が厚くなりにくいことがありますのでその傾向が強い方は処方の変更が検討されます。

次回は同じく排卵誘発作用を持つレトロゾールについてお話しします。


(文責:[生殖医療薬剤部門] 山本 健児 [理事長] 塩谷 雅英)

 

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