以前、「柔らかく美しい型分解 」という記事を投稿したことがあります。
YouTubeで見つけた、糸東流空手を学ぶアメリカ人の方が、糸東流の歴史や型の分解を紹介する動画 を紹介した記事なのですが、最近、この記事に対するアクセスが多いことに気づきました。どうも、Googleで「空手 型 分解」で検索するとかなり上の順位でひっかかるようです。

あれから色々と型の分解を勉強してから見ると、そんなに騒ぐほどの内容ではなかったのかもしれませんが(笑)、当時の私にとって、とても刺激になったのは事実。私と同じように、型分解にあまり注力しない系統の空手を学ぶ者にとっては、型の面白さに気づく取っ掛かりになるかもしれません。
そういう意味ではもう少し分解の内容を紹介するのもいいなあ、と思い、個々の分解を紹介することにしました。
自分にとっても備忘録になりますからね(動画って、見るのに時間がかかるから、結構億劫になってしまうんですよね・・・。

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まずは(1)として、ピンアン五段の冒頭の分解。
分解の対象となるのは、↓の内受け→逆突き→鉤突きの部分です。
http://www.youtube.com/watch?v=koTmCBL7-cU より)

ピンアン五段①
ピンアン五段②
左を向いて左前の猫足立ちになり、

ピンアン五段③
左中段内受け(横受け)

ピンアン五段④
続いて右逆突き。

ピンアン五段⑤
正面を向き直って、

ピンアン五段⑥
結び立ちになって、

ピンアン五段⑦
左の鉤突き。右手は引き手。

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初めてピンアンシリーズを習った時(その時習ったのは「平安」でしたが)、この正面向き直して右の鉤突きの部分に、「?」となったのを覚えています。
これに対するアメリカ人空手家の示した答えは↓。

ピンアン五段1
こちらの左腕を掴んでくる相手に対して、
猫足立ちになって左内受け。

ピンアン五段2
受け手を開手にして、相手の右腕を掴み、

ピンアン五段3
右の逆突き。
ここまでは普通ですよね。

ピンアン五段4
左手で相手の右腕を掴んだまま、
突いた右手を相手の右腕の下に回し、

ピンアン五段5
相手の右腕を下からかち上げ、

ピンアン五段6
真上まで持ち上げ、

ピンアン五段7
右手を開手にして相手の右手首をコントロールし、
左手で相手の右肘を押さえ、

ピンアン五段8
正面を向いて、相手の右腕を前に降ろし、
肘関節の外に回ったポジションを取って、

ピンアン五段9
右肘を決める。
左手の鉤突きは、相手の右肘を後ろから圧迫する動きとなります。
右の引き手は、相手の右腕を逃がさぬよう、手首を押さえる役割。

ピンアン五段10
右手を引き、左手を鉤突きの方向にさらに押して、決め。

ピンアン五段11
完全に決まった状態。

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自然、かつ効果的で、面白い分解だと思います。
型の中では、逆突き→鉤突きの時の右手は、単に引き手を取っているだけなので、分解動画のように相手の右肘を決めるために、逆突きした右手を相手の腕の下を通して大きく時計回りに回す動きは、こうして見せてもらわないと気づきませんよね。型の動きを変えているので、この分解が糸東流の中でどれだけオーソライズされたものなのか分かりませんが、①鉤突きの意味づけ、②正面を向き直すことの両方の意味づけができるので、個人的には納得のいく分解です。

更に考えて、もしも、相手の右肘を決める動きを、より型通りの動きでやろうするなら、
①右手で直接相手の右手首を掴み、
②正面を向きながら引き手を取って、相手の右腕を引き、
③左手で相手の右肘を裏から押す
というやり方も出来そうな気がします。

一つ面白い分解を見せてもらうと、そこを取っ掛かりに、妄想がどんどん広がります。
私にとって、型って面白いぞ、と感じさせてくれた分解でした。

次は、(2)ピンアン二段の連続上段受け です。