1月13日 アンデルセン童話・世界一美しいバラの花 | ☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

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蝋で花の芯から作り、花びら一枚一枚全て手作業でお花のキャンドルに仕上げていく工房での出来事を綴ったブログです(*^。^*)  

むかしむかし、偉い女王さまがいました。
 そのお庭には一年中、その時々の一番美しい花や世界中の国々から持って来た花が咲いていました。
 けれども女王さまのとくにお気に入りの花は、バラの花です。
 ですからバラの花ならば、リンゴのにおいのする緑色の野バラから、プロヴァンスの一番美しいバラの花まで、ありとあらゆる種類のバラの花を持っていました。
 それらのバラはお城の壁をはいあがり、柱や窓わくにからみつき、廊下から天井伝いに広間という広間の中までのびて行きました。
 そしてどの花も、においや形や色がそれぞれ違っていました。

 ある日、女王さまが重いご病気になってしまいました。
 お医者たちも、
「もう、お亡くなりになるのを待つほかはない」
と、言いました。
「しかし、女王さまをお助けする道が一つございます」
 お医者たちのうちで、一番偉い人が言いました。
「それは、女王さまに世界一の美しいバラの花を差し上げることです。
 それは、この上もなく気高く、この上もなく清らかな愛をあらわしたものでなければなりません。
 女王さまのお目の光が消えないうちに、その様なバラの花をご覧に入れることが出来れば、女王さまはお亡くなりにはなりません」
 さあこれを聞いて、みんなは自分たちの庭に咲いている一番美しいバラの花を持って来ました。
 けれども、どの花も捜し求めているのとは違いました。
 それは、愛の花園からつみ取ってきた花でなければなりません。
 でも愛の花園のうちのどの花がいったい、この上もなく気高く、この上もなく清らかな愛の象徴(しょうちょう)でしょうか?
 歌人たちは世界一の美しいバラの花を歌って、めいめい自分の花こそそれだと言いました。
 ですが、
「まだ誰も、求める花を名ざしてきた者はない!」
と、医者は言いました。
「私は、その花の咲いているところを存じております!」
と、乳飲み子をだいた幸福そうな母親が、女王さまの床のそばにきて言いました。
「私は、世界一の美しいバラの花のありかを存じております!
 この上もなく気高く、この上もなく清らかな愛の象徴であるバラの花、それは私のかわいい坊やのつやつやしたほおに咲き出るのでございます。
 この子が眠りから覚めて、きげんよく目をパッチリと開いて、愛そのものの様に私に笑いかけます時、その花は開くのでございます」
「なるほど、そのバラの花は美しい。だが、もっと美しい花があるはずじゃ」
と、医者は言いました。
「はい。もっと、ずっと美しいのがございます」
と、侍女の一人が言いました。
「私は、それを見たことがございます。
 それよりも気高い神々しいバラの花は、どこにも咲いておりません。
 けれどもそれは、コウシンバラのように青白うございました。
 女王さまのほおの上に、私はそれを見たのでございます。
 いつぞや女王さまは王冠をおぬぎになり、ご病気のお子さまをお抱きになって、長い悲しみの一夜をまんじりともなさらずに涙をお流しになっては、お子さまにキスをなさっていらっしゃいました。
 そして世の母親が悲しみのおりにいたしますように、神さまにお祈りをなさいました」
「悲しみの白いバラの花には、確かに神々しくも不思議な力がこもっている。
 だが、今求めている花はそれではない」
「おお、それそれ! わしは世界一の美しいバラの花を、主の聖壇(せいだん)の前で見ましたぞ」
と、年取った信心深い司教が言いました。
「わしは、それが天使の顔の様に輝くのを見ました。
 若い娘たちが主の聖餐台(せいさんだい)の前に進み出て、洗礼(せんれい)の聖約を新たにいたしました。
 その時、娘たちのみずみずしいほおにバラの花が赤らみ、また、青ざめました。
 さて、その中に一人の娘がおりましたが、この娘は純潔と愛とに満ちた魂をいだいて神を仰いでおりました。
 これこそこの上もなく清らかな、この上もなく気高い愛の象徴でありましたぞ」
「神の恵み、その娘の上にあれ!」
と、賢者は言いました。
「だがあなたがたのうち、まだ誰も世界一の美しいバラの花を名ざしたものはありません」
 その時、一人の子どもが部屋の中に入って来ました。
 それは、女王さまの小さな王子でした。
 見れば涙が目にあふれて、ほおに流れています。
 王子は、大きな本をひろげて持っていました。
 ビロードの表紙には、大きな銀の金具がついていました。
「お母さま!」
と、小さい王子は言いました。
「ねえ、ぼくが今読んだ言葉を聞いてちょうだい!」
 こう言って王子はベッドのそばに腰をおろして『主の書』、世の人々を、いえ、まだ生まれてこない後の世の人々をも救うために進んで十字架におかかりになった、主の書の中の一節を読みました。
「これよりも、大きな愛はない!」
 その時、女王さまのほおの上にバラ色の光がさしてきました。
 そして目が大きく、そして明るく開かれました。
 なぜなら女王さまはその本のぺージの中から、世界一の美しいバラの花が浮かびあがってくるのをご覧になったからです。
 それは十字架の上に流されたキリストの血の中から咲き出た、あのバラの花の姿でした。
「私には、バラの花が見えます!」
と、女王さまは言いました。
「この世で一番美しいバラの花を見た者は、決して死ぬことはありません」

おしまい

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