今週も大きな動きは報告されていないが、ドローン攻撃の疑いで空襲警報。ウォークダウンが延期されている。

また、メンテナンスに請負業者を使うケースが増えている等、明らかな人員不足も感じられる中、現地駐在のIAEA専門家は中央制御室運転員との自由な会話を禁じられており、IAEAとして彼らの技術能力を独立に評価できないでいるのは、非常に問題と言える。

 

 

IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、5/9、IAEAは、原子力安全・核セキュリティが依然として不安定な軍事紛争中にウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)を保護することを目的とした5つの具体的な原則の遵守を監視し続けていると述べた。

 

ZNPPに駐在するIAEAの専門家チームはこの1週間にわたり、プラントから少し離れた場所での大砲やロケット弾の射撃音、サイト付近と遠方の両方から小火器の射撃音など、ほぼ毎日軍事活動の音を聞いている。

 

5/8、IAEAの専門家から、空襲警報が鳴り響き、約90分間建屋外への移動が制限されたと報告があったが、ZNPP側は、冷却水ポンドのエリアでみられたドローンによるものではないかとチームに伝えたという。専門家らは移動制限期間中に爆発音は聞こえなかったという。 5/9早く、別の空襲警報が鳴り響き、再び屋外への移動が制限され、その結果、チームが計画していたサイト外周壁内でのウォークダウンは延期された。

 

欧州最大の原子力発電所(NPP)が相変わらず直面し続ける危険性は、4月初めに同施設が複数のドローン攻撃の標的となったことで改めて浮き彫りになっている。前週述べたように、IAEAはまた、ZNPPの6号炉と訓練センターの近くにドローン操縦者の訓練基地とドローン発射台が配備されているとの報道も承知している。 IAEAの専門家らは、サイト境界内でドローンが発射された形跡や訓練施設や発射台の存在を確認していないが、近くの分析(ラボ)建屋屋上への立ち入りを要請した。ZNPP側からはIAEAチームに対し、この要請は検討中であるとの通知を受けている。

 

「国連安全保障理事会メンバーによって広く支持されている5つの具体的な原則は、この点において非常に明確だ。この大型原子力施設からの、またはこれを対象としたいかなる種類の攻撃もあってはならない」とグロッシ事務局長は述べた。

 

IAEAチームはこの週、サイト全域にわたる定期的なウォークダウンを継続している。その中には2か所の新燃料貯蔵施設のほか、専門家によるサイト外周壁内部での放射線モニタリング実施も含まれており、測定値はすべて正常範囲内であった。

 

専門家らはまた、サイト内のスプリンクラー・ポンドの水位も測定し、現在の低温停止状態にある原子炉ユニットを冷却するのに十分な水が利用可能であることを確認した。

 

プラントの人員配置状況に関して、ZNPP側からIAEA チームに対し、現在約5,000名の職員がおり、前年より増加しているものの、依然として紛争前に比べて大幅に少ないとの報告があった。

 

以前に報告したように、IAEAはZNPP側より、ロスアトムが運営する原子力発電所(NPP)の通常の人員配置レベルは、対応するウクライナの人員配置レベルよりも大幅に低いと聞いている。プラント側は人材の採用を継続しており、現在800名の空席があると述べた。それにもかかわらず、ZNPP側は、現在の各ユニットが停止している状況に対しては、中央制御室に必要な数の有資格運転員を含め十分な有資格スタッフを採用できているとしている。

 

しかし、IAEA専門家は依然として中央制御室スタッフと自由に話すことができず、IAEAとして、ZNPPの原子力安全を維持するために不可欠なこれらのスタッフの知識と経験を独立して評価する能力を発揮できないでいる。

 

ZNPP側は、機器や系統の保全について、以前よりも多くの請負業者を使っていると述べた。 ZNPP側はまた、さらに何人かの訓練講師を新たに採用したと述べた。

 

「原子力安全・核セキュリティにとって極めて重要であるため、我々は人員配置の状況を注意深く監視し続けている。この目的のため、我々の専門家は、中央制御室の運転員やその他の有資格スタッフと議論できる機会も必要だ。」とグロッシ事務局長は述べた。

 

ウクライナの他の地域では、フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトのIAEAチームから、原子力安全・核セキュリティは引き続き維持されているとの報告があった。チョルノービリ駐在のIAEAチームは5/9早くに新たなチームに交代した。 これらの施設に駐在するIAEA専門家は、プラントの緊急時対応センター、環境モニタリング分析所、オフサイト緊急時対応施設を定期的に実地検分し、現状の対応能力について議論するなど、定期的なウォークダウンを実施している。

 

関連報道(ロシアメディア):

https://tass.ru/proisshestviya/20757301