物理ネコ教室142波の式 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 波の式といえば、マクスウェルの電磁波の方程式。電磁波の存在を予言しました。

 今回は単振動の進行波を数式で表す方法を学びましょう。

 

 

 単振動の式はすでに学びました。

 波はこの振動がつぎつぎに隣の媒質に伝わっていく現象です。

 振動が別の場所まで伝わるのには時間がかかりますから、その時間分、振動のタイミングがずれることになります。

 これは、球場などの観客席でよくやる「ウェーブ」と同じです。

 隣の人が立ち上がるのを見て自分も立ち上がり、それを見て次の人がまた立ち上がり・・・と、順番に少しずつずれたタイミングで立ち上がったり座ったりすることで、波の形が進んでいくパフォーマンスになるのです。

 下の図をごらんください。

 

 

 

 以前は、波が遅れて伝わる様子を、いきなり数式で表現して説明していたのですが、時間の遅れと変位yの式のずれが直感的にわかりにくく、理解するまでけっこう時間がかかりました。

 そこで、球場の「ウェーブ」の図をそのまま使って説明するようにしたところ、理解が早くなったのです。以後、このやり方で説明するようにしています。

 

 

 ところで、波の式は高校の物理に登場する数式の中では、変数を2つ(時間tと変位x)持つ、もっとも複雑なものです。

 変数が2つあるので、波の式をグラフ化するときには、横軸がt、縦軸がyのグラフと、横軸がx、縦軸がyのグラフの2種類があります。

 これもまた、わかりにくいところですね。

 

 これらの複雑さは、こういうタイプの数式を扱うのが初めてであることが原因です。なれてしまえば、それほど難しく感じなくなります。少しずつ、なれていきましょう。

 

 では、書き込みを見ていきます。

 

 

1.(1)は単振動の式の確認と、波の式に移行するための変形を行います。

 波の先頭が原点O点に達したときの時刻を0とします。

 O点の振動は(1)の左の図のようになります。

 この振動の様子を縦軸に変位y、横軸を時間tにとってグラフにすると、その横のグラフになります。

 単振動の式はy=Asinωtでしたが、ここでは周期Tを用いて式を変形しておきます。

 振動を調べる際、角振動数ωより、周期Tの方が簡単だからです。

 

(2)では、O点の振動がx離れた場所P点に伝わる時間x/vを求め、P点の振動がO点の振動をそっくりまねたものであることを理解します。

 それを数式で表現する前に、ウェーブを行う人の姿で表現しておきましょう。

 

 

 表の「時刻t」、そのx/v秒前の「時刻tーx/v」、そのx/v秒後の「時刻t+x/v」のO点の振動欄には、ウェーブの人間の動きが順番に描いてあります。人間が徐々に立ち上がって背伸びするまでの動きの一部です。

 式を考える前に、まずP点の振動欄に、ウェーブ人間の絵を描いてみましょう。

 O点の振動がx/v秒おくれてP点に伝わるので、O点の振動の図は、そのままx/v秒後のP点の振動の図になります。図に青色で描いた斜めの矢印が、それを表しています。

 「時刻tーx/v」のときのP点の振動は、「時刻tー2x/v」のときのO点の振動の図がないので、描くことができません。

 

 図がうまく描けたら、今度はそれを単振動の数式でやってみましょう。

 人間の姿がそのまま変位yの数式だと考えます。

 

 まず、O点の振動欄のyの式を書いておきましょう。

 「時刻t」のyは単振動の基本式y=Asin(2π/T)tです。

 「時刻tーx/v」と「時刻t+x/v」のyの式は、この式の時刻tをtーx/v、t+x/vに置き直すだけで作れます。

 

 次に、P点の振動欄のウェーブ人間の図を見てください。その姿はそのまま変位yの式に相当するので、O点の振動欄の該当するyの式を書き込めばいいのです。

 「時刻t」のP点の振動の式がy=Asin(2π/T)(tーx/v)であることがわかりますね。

 この式でP点の位置xは、x軸上のすべての点の代表と考えることができますから、P点の振動の式y=Asin(2π/T)(tーx/v)は、波が伝わっているときのすべての点の振動を表す式と考えられます。これを「波の式」と呼びます。

 

(3)Aでは、波の式を変形します。

 最初に作った波の式

 y=Asin(2π/T)(tーx/v)

 は、波の動きや式の成り立ちがわかる式です。

 しかし、数式的にはすこし複雑ですね。

 

 書き込みのような式変形をした波の式

 y=Asin2π(t/Tーx/λ)

 は、数式の構造がわかりやすい、数学的に「美しい式」です。

 (  )内の式のt/Tは時間を時間でわる式、x/λは距離を距離でわる式になっていて、ともに単位のない無次元量になっていることが、ひと目でわかります。

 したがって、sinの中身2π(t/Tーx/λ)(専門用語では「位相」と呼びます)は、角度2π×無次元量、つまり角度の単位です。

 こういった構造が見やすい式なので、2つめの波の式は、1つめの波の式より使いやすいですね。

 どちらの式を使うかは、ケースバイケースで判断してください。

 

(3)Bでは、逆向きに進行する波の式をどう作るかを示します。

 

 Aの式の速度vをーvとすれば、逆向きに進む波の式となります。

 y=Asin(2π/T)(t+x/v)

 

 この式もAと同様に変形することができて、

 y=Asin2π(t/T+x/λ)

 となります。

 

 なお、この逆向きに進む波の式に相当する波がどのような形の波になっているかは、次のプリントで詳しく見ていくことにします。

 

2.の練習問題は基本的なものですが、最初に練習するのにはほどよいレベルでしょう。

 書き込みを見て、自分でも計算してみてください。

 

 では、今回はこのへんで。

 

 

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