書き出し小説 111〜120日目
111日目
遠くへ行きたくなったらギターを手に取る。昔のトラウマを思い出すために。
112日目
今朝もサイレンの音で目が覚めた。外から聞こえてくるのでない。頭の中で鳴り響くサイレンだ。
113日目
昼と夜を繰り返す毎日。空を巨大なドームで覆ったその日から、この町は夕焼けを失った。
114日目
ルールを破ってまでここまできたんだ。それなりのプライドは見せなきゃならない。
115日目
最初に気が付いたのは委員長だった。教室の時計の文字盤に書いてあるはずの数字が文字化けをしている。
116日目
茜色の生きる意味。スマホの予測変換で不意にそう出てきて気になったので検索してみたが、何の情報も出てこない。
117日目
まずはコーヒーだ。天下を取る男になるためには、ともかく苦みが必要なのだ。
118日目
夕暮れ時のシルエットの地面から、人間が生える。そのときこの世界は青春映画からホラー映画に変わった。
119日目
その草の鳴き声は猫のようだった。まるであの奇妙な漫画のような。
120日目
今は一頭の蝶だが、いつか一冊の本になる。
#書き出し小説