ぼくは東京都三鷹市出身で三鷹市内の小学校に通っていました。
小学校のすぐそばには小さな神社があり、小さな公園も併設していて学校の友人たちとの良い遊び場になっていました。
ぼくが小学二年生の頃、学校の帰りに友人たちとその神社の側を通ると子供らが遊ぶ公園で大人たちが忙しく作業をしていたので何かいつもと違うなと感じ、そのまま神社の様子を伺いに行きました。
学校の近くの神社といえども学校帰りの寄り道は禁止なのです。
一度家に帰り、ランドセルを置いてから遊びに行くのが学校とのルールだったのですが。
何かイベントのようなものを行うようで小さなステージが設置されていました。
「誰か芸能人が来るらしいよ」とその場にいた買い物帰りのおばちゃんが言いました。
「誰が来るんだろう?観ていこうぜ」とぼくを含めて友人三人ぐらいでステージに肘を乗せながら、イベントが始まるのをワクワクしながら待っていました。
先にも述べたように学校帰りに寄り道するのはご法度なのですが、芸能人が今ここに来る!となると話は別なのです。小学生的に。
なにせ小学生なので芸能人を生で見たことが無いんですから。
ワクワクドキドキが止まりませんよ。
「ドリフスターズやピンクレディーが来たらどうしよう!」
人気絶頂の芸能人がこんな小さな神社に来るわけがないけど小学生の思考回路では芸能人=人気絶頂タレントと直結してしまうのです。
しばらく待っているとマイクを持った司会の方が壇上に上がり、挨拶を始めました。
いよいよショーが始まる!われわれ小学生軍団のボルテージも一気に上がる!
司会の方の前説は全然耳に入りません。
だって目の前にドリフのカトちゃんや志村けんが現れるかもしれないんですもの。
そして司会の方の「それではどうぞ!」という言葉を合図に壇上に上がってきたのがシルクハットをかぶってキラキラした燕尾服にホットパンツを履いてステッキを手に持っている二十歳ぐらいの綺麗な女性でした。(小学生から見れば高校生ぐらいの人でも二十歳ぐらいに見えてしまう)
われわれ全員「誰よ?!」
一気にボルテージが下がる。
どうやら新人アイドルのデビュー曲プロモーションイベントだったようで。
その新人アイドルさんはマジシャンアイドルということでシルクハットにキラキラ燕尾服という衣装だったのでした。
そしてデビュー曲を歌い、曲間で持っていたステッキを自由自在に空中で浮遊させてしまう!
ステージの一番前で見ていたボルテージの下がった われわれ小学生軍団は大声で「糸、見えてんじゃん!」と突っ込む。
本当に憎たらしいガキどもだったでしょうね。
新人アイドルさんはステージで二曲ばかり歌い、われわれ小学生には目も合わせず、そそくさとステージを降り、車に乗ってアッという間にどこかへ行ってしまいました。
のちにこの新人アイドルさんをテレビで何回か見ることになりました。曲間でステッキ空中浮遊を披露していたので「あの時の人だ!」と。
「朝風まり」さんという名前だったことが分かりました。
そうです。
あの奇跡のイリュージョニスト
現在のプリンセス・テンコーだったのです。
ちゃんちゃん。
イラストレーター ハマダミノルweb→http://minoru-h.com

