物理天才クイズ4 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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クリップモーター


「質問リレー」から生まれた「物理天才クイズ」の続編です。さて、今回の謎は・・・

 

天才クイズ13


【Q013】コップに水を満たしてハガキで口をふさぎ、コップをひっくり返しても水はこぼれないのはなぜか。こっぷの半分くらい空気がはいった状態で同じことをしたら、どうなるか。コップの中の水をぜんぶ空けたあと、ハガキで口をふさいでひっくり返した場合は、どうか。

 左の図は有名な問題。「大気圧が支えるのでハガキは落ちず、水はコップに入ったまま」という説明がなされる場合が多いのですが・・・

 では、右の図だとどうでしょうか。水の上にも空気がありますね。
 つまり、水の上下両方とも空気があるので、判断に苦しみます。(実験してみればすぐに結果はわかりますが)
 図にはありませんが、最後の問題ではハガキが濡れているだけ。これもやってみればすぐに結果がわかります。

 問題は、この実験を統一的に説明するしくみ。条件をいろいろ変えると、問題点や本質が見えてきます。

 実際には左図の実験をするときでも、ちょっと油断をすればコップの中に空気の泡が一つ二つ入りこみますから、量の大小はあれ、コップ内に「大気」の一部があることにかわりはありません。さて・・・

 天才クイズなので、例によって答は書きませんが、「大気圧」というキーワード一つで説明できるほど単純ではありません。

 どうしても答が気になるという方は、「いきいき物理わくわく実験3」(日本評論社)のP154の記事「水はこぼれる? こぼれない?——穴あき逆さコップの中の水」をご覧ください。ここに紹介していない実験も含めて、詳しい考察が書かれています。

 次もよく出る話題。

 

天才クイズ14
 

【Q014】電柱などの影に自分の影を近づけると、電柱と自分の影が重なる前に、影の「たんこぶ」ができてつながってしまう。これはなぜか。

 なかなかの観察力。普通の人は見過ごしてしまう現象です。単純で面白い現象ですが、なかなかこの現象の正体を見抜ける高校生は少ない。小学校の理科の授業で習う現象ではないかと思うのですが・・・(小学生のみなさんのほうが、わかるかもしれません)

 さて、次もよく出る質問。
 

天才クイズ15

 

【Q015】水の沸点は100℃である。では、常温でコップに入れておいた水がいつのまにか蒸発してなくなるのはなぜか。

 これは、知識がつくことによって、疑問が深くなる代表的な例です。蒸発という現象は小さな頃から目にして経験的にあたりまえのこととして知っていること。でも、水が100℃に達して初めて沸騰する、つまり気化するという知識を習うと、常温で気化する蒸発という現象が謎めいて見えてきます。

 以前、川勝博氏の発案による「理科のわかる5段階」を氏に頼まれてイラスト化したことがあるのですが、その第4段階で「わからなくなってきた=頭が本当の回転を始めた!」というのがあります。まさにその状態ですね。

 「質問リレー」はもともとそれを楽しむ遊びなので、わかってると思っていたらわからなくなってきた、というのが、一番わくわくします。科学の醍醐味ですね。

 この「蒸発の謎」には、分子運動と熱現象という、もっとも本質的な問題が含まれています。派生して、打ち水をするとなぜ涼しくなるのかという話にもつながってきます。深いですね。

 では、定番の問題。質問リレーでは王様クラスの問題です。
 

天才クイズ16
 

【Q016】虹はなぜ半円を描くのか。虹はなぜ七色なのか。虹のアーチの足下へいって見上げたら、どんな形に見えるのか。

 これは小さな子でも質問する内容。でも、往々にして、その質問ははぐらかされ、いつのまにか虹の七色の順番を覚えさせられていた・・・なんて話も聞きます。理科教育が正しく行われない場合の悲劇かな。ペーパーテストの点数を授業の目標に置きがちな日本の理科教育では、形をかえてよく見られるシーンのひとつです。

 あまりにも有名すぎる問題だし、高校の教科書でも光のところで正式に習う内容なので、本来は天才クイズでわざわざ紹介する必要はないんですが・・・

 でも、虹の見える条件を一つ一つ考えて真実に近づいていくという「思考の冒険」がやりやすい題材なので、そういう意味で紹介しました。

 雨上がりに見える、屋外で水をまいているときに見える、太陽が出ていないと見えない、太陽との位置関係は、などなど・・・

 虹についての三つめの質問に関わりますが(高校の教科書で正式に習う内容なので、少しだけネタバレをします)、虹は虫眼鏡で見る虚像と同じく、見ている人にしか見えません。

 つまり、虹はその人を中心に半円を描いてそこに見えているので、ドラマで恋人が空に浮かんだ一つの虹をいっしょに見るなんてシーンがあっても、じつは二人はそれぞれ別の虹を見ているわけです。(ミもフタもない話ですみません)

 ところで、虹の7色は赤橙黄緑青藍紫ですが、光のスペクトルを7色で覚えるのは世界標準ではありません。例えば、アメリカのヒューイットさんが作った教科書「Conceptual Physics」ではred,orange,yellow,green,blue,violetの6色で教えています。

 実際、色の仕組みを考えるとき、藍色はじゃまで、青と紫があれば事足ります。もともと連続する無限色の可視光を、適当に区切って色名をつけているわけですから。藍色を入れたのは、古来より色に独自の名前をつけて楽しんできた日本人の感性でしょうか。

 おまけ:

 表題のイラストは「いきいき物理わくわく実験1」で紹介したクリップモーター。今や物理教科書に載るようになりましたが、簡単そうに見えて、実際に作るのはけっこうたいへんで、それがまたオモシロイ。

 いろんな人がいろんな改良案を出してきましたが、ぼくは授業で紹介するときは余分な工夫無しの原型を使います。もっとも素朴なものが、もっとも本質的で、もっともわくわくするからです。

 
 
 

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