実は最近、このブログを書いていて思うのが「少し真面目すぎないかな?」ということです。
 元々、私は授業には絶えず笑いを入れてなごやかで楽しくやりたい人なので、私の授業を受けた生徒は結構楽しそうにやってます。
 で、結構、自分の体験談や過去にあった珍回答、珍発言なんかも話したりしています。
 せっかくなので、そういう小話も書いていこうかな、と思います。
 ただし、私はその珍回答をした子を馬鹿にしているのではなく、勉強の回答としては点数はあげられないけど、「なるほど、そういう発想もあったか。」とむしろその発想の自由さを面白がっている部分もあります。そういう意味での「爆笑」です。

では、最近、非常勤講師をしている近畿大学での一問から

問題(  )の中にことばを入れ慣用句を完成させなさい。

身を(    )にして働いても、給料が安い。

ある生徒の回答
身を(サイボーグ)にして働いても、給料が安い。

せっかく改造人間になっても、給料が安いとは切な過ぎます。人間やめてるのに。

今までは書きませんでしたが、実はKくんと同じく3月から英語を指導していたIくんと言う同じく高校3年生の子がいます。彼は舟入高校に通っていました高校入試の難度と大学の合格実績はKくんの国泰寺と同じ程度のハイレベルな高校です。
夏前ころからIくんにもKくん同様にセンター形式の問題を指導し始めていました。そしてIくんもKくん同様、夏休みが終わるころに正解率は上がるどころか若干下がってしまいました。

私は基本的には自信家なのですが、同じことが同じ指導をした二人に起きれば、どう考えても自分のせいだとしか考えられません。一体どうしてなのか?一月弱くらい自問自答し続けました。

彼らに今まで時間は自由に使って問題を解かせていたですが、夏休みから目の前に時計をおいて常に時間内にとくことを目標に解けと指示しました。
 なぜかと言うと、センター試験と言うのは時間が足りなくなるように、問題が設計されているので、時間との闘いでもあるからです。

 ある時Kくんを指導していてこのようなやりとりがありました。
(私):この問題はここを読めば分かるよね?初歩的なうっかりミスだよ。
(K):いやー、なんとなくで、ぱーっと読んでしまって・・・
(私):丁寧に読まないと間違えるよ!なんでいい加減に読むの?
(K):・・・いや、何か「時間内に終わらせないといけない!」と思って焦ってしまって・・・

 ここで、私はやっと気づきました。夏まで養成してきた単語力とある程度ついて来た読解力は変わらずあっても、時間に追われて斜めに読んでいたら正解は出来ません。彼らは時間を気にするあまり、いい加減に読む癖がついてしまっていたのです。

 野球で言うならコーチのアドバイスを意識しすぎて、フォームが崩れたような状態でしょうか
Kくんに夏休み前に、センター試験形式の予想問題を解いてもらいました。時間は計らずにリスニング以外の200点満点分をやってもらったところ、正確には忘れましたが110点前後の点数でした。この点数は6割に達していないので決していい点数とは言えませんが、この形式の問題で「勝負ができている」レベルだと言えます。
仮に彼が3割(200点満点で60点)程度しか取れなかったとしましょう。その場合彼にとって、この問題のレベルは手も足もでないレベルと言えます。多分、解きながらちんぷんかんぷんに感じられて、勘で○したりしている状態でしょう。
この状態の子に同じレベルの問題をさせても力はつきません。解説しても、理解しなければならないことが多すぎて、ついてこれないでしょう。それにこの状態が続くと自信を失って、やる気の低下すら起こります。
しかし6割近く取れていると言う事は、分からない問題も分かる問題も混在している状態です。ある程度まで読めて、間違えたのなら、解説してやれば「なるほど、そうだったのか。」と理解して学力に変えることができます。

そこで、夏休みはほぼ毎回Kくんにセンター形式の問題を解いてきてもらって、それを私が解説する指導をしました。
最初は多少きつくても、今までの基礎があれば数多く問題を解くうちに慣れてきて正解率も上がるだろうと予想していました。

しかし、自分でも予想外だったある一つの私の“ミス”によってKくんの正解率は上がるどころか若干下がってしまったのです。
もう一つ、何度も言ったことは「派生語に敏感になれ」です。
英単語と言うものは高校レベルになると、一つの単語からいくつかの派生語ができます。良くあるパターンは動詞から名詞や形容詞ができたり、名詞やから動詞や形容詞ができたりするパターンです。
例をあげてみましょう。
例えば形容詞や名詞から動詞をつくる場合、enをつける場合があります。encourage(勇気づける)はもともとcourage(勇気)からの派生語です。さらにそこからencouragement(激励・奨励)と名詞に派生します。さらに、頭に否定の接頭辞がつくと意味が逆になることを知っていれば、discourage(勇気を失わせる、やる気をなくさせる)を初めて文中でみたとしても、多分こういう意味だろうと類推することができます。
逆に、こういう派生語変化の感性が無ければ、それぞれを一々暗記しなければなりません。少々の記憶力の差などは問題になりません。
そこで、Kくんに文中に出てきた彼が分からないという単語の元の単語を見せてその意味を知ってるか、尋ねるようにしました。知らなければ元の単語とセットで覚えてもらいます。もし、元の単語を知っているのに派生語と見抜けなかった場合は、「これが派生語だと見抜けるよう修行しなさい。」とお小言を言いました。
また、文中に出てきた単語の派生語を考えさせました。「ではこの単語の名詞形は?」「この単語を否定の意味に派生させると?」
派生語に関して鍛えた結果、夏休みを終わるころには単語力に問題はなくなりました。

ただし、夏休みを過ぎて、Kくんのセンターの予想問題での得点が全く伸びてないことに気づきました。
実は夏休みの私の指導は失敗だったのです。
もう一つ、Kくんの長文読解の指導で私が拘ったことがあります。それは単語です。先ほど単語の意味が分からなくても読めると言ったばかりですが、英単語にもレベルがあります。
大学入試をするなら基本として当然しっていて欲しい単語(レベルAと呼ぶことにします)、必ずしも知っていなくても何とかなるが、そこそこよく出題されるので知っていると有利な単語(レベルB)、滅多にお目にかからないし、その意味が分からなくても文章の読解には影響を与えない単語(レベルC)です。

私はTOEICは895点で、集中すれば英語で映画やニュースを見れますレベルの英語力ですが、レベルCだと見たことがない単語も多々あります。
一度Kくんにはこう言いました。
「この単語の意味はね、俺も知らない。俺でさえ意味を知らないマニアックな単語なんだよ。こんなものは出題者も受験生が意味を知らないだろうと思って出してるから、気にせずに無視して読めばいいんだよ。」


高3の一学期のKくんは、このABCのレベルの順で単語を覚えているのではなく、学校で単語帳を片っ端から暗記させられたせいでしょう、Cランクの単語が分かるのにAランクの単語が分からないということが多々ありました。
そこで予習ではなく、私との授業では長文を読む前に分からない単語には印をつけて、その意味を私が解説してから読解してもらうことにしました。その際
「これは、当然しっておかないといけない単語だよ・・・(Aランク)」
「これは、知らなくてもいいけど、もし覚えられたら覚えておいた方がいいよ(B)」
「これは、俺も知らないくらいだから、覚えなくていい(C)」
と、言うように意味と一緒に重要度も併せて伝えました。
レベルAは当然、Bも知っていれば読解の精度があがります。逆にCは意味を覚えても滅多に出題されないので、実力にならないのです。
一学期の間はほとんど長文を指導し、時々英作文や並び替えを教えました。学校の内容がかなりハイレベルなので、それの分からないところを教えるだけでも力がつきます。時々、学校のことが終わっている時などはセンター試験の形式の問題をやってもらったりしました。
教えてみて分かりましたが、英語の読解にも性格が影響します。Kくんの場合は長文が読めない(と思い込んでいる)原因は、几帳面な努力型な性格のせいもありました。

少し詳しく私の予測を説明しましょう。
Kくんは基本的に自信家の対極にいます。自分はがんばって人並みと思っています。そのKくんにとって、長文で分からない単語や、意味が取れない箇所があるとその一つ一つが彼の心を不安にしていきます。そして「これは僕の力は足りないな・・・」と思ってあきらめはじめます。

これに対して私の読解法はこうです。
まず、全ての単語が分かって全て意味が取れてなんて状態は実際の入試ではありえません。それは問題の難易度があまりにもやさしい時だけです。
実際は優秀な子でも、いくつかの(もしくはかなりの)単語の意味は分かりません。また、全ての文がきっちりと意味が分かることもありません。一つや二つくらいは、良く意味の分からない文もあります。では、なぜそれで高得点が取れるかと言えば、その文で言いたいことや、文章の話の展開についていけているからです。(これは英語力だけではなく、国語力も影響してきます。実際、単語が分からないから読めないという子に、単語の意味を全部教えて読ませても、話の展開についていけず何を言っているか文章の主旨がつかめないことも、よくあります。)
つまり、完璧に理解できなくても、大筋で何を言っているか、段落の展開はどうなっているか、という話の趣旨が分かっていれば設問には答えられるのです。(物語の場合は登場人物が何をしてどう感じているか)
それに、大学入試というのは満点を狙う試験ではありません。難関大だと5割取れれば受かる場合もあります。理解できた文だけ点を取ろうと思えばいいのです。
例えば、ある文に傍線が引いてあってそこを訳せという設問があったとします。この時、この文の意味はほぼ分かったが、意味の分からない単語があったとしましょう。
もし、これを分からない単語の意味だけぼかして、残りはきちんと訳したとします。結果は何点でしょうか?0点でしょうか?
大学入試ではせいぜい減点1~2です。このような和訳問題は6~8点くらいの配点がありますので4~7点くらい得点できることになります。


私、生徒の反応は気になる方で、塾長に「Kくんの反応どうでした?」と聞くと、「いや、『今までにない切り口で良かった』と言ってたよ」とのこと。

そのまま、Kくんは私の担当になりました。

最初にKくんとしたことは、Kくんの棚卸しです。

と、言うのはKくんの通っている国泰寺高校の弊害は、先生が生徒を鍛えようとする意識が強すぎて、一人一人からみれば、オーバーフローに陥っている様だったからです。

K君が一週間に平均的に課される課題や予習を聞き出して、それぞれに重み付けをしていきました。
この、文法はやらないと先生がうるさそうだから、一応はやるけどあまり時間をかけない。英単語の暗記も、結局は頭に残らないから直前の一夜漬のみ(私は彼の英単語の小テストの面倒は一切見ていません。週一回80分にそんな時間はありません)。

逆に、課題の長文の問題は彼にとって少しレベルが高い気がしましたが、読解力を伸ばすのにいいと思い、これを中心に指導しました。

Kくんのいいところは、言ったことはだいたいはやってきてくれることです。
もし、「忙しくて、やってません。」と言う子では、彼の結果は惨憺たるものだったでしょう。
この申し出を聞いた時は、全く予想もしていなかったのでまさに寝耳に水状態でした。
とりあえず、一回試しに授業をしてみて、Kくんの感想次第で決めましょうということにしました。
この頃の私は、だいぶ教える要領も掴めていましたし、高校生に国語や数学まで教えていたので、たいていのことは授業してくれと言われれば引き受ける自信があったのです。

Kくんにしたお試し授業では、まずは彼の現状を把握することからはじめました。
まず最初に彼が口にした問題点は単語力が無いことでした。彼が言うには学校で単語帳を配られて2週間に一度のペースで単語テストがあるですが、なかなか覚えられないそうです。
そして、単語力が無いから自分は英作文も長文もできないのです。と言いました。

「この単語のテスト、単語が覚えてられないのにどうやって毎回クリアしてるの?」
「前日とテストの直前に必死で覚えてます。」
「・・・それって、テストが終わったらきれいに忘れてない?」
「はい、まったく、覚えてません。」

この日は長文読解問題をやりました。Kくんは「意味の分からない単語があるので・・・」と、出来ない言い訳を言うので
「意味の分からない単語は全部私に聞いて。意味は全部教えるから。」
と退路を断ってやってもらったところ、予想通り単語の意味は分かってもうまく訳せなかったり、意味が取れないところがいくつも出てきました。

授業の最後の方でこう言いました。
「何で、長文をやったかと言うと、『文法がまだできてないから』『単語を覚えてないから』と言って長文から逃げる子が良くいる。だけどね、長文をできるようにしようと思ったら長文をやるしかないんだよ。」
「でも、文法は必要なんじゃないですか?」
「いや、文法はほとんどいらない。センターの問題で文法が配点が何点あるか知ってるかい?」
「いえ。」
「30点から40点も無い。200点満点で残りの160点以上が長文だよ。そりゃあ、もし入試で文法が160点とか半分とか出るなら、徹底的に文法を教えるよ。
でも、出るのは長文ばっかりなんだよ。だから長文をやろう。」

この時はあまり反応が無かったので、やっぱりいつもの先生の方がいい、と言われるかもしれないなと内心では思っていました。

Kくんが教師の変更を申し出たのは、私がOくんばかりかまって、自分の面倒を見てくれないことへの不満でした。
率直に言って、私は彼がそのようなことに不満を持っているとは全く気づいていませんでした。ただ後から考えて見れば、Kくんは素直ですが精神的に芯の弱いところがあって、先生に一歩一歩を二人三脚のように面倒みてもらう方を好み、自主性を尊重されることはあまり好まない子でした。

ともあれ、これは生徒に不満を抱かれたと言う点では私の落ち度です。いいクスリとして反省材料にさせてもらいました。Kくんは彼を中学の時のクラスで教えていた女性の先生が担当することになりました。

それから半年がたちました。私は夏休み担当し始めた生徒・クラスが秋以降も継続になり、Kくん以外は生徒が増えることはあっても減ることは無い状態でした。特に、高校の数学担当の先生が病気で辞めてからは、ピンチヒッターで私が高校生の数学を個別で5-6人に教える等の状態も続いていました。
正直に言えば、Kくんには若干のわだかまりはあるものの、あまり様子を気にしていませんでした。
ここに、またもや思いがけない申し出があります。
塾長から「もう一度Kくんを教えることにチャレンジしてもらえないか?」と言われたのです。
夏休みに入って、私は国泰寺高校の恐ろしさを知りました。英語の宿題が、薄い文庫本くらいある50pくらいのシャーロックホームズの短編集(もちろん英語)の和訳です。

もちろん、夏休みの指導はほぼこの和訳を見ることしかできませんでした。
もっと、言えば週1回1時間20分の授業では、一緒に和訳していくと、とても時間が足りません。
そこで、私はある程度Kくんの読解力が伸びてきたことと、彼が努力をいとわないガンバリ屋であることを考慮に入れて、事前に自力で和訳をしてきてもらって、それを私がチェックして間違いを指摘すると言う手順にしました。
こう書くと私が楽なように聞こえますが、私も文章を全部コピーして空いている時間に事前に読んでおかなくてはなりません。さらに、彼は塾に来て自習していて、僕が隣で他の子たちに授業をしていると、タイミングを見計らって、訳に困っているところを質問に来ます。
総合するとかなりの手間がかかりました。

ただ、こうしたのには訳がありまして、個別指導は教師1人に生徒二人です。Kくんの時間にはOくんという同じく国泰寺の1年生も教えていました。
このOくんはKくんと反対で努力や面倒くさいことは大嫌い。それを頭の回転の良さで何とか帳尻を合わせている子でした。
実はOくんにも短編小説一冊読んで問題を解くという、大変(と、いうより鬼です)な量の宿題が出ていて、彼は事前に自分で予習をしてくるようなタイプではありません。それでKくんには事前に訳してきてもらってチェックするスタイルにしたのです。

この夏休みの宿題はKくんはきっちりと仕上がったのですが、Oくんは途中くらいまでしか終わらず、結局友人の答えを写して提出したそうです。

ここで、私は自分の未熟さを痛感させられました。
Kくんから塾長に、先生を変えてほしいとの申し出があったのです。