次週、グロッシ事務局長は4度目のザポリージャ原発訪問を行う。ウクライナのエネルゴアトム正規従業員をプラントから締め出すとした、ロシア側運転組織の「暴挙」について厳しく追及する予定だ。ロシアの常識では、原子力発電所の運転要員はこれで十分だとうそぶいているということも分かった。やはり、あの国の原子力は安心できない。

 

 

IAEA(国際原子力機関)のラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は次週、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)を訪問し、この大型施設で働くスタッフの数が減ったことを含め、サイトでの依然として脆弱な原子力安全・核セキュリティの状況に関連する重要な問題と最近の動向について議論し、評価する

 

グロッシ事務局長が戦争の最前線を越えてZNPPを訪問するのは4回目となる。ZNPPの6基の原子炉はすべて18カ月近く停止されており、発電していないが、冷却とセキュリティを十分に確保し、安全に保管しなければならない大量の核燃料が依然として保有されている。。

 

同国の南東部にあるプラントに向かう前に、同氏は2/6に首都キーウでハイレベル会談を開催する予定だ。

 

原子力事故防止に向けたIAEAの継続的な取り組みの一環として、事務局長は、原子力発電所の設備保守活動に関連する潜在的なリスクを含む、ZNPPにおける現在の原子力安全と核セキュリティのいくつかの課題に取り組み、進展を図ることを期待されている。

 

事務局長はまた、ZNPPの人員配置に関する重要な問題を提起し、2/1からウクライナの国営運転事業者エネルゴアトムに雇用されている従業員はサイトに入ることを許可されないという同発電所の新たな発表についてさらなる情報を要求する予定である。 ZNPPで働くスタッフは現在、ロシア国籍を取得しロシアの管理運営組織と雇用契約を結んだエネルゴアトムの元従業員と、ロシア連邦からZNPPに派遣されたスタッフで構成されている。 ZNPP側は2/1、サイト駐在のIAEAチームに対し、プラントには十分な資格認定を受けた要員がおり、すべてのポジションは満たされていると説明した。

 

「私は、次週、ザポリージャ原子力発電所を訪問する際に、この最新の状況展開について議論するつもりだ。原子力安全と核セキュリティに必要な、資格を保有し熟練した要員をプラントに配置することが非常に重要だ。ほぼ2年前に戦争が始まって以来、職員の数はすでに大幅に削減されている」とグロッシ事務局長は語った。

 

この週、2/1の発表に先立って、IAEA専門家は引き続きZNPP側に対して、この点に関する状況を完全に理解し、評価するためのより詳細な情報、特に中央制御室での運転要員や安全上重要なインフラと工程の保全を担当する要員に関する情報を提供するよう求め続けた

 

ZNPP側はこの週初め、IAEA専門家に対し、ロスアトムが運転する原子力発電所での公称要員配置レベルは、該当するウクライナでの要員配置レベルよりも大幅に低いと述べた。 IAEA専門家らは、現在ZNPPのロシア側事業体には4,500人の要員が雇用されており、940人の求職申請が検討されていると説明を受けた。武力紛争が始まる前、ZNPP には約 11,500人の要員が働いていた

 

1/25の国連安全保障理事会で、グロッシ事務局長は、同原発を「運転する要員は大幅に減員されており、スタッフは前例のない心理的プレッシャーにさらされている。原子炉が停止しているにもかかわらず、これは持続可能ではない」と述べている。

 

ZNPPでは、事務局長はまた、欧州最大の原子力発電所(NPP)の原子力安全・核セキュリティに関連するすべての部分に対して、IAEAがタイムリーにアクセスできることが重要であるのを強調する予定である。ZNPP駐在のIAEAチームが、ZNPPにおける原子力安全・核セキュリティの7つの柱を十分に評価し、また、原子力発電所を保護するための5つの具体的な原則の遵守状況を監視するにはアクセスが必要だ。

 

次週、IAEAの新たな専門家グループが事務局長に同行し、現在のサイト駐在IAEAチームと交代する予定だ。これは、IAEAのザポリージャ支援・援助ミッション(ISAMZ)が2022/9/1に設立されてから、第16次のチームとなる。

 

「IAEA専門家の常駐は、ザポリージャ原子力発電所における原子力安全・核セキュリティの状況をある程度安定させるのに役立ってきた。しかし、私が前週、国連安全保障理事会で述べたように、世界は現状に慢心している訳にはいかない」とグロッシ事務局長は述べた。

 

「私は、ウクライナの他の原子力施設ともども、このプラントが日常的に直面し続けている潜在的なリスクを強調し、この発電所における原子力安全・核セキュリティを確保するために全力を尽くすというIAEAのコミットメントを繰り返し強化するために、再びサイトに赴くことにした。」と事務局長は語った。

 

ZNPPでは、IAEAの現在の専門家チームがこの週現場全域でウォークダウンを実施し、1号機の原子炉建屋と安全システム室を訪れ、その一部でホウ酸の堆積物の存在を視認した。 IAEA専門家は、これまでに3号機と6号機でホウ酸の堆積を確認していた。ホウ酸水は、原子力安全機能を維持するために一次冷却材に使用されている。

 

この週、ISAMZは新燃料貯蔵施設2か所、乾式使用済燃料貯蔵施設、スプリンクラー・ポンドにも立ち入った。チームは現場でバックパック式放射線モニタリング測定を実施し、放射線レベルが正常であることを確認した。

 

2023年6月にカホフカダムが破壊された後、スプリンクラー・ポンドの近くに建設された11基の井戸は、停止中の6基の原子炉と使用済核燃料に冷却水を供給している。

 

ZNPPの6基の原子炉のうち5基は依然として低温停止状態にあり、4号機は蒸気と温熱を生産するために高温停止状態にある。これには、ほとんどの発電所スタッフが住んでいる近くの町エネルホダルも含まれる。

 

1/29、チームは新たなディーゼル蒸気発生器(DSG)の試運転作業の一部を視察し、2/1、プラント側から運転を開始したとの連絡を受けた。IAEAは、新装置が生成した蒸気が液体廃棄物の処理に使用されるとの報告を受けている。この新装置が生成する蒸気があれば、全原子炉ユニットを低温停止にできるかどうかについては、まだ、ZNPP側の確認は得られていない

 

最近の気温の穏やかさで、サイトでの可搬式ディーゼルボイラーの運転基数を9 基中4基に減らすことができた。これらのボイラーは、エネルホダルだけでなくプラントにも温熱を提供している。

 

チームは、1月初めに故障が発生したバックアップ電源変圧器のメンテナンスが完了し、運転を再開したとの説明を受けた。ZNPP側は、近くIAEAチームに故障の原因を報告すると述べている。

 

ウクライナの他の場所、フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所やチョルノービリ・サイト駐在のIAEA専門家からは、一部の施設で頻繁に空襲警報が鳴るなど、困難な戦時状況にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されていると報告を受けている。稼働中の3つの原子力発電所のIAEAチームは、この1週間のうちに交代した。

 

画像:RIAノーボスチ

 

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