息の力で人間を持ち上げる実験(改) | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 以前、この実験を紹介したときは、古いやり方を書きました。

 

 あのやり方は、ぼくが先輩から教わった方法なのですが、いくつか難点があって、実際に行うときは少々の変更を加えています。

 

 今回は、そちらの改良版を紹介したいと思います。

 

 難点というのは、いずれも板を用いることによるものです。

 

 板を用いる場合は、板がすべらないように、両面テープで板と袋を貼りつけておく必要があります。ところが、たいてい一度使った袋は穴が空いたり破れたりして連続して使えないことが多いので、古い袋を外して新しい袋を貼り替えなければなりません。この作業が結構面倒なのです。

 

 また、袋が膨らむ過程で、人間の乗った板は非常に不安定になり、ぐらぐらと傾きます。ぐらつかないように補助の人が板を支えなければなりません。

 

 アメリカでは、板を使わず人が直接袋に乗っていたのですが、その袋は日本のものの2〜3倍ある巨大なものでした。

 

 日本の60リットルの通常のゴミ袋でも、板なしでできないかなと試したところ、ちゃんと上がりました。板がないので、乗った人間のぐらつきもそれほどではなく、安心して実験が行えます。

 

 乗るのが男子ならあぐらをかいて座ってもらうとよいのですが、イスに座るように、足を投げ出すようにして袋に腰掛けても、ちゃんと上がります。

 

 ぐらつきを防ぐときは、ある程度膨らむまで、乗った人が両手を床につけて体を支えれば、安定します。

 

 長らくこの方式で実験をしてきたので、これが当たり前の実験の形だと思っていました。先日、先進科学塾の打ち合わせ会でこの実験方法を紹介したところ、他の方が板がなくてもできるのか、と驚かれていたので、あらためてこの方法を紹介する意味があるかなと思い、記事にした次第です。

 

 原理はもちろん、板を使ったときと同じです。

 

 

 パスカルの原理で、ストローの口と人間のおしりの部分の空気の圧力が同じになります。

 

 ストローの口で、圧力は p=f/s

 人間の接触部分で、圧力は P=F/S

 

 パスカルの原理より p=P なので、

 

 f/s=F/S つまり F/f=S/s で、力の比が面積比に等しくなります。

 

 面積が10000倍になれば、力も10000倍になるわけで、このそうちは気体を使った力の拡大器として使われます。

 

 実際にはトラックのエアジャッキとして、実用化されています。

 

 板を使う場合に比べると、接触面積が半分くらいになるので、力の拡大率が小さくなり、上がりにくくはなるのですが、なんとか持ち上がります。

 

 時間がないときは、ぺちゃんこの状態から実験を行わず、ある程度膨らませてから人に乗ってもらい、その後、息を吹き込んでいって、袋がぱんぱんに膨れるまで実験するとよいでしょう。

 

 とはいえ、この実験は息を吹くのがけっこうたいへんな労働になりますので、途中、休み休み行うようにしてください。

 

 袋に穴があいたり、破れたりするとうまく持ち上がりませんので、ご注意を。

 

 実験中、シューシューと音がする場合はどこかに穴が空いて空気が漏れていますので、セロテープで塞いでください。

 

 

 実際の実験のデータはだいたい、上の図のようなところでしょうか。あくまでも概算ですが。

 

 

 エアジャッキは、上の図のようにして、簡単に作れます。一回だけの実験なら、セロテープでじゅうぶんもちます。

 

 パスカルの原理を用いたエアジャッキは、力学的なジャッキより性能がよいのですが、広げたり畳んだり作業が大変です。そこで、普通車にはコンパクトで扱いやすい力学的なジャッキ、重いトラックには力の拡大率の大きいエアジャッキが装備されています。

 

 

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