IAEA事務局長によるウクライナ原子力最新状況―Update 236 ～ZNPP変電所にドローン

ザポリージャ原発に所属する変電所「虹(Радуга)」がドローン攻撃を受け、周辺の森林が火災になるとともに負傷者も出た。サイト内の開閉所などへの直接の影響はなかったようだが、エネルホダルのラドガ変電所もまた攻撃を受けた模様。ZNPPの外電状況は極めて危うい。

Update 236 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine | IAEA

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IAEA(国際原子力機関)、ザポリージャ原子力発電所（ZNPP）から、7/3、数機のドローンが同発電所付近の地点を攻撃し、作業員が負傷し、森林火災が発生したとの報告を受けた。IAEAのラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、こうした度重なるドローン攻撃は原子力安全と人命に対する脅威であり、止めなければならないと述べた。

ZNPPに駐在するIAEAの専門家は、ドローンが隣接する森林に衝突し、強風下で火災が発生したとの報告を受け、同発電所の750kV変電所付近から濃い煙が見え、爆発音が聞こえたと述べた。消防士らが炎を鎮火しようとしていた。変電所はZNPP自体のサイトの外にある。今のところ、IAEAの専門家から、サイト内へ何らかの影響があったという報告は受けていない。

ZNPPに唯一残っている750 kV電力系が、低温停止中の原子炉6基の冷却とその他の原子力安全・核セキュリティ上重要な機能に必要な外部電源を供給しているため、この最新の事故は原子力安全に対するさらなるリスクを生じさせた。現在、750kV電力系とバックアップの 330 kV電力系はまだ使用可能だが、状況は依然として不安定である。

ZNPP側によると、現地時間午前10時40分から始まったエネルホダル市近郊での3回のドローン攻撃で、ラドガ変電所が直撃を受け作業員8人が負傷。うち1人は医療処置が必要になったという。IAEA専門家は、この衝撃により変電所の2台の変圧器のうち少なくとも1台から油漏れが発生し、変圧器の1台の上部と接続ラインが損傷したと報告されている。

その結果、損傷したラドガ変電所は現在使用停止となっているが、エネルホダルと隣接する工業地帯には引き続き電力が供給されている。変電所は、発電、送電、配電システムの重要な部分を形成している。

7/3に報告されたドローン攻撃は、ラドガとルーチの変電所へのドローン攻撃が報告された後、ZNPPスタッフの大半が居住するエネルホダルが16時間にわたって停電に見舞われてから2週間も経たないうちに起きた。4月初旬には、ドローン攻撃がZNPPサイトにも襲来したが、これは2023年5月にグロッシ事務局長が国連安全保障理事会で定めた施設保護の5つの基本原則に違反するものである。

「エネルホダルの人々やザポリージャ原子力発電所の安全にとって非常に明らかな危険があるにもかかわらず、ドローン攻撃が続いていることは極めて憂慮すべきことだ。直ちに停止しなければならない」とグロッシ事務局長は述べた。

また、7/3に報告されたドローン攻撃の前にも、IAEAチームは過去1週間のほとんどの日に軍事活動の音を聞いており、サイトからさまざまな距離での爆発音や、6/30の同発電所付近での銃撃と2回の爆発音などがあった。

IAEAの専門家らは、欧州最大の原子力発電所における原子力安全・核セキュリティの定期監視の一環として、原子炉4号機、サイト内の計量管理分析ラボ、2つの新燃料貯蔵施設、複数の非常用ディーゼル発電機、原子炉安全システムのさまざまな部分、およびZNPPの非破壊検査部門を含むサイト全体のウォークダウンを続けた。しかし、同チームによる発電所の給水施設のウォークダウンは、空襲警報により中断された。

フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの原子力発電所（NPP）とチョルノービリ・サイト駐在のIAEA専門家からは、過去1週間の数日間の空襲警報を含む、進行中の紛争の影響にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告があった。

南ウクライナとリウネのNPPのIAEAの専門家らは、前週末に交代した。南ウクライナ原子力発電所の3基のうち2基とリウネ原子力発電所の4基のうち1基では、計画保守と燃料取替作業が継続された。

攻撃を受けた変電所「Радуга(虹)」(写真：アレクサンダー・ポレゲンコ/TASS)